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         突然、削除されてしまいました。その動画をそのまま米国の動画
         サイトに再投稿したものが本編です。情報が何もなかった時期に
         作成したものですから、不正確な表現も何か所かあります。それも
         歴史の一コマとして、そのまま掲載してあります。正しい情報は
         当ホームページでご確認ください)


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今週の新情報

(2024.3.25)
Q&A 一方的に取り消された論文: 露骨な反ワクチン弾圧?

2024年1月24日にネット掲載された論文『新型コロナmRNAワクチン:臨床試験データとその後のワクチン推進キャンペーンから学んだこと』が物議をかもしています(文献1)。公開の1か月後、一方的に掲載の取り消し処分を下されてしまったのです。いったい何があったのか、背景を探ってみました。

現在、この論文については、取り消し処分になった理由が、編集長名で以下のように記されています。「この論文が掲載されたあと、批判が殺到した。そこで複数の編集責任者で再度、論文を検証したところ、引用文献が不適切であったり、あるいはデータの解釈に間違いがあることを確認した。なお著者らは、この決定に同意していない。」

その後、論文を執筆した著者らは、専門誌を出版しているシュプリンガー・ネイチャー社に対し、2億5千万ドルの懲罰的損害賠償を請求する裁判を起こす、と発表しました(文献2)。このような損害賠償の仕組みは日本になく、とにかく天文学的な金額になるのが特徴です。ただし、裁判所に対して実際に訴訟手続きがなされたどうかは、3月25日現在不明です。

執筆者は、裁判を起こすに至った経緯を次のように述べています。「私たちの論文が公開されたあと、編集部には、悪意に満ちた6通の手紙が届いたと聞く。それを信じ込んでしまい、私たちを”悪意ある反ワクチン主義者”と決めつけ、科学的な裏づけのないまま、掲載取り消しを決めた。これは掲載に伴う契約違反であり、悪意ある誤解であり、誹謗中傷だ!」と。

論文を批判した一人の名前が判明したことから、著者は、この批判者と直接、メールのやり取りしました。しかし、「弁護士と相談するから、もう連絡はしないでほしい」というメールを最後に、音信不通となりました。

一方、この論文に賛意や高い評価を与える専門家もいて、著者たちのもとには激励の手紙もたくさん届くようになりました。文献2には、具体的なメールの内容が掲載されています。

さて、問題となった論文は、いったいどんな内容だったのでしょうか?

全体が50ページからなり、参考文献が293件もある大作で、読むのも大変です。内容をひとことで言えば、当ホームページ『新型コロナのエビデンス』が、足掛け5年にわたってお伝えしてきた情報とほぼ同じものでした。つまり、この論文が世間から否定されてしまうのであれば、当ホームページの存続も危ういことになります。

論文の記述はきわめて正確で、参考文献も適切に選ばれていて、かつ解釈に間違いはありません。そこで、この論文に寄せられた批判を詳しく分析してみることにしました。代表的な批判のひとつは、「
(ワクチンは危険という)結論が先にあり、それに合わせてデータを集めただけ!」というものでした。このような意見は、学問的な論争の場面でよく交わされる、いわば定番の批判です。

しかし考えるまでもなく、その逆の見方、つまり「
(ワクチンは体に良いという)結論が先にあり、それに合わせてデータを集めただけではないか」という批判にまず答えてもらう必要があるでしょう。しかし、当ホームページで明らかにしてきたように、「ワクチンが安全で有効であることを、科学的に正しい方法で示したデータ」は存在しないのです。

この論文でひとつだけ気になるのは、冒頭、次のような記述がなされていたことです。「米国民の税金から巨額のお金がワクチン・メーカーに事前に支払われていて、引っ込みがつかない状態にあった。そのため政府は、不利なデータが出る前にランダム化比較試験を早期に終了させるなど圧力をかけた」。

純粋に科学の立場から主張を展開すべきところでしたが、その枠を一歩踏み外したこの記述が権力者(?)の虎の尾を踏んでしまったのかもしれません。SNSでの誹謗中傷事件でよく語られることですが、悪意ある書き込みの火元は一か所でも、それが企みとして、あるいは無責任な追随によって拡散し炎上したりします。今回のゴタゴタもそのような流れだった可能性があります。

   

いずれにしても、新型コロナワクチンの真実を世に訴える道のりが、さらに遠のいてしまったかと思わせる、気の重い出来事でした。

なお本件については、複数の方から情報提供をいただきました。ご協力に感謝いたします。

【参考文献】
1) Mead MN, et al., (Retracted) COVID-19 mRNA vaccines: lessons learned from the registration trials and global vaccination campaign. Cureus, Jan 24, 2023.
2) Kirsch S, We're suing Springer Nature for $250M in punitive damages for the unethical restraction of our COVID harms paper. Steve Kirsch's newsletter, Mar 6, 2024.









先週までの情報

(2024.3.18)
Q&A コロナの隔離期間が短縮された?

2024年3月1日、米国疾病対策センター(CDC)は「新型コロナ感染症の隔離期間を大幅に短縮する」との記者発表を行いました(文献1)。その背景を探るとともに、この先、新型コロナウイルスとどのように向き合っていけばよいのかを考えてみました。

隔離解除の新しい条件は以下のようなものでした。
 ・発症後の日数にかかわらず解熱剤を使わずに
発熱のない状態が24時間以上続くこと
 ・さまざま症状が回復に向かっていること
 ・隔離解除後の5日間はマスク、手洗いを励行し、咳エチケットや換気に努めること

このような決定を行うに至った根拠はいろいろありましたが、まず重症化して亡くなる人の数が圧倒的に少なくなったことです。次のグラフは、文献2で公表された米国の統計データから私が作図したものです。

   

2023年以降は死亡者の人数がインフルエンザと同程度となっていることがわかります。ただしインフルエンザの場合、「インフルエンザが原因で死亡した」ことを判断する基準が不明確で、届出義務もあいまいなため、正確な人数がわかっていません。そのためCDCは、毎年、数式モデルを使って死亡者数の推測値を発表してきました。公表されている推測値には幅があり、上図で示した赤色の棒グラフは上限と下限の中間の値にしてあります。

隔離期間を短縮した、もうひとつの理由は、すでに米国民の98以上が防御免疫を獲得しているから、としています。厚生労働省による地域住民の調査によれば、日本でもスパイク蛋白に対する抗体の保有率が98パーセント以上とされています(文献3)。厳密に言えば、厚生労働省が示した「抗体保有率」と、CDCが用いた「防御免疫」という言葉は必ずしも同じものでありませんが、大同小異と考えてよいでしょう。

感染症は、ほかにもRSウイルスによるもの(風邪のひとつ)など多数あります。病気の種類ごとに対応がばらばらでは、混乱が生じてしまい、むしろ対策が徹底しないので、単純化してひとつにまとめたほうがいいから、というのもCDCの考え方でした。

米国では、多数のメディアがこの声明をビッグニュースとして報じました。ある新聞には、賛否のコメントが紹介されていますが、「人々が新型コロナ感染症を軽くみてしまうのが心配」との懸念を表明する専門家の意見もありました。今さらマスクは嫌だという人も多く、また換気が悪い場所はいくらでもあり個人でどうすることもできない、などが反対理由だそうです。

現在、
日本では、少なくとも5日間の自宅療養、かつ2日以上熱がないことを解除の条件としており、その間は出勤や登校を控えることが求められています。また治癒した旨を記した医師の診断書を求める会社や学校もいまだにあり、社会生活の妨げになっているという声も少なくありません。

「コロナ」という言葉に過剰に反応してしまう雰囲気が、いまだ世の中に蔓延しています。多くの感染者の診療にあたってきた経験もふまえて言えば、米国CDCの新らたな基準を日本でも取り入れてよい時期にきているように思われます。

【参考文献】
1) Respiratory virus guidance update FAQs. CDC, Mar 1, 2024.
2) Background for CDC's updated respiratory virus guidance. CDC, Mar 1, 2024.
3) 第6回抗体保有調査(住民調査)速報結果, 厚生労働省 第120回(令和5年4月5日) 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード, 資料2-4, Apr 5, 2023.
4) Mandavilli A, C.D.C. shortens isolation period for people with Covid. New York Times, Mar 1, 2024.








(2024.3.11)
Q&A エビデンスの中間まとめ:第三回目

当ホームページでは、新型コロナワクチンにかかわる話題を多岐にわたり紹介してきました。その情報量も非常に膨大なものとなってきましたので、3回に分けて「中間まとめ」を行っています。今週は、その第三回目として、新型コロナワクチンの有効性を示したとされる学術論文に
データの改変や印象操作が行われていたことを示す証拠を、過去の記事から厳選しました。

いかなる医療行為も、ランダム化比較試験によって初めて効果と副作用を実証することができます。対象者を公平に2群にわけ、その一方にたとえば本物の薬を、他方には偽薬(プラセボ)を使いながら追跡して、結果を見届けるという方法です。ファイザー社とモデルナ社のワクチンの場合、どちらも論文はひとつずつしかありません(文献1,2)。

次の表は、有名な「有効率95パーセント」の根拠とされるファイザー社の論文で提示されたものです。このデータから (1-(8÷18198)÷(162÷18325))×100という計算をすると、約95パーセントになります。

  

しかし、この論文に対しては、発表後、無数のクレームが寄せられました(文献3など多数)。そのひとつは、新型コロナの症状がありながら、PCR検査を行っていなかった事例が「ワクチン接種ありの群」で1,594例、「接種なしの群」で1,816例もあり、これを含めて有効率を計算し直すと
19%になってしまう、という指摘でした。この指摘が正しいことは、ファイザー社が当局に提出した資料からもあきらかです(文献4)。次表は、この人数を加えて私が修正したものです。

  

次に、同論文には「ワクチンは重症化を防いだ」とも書いてありました、その根拠は、重症化した人が「ワクチン接種なしの群」で9人だったのに対して 「接種ありの群」で1人だったから、というものでした。この記述が間違っていることは、私もすぐに気づき当ホームページで指摘したところです。

  

正しくは、上の表で示したように、「ワクチン接種ありの群」では、感染した8人中1人が重症化していたため重症化率は1÷8で
12.5%です。一方、「接種なしの群」では9÷162で5.6%です。つまり正しい解釈は、「ワクチンを接種した人が感染すると、より重症化しやい」ということだったのです。その後、この問題は、世界中の多くの研究者によって指摘されるところとなりました(文献5など多数)。

この論文には、ほかにも問題がいろいろあります。ファイザー社がとった有効率の計算法を、次図の1つ目の例題に当てはめてみます。(1-(5÷100)÷(10÷100))×100という計算から答えは50%となりますが、2つ目の例題のように調査対象が1,000人でも、答えは同じになってしまいます。たとえ100万人だったとしても同じになるのですから、おかしな話です。

     

この計算法で得られる有効率は、相対リスク減少率と呼ばれます。実は、有効率の計算には別の方法がもうひとつあり、上図の1つ目の例題に対しては、次のような計算を行うものです。

 (10÷100 - 5÷100)×100 = 5%

上図の2つ目の例では0.5%となり、1,000人にワクチンを打っても5人しか予防することができないことがわかり、よい現実感があります。この計算法でえられる有効率は絶対リスク減少率と呼ばれます。

どちらも間違いではなく、教科書にも載っている計算法なのですが、ファイザー社の論文で前者が採用されたのは、あきらかに見た目をよくするため、はっきり言えば人心を惑わすためだったでしょう。この点も、その後、多くの学術論文で批判を浴びることになりました(文献6など多数)。

製薬企業は、このように人々の信頼を裏切る行為を行ってきたのですが、極めつけは、論文発表の後、食塩水を注射したプラセボ群の人たち全員に、ワクチンを接種していたことです(文献7)。

この行為が何を意味しているかと言えば、いつの日かワクチン接種群の人に重大な異常を認めたとしても、比べる相手がすでにありませんから、「単に年のせい」にして、異論を封じることができます。生き証人ともいえる大切な存在が、いわば意図的に消されてしまったのです。

次の表は、妊娠中に新型コロナワクチンを接種すると、流産が増えるかどうかを報じた別の論文から再現したものです(文献8)。赤枠で囲んだ数値から、妊娠20週以内で接種した場合の流産は、過去の報告値に比べて多くはないことを示しています。

   

しかし、この論文にも世界中から批判が殺到しました(文献9など多数)。論文中、表の下に「827人中、700人は妊娠20週以降に接種した」と、小さな文字で記述されていたのです。したがって、正しくは827人から700人を除いた127人が分母となり、流産の率は
82%と計算すべきだったのです。

さらに「過去の統計値」のほうも間違っていました。過去の報告値は、どの文献を調べても
10%くらいとしか書かれていません。つまり正しい結論は、「妊娠10週以内に新型コロナワクチンを接種すると流産が8倍以上も高まる」というものだったのです。

   

ワクチンメーカーに限らず、世界の巨大製薬企業は、健康に対する人々の期待を裏切る行為を繰り返してきました。そのため消費者から無数ともいえるほどの裁判が、米国を中心に起こされています。その多くは原告勝訴となり、企業側には巨額の賠償金支払いが命じられてきました。具体的な事例は枚挙にいとまがなく、文献10,11に詳述されていますので省略します。

2つのランダム化比較試験の論文が発表されたあと、「新型コロナワクチンは有効」と主張する研究が多数行われましたが、すべてテスト・ネガティブ分析(後ろ向き調査のひとつ)によるものでした。この分析法については、令和5年9月4日付の当ホームページで解説したとおり、正当性が科学的に保証されないものであることを、改めてつけ加えておかなければなりません。

さて、3回にわたる「中間まとめ」はこれで終了です。いずれも裁判を想定し、取り上げた参考文献も証拠書類として利用できるように説得力のあるものを厳選しました。これまで当ホームページで紹介した際には若干の誤用もあったため、改めて各文献を精読し、正しい解釈をここにまとめたものです。

次回からは、再び最新情報をご紹介していく予定です。

【参考文献】
1) Polack FP , et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med, Dec 31, 2020.
2) Baden LR, et al., Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med, Feb 4, 2021.
3) Doshi P. Pfizer and Moderna’s “95% effective” vaccines – we need more details and the raw data. BMJ Opinion, Jan 4, 2021.
4) https://www.fda.gov/media/144246/download. Dec 10, 2020.
5) Pharm XW. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine, To the Editor. N Engl J Med, Feb 17, 2021.
6) Olliaro P, et al., COVID-19 vaccine efficacy and effectiveness - the elephant (not) in the room. Lancet. Apr 20, 2021.
7) Thomas SJ, et al., Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine through 6 months. N Engl J Med, Sep 15, 2021.
8) Shimabukuro TT, et al., Preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Jun 17, 2021.
9) Sun H, On preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Oct 14, 2021.
10) 岡田正彦, 『本当に大丈夫か、新型ワクチン―明かされるコロナワクチンの真実』, 花伝社, 2022.
11) マーシャ エンジェル著/栗原千絵子, 斉尾武郎共監訳, 『ビッグ・ファーマ 製薬企業の真実』. 篠原出版新社, 2005.








(2024.3.4)
Q&A エビデンスの中間まとめ:第二回目

これまで当ホームページでは、新型コロナワクチンにかかわる話題を多方面から紹介してきました。その情報量も非常に膨大なものとなってきましたので、数回に分けて「中間まとめ」を行っています。今週は、その第二回目として、新型コロナワクチンに
明らかな副作用が存在することを示すデータを、過去の記事から厳選しました。

まず次の表は、イスラエルで行われた調査の結果です(文献1)。180万人近くの住民を対象に、「ワクチンを接種した人たち」と、「接種していない人たち」の症状を比べたもので、使われたのはファイザー社のワクチンです。接種後42日目の症状を調べたところ、もっとも増えていたのは
心筋炎、心外膜炎、心不全でした。

   

次の表は、心筋炎と心外膜炎に着目して、副作用の頻度を調べた米国のデータです(文献2)。「ワクチン使用開始1年前」と「接種開始後(2021年2月~同年5月)」の発病者数を比べたものですが、ワクチン接種開始後、心筋炎と心外膜炎の発病者数があきらかに増えていました。

      

次は、新型コロナワクチンの副作用として心筋炎が増えていたことを、より明確に示したイスラエルのデータです(文献3)。イスラエルには公的医療保険制度がいくつかありますが、そのうち最大規模の組織に加入していて、かつファイザー社ワクチンを打った256万人を追跡調査したものでした。

   

グラフの横軸は、1回目の接種からの経過日数です。ファイザー社ワクチンは2回接種の間隔を21日と定めていましたが、その「21日目」の数日後、心筋症があきらかに増えていたことがグラフからわかります。ワクチンの副作用として生じる心筋症がどのようなものかは、文献4と5で提示された心電図やMRI画像であきらかです。

皮膚病変については、生々しい写真の数々が文献6と7に掲載されています。腎臓病も増えているのですが、海外を見渡しても文献が少なく、頻度は不明です。文献8と9には、副作用として生じた腎臓病の生検(バイオプシー)標本の顕微鏡写真が掲載されています。さらに、不活化ワクチンを使った場合でさえ、深刻な眼の異常(上強膜炎、前強膜炎、急性黄斑部神経網膜症、傍中心窩急性中間層黄斑症、網膜下液など)が生じる、と報告されています(文献10)。

新型コロナワクチンの副作用に関する学術発表は数多くあるのですが、ほとんどの論文は、最後に「
副作用である可能性は高いが、頻度が非接種者と比べても、またコロナ禍前と比べても多いとは言えない」との言葉で締めくくられています。多くの専門誌には、ワクチンを根本から否定する論文は認めない、との編集方針があるからと思われます。

それにもかかわらず真実を伝えてくれた貴重な論文を、ここまで紹介してきました。なお新型コロナワクチンの副作用については、全体像とそのメカニズムが文献11に詳述されています。

さて、死亡例のデータについてもまとめておくことにします。次の図は、2021年1年間における「月別のワクチン接種後死亡数」のグラフに、同じ年のワクチン接種者数のグラフを重ねてみたものです(国内デ―タ:文献11,12,13)。ワクチン接種者数(赤色)のグラフは、死亡者数(青色)に比べて値が桁違いに大きいため、圧縮してあります。両者の正しい値は、左右の目盛でそれぞれご確認ください。

    

4月から6月にかけて死亡者が急増し、ワクチン接種者数の増加と比例しているように見えます(点線で囲んだ部位)。いまのところ、このグラフがワクチンによって死亡者数が増えていることを示す、もっとも説得力のあるデータと考えられます。ただし、このような数値データは、因果関係の証明に利用するのが非常に難しく、容易に反論を許してしまうという宿命もかかえています(どのような反論がありうるか、ぜひご意見をお寄せください)。

最後のデータは、大きな病院で行われる特殊な検査「免疫組織染色法」についてです。皮膚などに針を刺して、組織の一部を取り出すバイオプーと呼ばれる方法で得られたサンプルに対して行われ、顕微鏡で確認がなされます。もし、以下の図のようにトゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)が認められ、そこに免疫細胞や炎症細胞が集まっていれば、ワクチンのせいで病気になったことの証明になります。

      

この図は、私がイメージを描いたものですが、実際の顕微鏡写真は、文献15で見ることができます。

来週の第三回目では、論文の不正操作についての情報をまとめる予定です。

【参考文献】
1) Barda N, et al., Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide setting. N Engl J Med, Aug 25, 2021.
2) Diaz GA, et al., Myocarditis and pericarditis after vaccination for COVID-19. JAMA, Aug 4, 2021.
3) Witberg G, et al., Myocarditis after Covid-19 vaccination in a large health care organization. N Engl J Med, Oct 6, 2021.
4) Mouch SA, et al., Myocarditis following COVID-19 mRNA vaccination. Vaccine, May 28, 2021.
5) Kim HW, et al., Patients with acute myocarditis following mRNA COVID-19 vaccination. JAMA Cardiol, Jun 29, 2021.
6) McMahon DE, et al., Cutaneous reactions reported after Moderna and Pfizer COVID-19 vaccination: a registry-based study of 414 cases. J Am Acad Dermatol, Apr 7, 2021.
7) Merrill ED, et al., Association of facial pustuler neutrophillic eruption with messenger RNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. JAMA Dermatol, July 28, 2021.
8) Lebedev L, et al., Minimal change disease following the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. AJKD, Apr 8, 2021.
9) Sekar A, et al., ANCA glomerulonephritis after the Moderna COVID-19 vaccination. Kid Int, May 17, 2021.
10) Pichi F, et al., Association of ocular adverse events with inactivated COVID-19 vaccination in patients in Abu Dhabi. JAMA Ophthalmol, Sep 2, 2021.
11) Seneff S, et al., Worse than the disease? reviewing some possible unintended consequences of the mRNA vaccines against COVID-19. IJVTPR, May 10, 2021.
12) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou_youshikietc.html
13) https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/qa/detail/more-detail/qa_05_a04.html
14) Coronavirus (COVID-19) vaccinations. Our World in Data, Feb 13, 2024.
15) Baumeier C, et al., Intramyocardial inflammation after COVID-19 vaccination: an endomyocardial biopsy-proven case series. Int J Mol Sci, Jun 22, 2022.








(2024.2.26)
Q&A コロナワクチンに関するエビデンスの中間まとめ

これまで当ホームページでは、新型コロナワクチンにかかわる話題を多方面から紹介してきました。その情報量も非常に膨大なものとなってきましたので、今週以降、数回に分けて「中間まとめ」を行います。今週は、その第一回目として、新型コロナワクチンの
生物学的な脆弱性を示すデータを、過去の記事から厳選しました。

(1) ワクチンは免疫力を低下させる
 まず次のグラフは、マウスを使った実験の結果を示したものです。ワクチン接種を繰り返しながら、トゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)に対する「抗体量」を測るという実験です(文献1)。ワクチン接種を5回以上繰り返すと、期待に反し抗体量がむしろ減少してしまうことがわかります。(ただし、この実験では、mRNAワクチンではなく、試験管内で人工合成したスパイク蛋白を直接、動物に注射するという方法が取られています)

    

抗体にもさまざまな種類があります。IgGと呼ばれるたんぱく質がその正体で、IgG1~IgG4の4種類から成っています。血液中ではIgG1が大部分を占めており、上のグラフも主にIgG1を測ったものでした。

次の左側のグラフは、mRNAワクチン(ファイザー社)を2回接種したあと3回接種後までの間に変化した血液中の各IgGの値です。右側のグラフは、接種回数が増え、時間も経つにつれ、IgG4が増えていく様子を示しています(文献2)。

  

IgG4は、中和抗体がウイルスに結合して無毒化するのを妨げる役割を担っているため、これが増えると免疫反応が止まってしまうのです。IgG4は、免疫反応が過剰にならないよう、ほどほどのところでブレーキをかける役割を担っていると考えられるのですが、ワクチンを繰り返すと、必要な免疫反応まで止めてしまうことになります。

次のグラフは、mRNAワクチン(ファイザー社)接種によってできた中和抗体が、ウイルスの増殖を抑制できるかどうかを、本物のウイルスを使って調べた実験の結果です(文献3)。横軸は「年齢」で、縦軸が「中和抗体の強さ」となっています。青色のグラフは中国武漢市で発生した初期の新型コロナウイルス、赤色のグラフはその後に出現したガンマ変異株です。

変異株による差はあるものの、高齢者ほど中和抗体の力が著しく減弱している様子が、グラフからよくわかります。高齢者には、ワクチンがほとんど効いていなかったのです。

    

(2) ワクチンに予防効果なし
 では、ワクチン接種によって免疫力が低下した結果、何が起こっていたのでしょうか?

次のグラフは、新型コロナにウイルスに感染したことが確認された人たちを対象に、唾液中のウイルス量を測定した結果です(文献4)。調査は、デルタ株が隆盛だったころ、米国カリフォルニア州の2つの町(A地区とB地区)で行われたもので、「ワクチンをまったく打っていない人」と「2回接種した人」を比べています。なおワクチンの種類は論文中に明記されていませんが、米国ではほぼmRNAワクチンしか使われていません。

    

グラフの縦軸は、PCR検査の結果を表わすCtという値になっていて、ウイルス量が少ないほど大きくなります。A地区は、2回接種した人たちのほうでウイルス量がわずかに多く(棒グラフが低い)、B地区では逆になっていて、両者を合わせると統計学的な差はない、という結論でした。ワクチンを接種していても他人への感染は防げない、ということになります。

最後のグラフは、世界68ヵ国を対象に「国民のワクチン接種率」と「新規感染者数」との関係を調べた結果を示したものです(文献5)。デルタ株が優勢だったころで、国名は一部を除き省略してあります。

    

ワクチン接種率が高い国ほど新規感染者数が多いという、予想に反する傾向が認められます。大きなばらつきもありますが、詳細は不明です。使われていたワクチンは国によって異なりますが、たとえばイスラエルでは、mRNAワクチン(ファイザー社)だけが使われ、有効率がわずか39パーセントだったと計算されています(製薬企業が発表した論文では95パーセント)。

同じ現象はほかの多くの調査でも確認されており、とくに英国の政府機関が発表したデータは、ワクチン接種者のほうで感染率が高いことを明確に示すものでした(文献6)。


以上、中間まとめの第一回目として、新型コロナワクチンの生物学的な脆弱性を示すデータをまとめました。「繰り返しの接種で免疫力が低下すること」、そのため「感染予防の役には立っていなかったこと」があきらかです。次回はワクチンの副作用について、中間まとめを行う予定です。

【参考文献】
1) Gao F-X, et al., Extended SARS-CoV-2 RBD booster vaccination induces humoral and cellular immune tolerance in mice. iScience, Dec 22, 2022.
2) Irrgang P, et al., Class swithch toward noninflammatory, spike-specific IgG4 anitbodies after repeated SARS-CoV-2 mRNA vaccination. Sci Immunol, Jan 27, 2023.
3) Bates TA, et al., Age-dependent neutralization of SARS-CoV-2 and P.1 variant by vaccine immune serum samples. JAMA, Sep 7, 2021.
4) Acharya CB, et al., Viral load among vaccinated and unvaccinated, asymptomatic and symptomatic persons infected with the SARS-CoV-2 delta varinat. Open Forum Infect Dis, Mar 17, 2022.
5) Subramanlan SV, et al., Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States. Eur J Epidemiol, Sep 30, 2021.
6) Public Health Scotland COVID-19 and Winter Statistical Report, as at 17 January 2022, Public Health Scotland, Jan 19, 2022.








(2024.2.19)
Q&A 新たなウイルスの脅威にどう対処すればいいのか?

過去、さまざまなウイルス感染症が流行し、人類を脅かしてきました。新型コロナウイルスが終息しても、ウイルスによる新たな流行がこれからも繰り返されていくと考えられます。新型コロナウイルスの発見にまつわるエピソードも交えながら、今後を占ってみることにしました。

新型コロナウイルスの遺伝子構造(塩基配列)を報じた最初の論文が、有名な科学専門誌ネイチャーに投稿されたのは、2020年
1月7日でした(文献1)。しかし厳しい審査もあり、オンラインでの出版は2月3日まで待たなければなりませんでした。

この論文投稿と並行して、著者のひとりが米国の遺伝子データベース(GISAID)に完全な塩基配列を投稿したのが
1月10日(文献2)。このデータは、2日後の1月12日、世界に向けて初公開された、・・・というのが定説とされてきました。

ところが米国のニューヨークタイムズ紙によれば、事実はいささか違っていたようです(文献3)。さかのぼる2019年
12月28日、米国政府が管理する別の遺伝子データベース(GenBank)に、実は第一報が投稿されていたのです。中国湖北省武漢市の病院に「謎の肺炎」で入院した65歳の男性から分離した「未知のウイルスの塩基配列」との説明つきでした。

遺伝子データベースの管理者は、仮登録された未公開のデータを見つけましたが、日々、無数の投稿もあり、とくに気に留めることはありませんでした。3日後、投稿者に対し「分析方法についての説明を加え、再投稿するように」とのコメントを送りましたが、返事はありません。世界で最初の新型コロナウイルスの塩基配列は、時間切れとなり自動的に消去されてしまいました。

つまり、塩基配列決定のニュースが世界を駆け巡った1月10日より
2週間も前に塩基配列は確定され、公表されようとしていたことになります。この2週間の遅れが、もしかしたら致命的な対策の遅れにつながったかもしれない、というわけなのです。

遺伝子データベースの管理者から説明を求められた中国の研究者が、返答をしなかった理由については、政府の圧力で研究室を閉鎖されてしまったためとも言われています(文献4)。一方、この情報の重大さを、データベースの管理者が気づかなかったという問題も指摘しておかなければなりません。

日々、膨大な遺伝子情報がデータベースに登録され続けているため、重要かどうかを区別するのが不可能になってきているのです。あるウイルスの専門家は「渓谷で見つかった新種のデンデン虫の塩基配列も入り混じっているデータベースから、どうやって危険なものを見つけ出せと言うのか!」とコメントしていたそうです。

人間の脅威となりうるウイルスは、無数に存在します。エボラ出血熱のように突発的に流行するものがあれば、デング熱のように数年の周期で流行を繰り返しているものもあります。

デング熱は、2024年に入り南米で大流行していますので、今後の対策を考える上でヒントになるかもしれません。この病気は、蚊、とくにネッタイシマカが媒介するデングウイルスが原因で、インフルエンザのような症状と全身の発疹が特徴です。デングウイルスは、新型コロナウイルスと同じタイプ(1本鎖プラス鎖RNAウイルス)で、なぜかオリンピックと同じ4年ごとに流行を繰り返しています。

これまではインドネシアなど東南アジア、中南米など熱帯地域が流行の中心でしたが、いま世界的に拡大してします。日本でも、2014年に東京の代々木公園で蚊に刺された人が感染し、大きな話題となったのは記憶に新しいところです。

デング熱に限れば、予防策は蚊の撲滅に尽きます。しかし流行を繰り返してきた地域では、殺虫剤の使い過ぎで、蚊のほうが耐性を獲得してしまい駆除ができない、との予想外の事態も起こっています。
     
では、これから続々遭遇することになるであろうウイルスの脅威に、どう対処すればよいのでしょうか?

新型コロナ感染症では、中国の科学者がわずか4日間でウイルスの塩基配列を決定し、公表してくれました。それにもかかわらず中国当局の隠ぺい体質のせいで、公開までに致命的ともいえる時間が無為に費やされました(文献5)。一方、国際社会のほうでは、危険なウイルスの情報が登録されても、それらを的確に判断する仕組みがなかったことも露呈しました。

デング熱には不活化ワクチンがありますが、昔から流行を繰り返してきたウイルスであったことから、開発にじっくり時間を費やすことができたのです。しかし、この先、もし未知のウイルスが突然、現れた場合、短期間にワクチンを作るには、いまのところメッセンジャーRNAの技術に頼るしかありません。加えて、ワクチンは、どのような作り方をしても、繰り返しの接種で免疫力にブレーキがかかり、感染者がむしろ増えてしまうという宿命も負っています。

     

今後は、ワクチンに代わる新技術の開発や医療体制のあり方など、あらゆる面で発想を変えた取り組みが必要です。過去の反省と今後の努力がなければ、地震などの自然災害と同様、同じ悲劇を繰り返していくことになります。

【参考文献】
1) Wu F, et al., A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature, Feb 3, 2020.
2) Holmes EG, Novel 2019 coronavirus genome. https://virological.org/t/novel-2019-coronavirus-genome/319, Jan 10, 2020.
3) Mueller B, Before the coronavirus pandemic, overlooked clues from Chinese scientists. New York Times, Jan 18, 2024.
4) 岡田正彦, 本当に大丈夫か新型ワクチン,明かされるコロナワクチンの真実. 花伝社, 2022
5) Zhang Y-Z, et al., A genomic perspective on the origin and emergence of SARS-CoV-2. Cell, Apr 16, 2020.
6) Takeda's QDENGA (Dengue tetravalent [live, attenuated]) approved in Indonesia for use regardless of prior dengue exposure, Takeda Pharmaceutical Company, Aug 22, 2022.
7) Kallas EG, et al., Live, attenuated, tetravalent Butantan-Dengue vaccine in children and adults. N Engl J Med, Feb 1, 2024.









(2024.2.12)
Q&A コロナワクチンは脳に影響を与えるのか?

コロナワクチンの副作用、あるいはコロナ後遺症のせいで、「頭がもやもや」するなど脳の症状で悩まされている人が少なくありません。そのような人たちに脳の画像検査を行ったところ、あきらかな変化を認めたとする論文が発表されましたので、概要をまとめてみました(文献1)。

何らかの理由で脳の画像検査(MRI)をたまたま受けていて、その後の4ヵ月以内にオミクロン株に感染し2回目の検査を受けた、という人たちが対象でした。26~60歳の男性ばかり(理由は不明)です。気になるのは、ほとんどの人がコロナワクチン接種も受けていたことです。

MRI検査のあと、認知機能や睡眠状況など調べる4種類のテストが行われました。そのひとつは「ベック不安尺度」というテストで、不安に関連する気持ちや身体症状を21項目の質問で調べるものです。たとえば「何か最悪なことが起きるような気がする」、「死ぬかもしれないという不安がある」、「体がほてる」、「呼吸が苦しくなったりする」などの項目に対して、「まったくない」から「ひどく悩まされている」までの4つの選択肢から答えるようになっています。

分析の結果、多くの人で、オミクロン株に感染したあとベック不安尺度の悪化が認められたということです。タバコを吸っている人も含まれていましたが、ベック不安尺度の変化とは無関係でした。身体的症状で多かったのは、微熱、疲労感、咳、筋肉痛などです。

2回目の検査の3ヵ月後、17人に対してアンケート調査を行ったところ、症状は大幅に改善していました。

では、脳の変化はどうだったのでしょうか。

前後2回の検査結果を比べたところ、脳の何ヵ所かに委縮が認められ、そのひとつは「楔前部(けつぜんぶ)」と呼ばれる部位でした。ベック不安尺度が悪化した人ほど委縮が進んでいることもわかりました。

   

この部位は、自分の体の位置関係を記憶していて、手足などを動かそうとする
意識や感情との調整を行っていると考えられています(文献2)。大脳は左右にわかれていますが、その2つが接する内側の隠れた場所にあって、脳卒中やケガなどで損傷を受けることも少ないため、詳しい働きはまだわかっていません。

さて、この研究結果から何が言えるのかは、難しいところです。まず、対象となった人の大部分がコロナワクチンを受けていたことから、オミクロン株に感染したためなのか、それともワクチンの副作用なのかが判然としません。

また、研究で用いられた検査装置は比較的高性能(3テスラ、32チャンネル)であり、画像の変化も2回分を比べてかろうじてわかる程度のものでした。したがって症状が出てから慌てて病院に駆け込んで検査を受けても、あまり役に立つことはないかもしれません。

一方、時間の経過とともに、症状も回復に向かうことがわかりました。ワクチンの副作用やコロナ後遺症は、たとえ時間がかかっても徐々に回復していくものであることは多くの論文が示しているところです。この研究結果も、そのことを暗示しており、つらい症状で悩んでいる人たちにとっては救いです。

脳の機能は、部分的に衰えたとしても、周辺の神経回路の再学習によって補われていくと考えられるのです(文献3)。

【参考文献】
1) Du Y, et al., Gray matter thickness and subcortical nuclear volume in men after SARS-CoV-2 omicron infection. JAMA Netw Open, Nov 30, 2023.
2) Cavanna AE, et al., The precuneus: a review of its functional anatomy and behavioural correlates. Brain, Jan 6, 2006.
3) 岡田正彦, 医療AIの夜明け, AIドクターが医者を超える日, オーム社, 2019.









(2024.2.5)
Q&A コロナワクチンを巡る世界の裁判:その後?

2023年11月ころ、米国のメディアは、コロナワクチンによる健康被害に対して補償を求める申請が1万件を超えたこと、そしてその審査が大幅に遅れていることを報じていました(文献1)。状況は日本と大差ないようです。

その申請を取り仕切っているのが、米国保健福祉省の「対抗傷害補償制度」です。「対抗」という言葉は、あまり使われることのない英語の直訳ですが、「消費者が市販品を使用して何か不利益が生じた際の対応」という意味で用いられています。言葉からイメージされるように、どちらかというと企業側を守るための制度です。

そのため、ワクチン被害に理解を寄せる国会議員や法律家たちは、法改正に向けた活動を始めたところですが、いずれ製薬企業を直接、裁判に訴えることも考えなければならないだろうと述べています。日本では、すでに国とファイザー社を相手にした訴訟が始まっていますので、米国より一歩先んじていることになります。

そのような記事が出回った直後の12月、コロナワクチン製造メーカーの不正を、司法当局が告発したとのニュースがありました。ファイザー社が販売しているコロナワクチンの有効性に関するする説明に偽りがあった、との理由で米国のテキサス州司法長官が同社を提訴したのです(文献2)。

ファイザー社のワクチンが有効率95パーセントを誇っていることは広く知られているところですが、同長官の主張は「有効率は95パーセントではなく、0.85パーセントでしかない」というものでした。この点は、すでに2021年10月9日付の当ホームページ(Q10(7))で指摘したとおりで、正しい主張ということになります。

主張はもうひとつあり、ファイザー社のコロナワクチンを市民が広く接種し始めたころから、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがむしろ拡大してしまった、とも述べているのです。その根拠がどのようなものかわかりません。

そこで、米国における「ワクチン接種者数の推移(青線)」と「新型コロナ感染者数の推移(赤線)」をグラフにしてみましたが、両者の関係からどのような考察が成り立つのか、ご意見をお寄せください(Our World in Dataのデータをもとに作図)。

   

その上で同長官は、「ファイザー社は、有効率について一般市民に対し間違った情報を意図的に与え、真実を語ろうとした市民の声を封じた」、「人々はウソで固めた欠陥品の接種を強制された」として、テキサス州が定める消費者保護の法律にもとづく罰金として1,000万ドル(約13億円)の支払いを求めました。

これに対してファイザー社は、「すべての年齢層で安全性が確認されており、コロナ感染症の重症化を防いできた」と早速、反論しています。

なお米国には、たとえワクチンの副作用で重大な健康被害が生じても、
故意の不正がない限り企業側の責任はいっさい問わない、という法律が以前からありました。ただし、新しいワクチンが世の中に登場した折々に、保健福祉庁が期限を定めて発令するという特殊な法律です。2020年2月、「新型コロナウイルスのワクチンと治療薬について、この法律を4年間発動する」との宣言がなされていました。

4年経った2024年、この法律がどうなるのか、企業による不正を証明することはできるのか、また日本政府がファイザー社とどのような密約を交わしたのかなど、裁判の行方を大きく左右する情報が不明のままとなっています。

【参考文献】
1) Lopez I, Covid vaccine injury suit may fuel federal overhaul, litigation. Health Law & Business, Nov 3, 2023.
2) Stempel J, Pfizer is sued by Texas over COVID vaccine claims. REUTERS, Dec 1, 2023








(2024.1.29)
Q&A 死亡統計にコロナワクチンは影響を与えたか?

「新型コロナウイルスが大流行していたころ、統計上の死亡者数があきらかに増えていた」と、結論している論文が世界的に多くなっています(文献1,2)。このテーマについて、最新情報を交え改めて検証してみました。

次のグラフは、過去18年間の日本人の
死亡者総数を厚生労働省のデータからまとめたものです(文献3)。グラフには、75歳以上人口の推移も点線で表示し、単位を右端の目盛りに付記してあります(文献4)。



棒グラフで示した死亡者数は、右肩上がりに増加してきたことがわかります。新型コロナ感染症が世界中に広がったのが2020年、コロナワクチンをほとんどの人が接種したのが2021年でした。2023年以降のデータはまだ公表されていません。

右端の2022年は、死亡者数が少し増えているように見えます。理由として思いつくのは、「新型コロナ感染症で亡くなった人が多かったから」、あるいは「コロナワクチンの副作用で亡くなった人が多かったから」ということではないでしょうか。

しかし、このような人口動態のグラフを解釈する際には、気をつけるべき点が2つあります。

まず第1に、人口動態の変化には、さまざまな要因が複雑に絡んでいることです。棒グラフで示した死亡者数の変化は、点線で示した75歳以上人口とほぼ比例していますので、高齢者が増えてきたことによる、単なる自然増かもしれません。次のグラフは、年齢ごとの死亡率を表わしたものですが、確かに死亡者のほとんどが75歳、あるいはそれ以上の世代となっています。

   

第2に考えるべきことは、死亡者数の推移には不規則な凹凸があり、理由もはっきりしないことです。例外は、2011年に死亡者数が少し増えていた点です。この年は東日本大震災があり、行方不明者と震災関連死を含めて22,294人の死亡者が確認されたと発表されていました。

2022年も、死亡者数が増えているように見えます。厚生労働省が発表している死亡診断書の分析によれば、病名欄のどこかに「新型コロナ感染症」との記入があった事例が計60,820人でした(文献5)。

この2つの年における「特別な出来事による死亡者数」を、それぞれオレンジ色に変えたのが次のグラフです。どちらも実測データが残されていたために言えることであり、それ以外の隠れた要因をこのグラフの変化から読み取るのはきわめて困難です。

   

とくにコロナワクチン接種が原因で死亡した人がどれくらいなのか、真実をあきらかにする必要があります。しかし厚生労働省の発表によれば、2023年9月現在で「新型コロナワクチン健康被害補償認定」を受けたのは269件に過ぎません。国民の8割以上がコロナワクチンを打ったいま、新型コロナ感染症が原因なのか、あるいはワクチン接種が原因だったのか、判別の難しさも背景にあります。

さらに、コロナ禍にあって、
死亡者数の増減には以下のような要因も影響を与えていたと分析されていて、事態はいっそう複雑なのです(文献1)。

 ・ 医療機関がコロナ感染者の対応に追われ、一般診療が十分に行われなかった
 ・ 感染を恐れて、受診を控えた人が多かった
 ・ 過剰なPCR検査により脳卒中、がん、心臓病など真の病名がコロナ死にされた
 ・ マスク着用などの対策が徹底され、インフルエンザなどによる死亡が減少した
 ・ 人々の行動が制限され、結果的に大気汚染などが一時的に改善した

本テーマは、当ホームページのQ0「超過死亡という言葉にご注意!」でも取り上げました。その折、正しい解釈には高度な統計処理が必要である点について述べた上で、「死亡統計だけから軽々しく結論を出すのは控えるべき」とのまとめを行いました。この記事に対しては、今日にいたるまで、さまざまなご意見が寄せられています。

このような死亡統計からワクチンの被害をあきらかにしたいとの願いは、やはり叶えるのが難しいようです。

【参考文献】
1) Paglino E, et al., Monthly excess mortality across countires in the United States during the COVID-19 pandemic, March 2020 to February 2022. Sci Adv, Jun 23, 2023.
2) Lewnard JA, et al., Attributed causes of excess mortality during the COVID-19 pandemic in a south Indian city. Nat Commun, Jun 15, 2023.
3) 『e-Stat 統計で見る日本』, 政府統計の総合窓口, 2024年1月アクセス.
4) 『性・年齢階級別にみた死亡数・死亡率(人口10万人対)の年次推移』, 厚生労働省, 2024年1月アクセス.
5) 『人口動態統計における死因別死亡数との比較』, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001196409.pdf, 2024年1月アクセス.








(2024.1.22)
Q&A 世界を牛耳る医学専門誌の横暴?

当ホームページが参考文献としてきた論文の多くは、臨床医学の3大専門誌と称される「ニュー・イングランド・オブ・ジャーナル」、「米国医師会誌(JAMA)」、それに「ランセット」に掲載されたものでした。医師や研究者が注目する論文が多く掲載されている専門誌です。

人目を引く論文が多いかどうかは、評価指標のひとつである
インパクトファクターを見ればわかります。もし掲載された論文が有益なものであれば、その後の研究にも影響を与え、結果的にほかの専門誌に掲載された論文で引用される頻度も高まるはずです。このように引用回数の多い論文をたくさん掲載した専門誌ほど、大きな値となるよう工夫した数値がインパクト・ファクターです。

さて今回は、そんな有名専門誌に掲載された論文のひとつを取り上げて、コロナワクチンの関連情報が
いかに歪められてきたかを検証します。

3大専門誌のひとつ、JAMAに掲載された『ワクチン施策は危険な転換点に向かっているか?』は、内容がワクチン礼賛に終始した論文です(文献1)。コロナ禍が始まって以来、医学専門誌に掲載されてきた数々の論文を代表するような内容となっていますので、検証の対象として取り上げることにします。以下、これを著者の名から「マークス論文」と呼びます。

論文の冒頭、「ワクチン接種は公衆衛生上、もっとも有用な施策であり・・・」との記述が、まずありました。コロナ関係の論文は、内容はどうあれ、このような文章をどこかに入れておかないと、審査で門前払いとなってしまうのです。

そのあと、「接種を拒否する人が増えており、集団免疫が低下している。このままでは、多くの命が再び失われることになるだろう」などの記述が延々と続き、最後に「これまでワクチンのお陰で千万人単位の命が救われてきたことを示す確かな証拠がある。SNS上の間違った情報に振り回されないことが大切」との言葉で締めくくられています。

論文の記載が正しいかどうかを判断する方法のひとつは、引用されている文献と、さらにその文献が引用している文献を調べ、それらのすべてが正当なものかどうかを確認することです。

マークス論文で、ワクチンの有効性を示す文献として引用されていたのは、コンピュータ・シミュレーションの結果を報じたものでした。次の図は、その引用文献に提示されていたグラフのイメージを、私が手書きで再現したものです。

「もしワクチンがなかったとしたら」との架空の条件で予測計算を行っているようなのですが、学術論文ではなく、正体不明のサイトに掲載された感想文のようなものでしかなく、どのような計算を行ったのかは不明でした。2023年12月4日付の当ホームページで
コンピュータ・シミュレーションの危うさを解説しましたが、そのレベルの話と考えてよさそうです。



この引用文献が、さらに引用したデータの出処は、当ホームページでも参照してきたOur World in Dataというサイトでした(文献3)。そこには、上のグラフの元となった思われるデータの一部が確かに掲載されています。

このサイトは、英国オックスフォード大学の支援で運営されており、医療に限らず、教育や農業から戦争にいたるまで、客観的な数値データが掲載されているはずでした。しかし引用されていたデータは、「ワクチンを接種しない人は、接種した人に比べあきらかに死亡率が高い」と、あたかも読者を洗脳するかのような説明になっていました。しかし、
うしろ向き調査でえられた数値でしかなく、結論が当てにならないのは、すでに繰り返し述べてきたとおりです。

この記事を書き終えたころ、3大専門誌のもうひとつ「ランセット」に、何から何までそっくりな論文『ワクチン接種とコロナ重症化・死亡との関係』が掲載されました(文献4)。

世界中の医師や研究者たちが注目している専門誌が、いまだこのような状況ですから、コロナワクチンの問題点を追及していくのは、なかなか大変です。

【参考文献】
1) Marks P, et al., Is vaccination approaching a dangerous tipping point? JAMA, Jan 5, 2024.
2) Fitzpatrick MC, et al., Two years of U.S. COVID-19 vaccines have prevented millions of hospitalizations and deasths. Commonwealth Fund, Dec 13, 2022.
3) Mathieu E, et al., How do death rates from COVID-19 differ between people who are vaccinated and those who are not? OurWorldInData.org, 2021.
4) Gulliford MC, et al., Access to COVID-19 vaccination and COVID-19-related hospital admissions and mortality. Lancet, Jan 15, 2024.








(2024.1.15)
Q&A 長引くワクチン副作用の正体がわかってきた?

「コロナワクチンの副作用による症状が、かなり長引くことがある」との見解が科学専門誌『サイエンス』に掲載された論文で示されました(文献1)。コロナ後遺症は英語でLong Covidと称されますが、これに倣ってLong Vaxと呼ぶ専門家もいる、ということです。Vaxはワクチンの略称です。

このような論文が一流の専門誌に掲載されるのは初めてのことですから、関連情報を探ってみました。

米国のある専門家は、「これまで医師たちは、ワクチン接種後に何らかの症状や病気の発症を認めたとしても、患者が1,2人しかいなかったため「単なる偶然」と考えてきた。しかし患者数が10人、20人と増えるにつれ、そうも言っていられなくなってきている。火のないところに煙は立たない」と同誌のインタビューに答えています。

同論文によれば、Long Vaxの特徴は、症状が接種後数日から数週間経って現れること、
細い神経線維が炎症を起こしているため、ズキズキとした疼き、刺されるような痛み、焼けるような感覚などがあることです。また、血圧上昇、倦怠感、頭がもやもやするなどの症状を伴うことが多く、ときには立ち上がったときに脈拍数が急増する体位性頻拍症候群が認められます。

副作用のメカニズムについては、新たな理論もあります。ワクチンによって体内で過剰に作られた抗体が、異物とみなされ、抗体の抗体ができてしまうという新説です。一種の自己免疫反応と言えますが、これが細胞表面にあるACE2という名の酵素と結合して、結果的に血圧や脈拍変動を悪化させるのではないかというのです。その結果、生じる症状が体位性頻拍症候群であり、高血圧です。

ちなみにACE2はさまざまな細胞の表面にあり、血圧上昇を抑えたり、炎症を鎮める重要な役割を担っていますが、新型コロナウイルスのスパイク蛋白(トゲトゲ蛋白)が体内で最初に結合する部位として有名になりました(文献2)。そして前述した「細い神経線維」の表面には、このACE2が多数存在していることもわかってきました。

このように副作用のメカニズムにも新たな視点が加わり、治療法も一歩前進するのではないかとの期待が高まっています。ただし一連の症状は、すでに当ホームページでも報告してきた「ワクチン後遺症」にもよく似ています。その区別は、どうすればよいのでしょうか?

まず新型コロナウイルスの構造についておさらいです。ウイルスの本体であるRNAは、4種類の蛋白質に囲まれています。以下の図は、その概要です。

     
ポイントとなるのは
N蛋白です。RNAを畳み込んで遺伝子を保護するという役割の蛋白質ですが、mRNAワクチンの接種によって体内で作られることはありません。

幸い、
S蛋白とN蛋白に対する抗体が人工的に作られていて、ネットでも購入できるようになっています。この2つが手に入れば、2023年9月18日付の当ホームページ記事で示した原理により、2種類の蛋白が体内に存在するかどうかを検査することができます。

検査の結果、もし両方ともプラスであれば、過去、新型コロナウイルスに感染していたことになり、またS蛋白だけがプラスで、N蛋白がマイナスであれば、感染はなくワクチン接種後であることの証明になる、というわけです。

ただし国内では、すでに8割を超える人がコロナワクチンを1回以上接種していて、しかも無症状で気づかなかった人も含めると非常に多くの人が新型コロナウイルスに感染してしまっています。そのため、「ワクチンの副作用」と「感染の後遺症」の違いを研究しようとしても、適切な該当者を探し出すのが困難になっているという問題もあります。

それにもめげず、ワクチンの副作用と感染の後遺症のいずれかと診断された500人を集め、いくつかの治療法を試みるという臨床試験が始まっています(文献1)。その成果は、発表がありしだい当ホームページで報告の予定です。

【参考文献】
1) Vogel G, et al., Rare link between coronavirus vaccines and long Covid-like illness starts to gain acceptance. Science, Jul 3, 2023.
2) Sriram K, et al., What is the ACE2 receptor? ASBMB Today, May 16, 2020.

【付 録】
 北海道放送報道部 道警ヤジ排除問題取材班 著 『ヤジと民主主義』(ころから社、2022年)は、「おかしいことはおかしいと言う」というジャーナリズム精神が全編を貫く啓もう書で、コロナワクチン問題にも共通する背景が感じられます。同書には、重要証言者が2021年12月、間質性肺炎で亡くなったという、気になる記述もありました。この時期は、ほとんどの国民が1回目か2回目のコロナワクチン接種を受け終わったころであり、間質性肺炎という病気も代表的な副作用のひとつだからです。








(2024.1.8)
Q&A コロナワクチン健康被害訴訟では何が争われるのか?

2つの国家賠償請求訴訟について、前々回と前回の記事で概要を報告しました。すでに原告の訴えを全否定する国側の姿勢もあきらかとなっていて前途多難です。その背景も踏まえて、コロナワクチン裁判では何が争われるのか、何で争うべきなのかを改めて考えてみることにします。

これまで当ホームページでは、皮膚、心臓、腎臓、肺、血管などの組織に対する
免疫組織染色(2023年9月18日の当ホームページ記事参照)が、ワクチンとの因果関係を示す決定的な証拠になるはずと、繰り返し述べてきました。しかし、そのためには生検や病理解剖などが行われて、組織の一部が保存されている必要がありますが、この条件を満たす事例はほとんどないことがわかってきました。

では、接種した腕の側の半身に症状が認められた場合、因果関係を示す論拠となるでしょうか? 国家賠償請求の訴状のひとつには、接種したと同じ左半身にさまざまな症状が現れたと記されていました。これに対し、ワクチン接種会場を運営した地方自治体(市)は、裁判所に提出した答弁書の中で、「接種したのが左右どちらの腕か不明である」とあえて記しています。市側は何を言いたかったのでしょうか。

そこで、
ワクチンを接種した側に副作用が起きやすいのかどうかを検証してみることにします。たとえばベル麻痺の症状は、ワクチンの副作用としても広く認識されていて、左右いずれかの顔面に生じるものですが、接種した腕と同じ側に多いかどうかは報告データがなく、残念ながら不明です。昔から左側に多いことも知られていましたので、たとえ左腕に接種したあと同側の顔面にベル麻痺が生じても、ワクチンのせいとは言えないことになります。

帯状疱疹も、その外見から左右差があきらかな病気であり、接種後の副作用のひとつであることも知られています。世界の統計によれば、右利きの人が約9割だそうですから、利き腕と反対の左側に接種している人が多いはずですが、ワクチン接種後の帯状疱疹をまとめた論文によれば、左側と右側の発生数はほぼ同じでした(文献1)。

つまり、接種した側にベル麻痺や帯状疱疹、あるいは眼症状などを認めたことをもってワクチンの副作用であるとする主張は、被告側(国など)の証人からみれば、簡単に反論ができてしまいそうです。

では今後、裁判を有利に進めるための絶対条件は何なのでしょうか?

残された論点のひとつは、新型コロナワクチンを評価した数々の
学術論文に認められた分析法の誤りとデータの不正操作です。この点にこそ、国家を相手とする裁判の意義があるのではないでしょうか。

国も専門家も、後ろ向き調査、とくに「テスト・ネガティブ分析の結果」を正しいものと信じて疑いません。この分析法は、コロナの検査を受けて「陽性になった人たち」と「陰性だった人たち」の接種歴を比べるという単純なものですが、著しく信頼性を欠くことは2023年9月4日の当ホームページで指摘したとおりです。

そして、この誤解こそが、ワクチンを信奉する「世論」を形作っています。当ホームページあてに届いたお便りの中に、「チャットGPTにワクチンの意義を聞いてみた」という興味深いものがありました。以下は、2023年3月6日の当ホームページでも紹介したAIの回答ですが、そんな世論をまさに反映したものとなっています。



当然、裁判官もこんな世論につられて、判決を下してしまうに違いありません。

論文データの不正や後ろ向きの欠陥を世に問うために必要な知識は、難しい数学の問題でなければ、医学の問題でもありません。よく考えれば誰にでもわかるはずの、この簡単な話を、人々の感性にどう訴え、誤りを正していくのか、という知恵くらべになるのではないでしょうか。

加えて、
ワクチンを接種した人たちほど感染しやすかったという厳然たる事実があることも、争点として忘れることはできません(文献2,3)。

【参考文献】
1) Desai HD, et al., Can SARS-CoV-2 vaccine increase the risk of reactivation of varicella zoster? a systematic review. J Cosmet Dermatol 20: 3350-3361, 2021.
2) Subramanian SV, et al., Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States. Eur J Epidemiol, Sep 30, 2021.
3) COVID-19 & Winter Statistical Report. Public Health Scotland, Feb 16, 2022.








(2024.1.1)
Q&A コロナワクチン国家賠償請求訴訟 第二報?

今回は、2つ目の訴訟について、担当弁護士事務所の許諾をえて概要をまとめました。コロナワクチン接種後、副作用による重い健康被害に遭った女性Y(41歳)とその夫が、国と製薬企業、それに接種を担った地方自治体(市)を訴えたという事例です(文献1)。


経 過

原告の女性Yは、不整脈などを指摘されたこともあり、直前まで打つかどうか迷っていました。しかし接種会場で、問診担当の医師から心臓に異常があるなら、むしろ打った方がよいと告げられました。すると、これを横で聞いていた誘導係の女性からも、「打ったほうがいいわよ」と言われ、逃げられなくなったと感じたそうです。結局、その日、ファイザー社製ワクチンの接種を
左腕に受けました。

接種して間もなく、体中に麻酔薬が流れるような感覚に襲われ、呼吸が苦しくなり倒れ込みました。血圧も低下してきましたが、医師の判断で救急車を呼ぶことはありませんでした。しばらく横になっていると、会場が閉まるからと帰宅を促されました。帰り際、医師から「申し訳ありませんでした」との言葉が女性Yにかけられた、とのことです。

帰路、あまりに症状が辛く、県の担当窓口に問い合わせたところ、すぐに救急車を呼ぶようにとの指示がありました。そのまま接種会場に戻り、救急外来に搬送となりました。診察の結果は、ワクチン接種後の副作用の疑いがあるというものでした。

接種2日目、発熱、動悸、息切れなどが続き、
左側の上半身のしびれなども出てきたため、再び救急病院を受診。そこでも、ワクチン副作用の疑いと診断されています。

その後の2ヵ月間、
左眼の充血、左半身の痛み、さらに強い頭痛、しびれ、動悸、歩行障害、めまいなどが続き、寝たきりを余儀なくされるほどだったとのことです。接種76日目に心臓の専門科を受診した際には、「検査データに異常はないが、ワクチン副作用の可能性があり、心膜や心筋に炎症があってもおかしくない」と言われています。

動悸や息切れの症状は、その後も続き、キッチンに30分以上立っていられず、ゆるい坂道を少し歩いただけで苦しくなるほどでした。さらに
左顔面のまぶたや唇が垂れ下がるなどの症状(ベル麻痺の症状;筆者注)も加わっていました。

    

提 訴

女性Yは予防接種健康被害の救済申請を行いましたが、認定されるまでに2年近くもかかり、しかも申請書に記載した初期の頃の症状に限り医療費が支払われ、その後に現れた麻痺などは対象外であることもわかりました

思い余った女性Yは、弁護士に相談し、国とファイザー株式会社、それに集団接種会場を設けた市に対して、総額6千万円を超える賠償を求める裁判を起こすことにしました。この人の願いは、「ワクチンを打つ前の元気だった体を返してほしい」というものです。

訴状には、1例目とほぼ同じ主張が、盛り込まれました。つまり国に対しては、本ワクチンの安全性が証明されていないにもかかわらず、特例承認がなされたこと、ワクチン接種を勧めてきた政府、専門委員などが説明責任を果たしてこなかったこと、スパイク蛋白や脂質微粒子が自己免疫力を低下させ帯状疱疹などを増加させていること、ワクチンには感染予防効果も重症化予防効果も証明されていないこと、などです。

ファイザー社に対しては、国との免責契約が無効であり、同社の責任は免れないとの主張が明記されました。またワクチン接種を担当した市に対して、以下のような重大な過失があったと主張しています。

 ・具合が悪くなったあと、会場で横にさせただけで、何の処置もせず帰宅させた
 ・救急搬送を要する状態であったにもかかわらず、行わなかった
 ・有害事象が発生した際に講ずる医療的処置の体制を、事前に確立していなかった

原告の弁護士が提出した訴状に対し、国は14人もの代理人の名を連ね、「検討中」と記した書類を裁判所に提出。ファイザー社は、「当社が義務を負うという主張については争う」と言明しました。また接種会場を設けた市側は、接種したのが
左右どちらの腕か不明であること、現場の医師らは専門的知識に基づいて適切に対応したこと、などを記した反論(答弁書)を裁判所に提出しました。

この訴訟については、原告と担当弁護士が記者会見を行い、その模様が2023年9月20日、NHK大相撲中継の途中、全国ニュースの時間帯に報じられました。NHKがワクチン被害による訴訟を全国ニュースで取り上げたのは、これが初めてでした。

(本記事は2023年9月25日に掲載した内容の詳報です)

【参考文献】
1) 『ワクチン薬害救済基金 特設サイト』, 木原功仁哉法律事務所,  https://kiharalaw.jp/vaccine-drug-relief-fund/









(2023.12.25)
Q&A コロナワクチン国家賠償請求訴訟 始まる?

コロナワクチン接種のあと重い健康障害が残り、あるいは死亡したことについて、国と製薬企業を相手に裁判を起こした、という事例が2件あります。今週から数回にわたり、その概要をお伝えします。以下は、訴訟を担当する弁護士事務所の許可を得て、すでに公表されている情報をまとめたものです(文献1)。

まず今回は、九州の裁判所に提出された訴状についてです。訴えたのは、ファイザー社製の新型コロナワクチンを接種し、22日後に死亡した男性A(享年56歳)の親族Bでした。

男性Aには、いくつかの既往症がありましたが、医師からは問題なしと判定され、第1回目の接種が行われました。その後の3日間、体調不良と高熱が続きクリニックを受診。呼吸も苦しい状態でしたが、自宅で様子をみるよう勧められました。接種9日目、再度受診し、コロナの抗原検査が陽性であることを告げられました。

その折、症状が重かったことから、保健所の介入で入院となりました。入院3日後(接種12日目)、エクモ治療(人工肺のこと)が必要と判断され、転院。転院10日後(接種22日目)に死亡した、と記録されています。

しかし親族Bには、2つの病院からも、また行政からも連絡がなく、病理解剖もなされず、親族の同意なく火葬が行われました。

死亡してから11日が経った日、自宅の賃貸人の関係者を通じて、男性Aの実父に死亡の事実が初めて伝えられました。実父は入院中であったため、親族Bが役所に問合せたところ、死亡の事実が伝えれ、遺骨を取りに来るようにと言われました。役所に出向いたところ、死亡についての簡単な説明と火葬料の請求話などが淡々と続くだけで、Bは腹立ちを覚えたと記してます。

死亡の真相をどうしても知りたいと考えたBは、改めて市役所の窓口を訪れましたが、「ワクチンの種類や接種場所は個人情報なので答えられない。あれこれ詮索すると今後、あなたにとって不都合なことになりますよ」と言われたとのこと。

訴状は、国とファイザー株式会社、および接種に関わった市町村を被告とする形で提出されました。その要旨は以下のようなものとなっています。

 ・未知のワクチンでありながら安全性の検証がまったくなされないまま、自画自賛
  によって拙速に特例承認がなされたこと
 ・ワクチン接種を積極的に推進してきた内閣総理大臣、厚生労働大臣、コロナ特命
  担当大臣、ワクチン接種推進担当大臣など政府要職にあった人々、また感染症
  対策分科会長などが説明責任を果たしてこなかったこと
 ・ワクチンによって作られたスパイク蛋白が血管内皮細胞に損傷を与えている知見
  が無視されていること
 ・本ワクチンによって作られた抗体だけでは感染予防効果がなく、重症化予防効果
  もないことがデータで示されている
 ・専門知識のない接種担当医師が、重大な有害事象を問診で予防できるはずがない
  こと

          

この訴えに対して、国側から「請求を棄却するように」との主旨の反論(答弁書)が裁判所に提出されました。そこには次のような記述がなされていました。

 ・このワクチンは臨床試験により有効性・安全性が確認され審議会の議論をへて
  承認されたものである
 ・臨床試験で確認された有効性は、感染そのものを防ぐ予防効果や症状が出ても
  重症にならないようにする重症化予防効果ではなく、発症予防効果に基づいて
  確認されている(意味不明―この文のみ原文のまま)
 ・特例承認などの違法性、またはワクチン接種と死亡との訴訟法上の因果関係に
  ついて、立証責任が国側にあると主張するのであれば、今後の裁判で争う
 ・本人は接種9日目に新型コロナウイルスに感染していた

なお、2つめはわかりにくい文章ですが、ファイザー社が行った唯一のランダム化比較試験の論文データを指していると思われます。

以上が1つめの訴訟にいたる経緯を簡単にまとめたものですが、実際には膨大な内容の書類が交わされています。2023年12月25日現在、まだ書類のやり取りがなされているだけで、それ以上の進展はないようです。次回は、2つめの訴訟について報告の予定です。

【参考文献】
1) 『ワクチン薬害救済基金 特設サイト』, 木原功仁哉法律事務所,
   https://kiharalaw.jp/vaccine-drug-relief-fund/









(2023.12.18)
Q 流行の後遺症治療法にご注意?

A 
「ワクチンの副作用」や「コロナの後遺症」で辛い思いをしている人たちにとって、最後の頼みが漢方、あるいは民間療法となっています。しかし、問題もいろいろありそうです。

幹細胞治療

未認可の医療として行われているもののひとつに、
幹細胞治療とエクソソーム治療があります。幹細胞は、自分自身の脂肪組織や骨髄から、あるいは赤ちゃんの臍帯血から抽出したもので、さまざまな細胞に成長していく能力を有したものです。病気で傷んだ組織を修復してくれる作用が期待されているのですが、いまのところワクチンの副作用に対しても、またコロナの後遺症に対しても正式な研究発表はありません。

エクソソームについては、当ホームページのQ18(第一回)で、アニメで説明したとおりです。簡単に言えば、どの細胞からも放出される「破片のような微粒子」で、サイトカイン(ホルモン様物質)や遺伝子断片を含んでいるものもあります。新型コロナ感染症など、さまざまな病気の治療に実験的に使われていますが、やはり確かなデータはありません(文献1)。

米国やメキシコを中心に、この2種類の治療法をビジネスとして展開する企業が一時期、1,500社を超えていたとのこと。最初のころはコロナの感染を予防できることをうたい、そのうちに同じ製品でありながら、眼病や原因不明の痛みに有効など、宣伝文句が変わっていき、一旦倒産した会社が社名を替えて再登場するなど、無軌道なビジネスが横行している、と訴えている研究者もいます(文献2)。

最大の問題は、製造方法がずさんで細菌などが混入している製品があることです。そのため感染症を起こしたり、副作用で失明した人がいるとも報じられています(文献3)。未承認の製品であることから、医師側に副作用の報告義務もなく、実際の健康被害は甚大な数に昇っているのではないかとの意見もあります。

このような発想に基づいた製品は、ほかにもいろいろあります。たとえば
プラセンタ(胎盤)から抽出した成分を筋肉に注射するという方法が日本でも行われています。当然、自分の体から出たものではありませんから、リスクも高い可能性があります。


漢方薬

次に
漢方についてです。中国の伝統医療(中医)を参考に、日本で独自に発展してきた医療が漢方です。西洋医学とは異なり、症状や病気の一つ一つに処方されるわけではなく、体の状態を「陰証・陽証」や「虚・実」、「気・血・水」、「六経分類」などの物差しで判定し、漢方処方が選ばれます。したがって、漢方に対する深い知識と技量が求められるのですが、病院で安易に処方されてしまう風潮もあるようです。
         

漢方薬を処方した患者さんからは、「お陰様でなんとなく良くなってきました」という言葉が返ってくることがあります。しかし個人の感想ではなく、やはり重視すべきは統計学的根拠(エビデンス)があるかどうかです。以下、ワクチンの副作用とコロナの後遺症に限定し、漢方の効果について検証します。

問題は、漢方薬に関して大規模なランダム化比較試験がほとんど行われてこなかったことです。何故なら、漢方薬には以下のような宿命的な難しさがあるからです。

1 複雑な色と味を有する漢方薬では、味も見た目もそっくりなプラセボが作れない
2 体の調子をはかる物差しが複雑で客観性に乏しいため、厳密な統計処理が難しい
3 種類が多く、組合せが膨大となるため、個々の処方に対する大規模調査ができない
4 理論的根拠が乏しいため、臨床試験の結果を解釈するのが難しい

4番目の問題点については、こんなデータもあります。鍼治療のいわゆるツボは150箇所以上あるとされていますが、米国のある調査団が本場中国の代表的な鍼専門院2ヵ所で聞き取りを行ったところ、同じ目的でもツボの選び方が施術者によって大きく異なることがわかったそうです(文献6)。つまり鍼治療や漢方薬のように経験則に基づく医療は、客観性に乏しいということなのです。

そんな困難にもめげず、漢方薬を「普通の風邪薬」と比べたランダム化比較試験がいくつか行われています。しかし結果は、症状を改善する効果において、両者に差がなかったというものでした(文献4,5)。

漢方は、人々の不安を解消する医療として広く認められている存在ですが、効果と副作用が正しく評価されているかという観点では、まだ課題がたくさん残されていることになります。

今後、自然の回復力を妨げない確かな治療法の研究発表があれば、当ホームページで順次、取り上げていくつもりです。一方、「コロイダルシルバー(銀をんだスプレー)」、「オゾン療法(血液クレンジング)」、「エッセンシャルオイル(精油)」、「ハーブ茶」など不確かな民間療法が続々登場してきていますので(文献2)、くれぐれもご注意を。

【参考文献】
1) Rezabakhsh A, et al., Application of exosomes for the alleviation of COVID-19-related pathologies. Cell Biochem Funct, May 19, 2022.
2) Turner L, et al., Businesses marketing purported stem cell treatments and exoxome therapies for COVID-19: an analysis of direct-to-consumer online advertising clams. Stem Cell Rep, Nov 14, 2023.
3) Eastman Q, Study shows business selling unapproved stem cell treatments have turned to long COVID. JAMA, Nov 29, 2023.
4) Okabayashi S, et al., Non-superiority of Kakkonto, a Japanaese herbal midicine, to a representative multiple cold medicine with respect to anti-aggravation effects on the common cold: a radomized contrlled trial. Intern Med, 53: 949-956, 2014.
5) Takayama S, et al., Multicenter, randomiozed controlled trial of traditional Japanese medicine, kakkonto with shosaikotokakikyosekko, for mild and moderate coronavirus disease patients. Front Pharmacol, Nov 9, 2022.
6) Napadow V, et al., A systematic study of a acupucutre practice: acupoint usage in an outpatient setting in Beijing, China. Complement Ther Med, Dec 2004.








(2023.12.11)
Q ワクチン副作用の実情とは?

A 
副作用で長期にわたり苦しんでいる人が少なくありません。そんな実情の一端をご紹介します。

ある女性の場合

関西在住のAさん(42歳)は、突然、激しいめまいに襲われました。実は3週間ほど前、一大決心をして新型コロナワクチンの1回目接種を受け、何ごともなくホッとしていたところだったのです。すぐに病院へ行き、さまざまな心臓の検査を受けましたが、どれも異常はありません。次に神経内科のある病院を探し、脳のMRI検査などをしてもらいました。しかし、やはり異常は見つかりませんでした。

どの病院でも、医師からは「何も問題がないので、2目のワクチン接種を必ず受けるように」と言われたそうです。しかし、あまりの辛さに2回目の接種は受けないことに決めました。今度は耳鼻科を受診しましたが、同じことが繰り返されるばかりでした。この間、9種類の薬が処方されています。

しばらくしたある日、皮膚がかゆいことに気づきました。胸にポツポツと赤い斑点があります。Aさんは、もしかしてワクチンの影響ではないのかと、考えるようになりました。皮膚科では白癬菌や疥癬の検査がありましたが、どれも陰性だったため、塗り薬が処方されただけでした。しかし、めまいとかゆみはしだいに悪化。やがて両足に力が入らず、歩くことも辛くなってきました。

最後の頼みは大学病院です。紹介を書いてもらいましたが、場所は県外でした。自力で移動することができないため、高額の料金を支払ってタクシーで行くしかありませんでした。

大学病院の診察室に入ると、いきなり医師から「ワクチンの副作用は接種してから2、3日以内に起こるもの。どこも悪くないから、これで診察は終わり」と高圧的に告げられたのです。この先どうすればいいのかわからなくなり、家にとじこもるばかりの日々を過ごしています

「タイムマシンで、幸せだったあのころに戻りたい」というのがAさんの願いです。


ある男性の場合

東北地方のある都市に住むBさん(52歳)は、ワクチン接種を受けた1か月後、足首が脹れていることに気づきました。整形外科でレントゲンを撮ってもらったところ、変形性関節症との診断でした。

しばらくすると、太ももが痛く、足を挙げようとすると違和感を覚えるようになりました。病院で受けたMRIなどのなどの検査は、すべて異常なしでした。しかし、症状はしだいに悪化し、エスカレータを踏み外したりするようになり、横になって過ごす日が多くなっていきました。

ネットでいろいろ調べているうち、「ワクチン副作用外来」と表示したクリニックが郊外にあることがわかりました。早速、受診しましたが、毎日のように点滴が行われ、漢方などの薬も次々に処方されました。いくら通っても効果がなく、むしろ症状は悪化していることを伝えたところ、医師の態度が急変。「もう当院で診れないから」と告げられたのです。結局、5つ以上の医療機関を受診しましたが、何も解決しませんでした。

ある日、Bさんは予防接種健康被害救済制度なるものがあることを知りました。しかし市役所の窓口では、膨大な書類や証明書が必要であることと、手続きに1年から1年半以上かかることが告げられました。

 

そのころには、歩けないばかりか、体を起こすこともままならず、書類を記入することさえ難しくなっていました。職を失い、貯金も底をつきそうになっています。ワクチン被害の相談窓口を探し出し、手当たりしだ電話をかけましたが、どこも話を聞いて終わってしまうだけでした。

Bさんは、「命の危険を感じている。誰か助けて!」と訴えています。

(以上は、当ホームページに寄せられた多数のお便りを編集したものです。特定の人を指してはいませんが、個々のエピソードはお便りのままとお考え下さい)


まとめ

「自分の周りにワクチンで不幸になった人はいない。みんな騒ぎ過ぎでは!」というコメントがSNSに掲載されていました。しかし、ここで紹介したような実情があるのも、また確かです。残念ながら、ワクチンの副作用を証明する方法も、また否定する方法もまだありません。未知の困難に対処する人々の知恵と思いやりが、いま問われています。








(2023.12.4)
Q 『ワクチンで死者が9割減っていた』との報道は本当か?

A 
「もし全員がワクチンを受けていたら」、あるいは「もし接種が2週間早く始まっていたら」と仮定すると、新型コロナの感染者や死者が格段に減っていたはず、と結論する論文が発表され、多くの新聞が表題に記したような記事を掲載しました。

同じテーマを扱った論文は他にも複数あり、どれもコンピュータ・シミュレーションによるものでした(文献1~5)。「死者が大幅に減っていたはず」との主張が正しいのか、検証してみました。

まずコンピュータ・シミュレーションがどのようなものか、復習です。

次の図は、私が作った数式をコンピュータにインプットし、計算結果をグラフにしたものです(以前の当ホームページでも紹介)。目的は、もし海外からの感染者が増えると仮定すると、国内で爆発的な流行が起こることを示すためでした。海外からの感染者が1日1人のとき、実測値(棒グラフ)と計算で求めた値(点線)がうまく一致しています。以下、順に5人、10人、・・・と仮定した場合の結果です。このような実験が「コンピュータ・シミュレーション」と呼ばれるものです。
  
さて、全国紙にも取り上げられた最新の研究論文の結論は、以下のようなものでした(文献5)。

 ・もしワクチンがなかったと仮定すると、死者は364,000人になっていた。
  これは、ワクチンのお陰で死者数が97パーセント減少したことを意味する
 (NHKのホームページによれば、当時の死者数は18,354人)

シミュレーションは、2021年2月17日~同年11月30日の感染とワクチン接種状況に関するデータに基づいて行われたものでした。前者は
HER-SYS(ハーシス)、また後者はVRSという厚生労働省の登録システムから取得したものです。HER-SYSから得られる感染情報は「誰が」、「いつ」、「どんな症状」だったかなどです。VRSには年齢、性別、ワクチンの接種日と回数などが登録されています。加えて、人々の行動を示すGPSデータも組み込まれました。

シミュレーションには多くの
仮定が設定されましたが、とくに重要なのはワクチンの有効率です。有効率は「ワクチンを接種していた人」と「接種していなかった人」における死亡率の違いから求めていて、(年齢により異なり)38.0~88.6%だったとしています(文献5,6)。

この数値が正しいのかどうか検算する必要がありますが、厚生労働省のデータが非公開のため叶いません(文献7)。幸い、1編の委員会報告書からそ一端を垣間見ることができるため、以下に一部を書き出してみました(文献8より一部改変)。

   

この時期はワクチン接種が始まったばかりで「2回接種」の人数が極端に少ないため、「ワクチン未接種」と「1回接種」の人数だけを比べてみます。有効率は、一般的に

  (1-(未接種者のオッズ/接種者のオッズ))×100

と計算されます(文献9)。ところがこのデータでは、「未接種」よりも「1回接種」のオッズのほうが大きくなっています。つまり、このワクチンは有効どころか、むしろ死亡リスクを高めてしまうというデータになっているのです。

対象期間が、論文のそれと少し異なるため(論文では9ヵ月半、上表は同じ期間の1ヵ月分)、直接的な比較はできません。しかし、同じ日本国民でありながら対象となった人たちが異なるだけで、
有効率はまったく別ものになってしまうことがわかります。

コンピュータ・シミュレーションには、本質的に2つの限界があります。ひとつは、実際に観測されたデータ(感染者数の実測値など)を模擬するだけの数式は、いくらでも作れるため、それが真実を表わしているかどうかの保証がないことです。

もうひとつの限界は、「仮定」をいろいろ設定しなければならず、それ次第で結果が大きく変わってしまうことです。

たとえば「有効率」は、「ワクチン接種をたまたま受けた人たち」と「受けなかった人たち」の死亡率から仮定したものでした。その元データは「後ろ向き調査」で得られたものであり、真実を表わしていないことは当ホームページ(2023.9.4付)でも繰り返し述べたとおりです。

コンピュータ・シミュレーションで得られた結論は、正しいことの証明も、また間違っていることの証明もできません。新聞に掲載された記事は、重大な誤解を招いたのではないでしょうか。

【参考文献】
1) Sacco C, et al., Estimating averted COVID-19 cases, hospitalizations, intensive care unit admissions and deaths by COVID-19 vaccination, Italy, January-September 2021. Euro Surveill, Nov 25, 2021.
2) Mesle MM, et al., Estimating number of deaths directly averted in people 60 years and older as a result of COVID-19 vaccination in the WHO European Region, Dencember 2020 to Novemnber 2021. Euro Surveill, Nov 25, 2021.
3) Gavish N, et al., Population-level implications of the Israeli booster campaign to curtail COVID-19 resurgence. Sci Transl Med, Apr 12, 2022.
4) Kayano T, et al., Number of averted COVID-19 cases and deaths attributable to reduced risk in vaccinated individuals in Japan. Lancet Reg Health West Pac, Aug 11, 2022.
5) Kayano T, et al., Evaluating the COVID-19 vaccination program in Japan, 2021 using the counterfactorial reproduction number. Sci Rep, Oct 18, 2023.
6) Ko YK, et al., Age-dependent effects of COVID-19 vaccine and healcare burden on COVID-19 deaths, Tokyo, Japan. Emerg Infect Dis, Jul 12, 2022.
7) 林正洋, COVID-19 HER-SYSデータ利活用推進手法の提案及びダミーデータLOD. Linked Open DataチャレンジJapan 2022受賞作品, Nov 28, 2022.
8) 厚生労働省, 資料2-5 HER-SYSデータに基づく報告. 第47回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月11日開催).
9) Jackson M, et al., The test-negative design for estimating influenza vaccine effectiveness. Vaccine, Apr 19, 2013.








(2023.11.27)
Q 新型コロナワクチンで得た莫大な利益?

A 
コロナ禍にあって、陰で巨額のお金が動いていたであろうことは、容易に想像できるところです。メッセンジャーRNAワクチンの開発にかかわるお金の流れを、米国の研究者グループが徹底的に調べ、その結果を発表しました(文献1)。

米国政府は、ファイザー社とモデルナ社に、研究のための費用として2,530億円を以前から投資していました。加えて、コロナ禍になってから2022年3月までの約3年間、mRNAワクチンの開発、治験、製造、買い上げの費用として、総額3兆3千億円(1ドル=110円換算)を両社に支払っていたことがわかりました。この間、民間投資もあり、全体像は把握できなかったとのことです。

新型コロナの開発には、4つの先端技術の開発支援が必要だったとされていました。4つの技術とは、「脂質微粒子膜」、「mRNAの改造」、「トゲトゲ蛋白の遺伝子解析」、それに「臨床試験」です。しかし製薬企業は、これらの研究開発に、莫大な研究費を本当に必要としていたのでしょうか?

まず「脂質微粒子膜」の合成技術についてです。当ホームページのQ19(第4回)で図解したとおり、その作り方は昔から知られていたものであり、バイオの研究用キットとして市販もされていました。ノーベル賞受賞者ワイズマンとカリコ両氏の論文にも、「脂質微粒子膜は昔からあった方法に従って合成し、細胞への取り込みは市販の実験キットを用い説明書に従って行った」と書いてあります(文献2,3)。

2つめの「mRNAの改造法」もすでに完成していた技術であり、また「トゲトゲ蛋白の遺伝子配列」も、新型コロナ感染症の発生直後、完全な情報が中国から論文として発表されていました。一方、モデルナ社では、新型コロナウイルスが蔓延する数年前にmRNAワクチンを作る技術を完成させており、ワクチンの元となる物質(抗原)の遺伝子配列をコンピュータに入力すればよいだけになっていたのです。

モデルナ社のバンセルCEOは、2019年末、スイス出張中に中国武漢市がロックダウンとなったことを知り、直ちに自社の研究室に連絡しました。連絡を受けた女性技術者ハミルトン・ベネット氏は「遺伝子配列がわかったら、すぐに取りかかるわ!」と返答。中国からの論文が発表された25日後には、ワクチンの試作品が完成していたと報じられています。

mRNAワクチンの研究をすでに終えていた製薬企業にとって、残されていた仕事は大規模臨床試験と、大量生産をするための工場作りだけでした。

最終的に、新型コロナワクチン1回分の製造原価は110~330円ほどだった、というのが専門家の試算です(文献4)。一方、両社は、米国政府の買い上げに対して1回分12,100円を請求していました。

では、ファイザー社とモデル社はどれくらいの利益を得ていたのでしょうか?

米国の別の研究者は、2社のコロナワクチン売上げ総額が11兆円で、純利益も6兆円を超えていたはずだとしています(文献5)。モデルナ社のCEOはインタビューに、「ワクチンの価値を考えれば妥当な額」と答えています。

次のグラフは、コロナ禍直前の2019年における巨大製薬企業の総売上げベストテンを3年後の2022年と比べたものです。なおモデルナ社は、2022年の総売上げ額が190億ドルとなり、初めて18位にラックインしています。

   

これまで両社は、自社株の不適切な売却(文献6)、治験担当医師の利益相反(文献7)、治験データのねつ造(文献8)など、数々の問題が指摘されてきました。ワクチンの副作用で苦しむ人が世界中に大勢いる現状にあって(たとえ救われた命があったとしても)、ビジネスは自由だからと納得してしまってよい話なのでしょうか?

【参考文献】
1) Lalani HS, et al., US public investment in development of mRNA covid-19 vaccines: retrospective cohort study. BMJ 380: e073747, 2023.
2) Laczko D, et al., A single immunization with nucleoside-modified mRNA vaccines elicits strong cellular and humoral immune responses against SRAS-CoV-2 in mice. Immunity, Oct 13, 2020.
3) Maier MA, et al., Biodegradable lipids enabling rapidly eliminated lipid nanoparticles for systemic delivery of RNAi therapeutics. Mol Ther, Jun 25, 2013.
4) Light DW, et al., The cost of coronavirus vaccines and their pricing. J R Soc Med, Nov 3, 2021.
5) Roy V, Financing covid-19 mRNA vaccines. BMJ, Mar 1, 2023.
6) Pfizer CEO made $5.6 million stock sale on same day as COVID-19 vaccine update. Reiters, Nov 12, 2020.
7) Becker C, Relationships between academic medicine leaders and industry - time for another look? JAMA, Nov 10.2020.
8) Thacker PD, Covid-19: researcher blows the whistle on data integrity issues in Pfeizer's vaccine trial. BMJ, Nov 2, 2021.









(2023.11.20)
Q 新薬開発に潜む社会病理?

A 
怪しげな開発経緯をたどった新型コロナワクチンが、なぜこれほどまで専門家と称する人たちに熱狂的に迎えられてしまったのか。『アルツハイマー病研究、失敗の構造』(カール・ヘラップ著、梶山あゆみ訳、みすず書房)という本も参考に、背景をまとめてみました。

2023年9月25日、アルツハイマー病の新薬が国内で認可されました。製薬企業のホームページには、「毒性の強いアミロイドベータをブロックし、脳内から除去して認知機能の低下を遅らせる、世界で唯一の薬」と説明されています。このニュースがテレビで報じられた折、「待ち望んでいた薬です」「これで認知症の治療が大きく変わる」との専門医のコメントもいっしょに紹介されていました。

この薬のランダム化比較試験について報じた論文によれば、認知症テスト(18点満点)を用い、症状の進行が1年半でどれくらい抑えられたかが評価されました(文献1)。結果は、この薬を使った人たちのほうで、プラセボ群より、わずか0.45点だけ進行が抑えられたというものでした。この結果に対し、「効果があったと言っても、家族も気づかないほど微々たるものであり、この薬の開発は失敗だったのではないか」との批判が殺到したのです(文献2)。

アルツハイマー病は、誰もが知っている病気です。進行すると、食事をしたこともすぐ忘れ、家族の顔も分からなくなり、ときに暴力的になるなどの症状が認められるようになります。脳に「アミロイドベータ」なる物質が溜まって起きる病気だとされてきたことから、着目されたのが、この異常物質を消し去る薬を作れないか、ということでした。

アミロイドベータ原因説が広まったきっかけは、1999年に米国の研究者がネイチャー誌に発表した論文でした。ラットを使った動物実験の結果があまりに明快であったため、世界中の研究者をとりこにしてしまったのです。しかしラットと人間は、同じではありませんでした。

実際、アミロイドベータを抑える薬も続々と開発されてきたのですが、いずれもうまくいっていません(文献3)。アミロイドベータをいくら抑えても、認知症の進行を止めることはできていなかったのです。

では、なぜ世界中の研究者と製薬企業が「アミロイドベータ原因説」にこだわり続けてきたのでしょうか。

新薬を発見したり、合成したりする基礎研究は大学などの研究者が担い、有望と判断される物質が見つかれば、ベンチャー企業の手に渡り、磨きがかけられます。その成果は、製薬企業によってそっくり買い上げられ、大規模臨床試験が始まる、という図式が定着しています。新型コロナワクチンの開発も、そうでした。

問題は、その背景にあります。流行のテーマにそって研究を行っている大学には、予算執行の権限を持つ行政機関も研究費を集中的に配分するようになります。その結果、名声を博した研究者は製薬企業から注目され、顧問として迎えられます。そして彼らのアドバイスで自信を深めた製薬企業は、大枚をはたいて大規模臨床試験にのめり込んでいったのではないか、というのが冒頭に紹介した本の主張です。

この本の著者は、自身がアミロイドベータ原因説に反対する立場の研究者でもあることから、その主張を全面的に認めるわけにはいきませんが、私がこれまで調査してきた情報と符号する部分をまとめれば、以下のようになります。



さて、新型コロナワクチンの問題にも似たような構造が背景にありそうです。ご意見をぜひお寄せください。

【参考文献】
1) van Dyck CH, et al., Lecanemab in early Alzheimer's disease. N Engl J Med, Jan 5, 2023.
2) Belluck P, New federal decisions make Alzheimer's drug leqembi widely accessible. New York Times, Jul 6, 2023.
3) Rubin R, Who should-and can-get lecanemab, the new Alzheimer disease drug? JAMA, Sep 27, 2023.









(2023.11.13)
Q いまの常識、後世の非常識?

A 
ユーチューブなどの動画サイトが、コロナワクチンに反対する記事や動画を削除してきたのは、広く知られているところです。なぜ削除するのかという問いに対して動画サイトの運営会社は、「WHOが決めたことに反対する行為は認められないから」と答えています(文献1)。

この方針がさらにエスカレートしました。2023年11月5日付け朝日新聞によれば、「根拠のないがん治療の動画」もユーチューブが削除することにしたとのこと。「ニンニクやビタミンCでがんが治る」、「抗がん剤は命を縮める」など誤った動画が人々を惑わせ、治療の機会を奪っているのではないか、というのです。

がんは、フリーラジカルと呼ばれる過酸化物が発生原因のひとつになっています。そのため抗酸化物質が予防に有効なのですが、ビタミンCやニンニクに含まれるビタミンB1はその代表です(文献2)。つまり、ユーチューブが削除した情報も、あながち間違いとは言えないのです。

一方、抗がん剤にはいろいろな種類があり、昔から使われてきたのが「化学療法剤」です。臨床試験は、どれも対象者数が極端に少なく、ランダム化比較試験にもなっていないなど、信憑性に乏しいものばかりでした。「化学療法剤が命を縮める」というデータもありました。実際、分子標的薬など新しい治療法の研究が進んできたこともあり、米国などでは昔ながらの抗がん剤はほとんど使われなくなってきています(文献3)。

さて、「昔は常識だったことが今では非常識」という事例がたくさんあるものです。しかし、その判断は簡単でなく、正解にたどり着くまでに長い時間の流れが必要でした。

医学も例外でなく、長い年月をかけた学問論争を経て、正しい方向に収束していくという歴史を辿ってきました。たとえばタバコの害についての論争がそうです。タバコが肺がんの原因であることは、いまでは疑いようのない事実ですが、過去、大騒動があったのです。

紙巻きタバコが世界中に広まったのは昭和の初期。タバコ産業は、ハリウッドのスターたちに大金を渡し、映画の中でカッコよく吸って見せるよう依頼していました。大スターだったゲーリー・クーパーもそのひとりでした。

それどころか当時の米国では、タバコ産業が医師たちにお金を払い、「タバコは健康に良く、喉のイガイガを癒す効果もある」などと語らせていたのです(文献4)。米国医師会誌(略称JAMA)は、当ホームページでもときどき引用している専門誌ですが、1933年からおよそ20年間にわたり、そんなタバコ広告を堂々と載せていました。

その後、タバコについて無数の研究が行われましたが、「害がある」と結論した論文と「因果関係はない」とした論文が相半ばし、決着がつかない状態が長く続きました。

国内でも、日本たばこ産業株式会社(JT)を訴えた裁判があり、激しいバトルが繰り広げられていました(文献5)。被告JT側の証人となったある病理医は、「タバコが原因というなら動物実験などで証明してほしい」、「単に可能性ということであって、原因という意味ではない」、「確証がない以上、タバコをやめたほうがいいなどと国民に説明すべきでない」と述べていたのです。

タバコ論争が決着するまでに、実に70年余の歳月を要しました。

その他の主だった事例を次表にまとめました。

 

これらのエピソードを知るにつけ、「いまは常識でも、のちの世には非常識」となる出来事も、たくさんありそうな気がしてきます。とくに現在のコロナワクチン禍は、全人類の将来にかかわる重大事です。現代人にとって、ユーチューブ動画の削除問題も含め、「常識と思い込んでいたことの間違い」に気づくのは簡単なはずです。そうでなければ、過去の失敗から何も学ばなかったことになります。

【参考文献】
1) YouTube to remove all anti-vaccine misinformation. BBC News, Sep 29, 2021.
2) Pisoschi AM, et al., Antioxidant, anti-inflammatory and immunomodulatory roles of vitamins in COVID-19 therapy. Eur J Med Chem, Feb 4, 2022.
3) Kolata G, Cancer without chemotherapy: 'a totally different world', New York Times, Oct 4, 2021.
4) Bayratar M, More doctors smoke Camels than any other cigarette! TRT World, 2023.
5) Iida K, et al., Learning from Philip Morris: Japan Tobacco's strategies regarding evidence of tobacco harms as revealed in internal documents for the American tobacco industry. Lancet 363: 1820-1824, 2004.









(2023.11.6)
Q トゲトゲ蛋白を分解する方法! 発見?

A 
「体内のトゲトゲ蛋白を解毒する方法はありませんか?」という、悲痛な叫びにも似たお便りが、当ホームページにたくさん届いています。今週は、「もしかしたら、これがそうかも」という話題を取り上げました。

それは、納豆がトゲトゲ蛋白を分解するという話です。いまから35年ほど前、納豆に含まれる
ナットウキナーゼという成分が体にいいというニュースが全国的に流れたのをご記憶でしょうか。専門家の間でも話題になったのですが、いつの間にか忘れ去られていたものです。

     

2022年、日本の研究者が「スパイク蛋白を分解する物質」というタイトルの論文を発表していました(文献1)。培養細胞にトゲトゲ蛋白の遺伝子を入れ、この蛋白を作らせたあと、ナットウキナーゼを加えて様子を観察しました。すると、わずかな量を加えただけで、2時間後、トゲトゲ蛋白は完全に分解されてしまったというのです。ナットウキナーゼは一種の蛋白分解酵素ですから、ありえる話です。(文献の存在をお知らせくださった方に感謝します)

ただし、この実験には弱点がいくつかあります。ナットウキナーゼは、トゲトゲ蛋白だけでなく、細胞内のさまざまなたんぱく質も分解していたことと、ナットウキナーゼ以外の物質でもトゲトゲ蛋白は分解できるのではないか、という疑問に答えていなかったことです。

一方、このナットウキナーゼについては、国内外で膨大な研究がなされてきています。特筆すべきは、飛騨高山で行われた調査です(文献2)。3万人近くの男女に対して、その食生活とともに、年齢、性別、身長、体重、病歴、さらに喫煙、飲酒、運動などの生活習慣から学歴に至るまで、背景因子を徹底的に調べた上で、16年間も追跡したという力の入った調査でした。

わかったのは、ただひとつ。
納豆を習慣的に食べている人は、心臓病や脳卒中で死亡する人が25パーセントも低かったことです。日本発の研究データでエビデンスと呼べるものは、これまでほとんどありませんでしたが、これこそ国際的にも最上級レベルの研究だったと言えそうです。

ナットウキナーゼは、血栓を分解する作用があり、ほかにも血液が固まるのを防ぎ、血圧を下げ、動脈硬化症を予防する、など多彩な働きがあります(文献3)。LDLコレステロールを下げるスタチン系という薬と同等の作用もあり、さらにはアルツハイマー型認知症で有名になったアミロイドベータを分解することも証明されています(文献4)。

しかも、副作用がまったくないという不思議な物質なのです。サプリや食品は、口から摂取したあと消化液で分解されてしまうのが普通です。しかしナットウキナーゼは、胃酸で分解されずに、腸から吸収されます。温度やpHの変化に強く、長期の保存も可能です。

海外では、「腐ったチーズのよう」とか、「匂いがきつく、ネバネバして気持ち悪い」と論文中に書かれるなど納豆の評価が低く、そのため成分を粉末にして植物性カプセルで包んだものが製品として販売されています。その効果は、米国食品医薬品局(FDA)も一部、承認ずみです。

では、納豆をどれくらい食べればいいのでしょうか? 文献2には明記されていませんが、解説記事によれば、
1週間に50グラム(大きめの1人用1パック)以上とのことです(文献5)。

新型コロナウイルス感染症にも、またワクチンの副作用にも特効薬はないことを当ホームページで報告してきましたが、もしかするとナットウキナーゼが有力かもしれません。高額な医薬品は、ほとんどの臨床試験が製薬企業のお金で行われていますが、薄利多売の納豆業界が陰で糸をひいてる可能性はなく、研究データの信頼度も高いと思われるのです。

【参考文献】
1) Tanikawa T, et al., Degradative effect of nattokinase on spike proten of SARS-CoV-2. Molecules, Aug 24, 2022.
2) Nagata C, et al., Dietary soy and natto intake and cardiovacular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study. Am J Clin Nutr, Dec 7, 2016.
3) Weng Y, et al., Nattokinase: an oral antithombotic agent for the prevention of cardiovascular disease. Int J Mol Sci, Feb 28, 2017.
4) Chen H, et al., Nattokinase: a promiising alternative in prevention and treatment of cardiovascular diseases. Biomark Insights, May 23, 2018.
5) 大西淳子, 納豆、週1パック、循環器疾患の死亡リスク下がる?, 日経新聞「NIKKEI STYLE」, Feb 4, 2017.








(2023.10.30)
Q コロナワクチンで神経麻痺?

A 
コロナワクチンの副作用で顔面神経の麻痺が起こることが、以前から知られていました。その詳細を報じた論文が相次いで発表されましたので、まとめてみました。

この症状は、200年ほど前、スコットランドの解剖学者ベルによって発見されたことから、
ベル麻痺とも呼ばれています。顔面の片側の運動神経が突然、マヒして片方の眼が閉じられなくなる、片方の眉が垂れ下がる、顔が歪んで見えるなどの変化が出ることから、本人や家族が容易に気づくことになります。

       

顔面神経は、脳から出て顔面骨の細いトンネルを通って表情筋に広がっています。このトンネル内に、何らかの原因でむくみが生じ、神経が圧迫されるために起こるのがこの病気です。直接の原因はいまだ不明で、ヘルペスやインフルエンザなどのウイルス感染がきっかけになるとも言われていますが、恐らく特定の原因があるわけではなく、さまざまな状況で発症するものと考えられます。また顔面骨のトンネルが生まれつき狭い、という体質の人もいますから、個人差もあるはずです。

症状は、2~3週間で改善し始め、3~4ヵ月後にほぼ完治しますが、3割ほどの人は何らかの変化が長く残るとされています。治療は、プレドニゾロンという薬が有効です。そのほかの薬や運動療法、電気刺激療法などによる治療も試みられていますが、効果は証明されていません(文献1,2)。文献2には、実際の患者さんの顔写真が掲載されています。

コロナワクチン接種との関係については、多数の論文が発表されており、それらを厳選して17編に絞った上で、まとめを行ったレポートがあります(文献3)。それによると、以下のようなことが判明しています。

 ・接種後1~48日の間に発症する
 ・顔面の左側に比較的多い
 ・すべての年齢層に認められ、男女の差はない
 ・ほとんどがファイザー社かモデルナ社のワクチン接種後に起こっている

さて、問題は本当にワクチン接種と因果関係があるのかです。真相を究めるにはランダム化比較試験しかないことは、繰り返し述べてきたとおりです。しかし、mRNA型のワクチンについて行われたランダム化比較試験は、ワクチンを製造している製薬企業ごとに1編ずつしかなく、その中でも、ベル麻痺に言及した論文は、ファイザー社とモデルナ社の各1編しかありません。

両論文のデータをまとめたところ、プラセボ群に比べてベル麻痺の発症率は3.57倍も高くなっていました(文献4)。その他の論文も含めると、インフルエンザや髄膜炎などのワクチンでベル麻痺の増加は証明されていないこと、このように高い値はコロナワクチンにしか認められないこと、そしてその発生率は
自然の発生率と比べて1.5~7倍も高いという結論になります(文献5~7)。

米国食品医薬品局(FDA)は、日本の厚生労働省と同様、すべての副作用を「ワクチンとの因果関係なし」と決めつけてきた役所ですが、一時、「ベル麻痺とワクチン接種の因果関係は認められない」としていた公式文章の文言を、のちに削除しました。つまり因果関係は認めるという立場に変わったのです。

ベル麻痺は、心筋炎と並んでコロナワクチン接種後に確かに増加することが確認されたことになります。接種後、かなり時間が経ってから発症していますから、自己免疫病と同じメカニズムが働いていると推測されます。

気がかりなのは、ずっと昔からあった病気ですから、たとえ病院を受診してこの病名をつけられたとしても、コロナワクチンとの関係は言下に否定されてしまっていたであろうことです。コロナワクチンの悲劇を表わす真実が、統計データとして記録されないまま、永遠に埋もれてしまうのかもしれません。


【暮らしのヒント】
 前々回の当ホームページで、オミクロン株やインフルエンザに特効薬はなく、感染してもあえて薬はいらないという報告をしました。それにしても、新型コロナとインフルエンザ、それに普通の夏風邪も加わって、体調を崩す人が非常に多くなっています。テレビが煽るせいもあって、そのような人たちが医療機関に殺到しているのです。
 どの医療機関でも、発熱者に対しては粗末な小部屋や路地、玄関先などで診療が行われています。そのような場所での診察は、高熱を出している人にとって、ただただ辛い時間となり、病状を悪化させているだけのように見えます。インフルエンザやオミクロン株の感染症では、高熱が3~5日ほど出たり、咳が数週間も続いたりするものです。
 発熱や咳、鼻水、下痢などの症状は、病原体を滅菌し、あるいは早く体外に排除するための大切な生体反応です。このような症状は、薬で止めてしまうのではなく、体を休めること、水分と栄養を少しでも摂ること、抗酸化物が豊富な果物をとることなどが治療の原則ですが、つらい症状には市販薬が大いに役立ちます。
家のくすり箱に、以下の市販薬を備えておくだけで、ほとんどの場合、医療機関に行かずにすむはずです。

 ・解熱鎮痛剤:アセトアミノフェンだけを成分とする商品(胃に負担がない。体温38℃以上で飲む)
 ・総合胃腸薬:制酸剤、消化酵素、ロートエキスを含む商品(胃痛、嘔気、下痢などに有効)
 ・咳止め:  ブロムヘキシンやL-カルボシステインを含む商品、あるいは龍角散などの生薬
 ・のどの薬: 塩水でうがいするのがベスト、市販品ではヴイックスメディケイテッドドロプなど

 くすり箱には、ほかに体温計とパルスオキシメータも入れておきましょう。呼吸が苦しいとき、あるいはパルスオキシメータの測定値が92パーセントを下回る状態が続く場合は受診が必要です。

【参考文献】
1) Murthy JK, Bell's palsy: treatment guidelines.  Ann Indian Acad Neur, Jul, 2011.
2) Obermann M, et al., Bell's palsy following COVID-19 vaccination with high CSF antibody response. Neurol Sci, Jul 29, 2021.
3) Shahsavarinia K, et al., Bell's palsy and COVID-19 vaccination: a systematic review. Med J Islam Repub Iran, Jul 30, 2022.
4) Rafati A, et al., Association of SARS-CoV-2 vaccination or infection with Bell palsy, a systematic review and meta-analysis. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg, Apr 27, 2023.
5) Ozonoff A, et al., Bell's palsy and SARS-CoV-2 vaccines. Lancet Infect Dis, Feb 24, 2021.
6) Cirillo N, et al., Bell's palsy and SARS-CoV-2 vaccines - an unfolding story. Lancet Infect Dis, May 28, 2021.
7) Wan EYF, Bell's palsy following vaccination with mRNA (BNT162b2) and inactivated (CoronaVac) SARS-CoV-2 vaccines: a case series and nested case-control study. Lancet Infect Dis, Aug 16, 2021.








(2023.10.23)
Q 最近の話題を考える?

A 
ワクチン禍に対する理解を深めるため、今週は3つの話題を取り上げ、深掘りしてみることにしました。各話題は相互に関係ありませんが、今後の展開を考える上で参考になりそうです。


偽りの地震予測

なぜ国は、新型コロナウイルスのワクチンをかたくなまでに推奨し、真実に気づかぬふりをしてきたのでしょうか? 最新刊の『南海トラフ地震の真実』(小沢慧一著、東京新聞)に、そのヒントを見出すことができます。

「南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は70~80%」と発表されています。この本は、関係者の生々しい証言や緻密な資料調査に基づいて、政府委員会の杜撰(ずさん)な実態を告発したものです。地震予測は、実は根拠のないものだったというのが結論です。以下、著作権に触れない範囲で、ワクチン禍に似ている部分をまとめてみます。

地震予知関連の委員会は、権威ある専門家によって構成されます。専門家も人の子、国の委員会に名を連ねるだけで権威もさらに高まり、当然のごとく国や企業からの研究費も集まることになります。地震が予測できるようになるのであれば研究費の額も半端ではありません。名誉とお金の両方がえられるのですから、委員の座に固執することになります。

そんな状況で、官僚や政治家の意向が伝えられれば、反対意見を述べることもできず・・・、という負の連鎖に陥っていく、というのです。

「地震の予測」という言葉を、「ワクチンの推進」にそっくり置き換えるだけで、この本はワクチン禍の実態を暴いているようにも読めます。そんな取材をしてくれるジャーナリストが現れるといいのですが。


スペイン風邪の教訓

次の話題は、1918年に大流行したスペイン風邪です。地球上全人口の1.3~3.0パーセントが死亡したとされる悲劇でした(新型コロナの死者は全人口の0.09パーセント)。原因はインフルエンザの変異株で、ウイルスの発生源はスペインでなく、中国だったとの説が有力です。

スペイン風邪で死亡した369人の遺骨を分析したという研究論文が発表されました(文献1,2)。それによると、感染して死亡する割合は年齢・性別に関係なく、すべての人に平等だったのだそうです。ただし極端に栄養不良だった人だけは、死亡率も高かったようです。

日本では「基礎疾患のある人は要注意!」と連呼され、持病のある高齢者を不安にさせてきました。この主張が統計学的に間違いであることは、当ホームページでも繰り返し述べてきたとおりです。

 social distancing(シャルディスタンス)
 mask wearing(マスク着用)
 hand washing(手洗い)

この3つ掛け声も、実はスペイン風邪が流行したときに作られたものです。ワクチンもウイルスの薬も、抗生物質さえない時代だったにもかかわらず、3年で流行が終息したのは、この3つが果たす役割が大きかったと分析されています。

やはりマスクに対する反発は当時も強く、タバコを吸うための大きな穴をマスクの真ん中にあけて抵抗する人もいたそうです。人々の気持ちは100年経っても変わりません。文献3に興味深い写真の数々が掲載されていましたので、(法令順守をモットーとする当ホームページですが)このサイトに限り無断でリンクを設定しました。青文字の部分をクリックしてご覧ください。


新型コロナウイルスは人工物?

日本人研究者が、「オミクロン株は人工的に造られたもの」と主張する論文を発表しました(文献4)。

ウイルスの遺伝子配列の解析結果を登録できるサイトが、世界には多数あります。あるサイト(GISAID)では、2023年10月現在、新型コロナウイルスだけで1600万件を超える遺伝子配列が登録されています。変異株と呼ぶかどうかは別にして、新型コロナウイルスには軽微な変異が無数に生じているということです。

この論文は、「多数のオミクロン株の遺伝子配列を順に並べていくと、初期の武漢株の配列が少しずつ規則的に挿入されてきたように見える。あまりに不自然であり、誰かが試行錯誤でウイルスを改造して、野に放ったのではないか」と、主張しているのです。武漢株とは、最初に中国で発見された新型コロナウイルスのことです。

論文にはいくつかの論拠が述べられていますが、以下はそのひとつである図について、私のイメージをイラストにしたものです。第三者と思われる人が解説しているユーチューブ動画もあり、理解を助けてくれます(文献5)。各行は、それぞれオミクロン株のウイルスで、カラーの各点が遺伝子(正しくはアミノ酸)の配列を意味しています。

  

この図と説明文には、以下のような疑問があります。


ウイルスの変異は、偶然、かつどの部位にも起こりうるものです。そのため、ウイルスの遺伝子配列を手あたり次第に調べていけば、武漢株の配列がたまたま残っているものはいくらでも見つかりそうです。それらを
選んで並べれば、このような図になるのではないでしょうか。

つまり、「オミクロン株は誰かが意図して造り出したもの」とする解釈には、論理の飛躍があり、もっと丁寧な説明が求められるところです。

【参考文献】
1) Wissler A, et al., Frailty and survival in the 1918 influenza pandemic. Proc Natl Acad Sci USA, Oct 9, 2023.
2) Kolata G, Skeletons of 1918 flu victims reveal clues about who was likely to die. New York Times, Oct 9, 2023.
3) Taylor A, The influenza masks of 1918. Atlantic, Jul 16, 2020.
4) Tanaka A, et al., Unnaturalness in the evolution process of the SARS-CoV-2 variants and the possibility of deliberate. Zenodo, Aug 15, 2023.
5) NPO邦人言論責任保証協会、田中・宮沢論文解説(オミクロン株起源), youtube, 登録日不明.









(2023.10.16)
Q オミクロン感染に薬は必要か?

A 
新型コロナウイルス感染症の治療薬について、続々と新しいデータが出てきています。今週は、国内で推奨されている飲み薬を中心に最新情報をまとめました。


ゾコーバの疑惑

国産初の新型コロナウイルス感染症の飲み薬がエンシトレルビル(商品名ゾコーバ)です。2022年11月22日、厚生労働省は、この薬を緊急承認したと発表しました。緊急承認とは、通常の制度から外れて、期限と条件つきで認めるものです。テレビのニュースでも大々的に取り上げられたことから、コロナに感染した患者さんが「処方してほしい」と求めることも多くなっています。

国の審査報告書によれば、この薬を服用した人は、5つの症状が回復するまでの時間が、プラセボに比べて24時間ほど早かったとのことです(文献1)。5つの症状とは「倦怠感または疲労感」、「熱っぽさまたは発熱」、「鼻水または鼻づまり」、「喉の痛み」、それに「咳」です。しかし報告書をよく見ると、統計学的な有意差にはなっていませんでした。

ゾコーバの治験データを報じた英文論文は、3つあります(文献2~4)。しかし、対象者の人数が、国の審査報告書に記載されていた値を大幅に下回っていて、都合の良いデータを報告しただけのものでした。それにもかかわらず、その1つには「症状の回復には有意差がなく、
ウイルス量が少しだけ減少していた」と記載されていました。

このことが、あとでゴタゴタを引き起こすことになります。2022年9月2日、日本感染症学会と日本化学療法学会という2つの学会が、連名でゾコーバ錠の早期承認を求める提言書を厚生労働大臣に提出しました(文献5)。そこには「
ウイルス量が早く減少することは、臨床症状の改善を早めます」と書いてありました。

この文章が公表された9月2日の時点で、上述した3つの論文はまだ公表されていませんでした。つまり、製薬会社とその協力者しか知らないはずの企業秘密を、提言書を執筆した人たちは事前に知っていたことになります。つまり企業側からみれば秘密漏えい、国民に対しては利益相反があったのです。この文章に対して、ネット上で非難が殺到したのは言うまでもありません。

日本政府がもっとも力を入れているのがこの薬で、すでに200万人分を製薬会社に発注したと報じられています。しかし
効果は証明されておらず、かつ長期的な副作用が不明なのです。


パクソロビドの醜聞

新型コロナウイルスがヒトの細胞内で増殖する際、自分自身の複製を作るための酵素が必要です。実は、この酵素はウイルス自身が持っているのですが、その酵素をブロックする飲み薬が2つあります。ひとつが前述したゾコーバで、もうひとつがファイザー社のパクソロビドです。

2022年6月14日、ファイザー社は「この薬は効果が余りにも高く、あきらかな副作用もなく、このままランダム化比較試験を続けるのはしのびなく、試験を中止することにした」との文章を誇らしげに発表しました。これは、薬の臨床試験を途中で打ち切るときに語られる定番のセリフですが、追跡調査を長く続けるとボロが出ることがわかっているときに使われます。

この薬には、多数の懸念が指摘されています。酵素をブロックする薬ですから、ヒトが体内に持っている「薬物を分解する酵素」まで止めてしまいます。そのため、一緒に服用してはいけない薬が降圧剤など無数にあり、うっかり他の薬といっしょに飲むと、命にかかわる事態も起きかねません。しかも臨床試験では、なぜかコロナワクチンを接種していない人たちだけが対象でしたから、接種した人たちが飲んで大丈夫なのかという懸念もあります。

ランダム化比較試験のデータから、パクソロビドは重症化または死亡のリスクを89パーセント低減させると計算され、その値が宣伝に利用されています(文献6)。この信じがたいほど高い値が本当なのか、検証が必要です。

2022年4月に発表された論文は、約2,000人を対象にしたランダム化比較試験の結果を報じたもので、以下がそのデータです。

            パクソロビド服用群  プラセボ服用群
 総 数          389人        385人
 重症化または死亡       3人         27人

このデータから以下の計算を行ったようです。

 (1 - (3 / 389) ÷ (27 / 385)) ×100 = 89.0 (%)

ところが、ファイザー社とは関わりがないカナダの研究者グループが2023年10月2日に発表した論文には、まったく異なる結果が示されていました(文献7)。7千人ほどの人たちをさまざまな年代、男女、体質などにわけて調べたところ、効果にばらつきが大きく、
あるグループでは効果があり、別のグループでは効果なしという結果だったのです。ちなみに、ほとんどの対象者はコロナワクチンを打っていました。

このように、調査ごとに矛盾した結果になる場合、「最終的に無効だった」という決着になるのは、歴史が教えてくれるところです。

半年後、ファイザー社は治験の最終論文を発表しましたが、著者欄に記載された10人はすべて同社の社員でした(文献8)。

  


危ない飲み薬、ラゲブリオ

2021年12月24日、モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)が国内で認可されました。年が明けると、国は大々的にこの薬のPRを始め、連日、テレビでその名が連呼されるようになりました。当時、この薬は国が買い上げていて、医療機関が申請すれば無償で配布されるという形になっていました。

ちょうど、そのころ、国内では感染者数が爆発的に増え始めていました。私が勤務していた高齢者施設でも、感染が急速に広がっていたのですが、感染した高齢者の家族から「感染したのはお前の管理が悪いからだ。テレビで宣伝している、あの特効薬をすぐ使え!」とのきつい言葉が私に向けられました。

コロナ感染を見落とした医師が告訴されるというニュースも重なり、私も何人かの高齢者に、この薬を処方せざるをえない状況になりました。この薬は飲んでも飲まなくても、症状に差はないというのが当時の印象でしたが、処方をしてしまったことについては、いまも懺悔の日々です。

なぜなのか? それは、この薬が新型コロナウイルスの遺伝子配列を組み換えてしまい、深刻な問題を引き起こすからです。大げさに言えば、
人類の存亡にかかわるリスクが2つあることがわかっているのです。

まずラゲブリオの働きを見ておきましょう。新型コロナウイルスの遺伝子はRNAでできており、
 アデニン
 グアニン
 
シトシン
 ウラシル

と呼ばれる4つの物質が遺伝情報を記録しています。ラゲブリオは、そのうちのシトシンとウラシルに似た形をしている物質です(文献9)。正確に言えば似て非なるものです。ウイルスは、自身の複製を作る際、ヒトの細胞内に存在する4つの物質を勝手に流用するのですが、シトシンとウラシルの代わりにラゲブリオを組み込んでしまうことになります。

ところが、この物質はシトシンとウラシルの両方に似ているため、ウイルスが複製を作る際、区別がつきません。そのため遺伝情報としての役割が破たんしてしまい、ウイルスは生き残ることができなくなる・・・、というストーリーなのです。

そのために起こる危機のひとつは、ウイルスのRNAが改変されるだけでなく、ホストのDNAにも組込まれてしまうことです(文献10)。もうひとつは、ラゲブリオで変異を遂げたまま、死滅せずに生き残った一部のコロナウイルスが、体外に飛びだし他人に感染してしまったことです(文献11, 12)。


まとめ

新型コロナ感染症で安心して飲める薬は、ひとつもありません。インフルエンザよりも弱毒化しているオミクロン株に対しては、
普通の風邪薬に勝るものなし!

重症化する割合でいえば、オミクロンよりインフルエンザのほうが高いのですが、特効薬とされてきたタミフルも、データのねつ造があり、実はほとんど効き目のない薬だったことが判明しています。米国政府機関のホームページには、昔から、次のようなメッセージが国民向けに掲示されています。「インフルエンザに特別な治療は不要。家で休養すること、他人に移さないように!」と、・・・コロナも同じです。

(そのほかの薬については、当ホームページQ4をご参照ください)

【参考文献】
1) ゾコーバ錠125mg_塩野義製薬株式会社_審査報告書(3). Nov 15, 2022.
2) Mukae H, et al., A randomized phase 2/3 study of ensitrelvir, a novel oral SARS-CoV-2 3C-like protease inhibitor, in Japaneses patients with mild-to-modrarete COVID-19 or asymptomatic SARS-CoV-2 infection: results of the phase 2a part. Antimicrob Agents Chemother, Sep 13, 2022.
3) Mukae H, et al., Efficacy and safety of ensitrelvir in patients with mild-to-moderate coronavirus disease 2019: the phase 2b part of a randomized, placebo-controlled, phase 2/3 study. Clin Infect Dis, Dec 7, 2022.
4) Yotsuyanagi H, et al., A phase 2/3 study of S-217622 in participants with SARS-CoV-2 infection (phase 3 part). Medicine, Feb 22, 2023.
5) 四柳宏, 松本哲哉, 「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」. Sep 2, 2022.
6) Pfizer's novel COVID-19 oral antiviral treatment candidate reduced risk of hospitalization or death by 89% in interim analysis of phase 2/3 EPIC-HR study, Pfizer, Nov 5, 2021.
7) Dormuth CR, et al., Nirmatrelvir-ritonavir and COVID-19 mortality and hospitalization among patients with vulnerability to COVID-19 complications. JAMA Netw Open, Oct 2, 2023.
8) Hammond J, et al., Oral nirmatrelvir for high-risk, nonhospitalized adults with Covid-19. N Engl J Med, Apr 14, 2022.
9) Kabinger F, et al., Mechanism of molnupiravir-induced SARS-CoV-2 mutagenesis. Nat Struct, Sep, 2021.
10) Muwller B, Merk's Covid pill might pose risks for pregnant women. New York Times, Dec 13, 2021.
11) Sanderson T, et al., A molnupiravir-associated mutational signature in global SARS-CoV-2 genomes. Nature, Sep 25, 2023.
12) Harris E, Changes in SARS-CoV-2 sequence linked with antiviral use. JAMA, Oct 4, 2023








(2023.10.9)
Q インフルエンザはなぜ夏に流行したのか、ワクチンどうする?

A 
今週は、このテーマを中心にまとめましたが、別に2つの話題「テレビ放映のお知らせ」「ノーベル賞雑感」も最後に付記しています。

(1)インフルエンザが夏に流行した理由

今年(2023年)の夏、過去に例を見ないほどインフルエンザが流行しました。まず、その理由を分析してみることにします。

すでに当ホームページで報告したように(Q6(5)と(7))、インフルエンザウイルスは南半球で冬を過ごし、春を迎えると、ほとんどが死滅します。一方、北半球が冬に向かうころ、生き残った一部のウイルスが旅行者によって日本を含む国々に持ち込まれ、流行を引き起こします。

次のグラフは、南半球オーストラリアにおけるインフルエンザの発生件数を示したものです(文献1)。コロナ禍以前の2017年のグラフ(青線)からわかるように、以前は現地が冬の8~9月を中心に流行が認められていました。ところが、新型コロナウイルスが世界的に広がり始めた2019~2020年ころから、この形が
だらだらと崩れ始め、ピークが左(現地の秋のほう)に移ってきているのです。2023年にはピーク(赤線)が5~6月ころになっています。

 
米国では、昨年(2022年)1年間、
だらだらとしたインフルエンザの流行が続き、ウイルスの専門家も「理由はわからない」とコメントしていました。少なくとも南半球の出来事が影響を与えていることは確かなようです。また、専門家と称する人たちが述べているような「しばらく流行がなく集団免疫が低下したから」との理由では、説明が困難です。

ここ数年間、南半球で
インフルエンザウイルスの生態に何が起こっていたかは不明です。

日本に限って、夏にインフルエンザが流行した理由については思い当たる節もあります。発熱、咽頭痛、咳などをともなう風邪は1年中、認められるものです。真夏も例外ではありません。そのため病院では、夏に発熱に来院した患者さんにインフルエンザの検査を行うことは、ほとんどありませんでした。私の経験でも、桜の花が咲き始めるころになるとインフルエンザのシーズンはほぼ終わりですから、検査キットも片づけてしまっていました。

2023年は、6月の初旬に「高校の学園祭でインフルエンザ集団感染」とのニュースが大々的に報じられました。それ以降、検査を希望する人が急増してきたという印象があります。過去、6月くらいまでインフルエンザの流行が続いていた年もありましたから、検査をやればやるほど、いままで気づかなかった感染者が統計にカウントされることになります。つまり、昔から夏にも流行があったかもしれない、ということなのです。


(2)インフルエンザのワクチンはどうする?

インフルエンザウイルスは、表面のたんぱく質の性状からA型(H1N1)、A型(H3N2)、B型などに分けられます(文献2)。ほとんどは弱毒性ですが、ときに大きな変異が生じ、季節と関係なく大流行することもあります。1918年のスペイン風邪や2009年の新型インフルエンザはその代表で、強毒性でした。

インフルエンザワクチンの製造には1年近くかかりますから、いま流行しているウイルスに合わせて作ることはできません。前年の情報を元にするしかないのですが、過去数年、南半球で流行してきたウイルスはA型(H1N1)が8割、残りがB型となってます。ただし米国での調査によれば、新型インフルンザウイルスの変異がすでに3種類見つかっており、もしこれらが流行すれば、ワクチンはいくら接種しても無駄ということになります。

それよりも懸念すべきは、当ホームページで繰り返し警告を行ってきた
抗原原罪によるリスクです(当ホームページ2023年8月14日の記事参照)。つまりワクチン接種を繰り返すことにより、免疫機能が疲弊したり、変異ウイルスやタイプの似たウイルスに対する免疫がつかなくなってしまうという重大問題が生じるのです。

インフルエンザワクチンについては、信頼できる
ランダム化比較試験がほとんど行われてきませんでした。稀有な例とも言えるある調査では、A型、B型、新型の3種類の抗原を含むワクチン(3価ワクチン)を接種してもインフルエンザを防ぐことができず、それどころか、インフルエンザ以外の風邪ウイルスに感染してしまう割合が格段に高くなっていたと報告されています(文献3)。

一方、インフルエンザワクチンの有用性を報じた研究は、すべて後ろ向き調査でしかなく、信用ができません(文献4)。

ワクチンと免疫機能との関係が改めてあきらかになったいま、mRNAワクチンに限らず、
昔からあったワクチンも含めて、繰り返しの接種が生体に重大な悪影響を及ぼすと考えなければなりません。(私事ですが、この事実を知って怖くなり、昨年から自分自身へのインフルエンザワクチン接種はやめています

【参考文献】
1) Australian influenza surveillance report. Australian Goverment Department of Health and Aged Care, No. 12, 2023.
2) Influenza activity in the United States during the 2022-23 season and composition of the 2023-24 influenza vaccine. CDC, Sep 28, 2023.
3) Sundaram ME, et al., Influenza vaccination is not associated with detection of noninfluenza respiratory viruses in seasonal studies of influenza vaccine effectiveness. Clin Infect Dis, Jun 6, 2012.
4) Cowling BJ, et al., Increased risk of noininfluenza respiratory virus infections associated with receipt of inactivated influenza vaccine. Clin Infect Dis, Mar 15, 2012.



《テレビ放映のお知らせ》
 2023年10月8日(日)13:30、関西・読売テレビの人気番組『そこまで言って委員会NP』で、コロナワクチンに関する話題が取り上げられました。同番組公式ホームページに「見逃し配信」があります。同テレビ局の許可をえて、サイト名(青文字の部分)をクリックすると誰でも視聴できるようにしました。当ホームページの記述が少しだけ引用されています(録画の59分ころから)。


《ノーベル賞雑感》
 当ホームページでは以前、週替わりでコラムを掲載していました。そのうち、2021年10月6日掲載のコラムを以下に再掲しました。国内では多くの人たちが2回目の接種を終えたころで、同年のノーベル賞受賞者の発表があった直後に書いたものです。

本年(2023年)の受賞のニュースに接したご感想、また読売テレビの番組を視聴してのご意見などをお寄せください。










(2023.10.2)
Q 後遺症はワクチンを打ってない人に多い?

A 
2023年9月中旬、厚生労働省は、国内3市町村で行ってきたコロナ後遺症の調査結果を公開したと、各メディアが報じました(文献1,2)。見出しこそ「コロナ後遺症、成人11~23%に」などでしたが、とくに「後遺症があったと答えた人の割合は、ワクチンを接種した人たちのほうで低かった」との発表もなされたことに対し、「本当か?」との声が多く聞かれ、当ホームページあてにもお便りが届きました。

いったい、どんな調査だったのか、背景を探ってみました。

その調査データは、厚生労働省のホームページで公表されています(文献3)。対象となったのは大阪府八尾市、東京都品川区、および札幌市の住民でしたが、多くの人を対象にワクチン接種との関係を調べていたのは、品川区だけであったため、以下、同地区のデータに限定して、考察を行うことにします。

データは、厚生労働省が50億円を投じて開発したシステムHER-SYSからでした。このシステムには、医療機関や保健所が、感染者を認めた場合に入力する建前となっていましたが、にわか作りであったことから、入力が大変で、度重なる改良を経てもなお不評のまま、2023年9月末で運用終了となったものです。入力されているデータが信頼できるものだったのかが、まず気になります。

品川区での調査は、2022年7~8月に行われました。強毒性のデルタ株にかわって、弱毒性のオミクロン株が主流になった時期で、対象は感染した8,099人(20~69歳)の男女です。

対象者には、ネット経由でアンケート調査が行われました。「感染が確認されてから3ヵ月経った時点で、少なくとも2ヵ月以上続いていた症状」を後遺症と定義し、症状の有無が調べられました。この定義は世界保健機関(WHO)に従ったものですが、ほかにも様々な定義があり、結果も異なるものになる可能性があります。

ワクチンの接種記録は、VRSと名づけられたシステムから取得しました。これは、市町村がまず住民の基本情報を登録し、各接種会場で接種券のコードをタブレット入力するという方法で構築されてきたものです。

結果は、「後遺症なしの割合は、ワクチンを3回以上接種したほうの人たちで明らかに小さいというものでした(オッズ比で0.75: 詳細は脚注参照)。

   

さて、この調査結果は正しいでしょうか?

まず、比べた2つのグループは「ワクチンを打っていた人たち」と「打っていなかった人たち」です。つまり事前に、背景を揃えてグループ分けしたわけではなく、本人の気持ちや周囲の圧力、接種会場が近かったかなどの違いで、たまたまわかれただけです。したがって、まったく異質のグループですから、そもそも比べることが間違っています。

アンケートに答える際も、「いまの体調は?」と問われれば、誰でも「そういえば・・」と、忘れていた症状まで思い出して答えてしまうのではないでしょうか。とくにワクチンの効果がテレビなどで過剰に宣伝されてきましたから、打っていない人が感染すれば不安にかられ、つい過敏に反応してしまいそうです。

「最近、疲れる」、「体がだるい」、「よく眠れない」、「記憶力が衰えてる」などの字句がならんだアンケートに回答を求められれば、誰でも、たくさん丸印をつけてしまうことでしょう。その昔、新聞にこんな記事が載っていました。小学生に「困っていることは?」というアンケート調査をしたところ、ほとんどの児童が「最近、疲れる」と答えていたそうです。アンケートは、誘導尋問になってしまいがちです。

海外で行われた厳密な比較調査では、
感染した人としなかった人で症状の割合に有意差がなかったという結論になっていました(2023年5月4日付の当ホームページで紹介)(文献4,5)。つらい症状で悩んでいる人が多いのは確かですが、コロナのせいばかりではない、ということなのです。

そもそもコロナの後遺症自体が捉えどころのないものである上に、厚生労働省が発表したデータは、分析法も正しくありません。「後遺症があったと答えた人の割合は、ワクチンを接種した人たちのほうで低かった」との結論は、あきらかな間違いです。正確に言えば、正しさが証明されていないということですが、過去、同じ方法で行われた研究の多くが間違った答えを出し、人々の信頼を裏切ってきたのも事実です。


【参考文献】
1) 新型コロナ19万人余調査、成人1~2割「後遺症」か 厚労省研究班. NHK, Sep 23, 2023.
2)コロナ後遺症 成人11~23%、小児は6%、接種済みだと少ない傾向. 朝日新聞, Sep 19, 2023.
3)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状について(現状、研究報告、今後の厚生労働省の対応). 厚生労働省, (掲載日不明).
4) Selvakumar J, et al., Prevalence and characteristics associated with post-COVID-19 conditon among nonhospitatlized adolescents and young adults. JAMA Netw Open, Mar 30, 2023.
5) Matta J, et al., Association of self-reported COVID-19 infection and SARS-CoV-2 serology test results with persistent physical symptoms among French adults during the COVID-19 pandemic. JAMA Intern Med, Jan 1, 2022.

【脚 注】 オッズ比の求め方
 公表された品川区のデータは以下のようになっていますが、分析には、いささか複雑な計算がなされていました(文献3)。
 ___________________________________________
          後遺症あり   後遺症なし 後遺症の割合 接種なしとの比較 補正後の値
                                 (オッズ比)
 ___________________________________________

  接種なし      110人    671人   111/671 =
0.16   1.0    1.00
  接種1回       11人     45人     11/ 45 = 0.24   1.5    1.45
  接種2回      245人    1567人  245/1567 = 0.16    1.0    0.99
  接種3回以上    675人    5556人  675/5556 = 0.12    0.75    0.75
 ___________________________________________

 まず、それぞれの行に対して、以下の計算を順次、行います。
  「後遺症ありの人数」 ÷ 「後遺症なしの人数」
この計算結果が、もし1.0より大きければ、後遺症のあった人が、なかった人より多かったことになります。次に、接種をしなかった人たちと比べるため、2~4行目の値を、それぞれ赤字で示した1行目の値(1.6)で割り算します。この計算でえられる値は
オッズ比と呼ばれます。
 このような直感的にわかりにくい計算を、なぜわざわざするのかと言えば、
背景因子の影響を取り除くための計算法(ロジスティク回帰分析)を利用することができるからです(2023年6月5日付の当ホームページ参照)。厚生労働省の報告書には、「性別」と「年齢」の2つの背景因子の影響を取り除く処理を行ったと記述されています。その結果が、上の表の右端に示した値です。単純な割り算でえたオッズ比と微妙に異なっているのは、2つの背景因子の影響が引き算されているためですが、だからと言って、2つのグループの背景因子が揃ったことにはなりません。








(2023.9.25)
Q 国と製薬企業を相手に起こした訴訟?

A 
新型コロナのワクチンで被害に遭った人やその家族が、国や製薬企業に対して訴訟を起こすという動きがいくつか出てきました。今回は、その概要をまとめました。

     

2023年9月20日(水)、NHK大相撲中継の途中、夕方5時の全国ニュースで、

 『”コロナワクチン接種で生活に支障” 国や製薬企業などを提訴』

との報道が、突然なされました。同じ内容の記事がネットにも掲載されされています(文献1)。訴えを起こした女性は、東京地方裁判所に提出された訴状で、次のように主張しています。

「ワクチン接種が、どうきなどの症状の原因となった可能性が否定できない。ことし5月に国の健康被害救済制度の認定を受けたが、手続きに2年近くもかかり、また認定された以外の症状も出ている。つらい日々に対する慰謝料を請求すべきだと考えた」。

つまり国の救済制度では不十分だったことから、国と製薬企業、さらには集団接種を行った自治体にまで責任を問うものだったようです。このニュースがNHKの全国放送で報道されたことも含めて、コロナワクチンによる健康被害を考える上で大きな出来事でした。

この訴訟を進めている弁護士グループは、すでに別の訴訟も起こしています。2023年5月23日、NHK北九州が、『新型コロナワクチン接種後に男性死亡 遺族が国などを提訴』と報じていました(文献2)。福岡地方裁判所小倉支部に提出された訴状には、国がワクチンの安全性を確認しないまま特例承認を行ったことや、病理解剖を行わず、また遺族に知らせることなく火葬が行われた、などと述べられています。

詳細は、この訴訟を担当している弁護士事務所が開設している以下のサイトで、確認することができます(同事務所の許可を得てリンクを設定)。

 福岡地方裁判所小倉支部での裁判について

2023年2月2日には、京都大学の名誉教授が、国に対して情報開示請求訴訟を起こしています。遡る2021年、同氏が厚生労働省に対し「ワクチンの購入契約書、およびワクチンに関する有害事象の全データ」を開示請求したところ、以下のような拒否回答があったとのことです。

購入契約書の開示について:
 「公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位、正当な利益を害する恐れがある」

有害事象の開示について: 
 「そのようなデータを保有しておりません」

国などの公的機関が保有する文章は、所定の書類を作成して手数料300円とともに提出すれば、誰でも開示請求をすることができます。しかし、それで相手が開示を拒否をすれば、裁判を起こすしかありません。同名誉教授も、そうすることにしたという話のようなのです。この出来事については、新聞やテレビなどの大手メディアが報じることは、いっさいありませんでした。

集団訴訟を起こすことになるだろうと、記者会見で発表した人たちもいます(文献3)。遺族会を結成し、予防接種による健康被害の救済制度で補えない部分を裁判を通して国などに要求する、としているのです。この遺族会には、父親とおばをワクチン接種で相次いで亡くしたという女性も加わっているとのことです。

国を相手に裁判を起こし、最終的に国家が謝罪したり、金銭で償うことになったという事例は、過去、多数ありました。しかし新型コロナのワクチン接種にともなう諸問題は、簡単でありません。直接的な健康被害や死亡だけでなく、ある人は心理的に追い詰められ、ある人は職を失ったりと有形無形で、かつ多種多様です。実証できない被害も多く、のちの世の総理大臣に謝罪されたとしても、心が晴れることはないでしょう。

訴えるべき相手は誰なのでしょうか? 「ワクチンを拙速に承認し国民の生命を危険にさらした」として政治家個人を殺人罪などで告訴した人もいるようです。

専門家と称する人たちに嫌悪感を抱く人も少なくありません。10数年前、イタリアのある地方で小さな地震が群発していました。これを受けて、6人の地震学者が協議し、「大きな地震が来る予兆ではない」との談話を発表しました。その6日後、その地方を大地震がおそい、専門家の話を信じて避難しなかった300人ほどが犠牲になりました。

遺族たちは地震学者を告訴。裁判では、過失致死罪による懲役6年の実刑判決が6人にくだされました(この逸話は、当ホームページQ17(第3回)で紹介)。その後の控訴審で、「専門家の発言と地震による死亡とは因果関係が認められない」、「地震学者たちの判断は当時としては適切だった」との理由でいったん無罪となるのですが、まだ最終決着はついていません(文献4)。

科学者・専門家の言動も、ときに裁判の対象になりうることを世に示した出来事でした。

NHKのホームページには、『「コロナワクチン接種後に死亡」の解説デマに注意』との記事がいまだに掲載されてます。訴訟は、メディアまでも対象にすべきなのかなど、ますます悩ましい問題となっています。

【参考文献】
1) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230920/k10014201241000.html
2) https://www3.nhk.or.jp/lnews/kitakyushu/20230523/5020013417.html
3) ワクチン接種後死亡 遺族救済へ会結成 弁護士ら発表. あなたの静岡新聞, Sep 18, 2023.
4) Scientists cleared of quake deaths. Nature, Nov 13, 2014.









(2023.9.18)
Q 病理解剖を行っても因果関係の証明はできない?

A 
新型コロナのワクチン接種を受けたあと、不幸にして亡くなられた人は、決して少なくありません。ワクチンと死亡との因果関係を証明してほしいとは、多くの人々の願いです。今回は、亡くなった人に対して行われる病理解剖が、因果関係の証明に有効なのかどうかを考えます。

病理解剖は、医学の発展を目的として、病気の原因や進行状態を調べるために行われるもので、主治医の判断により遺族の同意を得て行われるのが一般的です。ほかに司法解剖と行政解剖という言葉もありますが、国によって定義も異なるため、本文ではとくに区別せず、まとめて病理解剖と呼ぶことにします。


報告例の紹介

 新型コロナのワクチン接種が始まったばかりの2021年9月、早くもこのテーマに取り組んだ論文が、ドイツから発表されていました(文献1;当ホームページQ1(7)でも紹介)。ファイザー社、モデルナ社ほか全4社のワクチンを接種後に死亡した18例のデータが記されています。

うちファイザー社とモデルナ社のワクチン接種者は8名でしたが、いずれも因果関係の証明はできなかったと結論しています。1名は心筋炎が死亡原因と判定されましたが、やはりワクチンとの関係は証明できないと結論しています。さらにワクチン接種後、1日以内に発生する
アナフィラキーについても、死因に結びつく証拠は得られなかったとのことでした。

同じころ、ドイツから、もう一つの論文発表がありました(文献2)。ファイザー社ワクチンの接種を受けたあと死亡した3名についての報告でしたが、やはり結論は同じでした。

2022年の初頭、シンガポールでワクチン接種後に死亡した33例の病理解剖データが発表されています(文献3)。対象は、ファイザー社かモデルナ社のワクチン接種を受けてから3日以内に死亡した人たちで、まず全員に対し、死亡後にCT検査が施行されました。その後、担当の病理医は画像や臨床データを調べた上で、検視官と協議し、病理解剖を行うかどうかを決めたとのことです。結果的に33名中の28名に病理解剖が行われました。

血液サンプルを分析した結果では、炎症やアレルギー反応を示した例もあれば、そうでない例もあって、一定の傾向は認められなかったこと、そして死因が心筋梗塞、肺炎、脳血管障害、極端な肥満などによるものであって、ワクチン接種との直接的な関係は証明できなかった、との記述が繰り返されていました。「すでに重い病気を有している人たちであり、ワクチン接種は、単なる偶然だったのではないか」とさえ述べています。

この論文発表には、いろいろな疑義があります。まず病理解剖を行うかどうかや、どのような分析を行うのかなどが、すべて担当者の主観に委ねられていて、データに統一性がなく、著しく信頼性を欠くものだったことです。とくに気になるのは、論文を書いた医師がシンガポールの政府機関に勤務する人たちであり、「ワクチン接種をためらう人たちを安心させることが大切」と論文中に言明していたことです。

一方、国内でも病理解剖例の報告がなされています(文献4,5)。論文は、確認できた範囲で2つあり、合わせて5例のデータが公開されていますが、いずれも因果関係は証明できていません。うち1例は新型コロナの血液検査も行われ、抗体価の著しい上昇が認められていました。これは、比較的、最近になってコロナの感染があったことを意味しますので、いくら詳細に調べても、ワクチンの影響を判定することは、当然、できません。

唯一、核心に迫った論文があります(文献6)。これもドイツからの報告ですが、ワクチン接種後、心臓に不調をきたした15名に対して、カテーテル検査に合わせて心臓組織の一部を採取したという内容です。15例中の9例で心臓の細胞内にトゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)を認めたとし、実際の顕微鏡写真も掲載しています。


トゲトゲ蛋白の映像化

 トゲトゲ蛋白は、あまりに小さく顕微鏡でも見ることができません。そこで、ある特殊な方法でトゲトゲ蛋白に染料を付着させ、顕微鏡で観察すると、トゲトゲ蛋白の有無を間接的に確認することができます(
免疫組織化学染色)。次の図は、この手順をイラストで示したものです。検査に使う材料は、すべてネットで購入できるものばかりで、大きな病院の臨床検査技師やバイオ系の大学院生などであれば、誰でも簡単にできる程度のものとなっています。

 

次の写真は、トゲトゲ蛋白ではありませんが、以前、私が細胞内の異常物質をこの方法で処理し、顕微鏡カメラで撮影したものです。

   

この簡単、かつ重要な分析法が、これまでの「病理解剖の報告例」では、なぜかいっさい行われてきませんでした。これでは、せっかくの病理解剖も役に立ちません。トゲトゲ蛋白の存在証明は、心臓に限ることなく、腎臓、肺、脳などあらゆる臓器の細胞や血管で行うことが必須要件なのです。

この分析は、病理解剖に限らず、病院で検査として受けるバイオプシー(生検)で採取したサンプルでも行うことができます。もし
パラフィン包埋と呼ばれる方法でサンプルが保存されていれば、ずっとあとになってからでも分析が可能ですから、被害に遭われバイオプシーを受けた方は、ぜひ主治医に保存を依頼しておいてください。

【参考文献】
1) Schneider J, et al., Postmortem investigation of fatalities following vaccination with COVID-19 vaccines. Int J Legal Med, Sep 30, 2021.
2) Edler C, et al., Deaths associated with newly launched SARS-CoV-2 vaccination (Comirnaty). Leg Med, Apr 17, 2021.
3) Yeo A, et al., Post COVIC-19 vaccine deaths - Singapore's early experience. Forensic Sci Int, Jan 19, 2022.
4) Baumeier C, et al., Intramyocardial inflammation after COVID-19 vaccination: an endomyocardial biopsy-proven case series. Int J Mol Sci, Jun 22, 2022.
5) Murata K, et al., Four cases of cytokine storm after COVID-19 vaccination: case report. Front Immunol, Aug 15, 2022.
6) Nushida H, et al., A case of fatal multi-organ inflammation following COVID-19 vaccination. Leg Med, Mar 20, 2023.

【参 考】 免疫組織化学染色で2つのステップを必要とする理由:
 抗体と呼ばれるたんぱく質は無数に存在します。幸い、どの抗体にも骨格となる共通構造があり、その部分を「抗原」として認識できる「抗体」を人工的に作ることができます。それぞれ、前者は「一次抗体」、一次抗体の抗体は「二次抗体」と呼ばれます。
 色素をくっつけた二次抗体は、いわば万能試薬であり、どの検査室にも、どこの実験室でも頻繁に使用するため、必ず常備されています。かつて私の実験室の引き出しにも、この試薬の入った小瓶がゴロゴロありました。大量生産されていますから、安価なのです。また色素の代わりに蛍光物質を使うなど、メーカーのアイデアが詰まった商品ともなっています。
 一方、たとえばトゲトゲ蛋白のように、この世に新たに出現した抗原に対する一次抗体は、大変な手間と費用をかけて自分で作るしかありません。幸い、新型コロナウイルスが蔓延した直後、米国のある検査試薬メーカーがこれを製造し、研究者向けにネット販売を開始してくれました。世界初ですから、最初は値段も高額でしたが、これさえ手に入れば、あとは図示したとおり、引き出しに入っている試薬で間に合います。
 通常、1個の抗原には複数個の抗体が結合します。たとえば、その割合が1対10だとすると、ステップ2ではそのさらに10倍ですから、合計100倍も鮮やかな染色ができることになります。これが、極小物質を見つけるために必要な、もうひとつの理由となっています。









(2023.9.11)
Q コロナワクチンは薬害か?

A 
「新型コロナワクチンは薬害」とする意見が以前からありました。今回は、薬害とは何なのか、コロナワクチンとの関わりはどうなのかを考えます。


薬害の歴史

 薬の害との戦いは、200年前に遡ります(文献1)。当時、皮膚や唇にできるヘルペスの治療に、ヒ素や水銀が用いられていました。特効薬と考えられていましたから、たとえ症状が悪化しても治療は続けられたのですが、あるとき、治療を途中で止めると、たちまち症状が改善することに気づいた医師がいて、その経過が医学専門誌に報告されました。

しかし論文を発表した医師は、あまり早く中止すると症状がむしろ悪化してしまうので、使い方を工夫する必要がある、ともコメントしていたのです。いまでは、ヒ素や水銀が猛毒で、触るだけでも危険であることは広く知られています。統計計算もランダム化比較試験も、まだ存在しなかった時代の話です。

しかし現代社会においても、程度の差こそあれ、同じようなことが連綿と続くがごとく、繰り返されています。そこでまず、いわゆる薬害とされ、裁判に発展した事例を拾い出し、表にまとめてみました。

 


ある薬害事件の顛末

 この表の中から、私の身近で起こった出来事のひとつ「スモン訴訟」を取り上げて、事件の概要を紹介します(文献2)。

1950年代、下痢などの症状に続けて、足のしびれ、運動麻痺、眼の異常などの症状が次々に生じるという、奇病が増えていました。ウイルスが原因との学説も流れ、一時、患者が社会的差別を受けるという事態に発展したりもしました。その後、患者の舌から採取したサンプルに、胃腸薬の成分キノホルムが検出され、内服薬に疑いが向けられるようになりました。キノホルムは、当時、多くの胃腸薬に配合されるなど期待の成分でした。

その頃、新潟大学の
椿忠雄教授は、患者の症状と服薬歴を詳細に調べ、キノホルムが直接の原因であることを統計学的に突きとめたのです。薬の副作用によって生じた、この症状群は亜急性脊髄視神経症とのちに名づけられ、英語名の頭文字からSMON(スモン)と呼ばれるようになりました。

この事件の前後、サリドマイド事件もあり、行政も大きく動くことになります。薬事法と呼ばれる法律が改訂されたのです。新薬の承認基準が厳格になり、発売後も再審査が求められ、さらに副作用が疑われた場合に行政が使用を緊急停止できることになりました。


薬害の定義

 さて薬害とは何なのか、ここで改めて考えてみることにします。この言葉については、ネット上にさまざまな解説がなされています。たとえば、

 「適正に使っていれば避けられた健康被害のうち、社会問題化したもの」
 「不適切な医療行政の関与が疑われたもの」
 「適正使用しても避けられない医薬品による健康被害」
 「医薬品の有害情報を加害者側が故意または過失で軽視・無視したことによる人災」
 「単なる投薬ミスは含まない」

などです。つまり、明確な定義は存在しないものの、
薬害とは、企業の不誠実、行政の不作為があり、適正使用しても避けられず、社会問題化した健康被害ということになりそうです。

英語には、薬害を直接的に表す言葉がありません。たとえば米国で行われてきた医薬品に関する訴訟のほとんどは、「製薬企業が、効果と副作用についての情報をねつ造したり、隠したりしたために健康被害を受けたもの」となっています。上述した定義に従えば、このような訴訟も薬害の範疇に入ることになりますが、米国では訴訟の件数があまりに多く、日常化してしまっているためニュースにもならないという感じなのです。

当然、米国政府も、法律を改正するなど一応の対応はしています(文献3)。しかし、許認可を担う食品医薬品局(FDA)は、運営費の多くを申請者、つまり製薬企業から受け取る手数料でまかなう仕組みになっているため、利益相反(企業の利益と国民の利益がぶつかっている状態)に陥っていて信用できない組織、という批判が昔から繰り返されています(文献4)。

なおワクチンに関する米国政府の対応や法律問題については、当ホームページQ1(5)で解説してあります。


薬害の結末

 国内における薬害訴訟の結末はさまざまです。判決の前に原告と被告が和解したもの、国は無罪で製薬企業が有罪となったもの、厚生労働省の担当者が有罪となったもの、原告の主張がまったく認められなかったものなどです。

かつて、「アリナミン批判」なる出来事がありました(文献5)。東京大学のある研究者が、1950年代に発売開始されたアリナミンに、有効性を示すエビデンスがまったくなく、かつ過剰摂取で健康被害が起こる、と警鐘を鳴らしたことから始まった出来事です。

主張の根拠は、国内の先陣を切って行われたランダム化比較試験のデータでした。アリナミンの主成分であるビタミンB1には疲労回復などの作用がないことや、ビタミンB1の欠乏で起こる脚気が現代社会ではほとんどないことに加えて、繰り返しの服用でアナフィラキシー・ショックなども起こりうること、など多くの問題点が指摘されたのです。

アリナミンには薬店で買える一般薬と、病院で用いる専門医薬品とがありますが、成分はほぼ同じです。一般薬のほうは、いまでも薬店で買えますが、専門医薬品のほうは健康保険での使用が厳しく制限され、ほとんど使われなくなりました。訴訟になることはありませんでしたが、一人の研究者の情熱が行政を動かしたのです。

しかし当時の権威者たちがランダム化比較試験の実施に反対するなど、その道のりは険しく、「異論を認めない空気を作っていたのは、大学の教授など社会的に権威と認められている人たちではなかったか」と、この研究者は述懐していたそうです。

翻って、歴史上、類を見ない困難が予想される
コロナワクチン訴訟には、どんな展開が待っているのでしょうか。

【蛇 足】
スモンの疫学調査を行った教授の講義を受け、のちに研究の手伝いもすることになった私にとって、スモン訴訟は疫学・統計学の意義を学ぶ好機となり、かつ薬害という言葉が脳裏に刻まれる出来事でした。


【参考文献】
1) Avorn J, Two centuries of assessing drug risks. N Engl J Med, Jul 19, 2012.
2) 土井脩, スモン事件, 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス, 47(8): 598-599, 2016.
3) Dabrowska A, et al., Prescription Drug User Act (PDUFA): 2017 Reauthorization as PDUFA VI. Congressional Research Service, Jun 8, 2017.
4) マーシャ・エンジェル, 『ビッグ・ファーマ 製薬企業の真実』. 篠原出版新社, 2005.
5) 松枝亜希子, 1960-70年代の保健薬批判―高橋晄正らの批判を中心に―, Core ethics, vol. 9, 2013.









(2023.9.4)
Q 流行りの統計分析法に異議あり?

A 
ワクチンも含めた医療行為の正当性を証明する唯一の方法は、すでに当ホームページでも繰り返し紹介してきたランダム化比較試験です。協力者を大勢集め、同意書をとった上で、偏りなく2つのグループにわけ、本人にわからないようにして、一方に本物を、他方にはプラセボを使い、長い年月にわたって追跡し、結果を見届けるというものです。

ところが、「新型コロナワクチンは有効だった」との分析結果を報じた論文の大部分では、ランダム化比較試験ではなく、
テスト‐ネガティブ分析なる方法が使われていたのです。今回は、これがどんな方法なのか、正しいものなのかを考えてみることにします。

簡単に言えば、「検査を受けに来て陽性となった人たちのワクチン接種歴を調べ、陰性だった人たちのそれと比べてみよう」という方法です。

まず、この方法を用いた代表的な論文を2つ取り上げて、それそれの結論をまとめてみます。そのひとつは、肺炎や呼吸苦などで入院した50歳以上の米国人31,698名を分析したものでした(文献1)。そのうち、コロナの検査で陽性となり入院するに至ったのは4,055人、体調不良で入院したにもかかわらず検査で陰性だったのは27,643人でした。それぞれの群で
ワクチンを1回以上打っていた人の割合は、以下のとおりでした。

【報告例1】
 陽性の群 →   4,055人、うちワクチン接種    360名 (  
8.9%
 陰性の群 → 27,643人、うちワクチン接種10,932名 (
40.0%

つまりコロナに感染した群では、ワクチンを打っていた人が圧倒的に少なかった、という結論なのです。

もうひとつは、米国の政府機関である疾病予防管理センター(CDC)がワクチン接種を推進する根拠としてきたデータです(文献2)。対象は、発熱などの症状で入院した65歳以上の患者417名でした。ファイザー社かモデルナ社のワクチンを1回以上打っていた人は、以下のとおりだったということです。

【報告例2】
 陽性の群 → 187名、うちワクチン接種者19名 (
10%
 陰性の群 → 230名、うちワクチン接種者62名 (
27%

この2つの調査データは、どちらも米国人が対象で、しかも入院患者に限定しています。また、ワクチンを打ってから2週間以内の人を対象から除外したり、年齢や性別、居住地域などを調べて2群間(陽性と陰性の群)で違いが生じないよう処理するなど、一応、気を使った分析がなされていた点も共通しています。

それにもかかわらず、「報告例1で8.9%対40.0%」、「報告例2では10%対27%」と、陽性群と陰性群における接種率の割合に、大きな違いが出てしまっているのはなぜなのでしょうか?。

ここで、テスト‐ネガティブ法がどのような方法なのか、動画で見ておくことにしましょう。相反する仮想のキャラクター8人に登場してもらい、分析がどのように行われるのかをシミュレーションしたものです。

一方、テストーネガティブ分析の結果を、真っ向から否定するデータもたくさんあります。たとえばスコットランド保健省のレポートでは、以下のような事実が示されています(文献3)。

同地方では、2022年の初めのある一週間、ワクチン接種を受けた人と受けなかった人が、およそ同数の百万人ずつでした。ところが、未接種者でコロナに感染した人は人口十万人当たり341人であったのに対し、接種した人たちでは550名となっていました。つまり
接種した人たちのほうが1.6倍も多く感染していたのです。

この事実に対してスコットランド当局者は、(当ホームページQ7(6)とQ12(5)でも報告したとおり)次のようなコメントを直ちに発表していました。

『このデータは、条件がそろっていないグループを比べただけであり、ワクチンの効果を否定するものではなく、誤った解釈をしないように。以下は、比べていけない理由である。
 ・接種した人たちは、健康に関心が強く、コロナの検査も積極的に受けたはず
 ・接種した人たちは、何らかの理由で感染リスクが高く、接種に積極的だったかも
 ・接種した人たちは、安心して自由に動き回り、感染リスクが高まっていたかも
 ・未接種者は、とっくに感染していて調査期間中に自然免疫ができていたのかも』

当局のこのコメントこそが、背景をそろえていない2つの群を比べることの危険性を、図らずも言い当てているのではないでしょうか?

この指摘に加えて、テスト‐ネガティブ分析で気になる点を以下にまとめておきます(文献4,5,6)。

 ・ 対象者の居住地によって、ワクチン接種を強制する雰囲気に差はなかったのか
 ・ 接種を受けた際、マスクや手洗いなどの指導も受けていたのではないか
 ・ 同じ条件で行われた複数の分析結果に、なぜ何倍もの違いが生じていたのか
 ・ 
スコットランドを初めとする多くの実態調査が示すように、ワクチン接種者の
   ほうで感染が多くなっていた事実をどう説明するのか


テスト‐ネガティブ分析は、ワクチン問題の根幹にかかわる最重要テーマです。専門家たちは、「検査を受けに来た人たち」という共通項があるので、比べることに問題はないとしているのですが、このような主張と、どう対峙していけばよいのか、ご意見をお寄せください。

【備 考】
文献1-3は、実際にはさまざまな分析結果をまとめて報じたものとなっています。結論も複雑なため、関係する部分だけを本文で取り上げました。
 なお当ホームページで使用している動画について、「途中で止められるようにしてほしい」とのご要望が届いています。動画はパワーポイントのgifファイルで作成していますが、途中で止めることができません。便法をご存知のかたはお知らせください。

【参考文献】
1) Thompson MG, et al., Effectiveness of Covid-19 vaccines in amubulatory and inpatient care settings. N Engl J Med, Oct 7, 2021.
2) Tenforde MW, et al., Effectiveness of Pfizer-BionNTech and Moderna vaccines against COVID-19 among hospitalized adults aged >= 65 years - United States, January-March 2021. MMWR, May 7, 2021.
3) Public Health Scotland COVID-19 & Winter Statistical Report. Feb 16, 2022.
4) Cowling BJ, et al., Increased risk of noninfluenza respiratory virus infections associated with receipt of inactivated influenza vaccine. Jun 15, 2012.
5) Meester R, et al., The test-negative design: opportunities, limitations and biases. J Eval Clin Pract, May 25, 2023.
6) Graham S, et al., Bias assessment of a test-negative design study of COVID-19 vaccine effectiveness used in national policymaking. Nat Commun, Jul 21, 2023.









(2023.8.28)
Q 感染しても無症状の人の体質とは?

A 
「風邪を一度もひいたことがない!」、「熱が出るってどんな感じかわからない?」、「食中毒になったことがない!」と言い張る人に出会うことがまれにあり、どのような遺伝子を持っているのかと、以前から興味津々でした。

新型コロナに感染した人の調査から、
5人に1人は無症状であったことと、その理由が遺伝子の違いにあることが判明しました(文献1)。研究成果を発表したのは、米国、オーストラリアなどの研究者チームで、骨髄バンクに登録した約30,000人を対象に、ある遺伝子の配列を調べた上で、コロナ感染の有無と症状を、スマホを使って確認したというものです。

最終的に新型コロナの検査が陽性で、かつコロナワクチンを接種していない約1,500人が分析対象となりました。分析した遺伝子は、「細胞内に侵入したウイルスなどの断片を捕捉して細胞表面に提示する役割の物質」で、当ホームページでも繰り返し紹介してきたものです。

この物質は
ヒト白血球抗原と名づけられていますが、その略号であるHLAを用いて、説明を続けます。HLAの形状を決める遺伝子は個人差が大きく、無数ともいえるバリエーションが存在します。さまざまな細胞に存在していますが、とくに免疫細胞や内皮細胞での働きが重要です(文献2)。

細胞表面に提示した異物の情報を知らせる相手は、以下の図のとおり、あの「殺し屋細胞」です。

     

分析の結果は、米国と英国の2つの異なる骨髄バンクの登録者でも確認され、信頼性は高いと研究者たちは述べています。内容はいささか複雑なものでしたが、わかりやすくまとめると以下のようになります(文献3)。

 ・無症状だった人たちの20%がHLA-B*15:01という特定のタイプのHLA遺伝子を
  持っていたが、症状があった人では9%に留まっていた

 ・この遺伝子を両親から受け継いだ人は、無症状であった割合が(まったく持って
  いない人に比べて)8倍も高かった

 ・この遺伝子を持っている人は、殺し屋細胞の機能が強力だった

特定のタイプのHLA遺伝子を持っている人では、殺し屋細胞がより強力に機能しているという結論なのですが、そのメカニズムはまだ解明されていません。

新型コロナウイルスに感染しても、2割の人はまったく無症状であり、その理由が遺伝子の違いにある、という新発見がなされたことになります。

【余 談】
  HLAには、ほかにもさまざまな働きがあります。たとえば匂いの信号を伝えていることから、男女がパートナーを選ぶ際、互いを魅了し引き寄せる因子になっているかもしれない、とする研究報告もあります(文献4)。

【参考文献】
1) Augusto DG, et al., A common allele of HLA is associated with asymptomatic SARS-CoV-2 infection. Nature, Aug 3, 2023.
2) Yarzabek B, et al., Variations in HLA-B cell surface expression, half-life and extracellular antigen receptivity. eLIFE, Jul 10, 2018.
3) Abbasi J, A genetic explanation for why some people had asymptomatic COVID-19. JAMA, Aug 2, 2023.
4) Brennan PA, et al., Mammalian social odours: attraction and individual recognition. Phil Trans R Soc B, Nov 8, 2006.









(2023.8.21)
Q 免疫の大原則を知れば問題点も見えてくる?

A 
コロナ禍の時代を経て、図らずも免疫分野の研究が進み、問題点も浮き彫りになってきました。

当ホームページでは、研究成果が発表される折々に概要を紹介してきましたが、情報はいつも断片的で、不明な点が多く、相互の関係もわかりにくいものでした。そこで今回は、これまでに報告してきた断片的な情報を整理し、「免疫システムの大原則」としてまとめることにしました。

新型コロナウイルスに対するワクチン接種が、なぜ無効で、なぜ危険なのかを改めて理解するための基礎知識となるはずです。なお、以下の説明で用いている動画は、これまで当ホームページで掲載してきた動画に改良を加えたものとなっています。

まず、「中和抗体に対する重大な誤解」を解いておかなければなりません。抗体とは、ウイルスや細菌などの微生物に感染した際、体内で作られる免疫物質のことです。

微生物は、免疫細胞に取り込まれると、ばらばらに分解されるのですが、その破片のひとつひとつが複雑な形をしているため、抗体もそれぞれに対応して作られます。たとえば新型コロナウイルスに感染したときも、1種類ではなく多彩な抗体ができることになるのです。そのうち、本物のウイルスと培養細胞を使って、実験的にウイルスの侵入をブロックすることが確かめられたものだけが「中和抗体」と呼ばれます。

ポイントを動画で解説しましたので、以下の青文字の部分をクリックしてください。画面左上の←印をクリックすると、この頁に戻ることができます。
 → 中和抗体には、期待されているほどの効果がない!!

では、ウイルスの増殖を阻止し、重症化を防いでくれる主役は何なのでしょうか? 次の動画は、その仕組みを説明したものです。
 → ウイルスを破壊し重症化を防ぐのは、殺し屋細胞の仕事!!

着目すべきは、殺し屋細胞の働きにワクチン接種が関係していないことです。殺し屋細胞の機能を測ることが難しいこともあり、個人差をもたらしている理由は、まだよくわかっていません。

さて、新型コロナワクチンの接種を繰り返した人たちのほうで、むしろ感染する人の割合が高いことが、多くの研究で示されてきました。なぜワクチンは効かなかったのか? そのメカニズムを次の動画で示しました。
 → 繰り返しのワクチン接種が無意味なワケ!!

動画の最後に「抗体の中には危険なものもある」と述べていますが、その仕組みを解き明かしたのが次の動画です。
 → ワクチンで作られた過剰な抗体は、ときに危険な存在となる!!

以上の大原則により、前回の当ホームページ記事で報告したような数々の不利益がなぜ起こったのかを明確に説明できるのです。


 ―総まとめ―

当ホームページでは、メッセンジャーRNAを利用したワクチン自体の危険性と、お金に翻弄された人々の欺瞞について、厳選した情報をもとに報告を行ってきました。以下はその要点です。

 ・メッセンジャーRNAを包む膜に毒性の強い物質が含まれている
 ・再生されるトゲトゲ蛋白は自己免疫病を引き起こしている
 ・トゲトゲ蛋白の配列に、狂牛病原因物質に酷似した遺伝子が含まれている
 ・ワクチンを精製する工程の不備から、がん遺伝子が混入していた
 ・製薬企業が発表した論文にはデータのねつ造があった
 ・後ろ向き調査という偽りの分析法によって得られたデータで、ワクチンの
  誇大な宣伝がなされてきた

これらの現実とともに、免疫システムの大原則を知るにつけ、新型コロナのワクチンを擁護できるような理由は何ひとつないことがわかってきます。

それにもかかわらず、官民をあげてワクチン接種が推奨されてきたわけですが、その背景にいかなるメカニズムが働いていたのでしょうか。

【参考文献】
1) Sawant J, et al., A review: understanding molecular mechanisms of antibody-dependent enhancement in viral infections. Vaccines, Jul 14, 2023.









(2023.8.14)
Q 繰り返しのワクチン接種が危険なわけ?

A 
当ホームページでは、コロナワクチンの危険性について、統計データから免疫理論まで、あらゆる側面から考察を重ねてきました。しかし、ある理論の重大性がずっと気になっていました。

その理論とは、当ホームページのQ18(第3回、2023年1月9日)で紹介したもので、「以前の免疫の記憶が似て非なる新たな抗原に対する抗体産生を妨げる」という説です。
抗原原罪説という名称でも語られています。これまでの研究から、以下のような事実が判明しており、その理由がこの理論で説明できるのではないかと考えられているのです(文献1)。

 ・夏カゼの原因となるコロナウイルスは以前から存在していたが、それに感染した
  ことがある人のうち、約2割は
新型コロナウイルスに対する中和抗体ができない

 ・抗原の種類を増やした新しい「9価の子宮頸がんワクチン」は、
以前から使われて
  いた5価ワクチンをすでに接種している人に打っても効かない


 ・デング熱(4類感染症)には4つのタイプがあるが、その1つに感染した人が
別の
  タイプに感染すると、中和抗体が効かないばかりか、むしろ重症化する
(抗体依存
  性感染増強と呼ばれる現象:後述)

 ・2009年に流行したインフルエンザ(H1N1型)に感染して
死亡した人の多くは、
  以前、別のインフルエンザ(H2N2型)が世界的に大流行したころ生まれていた

しかし、抗原原罪説は、まだメカニズムがよくわかっていないこともあり、当ホームページでもうまく説明できないままとなっていました。ところが、私が脳の研究を行っていたころ
側抑制という神経回路に傾注していたことを、ある日、突然、思い出したのです。

当時の論文には、以下のようなパターンとともに、側抑制の巧みな仕組みが示されていました(文献2)。それぞれ明るさが異なる5つの四角形を左から、ただ並べたものです。各四角形の中は濃淡なく、それぞれ完全に均一なのですが、矢印で示した境界の辺りが、少しだけ明るくなって見えませんか!?

   

ヒトの視覚を司る神経細胞は、外界の光を感ずると、その信号を大脳に伝えます。このとき、多数の神経細胞が反応するため、脳は2次元のパターンとして認識できることになるのですが、各形状の境界付近は、明暗の異なる光信号が錯綜するため、少しだけぼやけてしまいます。

脳の神経細胞はそれぞれ
にある細胞とつながっていて、強い信号を受け取ると、抑制をかける信号を送るようになっています。たとえて言えば、ピンボケの写真を修正するため、コントラストを強調する画像処理を行っているようなものです。この仕組みが側抑制です。

この「明暗の異なるパターン」を見ている、あなたの脳内では、リアルタイムで側抑制が行われているため、明るさの異なる境界域で錯覚が生じてしまいます。

さて、このような仕組みは、神経細胞に限らず、体内のいたるところで見出すことができ、ヒトが健康に生きていくための基本原理ともなっています。免疫システムも、その例外ではありませんでした。抗原原罪説もその原理に従ったものだったのです(文献1)。以下の動画に、その仕組みをまとめました。



免疫システムでは、神経細胞のように直接つながったネットワークこそありませんが、免疫細胞が分泌する物質が信号を伝える枠割を果たしています。その様子が、まさに側抑制でした。

この免疫の仕組みは、当ホームページが取り上げてきた「新型コロナワクチン」に限らず、
どのワクチンにも根源的な矛盾が潜んでいるという重大なメッセージとなっています。たとえば新型コロナウイルスの変異に合わせて、少しずつ異なるワクチンを作って接種を繰り返していくと、効果が相殺されてしまうのです。

それどころか、
抗体依存性感染増強(ADE;当ホームページQ7(3)参照)と呼ばれる、危険な反応を引き起こす抗体ができてしまう可能性も過去のデータは示しています(ただし、そのメカニズムは側抑制だけで説明できない)。

免疫の記憶は、メモリーT細胞と呼ばれる別の免疫細胞によって補強され、5~75年の長きにわたり残存します(文献3)。つまり、ずっと昔の出来事が関与してくるため、この先、思いもよらぬ形で健康被害が起こってくるかもしれません。

ワクチン神話は、根本的から見直す必要が出てきました。

【備 考】
この理論は不明な点がまだ多く、動画には私の推論も含まれています。ひとつだけはっきりしてきたのは、側抑制をかける信号のひとつが「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」という酵素だという点です。この酵素は、側にあるB細胞のDNAを書き換えてしまうという働きをします。
 なお、ウイルスなどの断片を異物(抗原)として認識する仕組みについては、わかりやすさを優先して省略した部分もあります。

【参考文献】
1) Brown EL, et al., Original antigenic sin: the downside of immunological memory and implications for COVID-19. mSphere, Mar 10, 2021.
2) Bailey R, What is lateral inhibition? definition and examples. Science Tech Math, Jun 29, 2019.
3) Kunzli M, et al., CD4+T cell memory. Nat Immunol, May 8, 2023.









(2023.8.7)
Q 最近の気になるニュース3題?

A 
<品質に重大な差?>
コロナワクチンに関係する情報は、そろそろ出つくした感もありますが、それでもなお耳を疑う実態がまだまだ隠されているようです。当ホームページあての情報提供も多く、いくつかをまとめました。

「以前から危惧されていた不安」を、デンマークの科学者たちが証明してくれました(文献1)。デンマークでは、米国と同じような「ワクチン副作用報告システム」があり、誰でも匿名で投稿できるようになっています。着目すべきは、ワクチンの製造単位ごとに割り当てられる
製造ロット番号がいっしょに登録されていたことです。

ワクチンに限らず医薬品は、1回の工程でまとめて大量に製造します。そのため、途中で何か問題があれば、そのロットから小分けにされる商品のすべてに悪影響が及んでしまうことになります。

   

デンマークは総人口が約580万人で、千葉県や兵庫県とほぼ同じです。国民の約8割が1回以上の接種を受けたとされ、2020年12月27日からの約1年間で、13,655人から延べ43,496件の副作用報告がありました。

同国では52種類のロットが使われていましたが、分析の結果、ある特定のロットのワクチンを接種した人に、異常に高い割合で副作用が生じていることが判明したのです。そのロットは、デンマークで使われた全ワクチンの4.22パーセントを占めるものでした。

日本でも、特定のロットのワクチンに金属片が混入していることがわかり、テレビなどでも一時、報じられましたが、いつの間にかニュースは封じられてしまいました。コロナワクチンは、研究開発の段階も、臨床試験も、国の審査も、「ずさん」の極みでしたが、その上、製造工程までも「安全性」が後回しにされていたのです。


<見逃されてきた副作用?>
2つめの話題は、ワクチンの副作用として有名になった「心筋炎と心膜炎」についてです。

心筋炎は、ウイルス感染や免疫異常によって心臓の筋肉に炎症が起こった状態であり、多くは数週間で治るとされています。胸の痛み、不整脈などの症状があります。心膜炎のほうも似ています。心臓を包む膜に起こる炎症で、息苦しさや胸の圧迫感などがあり、深呼吸で症状が悪化するという特徴もあります。

どちらも正確な統計が日本にはなく、実態がよくわかっていなかったのですが、コロナワクチン接種後の副作用として多発していることがわかり、改めて注目を集めた形です。

診断は必ずしも簡単でなく、心電図や心エコー検査、CT・MRIなどの検査が必要となります。ワクチン接種後の発生頻度を調べた研究では、多くが「心電図に異常があった場合」という定義で集計が行われてきました。米国疾病予防管理センター(CDC)は、それらのデータをまとめて、10万人当たり1人(
0.001%)程度の発生頻度と公表しています。

スイスの研究者たちは、大学病院に勤務する職員4493人に協力を求め、777人にワクチンを接種し、3日後に採血を行って
トロポニンTと呼ばれる物質を測定しました(文献2)。残りの職員には、ワクチンを打っていない状態で同じ検査を行い、数値を比較したのです。

集計の結果、ワクチン接種した人たちは、接種していない人に比べてあきらかにトロポニンT値が高く、
2.8%に異常値が認められました。異常値は、女性に比較的多く、平均年齢が46歳でした。

トロポニンTは心臓の筋肉成分の一部で、損傷があると血液中に滲みだしてくるという物質ですから、ワクチン接種後、心臓にあきらかなダメージがあったことになります。異常値を示した人たちが、その後、どうなったかは不明ですが、心筋炎と診断された人の2割は、不治の病とされる「心筋症」に移行するという統計もあり(文献3)、心配事がまたひとつ増えたことになります。


<いまさら、国産ワクチン?>
3つめの話題は国産ワクチンです。第一三共株式会社は、『2023年1月に製造販売承認申請を行っていたが、8月2日、国産初のmRNAワクチンとして承認を取得した』と、記者発表しました(文献4)。ただし起源株(武漢株?)の1価ワクチンであり、追加接種用であることから、国のワクチン接種プランに従って発売はしない、との内容でした。

このややこしい発表については、奇しくも当ホームページの先週の記事で「ワクチンビジネス裏事情」を詳しく解説したところであり、再度、ご参照いただければ理解が進むものと思います。同社は、今年中には新しい変異株XBB.1に対応したワクチンを製造し、供給したいとしています。

このワクチンについては、正式な論文がまだ発表されていません。申請直前に報じられた情報によれば、検討対象は、2回の接種を済ませた約5000人の健康成人で、半年以上経過していることを条件に、試作品の接種を行いました(文献5)。血液中の中和抗体を調べたところ、「既存のワクチンに劣らない」数値が確認できた、との内容でした。

製薬企業は、常に新しい薬を研究・開発し、従来の薬より優れていることを自慢したいはずです。それにもかかわらず、臨床試験で期待したほどのデータがえられなかったとき、「既存の薬に劣らない効果を認めた」という表現を使うのが定番となっています。

中和抗体は、当ホームページQ7(8)で紹介したとおり、免疫機能のごく一部でしかなく、これをもってワクチンの効果を示したことにはなりません。「感染を実際に予防し、副作用もなかった」ことを証明してくれなければ、実用化したとは言えないでしょう。

ポストコロナのいまになってワクチンを開発するのであれば、せめてメッセンジャーRNAタイプではない、将来に備えた新技術を研究してほしいものです。

【参考文献】
1) Schmeling M, et al., Batch-dependent safety ofthe BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine. Eur J Clin Invest, Apr 13, 2023.
2) Buergin N, et al., Sex-specific differences in myocardial injury incidence after COVID-19 mRNA-1273 booster vaccination. Eur J Heart Fail, 2023.
3) The link between myocarditis and cardiomyopathy. Myocarditis Foundation, 2023.
4) 株式会社第一三共, Press Release, Aug 2, 2023.
5) Daiichi Sankyo's Covid-19 vaccine trial meets primary endpoint. Clinical Trials Arena, Nov 15, 2022.









(2023.7.31)
Q 今後、コロナのワクチンはどう考えればよいのか?

A 
「最初の2回のコロナワクチンを打っていない人は、なぜオミクロン株のワクチンを受けられないのですか?」とのご質問が届きました。今回は、この問題にまつわる話題を取り上げます。

厚生労働省のホームページには、次のような説明があります。「
従来の1価ワクチンによる初回(1回目と2回目)接種を終えた方を対象に、オミクロン株対応2価ワクチンによる追加接種を実施しています。・・・・・接種が受けられる期間は令和6年(2024年)3月31日まで。」

1価のワクチンとは、2019年の暮れに中国武漢市で最初に流行した新型コロナウイルス(武漢株)の遺伝子配列を元に、製造されたワクチンのことです。対象となるウイルス(抗原)が一種類だけなので、1価と呼ばれています。

理由は、「1回目と2回目を終えた人だけを対象にした臨床試験しか行われていないから」というものです。厚生労働省が挙げている臨床試験は2つあり、どちらも米国で行われたものでした。臨床試験の対象者を選ぶに当たり、ワクチン未接種の人が少なかったことと、1価のワクチンも販売を続けたいから(あるいは在庫がダブついていたから)というメーカーの思惑もあったかもしれません。

しかし、その米国では、国の機関である米国食品医薬品局(FDA)が、「1価のワクチンは使用停止し、すべて回収する。この処置は、ワクチン接種の際の混乱を避け、ミスが起こらないようにするため」と、明言しているのです。

では、1価ワクチンと2価ワクチンには、どんな違いがあるのでしょうか。 2価ワクチンには、1価ワクチンの成分もそのまま含まれていますので、基本的な違いはありません。したがって、1価ワクチンを先に受けていなければ2価ワクチンは受けられないという説明には、医学的根拠がないことになります。

実は、2価ワクチンにも2つの種類が存在していました。旧聞に属しますが、オミクロンの流行には、BA.1とBA.2、それにBA.4とBA.5とがありましたが、ファイザー社とモデルナ社がオミクロン株対応のワクチンを試作しFDAに申請したころには、前者の流行がちょうど終わりかけていました。そこで専門家会議は、両メーカーに対し、BA.4とBA.5に対応したワクチンに作り直すよう指示したのです。

当時、日本政府が慌てて発注した2価ワクチンは、実はこの流行遅れのほうだった、という逸話を、以前の当ホームページで紹介しました。さらに言えば、BA.4、BA.5変異株の流行もすでに終息し、いまはXBBなど、さらに新しい変異株が主流になっています。

1価ワクチンと2価ワクチンの効果の違いを具合的に検証した研究が、いくつかあります(文献3,4)。それらによると、新型コロナウイルスの各変異株に対する効果(中和抗体の産生や免疫細胞の反応)に、まったく違いがないことがわかっています。2価ワクチンにはオミクロン株の成分も入っているにもかかわらず、同株に対する効果が1価ワクチンを打った場合と同じだったのです。

次のグラフは、2種類のワクチンをそれぞれ打つ前と打ったあとで、中和抗体がどうなったかを比較したものです。グラフ上は、2価ワクチンを打ったあとの抗体価が少し強くなっているようにも見えますが、個人差も大きく、統計計算で有意差なしと判定されています。

    

2種類のワクチンで差が出なかった理由もあきらかになっています。

2023年1月9日付の当ホームページでも紹介した「敗者は抹殺せよ」理論にしたがって、先に接種したワクチン(抗原)の情報が、免疫細胞に強力に記憶されます。一方、あとで、形状がわずかに異なるだけの抗原(オミクロン株ワクチン)に遭遇すると、免疫反応が起きないようにブレーキがかかる仕組みになっているからなのです(文献5)。「似たような抗体が無数にできて混乱しないようにするため」の仕組みではないか、というのが私の推論です。

以上、専門的な話題が続きましたが、今後、コロナワクチンをどう考えていけばよいのかを以下にまとめました。

 (1) 1価ワクチンによる初回接種は、令和6年(2024年)3月31日まで受けること
   ができるが、市町村から郵送される接種券とマイナンバーカードなどが必要

 (2) 1価ワクチンと2価ワクチンはどちらも効果が同じであり、両方打つ意味はない

 (3) ワクチン接種よりも、実際に感染した人のほうが免疫がつきやすく、その後の
   予防効果が少しだけある

 (4) それにもかかわらず、一度感染した人も再び感染しているという実態がある

 (5) 当ホームページで紹介してきた数々のエビデンスから、どのワクチンも効果が
   証明されておらず、かつ副作用も深刻であることがわかっている

 (6) したがって、どのコロナワクチンも、またいかなる場合であっても、あらためて
   打つ理由は見いだせない

【参考文献】
1) COVID-19 bivalent vaccines. FDA, May 30, 2023.
2) Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccines. FDA, Jul 14, 2023.
3) Wang Q, et al., Antibody responses to Omicron BA.4/BA.5 bivalent mRNA vaccine booster shot. bioRxiv, Oct 24,2022.
4) Ai-ris Y, et al. Immunogenicity of the BA.5 bivalent mRNA vaccine boosters. bioRxiv, Oct 25, 2022.
5) Offit PA, Bivalent Covid-19 vaccines - a cautionary tale. N Engl J Med, Feb 9, 2023.










(2023.7.24)
Q ポストコロナ時代の体調不良に対処する方法とは?

A 
「コロナ後遺症は本当に存在するのか?」という疑問があることについて、以前、当ホームページで考察しました。しかしポストコロナのときを迎えた今、さまざまな体調不良に悩む人が少なくないことは確かです。そこで、コロナ後遺症や慢性疲労症候群、あるいはワクチンの副作用などをとくに区別せずに、長引く体調不良にどう対処すればよいのかを、最新情報からまとめました。

症状の多様性については、すでに2023年6月12日付の当ホームページで述べたとおりですが、中には病気を新たに発症したという人もいます。心臓病、脳卒中、腎臓病、間質性肺炎、起立性(または体位性)頻脈症候群、眼疾患、鼻炎などが代表的で、その人にとっては初めてとなる病気です。そのため、特定の症状が長引く場合は、まず病院で胸部エックス線や心電図、血液検査など一般的な検査を受けるか、あるいは眼科、耳鼻科などを受診したほうがよいでしょう。

それで病名がはっきりしなかったり、「異常なし」と言われたら、専門的な検査に進むことになります。健康保険で可能な検査としては、単球(血液中の細胞成分)の増加、血液中コルチゾール(ホルモンの一種)の低下、血清フェリチン(鉄分を蓄えるたんぱく質)の増加などが認められれば、「長引く体調不良」の傍証になるかもしれません(文献1)。

ワクチンが免疫機能を破壊する仕組みについて、当ホームページのQ16で解説しましたが、そこに登場したさまざまな炎症物質(Il-1β、IL-6、TNF、INFβなど)が異常値を示しているとの研究発表も少なくありません。しかし、それらの特殊検査の結果が原因解明や治療に役立つことはなく、高額な支払いを求められるだけ損かもしれません。実際、クリニックで法外な料金を請求されたと、怒りのお便りも届いています。

長引く体調不良の人を対象にした研究では、さまざまな抗体の値が高くなっていたとするデータも多いのですが、やはり治療に結びつくものではないことが、あきらかになっています(文献1)。

腸内細菌の乱れが関与しているという説もあります。腸の粘膜にコロナウイルスやワクチン接種でできたトゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)の受け皿(受容体)が多いためですが、対処法はまだわかっていません。

では、「長引く体調不良」に対して、どう対処すればよいのかです。以下、注目を集めている対処法をいくつか取り上げて、評価を加えました。

<起立性頻脈症候群>
 急に立ち上がったりしたときに心臓がどきどきして、脈拍数が2倍くらい(120回/分ほど)に増加する人がいます。自律神経の障害によるもので、頻脈を抑える薬(β遮断薬など)が有効とされていますが、血圧が下がり過ぎてしまうという問題点も指摘されています(文献1)。

<コルチゾールの低下>
 血液中のホルモンのひとつコルチゾ-ルが極端に低い人がいる、との報告も複数ありますが(文献2)、同系統のホルモン剤を使って補っても、症状は改善しなかったとのことです。

<頭のもやもや・認知機能の低下>
 脳の中に霧がかかったような感じがすると訴える人が多く、ブレイン・フォグ(脳の霧)とも呼ばれています。このような症状に対し、磁気で脳を刺激するTMS(経頭蓋磁気刺激法)が使われ、話題になっています。脳梗塞でマヒが残った人の治療に使われてきた装置なのですが、効果が十分に証明されていないことに加え、脳に与える副作用もよくわからないままとなっています(文献3)。「長引く体調不良」にも応用されていますが、効果が証明されているとは言い難い状態です(文献4)。

<自分でできる養生>
 自分一人で行える健康回復法もいろいろ研究されています。日々の運動習慣が、コロナ感染症からの回復を早めることが以前からわかっていました。大規模な学術調査も行われていて、適度の運動習慣がある人は症状が軽くすんでいた、と報告されています(文献5)。適度な運動量とは、「たとえば早歩きを1日30分、週に4回くらい行うこと」と報告されています。

興味深いのは「鼻うがい」です。具体的な方法はネットに多数の動画が公開されていますので、参考にしてください。500ミリリットルの水に小さじ1杯の食塩を加えたものを、鼻うがい専用容器に入れて使います。

     

鼻うがいは、鼻腔粘膜に残る過剰な免疫反応が、多くの症状を悪化させているのではないか、との発想に基づくもので、新型コロナ感染症の重症化を予防することが多くの研究で立証されています(文献6)。「長引く体調不良」に対しても有効かどうかは、まだわかりませんが、多くの医師が推奨していることと、人畜無害で副作用の心配がないことがポイントです。試してみる価値はありそうです。

ホルモンの1つであるコルチゾールが低下すると、血圧や血糖値が下がったり、脱力感や頭がぼ~とするなどの症状が出てきます。また血液中の塩分量が減少してしまうため(低ナトリウム血症)、塩分を多めに摂取するよう勧めている研究者もいます。

体調不良の原因のひとつが、フリーラジカルという異常物質の蓄積です。この物質は、放射線や紫外線、あるいは炎症や睡眠不足によって生ずるもので、疲労の原因物質としても知られています。幸い、野菜や果物には、フリーラジカルを消去する
抗酸化物質が豊富に含まれています。

したがって、長引く体調不良を改善する確かな方法は、睡眠を十分にとり、生の野菜と果物を食べ、気分転換も兼ねた軽い運動をすることです。ただし、強い疲労感が残っている人は運動が逆効果になりますので、体調への配慮も必要です。

【参考文献】
1) Davis HE, et al., Long COVID: major findings, mechanisms and recommendations. Nat Rev Microbiol 21: 133-146, Mar, 2023.
2) Klein J, et al., Distinguishing features of Long COVID identified through immune profiling. medRxiv, Aug 10, 2022.
3) Kim W-J, et al., Repetitive transcranial magnetic stimulation for management of post-stroke impairments: an overview of systematic reviews. J Rehabil Med, Dec 18, 2019.
4) Noda Y, et al., Real world research on transcranial magnetic stimulation treatment strategies for neuropsychiatric symptoms with long-COVID in Japan. Asian J Psychiatr, Dec 28, 2022.
5) Ezzatvar Y, et al., Physical activity and risk of infection, severity and mortality of COVID-19: a systematic review and non-linear dose-response meta-analysis of data from 1 853 610 adults. BMJ, Aug 22, 2022.
6) Wang T, et al., Efficacy of nasal irrigation and oral rinse with sodium bicarbonate solution on virus clearance for COVID-19 patients. Front Public Health, Mar 15, 2023.









(2023.7.17)
Q ウイルス感染症の流行を予知できる意外な方法?

A 
すでに遠い記憶となりつつありますが、国内で最初の新型コロナウイルス感染症例が認められたのが2020年1月24日で、4月7日には1日の新規感染者数が365人となり、7都道府県に初の緊急事態宣言が出されていました。その少し前の3月、オーストリア・チロル地方の人気スキー場で、観光客・スキーヤー6,000人以上がコロナに集団感染し、欧州各地にウイルスを拡散させるきっかけになったという事件?がありました(文献1)。

そのとき、人知れず、ある重要な調査が行われていました。ヒトに感染したウイルスは、尿や便、唾液などと共に体外に排出されます。そこに含まれるウイルスは、やがて
生活排水として、下水道を流れていくことになります。オーストリアの研究者と行政担当者は、下水道を流れる排水を定期的に採取し、新型コロナウイルスの有無をモニタリングすることにしたのです。

目的は、大規模な集団感染があったあと、再流行があるのか、あるいはウイルスに変異が起こっていないかどうかを監視することでした。

チロル地方のスキー場で集団感染が起こったころは、世界的に検査体制がまだ不十分で、感染者数の正確な把握もできていませんでした。しかし同年の3月、すでにオーストリア全体で第1波がかなりの規模で起こっていたことが、
排水モニタリングで確認できていたと報告しています(文献2)。

実は、このような方法は数十年前から知られていて、たとえばオランダでは、下水道を流れる各種ウイルスを監視するシステムを、昔から国全体で構築していました。注目すべきは、新型コロナウイルスの検査体制が世界的に確立され、新規感染者数の把握も正確になって以降、排水モニタリングで得られたウイルス量の消長パターンが、実測値とぴたり一致していたことです。

次のグラフは、文献2を参考に私が描いたイメージ・イラストです。グレーの棒グラフはPCRで確認された新規感染者数で、赤い折れ線が排水モニタリングで得られたデータを模しています。

  

ただし問題もあります。mRNAは非常に壊れやすいため分析が難しいことに加えて、生活排水を処理する仕組みが地域によって異なっていて、必ずしも実態を正確に表していないかもしれないことです。少なくとも、「排水をくみ上げて検査試薬加えるだけ」で済むような簡単な話ではないということです。

欧州の取り組みに少し遅れて、排水のモニタリングに取り組んでいるのが米国です(文献3)。2020年にシステムの構築を開始し、いまでは全米総人口の40パーセントに相当する生活排水をカバーしています。また、米国内に到着する国際線航空機のトイレ排水を調べることで、水際対策に応用できないかという検討も行われています。

デズニ―ランド・ワールド・リゾートで有名な米国フロリダ州オレンジ郡では、ヒトでオミクロン株が診断されよりも前に、排水モニタリングで存在が確認されていた、とも報告されています。

気になるのは、生活排水に含まれるウイルスに、感染性はないのかということです。この点についても、すでに詳細な検討がなされていて、新型コロナウイルスの場合、条件によって数日間は生きている(感染性がある)ことがわかっています(文献4)。しかし排水処理の方式が確立している日本国内で、そこから感染が起こることは考えにくく、事例の報告もありません。

このたびのコロナ禍で人類が得た教訓は、事件が起こってから慌ててワクチンや薬を創っても、安全性の確認がとれず、むしろ禍を拡大してしまうだけ、というものでした。

この先も、人類は微生物の脅威にさらされ続けていくため、先手必勝の要となる排水モニタリングの仕組みを、国内でも早急に整備していく必要があるでしょう。一部の地域で試みも始まっているようですが、多額の費用と人手を要することから、国を挙げての取り組みが望まれます。

【参考文献】
1) Hruby D, How an Austrian ski resort helped coronavirus spread across Europe. CNN, Mar 24, 2020.
2) Vogel G, Signals from the Sewer, measuring virus levels in wastewater can help track the pandemic. but how useful is that? Science, Mar 11, 2022.
3) Anthes E, As Covid emergency ends, surveillance shifts to the sewers. New York Times, May 11, 2023.
4) Bogler A, et al., Rethinking wastewater risks and monitoring in light of the COVID-19 pandemic. Nat Sustain 3: 981-990, 2020.










(2023.7.10)
Q いつまで続くのか、不毛な議論?

 コロナワクチン接種後に発生する副作用のひとつとして、心筋炎が広く知られています。しかし、ワクチンとの因果関係を認めた論文は、(少なくとも一流とされる)専門誌にほとんど掲載されておらず、例外が2023年5月22日付け当ホームページで解説したイスラエルのデータでした。

そのイスラエルの発表のあと、米国の研究者グループが発表した論文に意外な結論が記されていたことがわかりましたので、概要をまとめました(文献1)。まず従来のデータと比較するため、厚生労働省発表の「ワクチン接種後の死亡者数グラフ」を以下の左側に再掲しました。ワクチン接種の当日から30日目までの死亡者数を棒グラフで示したものでした。

棒グラフの実際の数値は、「0日目が71人」、「1日目が209人」、「2日目が150人」、「3日目が123人」、・・・(以下、省略)となっています。右側の図は、この数値をもとに、

 「71」, 「 71+209」, 「 71+209+150」, 「71+209+150+123」, ・・・

という計算を行って縦軸の値を求め、、折れ線グラフ(積み重ねグラフ)にしたものです。

もし心筋症がワクチン接種と無関係で、常に一定の割合で発生しているのであれば、このグラフは右肩上がりの直線になるはずです。もともと多い病気でもありませんから、その直線の傾きも緩やかなものになるでしょう。

    

さて、新たな研究論文には、米国で稼働しているワクチン副作用報告システム「VAERS」のデータを分析した結果が記載されていました。

2017~2019年の統計による心筋症の発生率に比べ、あきらかに多くなっていたと結論しているのです(男性で12~49歳、女性で12~29歳のみ)。ワクチンは、ファイザー社製とモデルナ社製に限定しています。コロナ禍前の発生率と比べて統計処理していますので、従来の研究発表に比べれば説得力があります。

その要点を積み重ねグラフでまとめると以下のようになります(論文に記されているデータから私が作図)。

   

ただし問題もあります。このVAERSは、医師だけでなく誰でもネット経由で投稿できるのが特徴ですが、その分、不確かさがあります。また心筋症の診断は簡単でなく、さまざまな検査を行って確定できるものであることから、コロナ禍前の統計値が実態を表していない可能性もあります。そのため、「VAERSのデータから心筋症が増えていることの証明はできない」との批判コメントも投稿されていました(文献2)。

この論文で気になることが、まだあります。著者として26人が名を連ねているのですが、そこに米国疾病予防管理センター(CDC)と米国食品医薬品局(FDA)の2つの政府機関に所属する研究者が含まれていることです。「コロナワクチン接種は妊娠経過に悪影響を与えない」と断言し、のちに抗議が殺到し、ねつ造も指摘された論文(文献3)を書いたことで知られる人の名もありました。

コロナワクチン接種を推進する立場だったはずの人たちが、何の自己批判もないまま、手の平を返したような研究論文を唐突に発表したというわけです。いずれにしろ、「この結論が正しい」と広く認識されるようであれば、前週に報告したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の主張も、あながち間違いではなかったことになります。

コロナワクチンの安全性を巡り混迷が深まっただけなのか、あるいは議論が正しい方向に向かい始めたのか釈然としませんが、不毛な議論はそろそろ終わりにしたいものです。

【参考文献】
1) Oster ME, et al., Myocarditis cases reported after mRNA-based COVID-19 vaccination in the US from December 2020 to August 2021. JAMA, Mar 21, 2022.
2) Weiss SR, Myocarditis cases after mRNA-based COVID-19 vaccination in the US. JAMA, May 24/31, 2022,
3) Shimabukuro TT, et al., Preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Jun 17, 2021.








(2023.7.3)
Q 海外の動向から今後の展開を占う?

A 
ドイツ在住の邦人の方から、お便りが届きました。ドイツでは、コロナワクチンによる健康被害をメディアが続々と報じるようになってきたとのこと。副作用については口をいっさい閉ざし、ひたすらワクチン接種をあおってきたメディアが、手のひらを返したような態度をとるようになり、信頼度もガタ落ち・・・との内容でした。合わせて、ワクチンの副作用に対する訴訟の動きも進んでいるのだそうです。

コロナワクチンによる健康被害を、個人が裁判所に持ち込んだという事例は、世界中を見渡してもほとんどなかったのですが、通信社ロイターは、ある女性が、ドイツで初めてビオンテック社を訴える裁判を起こしたという話題を報じています(文献1)。ファイザー社が販売する新型コロナワクチンを開発した会社ですが、ドイツでは販売元にもなっています。

   

裁判を起こした女性は、名前を伏せた上で、161,500ドル(約2千万円)の損害賠償を求めています。女性の弁護士によれば、彼女は接種後、上半身の痛み、食事がうまく呑み込めない、強い疲労感、睡眠障害などの症状が続いている、と訴えているそうです。一方の会社側は、このワクチンはリスクより効果が上回ることが立証されており、争う余地もないとコメントしています。

問題は、ワクチンメーカーが国家と交わした契約上、訴訟や損害賠償に伴ういっさいの責任を免除されることなっているため、かりに原告が勝訴したとしても、誰がお金を支払うのかはっきりしていないことです。

原告の弁護を勤める事務所は、同様の訴えがすでに200件ほど届いており、また別の法律事務所も100件ほどを担当することが決まっていて、ドイツ国内の訴訟はすべて自分たちがまとめることになるだろう、と取材に答えています。

さらにイタリアでも同様の動きが確認されているとロイターは報じています。欧州では、ワクチン禍を風化させないための行動を、人々がとり始めたようです。



次は米国の話題です。2024年に行われる米国大統領選にロバート・F・ケネディ・ジュニア(69歳)氏が名乗りをあげました。以前からワクチン反対を主張してきた人ですが、父親がケネディ元大統領の実弟で、1968年に行われた民主党の大統領候補者指名キャンペーンの最中、凶弾に倒れた人でした。

   

米国のメディアは、同氏の人物像を以下のように報じています(文献2)。ハーバード大学を卒業したあと弁護士の資格を取得し、環境汚染の告発に身を投じるなど、熱心な活動家として知られていました。ワクチンに反対するようになったきっかけのひとつは、自閉症の子供をもつ母親から、ワクチンとの関係を示唆する膨大な学術資料を持ち込まれたことのようです。

2005年には、米国の大衆誌に「三種混合ワクチンなどに含まれる防腐剤が一種の有機水銀で、小児自閉症の原因になっている」と主張する論文を掲載しました。ただし、この記事は、根拠がないとの理由で後に削除されています。

つまりコロナワクチンだけでなく、すべてのワクチンに反対するという立場なのです。このような人たちは、昔から英語でanti-vaxxerと呼ばれ、反社会的行為と位置づけられてきました。

ちなみに、この記事を載せたのはニューヨークタイムズ紙でしたが、かなり強固なワクチン推進路線を貫き、反対する人たちの意見をことごとくフェイクだと決めつけてきた新聞です。「ワクチンパスポートなど、ひとたび受け取れば、あなたたちは国家の奴隷になったようなもの!」と息まくケネディ・ジュニアに対し、30歳の頃にヘロイン所持で逮捕されたことがあるとか、妻が不幸な死を遂げているなどとゴシップを書き立て、変わり者であることを印象づける内容となっていました。

当ホームページでも何回か紹介しましたが、米国にはワクチン接種後の体調不良をスマホで報告できるシステム(VAERS)が以前からあります。TIMES誌は、このシステムとケネディ・ジュニアとの関わりについての記事を掲載しています(文献3)。

ケネディ・ジュニアは、VAERSで得られた情報から「コロナワクチン接種後に死亡例が増えている」と主張していました。これに対して同記事は、「VAERSで集められた情報は、自主申告であることから、不正確で、不完全で、医学的に検証されておらず、単なる偶然でしかないものもあり、そんな結論は出せない」と反論するとともに、同氏の人格を全否定するような文章を連ねたものとなっていました。

しかし、VAERSのデータは、多くの研究者に利用され、コロナワクチンの副作用は軽微で明らかな増加も認められないとの主張の根拠にされてきました。政府機関も、それらの研究論文を引用して、ワクチン政策を推進してきたはずなのです。

厳しい批判にさらされているケネディ・ジュニア氏にとって大統領への道は険しそうですが、もし選ばれたとしたら、いったいどんな展開が待っているのでしょうか?

【参考文献】
1) Burger L, et al., BioNTech faces first German lawsuit over allegend COVID vaccine side effects. Reuters, Jun 12, 2023.
2) Nagourney A, A Kennedy Jr's crusade against Covid vaccines anguishes family and friends. New York Times, Mar 1, 2022.
3) Nirenberg E, at al., Robert F Kennedy Jr. is dead wrong about vaccines. Time, Jun 22, 2023.










(2023.6.26)
Q 討論: コロナ後遺症は存在するのか?

A 
6月12日付の当ホームページで「コロナ後遺症を巡る議論」について報告した折、ご意見や体験談を募りました。届いたお便りは、「やはり病は気から、ではないか」というものと、「身内が感染後、1年もの間、さまざまな症状に悩まされ、仕事も休みがちだった。これこそ後遺症では?」という、2つの立場にわかれていました。

このような疑問は世界的に広がっており、米国ではRECOVER(回復という意味)と名づけられた大規模な実態調査が進行中です。その第1報が発表されましたので、概要をご紹介します(文献1と2)。

データは、政府機関の肝入りで始まったプロジェクトのもと、アンケート調査で集められたものです。対象は全米の34~60歳の男女で、新型コロナに感染した8646人と、感染していないと回答した1118人です。

データを集計したところ、まず両グループを通じて2.5パーセント以上の人たちに認められた症状が全部で37種類あったそうです。代表的な症状は、すでに本ホームページで紹介したものと同じで、「体を動かすとが著しく疲れる」、「だるい」、「めまい」、「頭がもやもやする」、「胃腸の具合が悪い」などでした。統計分析の結果、これら37の症状はどれも、「感染しなかった人たち」に比べて、「感染した人たち」のほうで1.5倍以上も多く認められたとのことでした。

この調査の良い点は、感染しなかった人たちと比べていたことでした。この当たり前のことが、これまでの研究報告では、ほとんどなされていなかったからです。一方、この調査では気になる点も多々あります。

そのひとつは、アンケートの記述が自己申告だったことです。本来、調査の対象にすべきは、ある地域の丸ごと全員か、無作為に抽出した人たちであるべきですが、自己申告制では不公平な偏りが避けられません。2つ目の問題点は、「感染した人たち」のうち4分の1以上が、コロナ感染後30日以内に調査を受けていたことです。30日以内の症状は、後遺症と呼ばない、という約束だったはずです。

そのため2つのグループ間には、重大な偏りがいくつか生じていました。ひとつは、対象者が、SNS経由で自から登録した人や、コロナ後遺症の専門外来から紹介された人など、さまざまに混じり合っていて、グループ間でばらばらだったことです。また、すでに悪性腫瘍を患っている人や、肥満がある人の割合もあきらかに違っていました。

   

以上のことから、ここで紹介した研究論文は、最初から「後遺症ありき」だったのではないか、という疑惑が浮かんできます。

つまり、研究論文を掲載する専門誌は、「差がなかった」という地味な原稿より、「あきらかな差が・・・」としているもののほうが読者の関心をそそるため、優先的に採用しがちです。論文を投稿する研究者のほうも、そのほうが実績を自慢できるため、ついデータを操作してしまったという歴史が繰り返されてきました。さらに言えば、病気が増えれば増えるほど製薬企業は儲かりますから、研究費の助成を大盤振る舞いしてしまうという背景も理解しておく必要があります。

この論文発表は、「コロナ後遺症を巡る議論」と題した当ホームページの先回の報告を真っ向から否定する形になったわけですが、真否に決着をつけるとすれば、科学的検証の確からしさから、「コロナ後遺症という名の
身体的かつ固有の病気は存在しない」とした結論のほうに、現時点では軍配をあげざるをえません。

どちらの研究発表でもコメントされていたのは、コロナ後遺症だとする一連の症状に酷似しているのが、
慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎ともいう)だという点です。すでに1980年代から存在が知られているもので、多くの研究がなされ、脳神経に特徴的な変化が認められるとするデータもあります(文献3)。

この慢性疲労症候群は、原因不明で治療法もなく、捉えどころのない存在なのですが、診断されている人は非常に多く、日米での統計によれば、全人口の0.2~0.4パーセントにも達するとされています。年齢では40歳台に、性別では女性に多くなっています。

つまりコロナ後遺症の学術調査をいくら行っても、40年も前から存在が指摘されていた慢性疲労症候群との区別をつけられないため、分析の仕方によって結論がばらばらになってしまうのです。

学術研究の成果と称するデータが発表されたとき、
陰で得をするのは誰なのかも考える必要があるでしょう。

【参考文献】
1) Thaweethai T, et al., Development of a definition of postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection. JAMA, May 25, 2023.
2) Gross R, et al., Disentangling the postacute sequelae of SARS-CoV-2, E Unibus Pluram (fron one, many). JAMA, Jun 13, 2023.
3) 倉恒弘彦, 慢性疲労症候群(CFS)と機能性身体症候群(FSS). 日本生物学的精神医学会誌, 24: 222-227, 2013.








(2023.6.19)
Q ワクチン接種のもう1つのリスクとは?

A 
ワクチン接種を繰り返し受けると、それまでと少しだけ形の異なる微生物(オミクロン株など)が体内に侵入した際、「敗者は抹殺せよ」という理論に従って免疫機能がまったく働かなくなってしまいます。このことは、2023年1月9日付の当ホームページで詳しく報告しました。今週は、この事実に加え、ワクチン接種を繰り返すと、さらに困ったことになる、という新たな発見を紹介します。

コロナワクチンを接種すると、トゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)に対する「抗体」なるものが体内できることは、広く知られています。その抗体にはいくつか種類があり、ワクチン接種によってできるのは
IgGと呼ばれるものになっています。花粉症でできる抗体(IgM)などと性質が異なっています。

ここまでは広く知られているところですが、実はこのIgGには、さらに4つの種類があり、それぞれIgG1、IgG2、IgG3、IgG4という名前がつけられています。このうち、
IgG1は、イメージ通りの働き、つまり体内に侵入した異物を抑え込む働きをすることがわかっています(文献1)。

一方、
IgG4のほうは、感染したあと数ヵ月してから血液中に現れ、他の抗体の働きを抑え込むように機能します。正確なメカニズムはわかっていないのですが、体内で炎症がだらだら続くのも困りますから、「過去の出来事はもう忘れよう」とばかり、反応を止めさせる仕組みのようなのです(IgG2とIgG3の関与はまだよくわかっていません)。

2023年2月6日付の当ホームページでは、コロナワクチンを5回以上接種すると免疫反応にブレーキがかかり、抗体などが作られなくなってしまう、という動物実験の結果も紹介しました。そのデータは、IgG1だけを測ったものでした(文献2)。

今週の話題は、ワクチン接種後にIgG1~IgG4のすべてを測ったという新たな研究発表についてです(文献3)。次の2つのグラフはその結果です。1つ目は、3回の接種をしたあと、各抗体の値が2回接種後に比べてどれくらい増加したかを割合で示したものです。どちらも、接種後の10日目に血液を調べています。

  

2つ目の次のグラフは「2回目接種の10日後」、「2回目接種の210日後」、「3回目接種の10日後」、「3回目接種の180日後」に測定したIgG4の値を、それぞれ「IgGの総量に対する割合」に換算して、表示したものです。

  
このグラフから、
コロナワクチンを3回接種すると、時間を追ってIgG4が増加していき、半年後にピークとなることがわかります。つまり接種を繰り返し行うと、肝心のIgG1が抑え込まれ、むしろ感染しやすくなってしまうということなのです。

次のアニメは、そのメカニズムをわかりやく描いたものです。

  
IgG4は、以前から自己免疫病や発がんの原因になっている、とも言われていました。そうだとすれば、コロナワクチンが中・長期的な副作用を起こす仕組みについても、いっそう理解が進むことになります。

【参考文献】
1) Uversky VN, et al., IgG4 antibodies induced by repeated vaccination may generate immune tolerance to the SARS-CoV-2 spike protein. Vaccines, May 17, 2023.
2) Gao F-X, et al., Extended SARS-CoV-2 RBD booster vaccination induces humoral and cellular immune tolerance in mice. iScience, Dec 22, 2022.
3) Irrgang P, et al., Class switch towards non-inflammatory, spike-specific IgG4 antibodies after repeated SARS-CoV-2 mRNA vaccination. Sci Immunol, Dec 22, 2022.









(2023.6.12)
Q コロナ後遺症を巡る議論とは?

A 
「コロナの後遺症は存在しない!!」との情報を、2023年5月8日付の当ホームページで紹介しました。感染した人と感染しなかった人を対象に、78項目もの専門的検査を実施し、統計処理を駆使して比べたところ、症状の有無に差がなかったという研究データに基づいたものでした。

その一方、コロナ後遺症についての記事が、今なお欧米の医学専門誌に相次いで掲載されています。たとえば、2023年5月30日に発行された専門誌には、コロナ後遺症を訴える、女性(53歳)の詳細な経過が載っていました(文献1)。ある日、37.9℃の発熱と咽の痛み、頭痛などがありましたが、翌日には症状も回復。数日後のPCR検査で陽性と判明した、という人です。

しばらくして迎えた朝、瞼が重く、開けていられないことに気づきました。その後、いろいろな異変が立て続けに起こります。ジムに通っていたことから体力には自信があったそうですが、突然、歩けなくなり、同時に激しい頭痛に襲われたのです。すぐに病院を受診し、抗生物質を処方してもらったことから、症状はほぼ消失しました。気分も上々で、延期していた簡単な手術を受け、職場にも復帰しました。

ところが、しばらくすると体調が再び悪化。手足のしびれ、全身の痛み、頭のもやもやなどが急速に出てきました。直ちに脳神経の専門病院を受診し、ありとあらゆる検査をしてもらいましたが、すべて異常なしでした。結果に安心すると、症状も劇的に改善し、数日間を平穏に過ごすことができました。

早速、仕事に再復帰したところ、またまた体調が悪化し、通い慣れたはずのジムにも、仕事にも行けなくなってしまった・・・。ジェットコースターのような体調の激変を訴えてきたこの人は、実は、クリニックに勤務する医師でした。

「後遺症ではないか」と心配する患者を専門的に診療してきた医師たちは、専門誌のインタビューに以下のようなコメントをしています(文献1, 2)。

 ・多彩な症状が何の脈略もなく、突然、出現したり消えたりする
 ・訴えている症状が平均して18種類と多く、中には50の症状を訴えた人もいる
 ・息切れ、疲れやすい、筋肉痛、しびれ、動悸、血糖値異常などが代表的
 ・コロナ後遺症に対しては、信頼できる検査も、治療も存在しない
 ・対策の見当がつかず、お手上げ状態だ
  
コロナ後遺症には、定義らしきものもいくつか提案されていて、たとえば米国疾病予防管理センター(CDC)は、「コロナに感染したあと4ヵ月以上に渡って多様で新たな症状を認める場合」とし、世界保健機関(WHO)は、「感染後、3ヵ月以上にわたって新たな症状を認める場合」としています(文献3)。

WHOが制定する「国際疾病分類」というコード表があり、病気の統計や研究に広く使われています。その表に、コロナ後遺症が「U09.9」というコード名で加えられることも決まりました。しかし、だからといって、検査法も診断基準もなく、治療法も存在しないため、患者にとっても、診療に当たる医師にとっても、役立つことは何もなさそうです。

さて、これらの最新情報に接した感想はいかがでしょうか? 冒頭に述べたように「コロナ後遺症という名の
身体的かつ固有の病気は存在しない」との判断が、やはり科学的に妥当ではないかと考えますが、ご意見や経験談をぜひ、お寄せください。

【参考文献】
1) Landhuis E W-Y, et al., How primary care physicians can recognize and treat long COVID. JAMA, May 23/30, 2023.
2) Dorfman D, et al., Approving workplace accomodations for patients with long COVID - advise for clinicians. N Engl J Med, Jun 8, 2023.
3) Nikolich JZ, et al., Toward comprehensive care for long Covid. N Engl J Med, Jun 8, 2023.








(2023.6.5)
Q 因果関係を証明するには、どうすればよいのか?

A 
「年齢や性別、病歴、生活習慣など多くの背景因子を調べ、それらの影響を取り除く統計処理を行っていたので、因果関係は正しく示されたと判断される」との表現を、当ホームページでは繰り返し用いてきました。影響を取り除くとは、どういう意味なのか、考えてみることにします。

次の図は、2つの出来事
の関係を4通りの場合に分けてグラフにしたものです。

  

一目瞭然ですが、(4)のグラフは説明が必要かもしれません。横軸(x)の値が何であっても、縦軸(y)の値がほぼ同じですから、両者はほぼ無関係なのです。では、(2)や(3)のようなグラフを見たとき、両者に原因と結果の関係、つまり因果関係があると言えるでしょうか?

次のグラフは、健康な10人で調べた肥満度と血圧との関係を示したものです。倫理審査委員会の承諾を得て、私が集めた実際のデータの一部です。想像通り、太っている人ほど血圧も高いことを示しているように見えます。

   

肥満度と血圧の間には、いろいろな背景因子が絡んでいるはずです。まず思いつくのは「年齢」です。誰でも、年をとれば体重が増え、血圧も上がっていきそうな気がします。そこで、まず血圧が年齢と関係しているかどうかを知らべるため、このデータをもとに、肥満度(横軸)を年齢に置き換えたグラフを作成し、眺めてみます。

  

次に、血圧の値から
年齢のせいで変動する分を引き算をする、という処理を行います。具体的な計算をしてみましょう。たとえばグラフの右端から3つ目の点で表示されている人は、「年齢が60歳で血圧が138mmHg」です。この人は、直線の式から、

 年齢から予測される血圧 = 0.98 × 60(歳) + 72.5 ≒ 131(mmHg)

と計算されます。実際の血圧は138mmHgでしたから、その差7mmHgは、年のせいではなく、何かほかの因子、たとえば肥満や運動不足など生活習慣上の問題、あるいは動脈硬化症などの病気によるものかもしれません。つまり、高血圧の原因を考える上で対象となる因子を、ひとつ絞ることができたのです。

次のアニメは、一連のややこしい操作をわかりやすく図解したものです。
  
さて、同じ処理を肥満度についても行い、「年齢の影響を取り除いた肥満度」と「年齢の影響を取り除いた血圧」の関係を、改めてグラフにしてみました。その結果は以下のようになり、意外なことに肥満と血圧はほとんど関係がなかったのです。最初に示したグラフだけで判断していたら、間違いを犯していたことになります。

  

人間は、体の仕組みも社会での行動も複雑ですから、実際にはもっと多くの背景因子が絡んでいます。そのため引き算の操作は、高度な数学的技法を要し、「多変量調整」と呼ばれています。
研究データの信頼性を見分けるポイントのひとつは、背景因子がたくさん収集され、多変量調整がなされているかどうかです。

ちなみに『コロナワクチンの有効率は95パーセント』と発表した、あのファイザー社論文(当ホームページのQ10参照)には、背景因子の処理に関する記載がいっさいありませんでした。

【参考文献】
1) 岡田正彦, 医学・生物学のためのデータ解析入門―統計学からわかる現代医療の問題点―, コロナ社, 2004.








(2023.5.29)
Q ポスト・コロナで気をつけたいのは大気汚染?

A 
ポスト・コロナのときを迎え、人々の気持ちがすっかり緩んでしまっているようです。そのせいか、ウイルス性の風邪と胃腸炎が大流行しているのをご存知でしょうか?

さて気持ちの緩みで心配なのは、感染症ではなく「大気汚染」のほうです。かつて
PM2.5という言葉が流行しましたが、コロナ禍のせいで、すっかり忘れ去られた感があります。これは大気汚染の程度を表わす指標のひとつで、空中に浮遊する微粒子のうち直径が2.5マイクロメートル以下のものを指しています(毛髪の直径が50~100マイクロメートル)。PM2.5の濃度は、マイクログラム/立方メートルという単位で表します(以下、単位と略称)。

米国東海岸にある大学の研究者たちが、このPM2.5と死亡率との関係を大規模に調べ、結果を発表しました(文献1)。対象は、米国の公的医療保険制度に加入している65歳以上の男女、約7千万人です。

まず全米を地図上で1キロ平方メートルずつに区切り、各地域で刻々と発表されているPM2.5値から、その年間平均を求めました。次に、各健康保険加入者を、居住地域の郵便番号をもとに、地図上に描いた区画とひもづけし、死亡率との関係を16年間にわたり調べたという研究でした。

結果は、「16年間で全米のPM2.5が12から6単位へと半減していた」ことと、それによって「住民の死亡率が7パーセント減少していた」という事実でした。もちろん、年齢や性別、収入、環境など14項目におよぶ背景因子を調べ、それらの影響を取り除く統計処理が行われていましたので、因果関係は正しく証明されたものと判断されます。

実は、大気汚染と死亡率の関係については、以前から膨大な調査・研究が行われていて、以下のようなことがわかっていました(文献2など)。

 ・ PM2.5が10単位、高まると肺がんが8パーセント増える
 ・ 建物の外で働く人は、中で働く人より肺がんが多い
 ・ PM2.5より粒の大きいPM10.0も肺がんの原因になっている
 ・ すべてのがんの3パーセントは大気汚染が原因
 ・ 幹線道路の近くに住む人や、車を長時間運転する人にがんが多い
 ・ 大気中の一酸化炭素、鉛、二酸化窒素、オゾン、二酸化イオウ、煤(すす)なども有害

では、日本の現状はどうなのでしょうか?

各地域の詳細な測定値が公開されており、各自治体のホームページで見ることができます。たとえば東京都の場合、リアルタイム時報 (tokyo.lg.jp)に測定値が刻々と表示されています。全国には、PM2.5が16単位を超える地域がかなりあり、中には51単位を超えているところもあります。

次の写真は、人口密集地のマンションに設置されている「空気取り入れ口のフィルタ」(当ホームページの2023年4月10日付記事参照)です。左は使用前、右はフィルタを装着して2ヵ月後の写真です。PM2.5は目で見えないものですから、フィルタに付着して見えるのは主に、排気ガス中のスス、解体工事による粉塵、車のタイヤとアスファルトの摩擦によって舞い上がるホコリです。とくにススは、強力な発がん物質として知られています。

  
感染症予防の目的でマスクを着けるかどうかは個人の判断、であることが強調されています。しかし、交通量の多いところに出かける際、私は昔から大気汚染対策としてマスクをしていましたし、これから続けるつもりです。

【話 題】
 当ホームページ宛に届いた話題から。こんなツイッター投稿があったので読んでみてください、とのお便りでした。内容は、「ワクチン接種後に身内が亡くなり、接種した医療機関に情報を伝えようと電話をしたところ、『わかりました。では2回目の接種はキャンセルしておきますね!』と言われた」というものです。うそニュースのような気もしますが、もし本当だったのならブラック・ユーモアで済まされない話です。

【参考文献】
1) Josey KP, et al., Air pollution and mortality at the intersection of race and social class. N Engl J Med, Mar 24, 2023.
2) Kim H-B, et al., Long-term exposure to air pollutants and cancer mortality: a meta-analysis of cohort studies. Int J Environ Res Public Health, Nov 21, 2018.







(2023.5.22)
Q ワクチンの副作用を統計データで証明できるか?

A 
新型コロナワクチンの危険性に懸念をいだく研究者や医師は、決して少なくありません。そのような立場の人たちが期待を寄せているのは、接種後の副作用や死亡など、公表されている統計データ(数値)を分析すれば、危険性を証明できるのではないかということです。

たとえば、2023年5月1日付の当ホームページで紹介した「厚生労働省発表の死亡例」や、同じく3月20日付の記事で述べた「超過死亡」がそうです。しかし、統計データの分析だけでワクチンの危険性を証明するのが難しいことも、繰り返し述べてきたとおりです。

次のグラフは、当ホームページQ14(4)の記事で紹介したイスラエルのデータです(文献1)。2回目のワクチン接種後、数日して心筋症が急増していた事実を、統計データがあきらかに示しています。ワクチンの副作用を証明する数値として、唯一、信頼できるものと私は考えています。

  

信頼できる理由は、以下のとおりです。

イスラエルには日本の制度に似た「国民皆保険」の仕組みがあり、国民はいくつかある保険組合のどれかに加入することになっています。この調査に使われたのは、そのうち全国民の55パーセントが加入する組合のデータ(440万人分)で、病歴やワクチン接種歴などの詳細が記録されています。

分析に使われたデータには、次に示す
5つの条件を満たすという特徴がありました。

 条件1 同じ人たちを時間を追って比べている
 条件2 調査が非常に短い期間で行われている
 条件3 対象の病気は季節などに左右されず、かつ頻度が少ない
 条件4 対象の病気は同じ人で何回か起こりうる
 条件5 死亡例ではない

これらの条件が何を意味するかは、当ホームページで欠陥を指摘してきた「後ろ向き調査」と比べてみると明らかです。後ろ向き調査は、条件1と2がまったく異なっていて、

 条件1→ 無関係で背景もばらばらな人たちのデータを比べている
 条件2→ 期間が短い調査もあるが、昔と比べたものもある

ということです。つまり後ろ向き調査では、たとえ2つのグループの間に違いが認められたとしても、その差をもたらす背景要因が無数にありうるため、原因を断定できません。

一方、「5つの条件」をすべて満たす方法は「
自己対象シリーズ分析」と呼ばれ、自分の身に起こったことを、たとえばワクチン接種の前と後で比べるというアイデアです。比べる対象が自分たち自身ですから、(短い期間であれば)背景要因に違いはないはずです(文献2,3)。

難しいのは、死亡例の扱いです。亡くなってしまうと、「条件5」を満たしません。つまり、当人がいなくなれば、ワクチン接種の前と後で、差が認められるかどうかを検証できなくってしまうからです。

ただし、ワクチン接種後の死亡例について、この方法を改良して使ってみた、という報告がいくつかあります。しかし、その結論は、有意な増加が認められなかったというものでした(文献4,5)。やはり統計データだけでワクチンの副作用を証明するのは、容易なことではありません。

厚労省が公表した「接種後死亡」の数値をなんとか活かしたい、とはワクチンに懸念を抱く多くの研究者の願いです。この統計データから、もし自己対象シリーズ分析を行うことができれば、ワクチン接種によって死亡例が増加していることを統計学的に証明できるかもしれません。

そのためには、ワクチン接種した人たち(できれば全員)の「接種直後」の死亡数を、「接種前」または「接種の数週間後」のそれと比べてみる必要があります。そのようなデータを入手できる方は、ぜひご一報ください。

【話 題】
 最近の新聞報道によると、「ワクチン被害者遺族の会(繋ぐ会)の3人が、NHKの報道番組にビデオ出演した際、ワクチン接種後に家族が亡くなったことについての発言を、あたかもコロナ感染によるものであったかのように構成。遺族からの抗議を受けて、NHKは謝罪した」という出来事がありました。世間の多く、とくに中高年層の人たちは、NHK報道を金科玉条のごとく考えています。接種を中止させるため、そしてワクチン被害を風化させないためには、まずNHKが理解を深め、真実を報道することが必須条件となるでしょう。

【参考文献】
1) Witberg G, et al., Myocarditis after Covid-19 vaccination in a large health care organization. N Engl J Med, Oct 6, 2021.
2) Petersen I, et al., Self controlled case series methods: an alternative to standard epidemiological study designs. BMJ 354: i4515, 2016,
3) Ghebremichael-Weldeselassie Y, et al., A modified self-controlled case series method for event-dependent exposures and high event-related mortality, with application to COVID-19 vaccine safety. Stat Med 41: 1735-1750, 2022.
4) Jabagi MJ, et al., Myocardial infarction, stroke, and pulmonary embolism after BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in people aged 75 years or older, JAMA, Jan 4, 2022.
5) Nafilyan V, et al., Risk of death following COVID-19 vaccination or positive SARS-CoV-2 test in young people in England. Nat Commun, Mar 27. 2023.









(2023.5.15)
Q mRNAワクチンにDNAが混入していた?


A ファイザー社やモデルナ社の新型コロナmRNAワクチンに、あってはならないスパイク蛋白(トゲトゲ蛋白)の関連DNAが混入している、とのウワサが広がっています。ウワサは本当なのか、もしそうだとすれば何が問題なのか考えてみます。

ことの発端は、米国の研究者が2023年初頭にネット上で公開した論文でした(文献1)。学術誌などに掲載された論文ではありませんが、文章の記述や実験方法は正当なものと判断されますので、以下、まず概要についてご紹介します。

分析したサンプルは、ファイザー社とモデルナ社の期限切れのワクチン数本でした。期限が切れても、DNAの有無を調べるだけの分析に影響を与えることはありません。2つの異なる方法でDNAの有無を分析したところ、最大でmRNAの1/3にも及ぶ量が見つかりました。おまけに、その中には、
がん促進遺伝子(SV40と呼ばれている)の一部が含まれていたというのです。

この話は、私にとって想定内でした。なぜかを考える前に、mRNAの作り方を復習しておきましょう。

ワクチンの主成分であるmRNAは、4284個の遺伝コードから成っていますが(文献2)、あまりにサイズが大きく、試験管内で合成することができません。その点、DNAのほうは大きくても人工合成が可能であり、これをまず大腸菌などに移植し、細胞の力を借りて増やします。

大腸菌には、本来の遺伝子(ゲノム)のほかに、プラスミドと呼ばれるリング状のDNAがあります。そこに、スパイク蛋白のDNAを組み込んでおけば、細胞分裂とともにプラスミドの複製がどんどんできていくのです。

最後に、「転写酵素」と呼ばれる特殊な酵素を利用すれば、DNAのコピー、つまりmRNAを造ることができる、というわけです。ここまでの流れを以下の動画にまとめました。

問題は、この処理を行っていくと、出来そこないのmRNAや、さまざまな酵素、薬品、さらに雑菌などが混ざりあったまま残ることです。当然、
コピー元となったスパイク蛋白のDNAや、組み込みに必要なプラスミドのDNA(ベクターと呼ばれる)も残ってしまいます

新型コロナワクチンの商用化に成功したことで知られるペンシルバニア大学の研究者は、「高速液体クロマトグラフィ」と呼ばれる操作を徹底して行うことで、これら不純物を除去できると報告しています(文献3)。私自身も、この方法をさまざまな研究目的で使ってきましたが、大変な手間と時間がかかり、しかも1回でごくわずかな量しか精製することができませんでした。

ファイザー社やモデルナ社は、信じがたいほど大量のワクチンを、驚くほど短い時間で製造・販売してきました。この複雑な操作を、どんな装置を用い、どのような手順で行ってきたのかわかりませんが、「製品化されたワクチンに大量の不純物が残っていた」という話は、十分に予想されることだったのです。

ではDNAが混じっていると、何が問題なのでしょうか?

それは、DNAの断片がヒトの細胞内に入り込むと、ごくまれに(細胞1,000個に1個くらいの割合で)ヒトのDNAに組み込まれてしまうからです。そのDNA断片の一部が、たまたまがん促進遺伝子に似ていたとすれば、将来の発がんを心配しなければならないことになります。

DNA断片に限らず、ワクチンの主成分であるmRNAも、ヒトのDNAに組み込まれる可能性が指摘されていましたので(当ホームページQ11(4)参照)、新型コロナワクチンに、また新たなリスクがひとつ加わったことになります。

【参考文献】
1) McKerman K, et al., Sequencing of bivalent Moderna and Pfizer mRNA vaccines reveals nanogram to microgram quantities of expression vectors dsDNA per dose. personal correspondence, 2023.
2) Kandimalla R, et al., Counting on COVID-19 vaccine: insights into the current strategies, progress and future challenges. Biomedicines, Nov 22, 2021.
3) Weissman, et al., HPLC purification of in vitro transcribed long RNA. Methods Mol Biol 969: 43-54, 2013.








(2023.5.8)
Q コロナ後遺症は本当にあるのか?

 新型コロナウイルスに感染したあと後遺症で悩まされている人が多い、とのニュースが続きました。いまさら、なぜ不安を煽るような報道がなされたのか? 「だから、これからもワクチンを打って予防しなさい」とでも言いたかったのでしょうか?

後遺症に関する学術調査が、ノルウェーを中心にした欧州5ヵ国の共同で行われ、結果が発表されました(文献1)。信頼性が高いと判断し、概要をまとめてみました。

対象は、PCR陽性で、発熱などの症状が認められ、かつ入院するほどではなかったという12~25歳の人たちです。まず15万人を超える人たちを調べ、何らかの理由で同意が得られなかったり、予定した検査ができなかった人たちを除外し、最終的に382人について詳細な分析が行われました。比べた対象は、同じで基準で選ばれた非感染者85人です。

追跡は、発症後6ヶ月間にわたって行われ、その前後、血液検査を中心に78項目に及ぶデータが集められました。検査の内容は、病院であまり行われない専門的なものが多く、当ホームページで紹介したインターフェロン、インターロイキン、活性化T細胞なども含まれています。

さまざまウイルスの抗体価も当然、測定されました。体の不調が、新型コロナ以外の感染によるものだったかもしれないからです。さらに脳の細胞にダメージがあったかどうかを調べる分析も行われました。

また全員に対し、病歴、家族の病気、服用中の薬、喫煙の有無、運動習慣、親の職業(収入)、新型コロナに何回感染したかなどのアンケート調査も行われました。

その上で、「疲れやすいか」、「運動後の不調」、「睡眠障害」、「痛み」、「不安感」、「うつ気分」などの訴えについて、国際規格の手順書に従った聴取が行われ、点数化されました。

結論は明快でした。6ヵ月後、これらのデータをすべて組み込んで統計分析を行ったところ、
新型コロナに感染した人たちと、感染しなかった人たちの間で、症状に差はなかったのです。

いったい、どういうことだったのでしょうか? コロナに感染した人は、6ヵ月後、確かに約半数の人が何らかの体調不良を訴えていました。しかし、その割合は感染しなかった人でも同じだったのです。つまり、それまでに抱えていた喘息やアレルギー、胃腸、内分泌、脳神経、生殖器などの疾患、あるいは、うつ病など心の病の影響が主な原因であり、「コロナ感染のせいではない」という分析結果だったのです。

特記すべきは、免疫機能などを測る専門的な検査の数値が、本人が申告した自覚症状と、まったく関係していなかったことです。

自覚症状の原因を辿るのも簡単ではありません。たとえば、息切れや記憶力の衰えが、コロナの後遺症だとして語られています。しかし誰でも、年齢とともに、このような症状を感ずるようになるのは自然なことです。とくに疲労感は、問われれば誰にも覚えがある症状です。その昔、小学生の悩み事についての調査が行われ、圧倒的に多かった答えが「最近、疲れる」だった、という話もありました。

統計分析は、非常に厳密な条件のもとに行われ、ほかに類をみないほどなのですが、2022年にフランスで3万人近くを対象にして行われた調査(文献2)とも、結論が一致していますので、信頼性はいっそう高いと判断されるのです。

   

この調査が示してくれた、もうひとつの大切なことは、コロナ禍のストレスが万人の心を蝕んでいたことに加え、「運動不足」と「孤独感」が(感染の有無と関係なく)体調不良をもたらす最大の因子になっている、との指摘でした。

【参考文献】
1) Selvakumar J, et al., Prevalence and characteristics associated with post-COVID-19 conditon among nonhospitatlized adolescents and young adults. JAMA Netw Open, Mar 30, 2023.
2) Matta J, et al., Association of self-reported COVID-19 infection and SARS-CoV-2 serology test results with persistent physical symptoms among French adults during the COVID-19 pandemic. JAMA Intern Med, Jan 1, 2022.









(2023.5.1)
Q 総括:厚労省発表の死亡データは正しいのか?

A 4月3日付で取り上げた話題『厚労省発表の死亡データは何を物語っているのか?』について、当ホームページあてに届いたご意見も踏まえ、総まとめをしておきます。その折、提示したグラフは次のようなものでした。厚労省発表の数値データから、私が作図したものです。

    

まず考えなければならないのは、このデータを集める際に何らかの偏り(バイアス)が生じていなかったかです。重大なバイアスのひとつは、次のようなものです。つまり、接種後の時間が経つにつれ、たとえ医師が副作用によるものとの疑いを抱いたとしても、「因果関係を問われたときに説明ができない」と考え、報告をためらったのではないか、ということです。もし、そうなら、このグラフは実態をまったく表していないことになります。

そこで、医師が何を知らされ、どう行動してきたのかを考えてみます。厚生労働省のホームページには、次のように記載されていました(文献1)。「報告の対象となる症状の発生を知った、医師又は医療機関の開設者は、予防接種法第12条に基づき、報告しなければならない」。

この文章に出てくる法律を手繰っていくと、「疑われる症状として厚生労働省令で定めるものを呈していることを知ったとき・・・」という文章に行き当たります。

さらに、その省令なるものを探していったところ、厚労省のホームページに「
4時間以内に発生したアナフィラキー、7日以内に発生した熱性けいれん、28日以内に発生した血栓症、心筋炎、心膜炎を疑ったとき」、と書かれていることが、やっとわかりました。この情報は、まず全国の医師に正しく伝わっていたでしょうか?

上のグラフで、「0日目」の死亡は、アナフィラキシーによるものであることが明らかで、診察した医師も報告せざるを得ない状況に置かれていたでしょうから、数値は実態に近いものと推測されます。

では、血栓症、心筋炎、心膜炎に基づく死亡はどうだったでしょうか? ファイザー社とモデルナ社の新型コロナワクチンでは、出血が止まらなくなるという副作用(脳出血など)が中心であり、血液が固まって起こる「血栓症」はほとんどありませんでした。血栓症は、アストラゼネカ社製ワクチンの副作用として広く報じられましたので、世間体を繕うために、この病名を加えただけではないでしょうか。本当は、もっと深刻な副作用がたくさんあったのですが・・・

次に、副作用としての心筋症と心膜炎についてです。これが海外で話題になり始めたのは、2021年の夏以降でした(当ホームページQ12参照)。すでに集団接種が大々的に始まっていましたが、NHKテレビなどが「心筋炎はまれな出来事。接種後の死亡と接種を原因とする死亡はまったく意味が異なります。うそニュースに騙されないよう・・・」などと、無責任な報道を繰り返している時期でした(文献2)。

一般市民はもちろん、未知の出来事に遭遇した医師たちさえ、知識不足から専門家としての矜持を失い、メディアに振り回されていました。「副作用」という発想が頭になく、そのため死亡例の報告も最初の数日間に限られ、その後はごく一部に留まっていたはずなのです。実際、当ホームページに寄せられた悩み事の多くが、「医師からワクチンとの関係を頭ごなしに否定された」というものでした。

当ホームページにあてに、「2021年1年間の月別の死亡者数をグラフにしてみた」とのお便りが届きました。それを元に、同じ年のワクチン接種者数をグラフにして(文献3の数値データから作図)、重ねてみたのが次の図です。

     
ワクチン接種者数(赤色)は、死亡者数(青色)に比べて絶対数が桁違いに大きいため、圧縮してあります。両者の正しい値は、左右の目盛でそれぞれご確認ください。このグラフの解釈もなかなか難しいのですが、4月から6月にかけて死亡者が急増している様子が、ワクチン接種者数の増加と比例しているように見えます(点線内)。

この関係性には、前述のバイアスも影響を与えていないはずです。なぜなら、たとえ死亡数にバイアスが加わっていたとしても、月ごとの増減を変化率として見る際には、影響が帳消しになるからです(割り算で変化率を求める際、分母と分子のバイスアが消去される)。

ただし確認しておくべきことが1つあります。4月から6月にかけて死亡者数が急増しているのは、ワクチンのせいではなく、例年の季節変動によるものかもしれない、という点です。・・・でも大丈夫です。いつの時代も人が死亡するのは圧倒的に冬が多く、4月から6月にかけては大幅に減少していく季節なのです。本来は、人々が生命力を取り戻すはずの時期だということです。

以上の考察から、「冒頭に掲げたグラフは、ワクチン接種が原因で死者数が増えたことを示す」と言える可能性は非常に高いのですが、ただし、これを認めない人たちもいます。彼らの主張は、日本人は毎日3,800人くらいが老衰や病気で死亡しており、誤差範囲だということです。このような主張を統計学で打破するのはなかなか難しく、水掛け論に終わりそうです。

諸々合わせて、「これらのグラフだけで因果関係を証明したことにはならない」、というのが冷静な結論となります。超過死亡の問題(当ホームページ2023年3月20日付記事参照)も同じですが、統計データだけにあまり拘らないほうがよいでしょう。

やはり必要なのは、繰り返し述べてきた「トゲトゲ蛋白の免疫組織染色」(当ホームページQ15(3)参照))による直接証明です。全国の医師が自由に検査委託できるような体制の確立が望まれます。

【参考文献】
1) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou_youshikietc.html
2) https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/qa/detail/more-detail/qa_05_a04.html
3) Coronavirus (COVID-19) vaccinations. Our World in Data, Apr 19, 2023.







(2023.4.24)
Q チャイナ・バイラス(ウイルス)?

A 
新型コロナウイルスが最初に発生した国の責任について、改めて考えさせられる論評や出来事がいくつかありましたので、公平な評価をまとめてみました。ちなみにチャイナ・バイラスは、トランプ前大統領が、敵対心をむき出しに考えた造語です。

2023年3月25日、有名な医学専門誌に、中国杭州市の外科医が投稿した論文が掲載されました(文献1)。内容は「命を賭してコロナと戦った医療関係者に対し、報酬金が届いていない。それを請求したところ、患者が確かに感染していたことの証明や診療記録、勤務していた日時と時刻など膨大な記録の提出を求められた。病院によっては、自費で購入したマスクなどの必需品についても、証拠を出さなければ支給しないと言われている。あとになってから、そんなことを言われても無理・・・」というものでした。

ところが、この論文は、2週間後、著者らが自ら取り下げてしまいました。現在、この論文にアクセスすると、大きな赤字で「RETRACTED(撤回)」と刻印が押された状態で表示されます。同じような出来事が、2020年にもありました(文献2)。理由は、いっさい説明されていませんが、背景に何があったかは推して知るべしです。
     

新型コロナウイルス感染症が世界で最初に確認されたのは、中国の武漢市で、大騒ぎになったのが2020年が明けたころでした。その都市に住むある女性作家が、恐怖の日々を自身のブログで日記風に綴り始めました。都市封鎖によって市民生活が激変したことや、コロナと闘って命を落とした医師が迫害されたこと、当局によって情報が隠ぺいされたこと等などを、赤裸々に綴ったものでした。ブログの存在は瞬く間に中国全土に知れ渡り、絶賛するコメントが殺到、最終的に延べ3億8千万回を超えるアクセスがあったと言われています。

この騒ぎとほぼ並行する形で、ブログの内容は『武漢日記』という本になりました(文献3)。世界各国の言葉で翻訳・出版されたのですが、ちょうどそのころ突然、風向きが変わり、中国政府を批判したとの理由で作家が激しいバッシングを浴びるようになり、ブログも閉鎖されました。その後、2023年、騒動の顛末を記した本が出版され、その中で「陰で組織的な扇動があった」と断じていました(文献4)。

遡ること100年ほど前、スペイン風邪が世界中で猛威を振い、現在の人口に換算して1.8億人が命を落としたと記録されています。名前こそ「スペイン風邪」でしたが、実は発生源は中国だったとする説が有力です(当ホームページQ17「第6回」参照)。

時代が進み、2002年、世界中が戦慄した重症呼吸器感染症(SARS)の大流行がありましたが、これも発生源は中国でした。その後の研究も含めて明らかになったのは、原因ウイルスがタヌキ、ハクビシン、タケネズミ、オオサンショウウオなどの野生動物の体内に潜んでいたことでした(文献5)。中国政府は、市場での野生動物の販売を禁止したと発表しました。

この問題の調査を続けてきたオーストラリアのウイルス学者エドワード・ホルムズ氏は、2014年に武漢市の海鮮市場を訪れ、ショックを受けました。ヘビ、アナグマ、ネズミ、鳥など、禁止されたはずの野生動物が、生きたままカゴに入れられ、食用として売られていたのです。文献6には、監視役でつき添っていた公安当局者の目を盗んで同氏が撮影した、実際の写真が掲載されています。

そして、この度の新型コロナウイルスの発生です。以上は、私見を交えず、公表された情報・事実だけをまとめたものです。その裏で、どのような力が働いてきたのかは、自ずと明らかでしょう。

当時、『武漢日記』を読んだ私は、「大事件に遭遇した中国の市民たちには、他人を思いやる熱い気持ちが芽生えていた」という事実を知り、むしろ感銘を受けたほどでした。また、中国からやってきた多くの留学生の研究指導を行ってきましたが、彼らは常に礼儀正しく、常識をわきまえた人たちだった、という私の経験談もつけ加えておかなければなりません。

矛盾を孕んだこの大国とどう向き合えばよいのか・・・、今後の世界の安全を考える上で最重要課題です。

【参考文献】
1) Sun L, et al., RETRACTED: Chinese medical personnel after the COVID-19 pandemic. Lancet, Mar 25, 2023.
2) Zeng Y, et al., RETRACTED: Chinese medical staff request international medical assistance in fighting against COVID-19. Lancet Glob Health, Feb 24, 2020.
3) 方方, 武漢日記_封鎖下の60日の魂の記録. 河出書房新社, 2020.
4) マイケル・ベリー, 「武漢日記」が消された日_中国から始まったある言論弾圧. 河出書房新社, 2023.
5) Liu WJ, et al., Surveillance of SARS-CoV-2 at the the Huanan seafood market. Nature, accepted: Apr 3, 2023.
6) Zhang Y-Z, et al., A genomic perspective on the origin and emergence of SARS-CoV-2. Cell, Apr 16, 2020.

【訂正】 2023.4.17付けの記載に誤りがあり、ご意見(9)の一部を削除・訂正しました。








(2023.4.17)
Q 討論:厚労省発表の死亡データをどう読むか?

A 
4月3日付けのテーマ「厚労省発表の死亡データから作成した以下の図をどう読むか?」に対し、多くのご意見が届きました。まず、いくつかをご紹介したのち、考察を深めてみることにします。

  

【グラフに対するご意見】

(1) このグラフは、間違いなくワクチン接種が死因であることを示している。

(2) ワクチン接種は体調の良い人だけが受ける、という「偏り」があるので、接種していない人と比べるのは、不公平。

(3) 接種後の時間が経つにつれ、医師はワクチンのせいではないと考えてしまい、報告しなくなっただけではないか。

(4) 「死亡」という出来事は、接種を受けた圧倒的多数の前ではあまりに少数で、統計処理上、なかったことにされてしまう可能性がある。

(5) 2日目(接種翌日)に死亡が異常に多い理由が気になる。アナフィラキーでも自己免疫病でもないとすれば何なのか? ワクチンの何らかの成分(毒物)が全身を回る時間なのか。


【新しいグラフのご提案】

(6) 基礎疾患なしの人たちだけで、グラフを作ってみたら以下のようになった。

  

(7) コロナワクチンで死亡する「3つの原因(アナフィラキシー、毒物中毒、自己免疫病)」に分けて、グラフにしてはどうか。これらを仮に0日、1~4日、5日~14日、15~31日、32日以降の5群に分けると、以下のようになる。

      


【別の視点からのご意見と今後の課題】

(8) 「接種して死亡した人たち」の致死率を、同じ日ごとに「死亡したが接種はしていない人たち」のそれと比べるのがよいのではないか(地域ごとに)。

(9) 60歳以上に着目すると接種後の致命率は87.8パーセント、一方、同年代でコロナに感染して亡くなった人が78.9パーセントで、ワクチンのリスクは明らか。接種後の致命率は、同年代でコロナで亡くなった人のそれより高くなっている。

(10) 65歳以上に着目すると、コロナワクチン接種後の致死率は0.0036パーセント、一方、インフルエンザワクチンは0.0000018パーセント(令和元年)で、差が明らかに大きい。

(11) 今後は、「まだ接種していない貴重な人たち」を保護し(?)、「対照群」として追跡していく必要がある。

(12) 国内複数大学の共同研究では、接種者に認められた有害事象は死亡も含め、接種前に比べて増えていないと結論しているが・・・(文献1)。


【その他の感想】

(13) 「だからこそ、仲間割れを誘うわけではなく、ワクチン接種を推進している巨大な力と対峙するとき、揚げ足をとられないようにしておかなければならない」との当ホームページ記事に、ハッとし、現実の難しさと、これから自分に何ができるかを考えている。


【考 察】

「統計データ」と称するものを見せられたとき、まず考えるべきは「集められたデータに偏りはなかったか?」ということです。

たとえば新薬が世に登場すると、製薬企業は、学術論文に記載されたデータを添えて、「絶大な効果」を医師たちにアピールします。ところが、専門誌の編集者たちからすれば、華々しいデータを報じた論文を掲載したほうが、世間の注目を集め、売り上げも伸びるため、「効果はなかった」とか、「副作用が強かった」などと結論した原稿には、点が辛くなり、不採用としがちです。つまり出版の時点でも、「偏り」が生じていることになります。

このような偏りは「バイアス」とも呼ばれ、避けがたいものもありますが、ほとんどは意図的なものです。「副作用がバレないうちに調査を打ち切る」、「比べる相手(対照群)の生活習慣などに偏りがあったことを隠す」、「致死率などは隠しておきたいため意図的に死者数を調べない」、「不都合な患者データはなかったことにする」などは、製薬企業によって繰り返し行われてきた不正行為です。

ときには、報告者がバイアスの存在を理解できず、読み手のほうもそれと気づかず信じ込んでしまうこともあります(文献2)。

さて、「厚労省発表の死亡データ」の場合は、どうだったのでしょうか? 改めてご意見をお寄せください。

【参考文献】
1) Takeuchi Y, et al., A post-marketing safety assessment of COVID-19 mRNA vaccination for serious adverse outcomes using administrative claims data linked with vaccination registry in a city of Japan. Vaccine, Nov 7, 2022.
2) Yamaguchi T, et al., Safety monitorinbg of COVID-19 vaccines in Japan. Lancet Reg Health West Pac, Vol 23, 2022.







(2023.4.10)
Q これからは何に気をつければよいのか?

A 
すでにポストコロナの時代に入ったかのような雰囲気が漂い、世の中が浮かれています。マスクを外して大丈夫なのか、どんなところに気をつければよいのか、改めてまとめてみました。新型コロナウイルス、とくにオミクロン株が、どのように人から人へと伝染するのかに関する最新情報です。

ヒトの口や鼻から排出される微粒子には、さまざまな種類があります。比較的大きいのは「水滴(または液滴)」と呼ばれ、咳、くしゃみ、おしゃべりによって口や鼻から出てくるもので、サイズが100μm以上と定義されています(μmは1ミリの1,000分の1を表わす単位)。たとえば毛髪の太さが50~100μmです。

感染した人から排出される水滴には、粘膜細胞などと共にウイルスが含まれていますが、通常の会話では0.2メートル以内の床面に落下します。

これより小さなものは「エアロゾル」と呼ばれ、サイズは0.1μmから100μmとさまざまです。小さなものは肺の奥から、また大きなものほど肺の入り口に近いところから排出されます。通常の呼気中には、1リットル当たり7,200個ほどが含まれています。かなり長時間、空中に漂うことから、エアロゾルによる伝染は「空気感染」とも呼ばれます。

1回の咳で排出される水滴よりも、普段の呼気に含まれるエアロゾルのほうが、総量としてウイルス量が多いこともわかっています。つまり1回の咳よりも、長時間の会話のほうが感染リスクは高いのです(文献1)。次の図は、さまざまなサイズの微粒子が地上1.5メートルから床面に落下するまでの時間を示したものです。

  

では、微細なエアロゾルだけで、実際に感染が起こったりするものでしょうか。

この問いに明確に答えてくれた研究が2つあります。一つは、実験動物を2つのケージに分けて飼育し、感染の様子を観察したという研究です(文献2)。実験の方法は、以下の動画でご覧ください。

二つ目は、韓国からの報告です(文献3)。ヒトでも空気感染が起こった証拠とされるデータで、古い高層アパートに住む267家族の437人が調査に協力しました。このアパートは構造が複雑で、6つの棟がコの字型につながっています。換気の仕組みも旧式で、各棟に排気ダクトが1本ずつあるだけで、古いタイプの換気扇が使われたり、使われなかったりしていました。

最初の感染者は、10階の住人です。その後、9人が次々に発症したのですが、ほとんどが同じ棟の下のフロアの住人でした。この大きな複合アパートには2基のエレベータがありますが、それを共同利用している他の棟の住人から感染者は出ておらず、かつ感染したうちの2人はエレベータをいっさい使っていないと証言していました。またすべての感染者は、外出時にマスクを必ず着けるなど予防対策はしっかりとっていたとのことです。

以下の動画は、感染者が集中した棟を側面から見た様子です。

2020年2月、豪華クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号で、次々に乗客・乗員が感染したという出来事がありました。当時、テレビ報道を見ながら直感したのは、船内の空調が、適切なフィルターを通さないまま空気を循環させる方式だったのではないか、ということでした。その後、さまざまな検討がなされ、やはり船内の空調システムに重大な欠陥があったようです(文献4)。ただし研究者の問合せに対し、同船を管理している会社は明言を避けたとのことです。

幸い日本では、2003年に建築基準法が改訂され、「24時間換気システム」の設置が義務づけられています。室内からの排気や給気を強制的に行うもので、「1時間で室内の空気の半分が入れ替わること」が求められています。もともとシックハウス症候群などを防ぐための法律でしたが、今となっては感染対策に大いに役立っていて、韓国からの報告例のような出来事は日本で起こっていません。

国内で行われた研究によれば、デルタ株に比べて、オミクロン株のほうが水滴中により多く残っていることも確かめられました(文献5)。つまりオミクロン株では、いっそうエアロゾルによる空気感染に気をつける必要があるのです。

また、見慣れた光景となった飲食店や食堂でのアクリル板は、換気を妨げ、同時に空気が巻き込まれて停滞するため、感染リスクがむしろ高まってしまうことも実証されました。

これからしばらくの間、守るべきは以下の5点です。
(1) 24時間換気システムは決して止めない
(2) 2003年以前の建築物で人々が密集している場所はなるべく避ける
(3) そのような場所に長時間いるときはマスクを着用する
(4) アクリル板は廃棄する
(5) いかなる理由があっても新型ワクチンはもう打たない

【参考文献】
1) Wang CC, et al., Airborne tranmission of respiratory viruses. Science, Aug 27, 2021.
2) Kutter JS, et al., SARS-CoV and SARS-CoV-2 are transmitted through the air between ferrets over more than one meter distance. Nat Commun, 12: 1653, 2021.
3) Hwang SE, et al., Possible aerosol transmission of COVID-19 associated with an outbreak in an apartment in Seoul, South Korea, 2020. Int J Infect 104: 73-76, 2021.
4) Almilaji O, Air recirculation role in the spread of COVID-19 onboard the Diamond Princess cruise ship during a quarantine period. Aeroso Air Qual Res, 21(4), 200495.
5) Imai K, et al., SARS-CoV-2 omicron variant in human saliva in cell-free form. JAMA Netw Open, Jan 3, 2023.







(2023.4.3)
Q 厚労省発表の死亡データは何を語っているのか?

A 
ワクチンを接種したあと亡くなった方々の情報を厚生労働省が集計し、公表しています。データはすべてPDFと呼ばれるファイル形式で発表されているため、数字をパソコンで読み取ってグラフにしたりすることができません。

幸い文献1で紹介されていた巧みな裏技?を使って、エクセルファイルに変換することができました。早速、作ってみたのが次の棒グラフです。「接種を受けてから死亡に至る日数」を横軸に、「それぞれの人数」を縦軸にとっています。横軸のゼロは接種当日のことです。

   

対象は、令和3年2月17日~令和4年4月17日の間(1年2ヵ月)に報告のあった1,609例です。ただし、日付や年齢が「不明」となっていたり、明らかなミスプリントと思われる事例は削除し、また訂正情報がメモ書きされていた場合は、それに従って訂正を行いました。最終的に作図に利用できたのは1,371人分のデータで、年齢や性別、接種回数にかかわらず、すべての事例を含めています。

このようなグラフは、すでに何人かが作成に成功し、ネット上に公開しています。3月15日に開催された議員有志の公開討論会でも提示されていました。多くの方々が、「動かぬ証拠」として期待を寄せているものです。

さて、問題はここからです。この棒グラフは、いったい何を表わしているのでしょうか?

このようなグラフから「ワクチンのせいで死亡したのは明らか」と、本当に断言できるのでしょうか。どんな統計データでも、それを読み解く際にまず考えるべきは、「データの集め方に偏りはなかったか?」ということです。

この問題に関するご意見を募集します。

「コロナワクチンを断罪するには、様々な立場で行動を起こしている人たちにまず連携してほしい」とは、前々回の当ホームページでご紹介した皆さまのご意見の中で、もっとも多かったものです。だからこそ、仲間割れを誘うわけではなく、ワクチン接種を推進している巨大な力と対峙するとき、揚げ足を取られないようにしておかなければならないのです。

なお、私が再現した実際のエクセルファイルは、以下(青色の文字)をクリックするとダウンロードすることができます。ファイル中、右端の「死亡までの日数」は、私がエクセルで計算して付け加えたものです。エクセルがお得意な方は、このデータからさまざまグラフを作り、考察の参考にしてください。

 「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」


コロナワクチンでなぜ死亡するのか?

考察の参考にしていただくため、これまでに得られた死亡に関する膨大なエビデンスを整理しておくことにします。ワクチンを接種して死に至る理由は、少なくとも3つあることに気づきます。

まず、このワクチンが初めて登場したときから言われていたのが、アナフィラキシー・ショックです。その定義は、原因物質が体内に入って数秒から数分以内に、血圧低下、呼吸困難、発疹、嘔吐などの症状を認めた場合、とされています(文献2)。致死率は、正確な値は不明ですが、救急外来に搬送された人に限れば0.25~0.33パーセントと報告されています。死に至るまでの時間は、約7割の事例で
1時間以内です(文献3)。

原因物質として当初から指摘されていたのは、mRNAを包む脂質微粒子膜の成分の一つ
ポリエチレングリコールでした。保水性があり化粧水などに使われているものです。ワクチンに使われたのは初めてであったことから、物議をかもしました。この物質で実際にアナフィラキシー・ショックを起こした人は多数いたものと推測されますが、体内に何も痕跡が残らないため、たとえ死後解剖(剖検)を行っても、残念ながら証明することはできません。

2つめは、1月16日付の当ホームページで報告したように、脂質微粒子を構成する物質の一つ
プラスの電気を帯びた脂質です。激しい毒性を発揮するため、ときには血を吐いて死亡する可能性もあります。厚生労働省の会議で、初めて「ワクチン接種と死亡との因果関係が否定できない」とされた事例は、その可能性が高いと考えられます。この場合も、死に至るとすれば1日以内です。この場合は、剖検である程度、確認ができるはずです。

3つめは、当ホームページで繰り返し指摘してきたとおり、副作用として生じる
自己免疫病です。死に至るとすれば、5日から3ヵ月ほどの間と推測されます。腎臓病、心筋症、脳症、肺炎など多くのタイプがありますが、バイオプシーや病理解剖で得られた組織サンプルが保存されていれば、トゲトゲ蛋白を染める方法や糖鎖の異常を分析する方法で、因果関係を証明できるはずです。

さらに、もっと長い年月を経て生じる副作用も考えておかなければなりませんが、実態の解明は今後の追跡調査に待つしかありません。

以上の情報も踏まえて、自作のグラフやお考えを当ホームページ宛てにお寄せください。

【参考文献】
1) 鈴村泰, コロナワクチン接種後の死亡データ、自動グラフ化に成功, アゴラ言語プラットフォーム, Aug 3, 2021.
2) Anaphylaxis, Mayo Clinic, on line.
3) Pumphrey RSH, et al., Postmortem findings after fatal anaphylactic reactions. J Clin Pathol 53: 273-276, 2000.


【脚注】 厚生労働省発表のデータについて
 厚生労働省のホームページには、「データの利用は自由であり、加工を行った場合でも、その旨を明記すれば許諾を求める必要はない」と記されています。したがって本文中で公開したデータファイルについて、著作権上の問題はありませんが、ネット上にグラフなど公開する場合は、引用元を明記してください。
 新型コロナワクチンのせいで天寿を全うできなかった方々には、心から哀悼の意を表し、その貴重なデータを未来のために利用させていただくことにします。





              
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               目  次
         (
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Q0 政府に間違ったデータを提供したのは誰?    Q1 ワクチン接種の強制は問題ないのか?
  「超過死亡」という言葉にご注意           接種後の副作用で苦しむ人たち
  /コロナ致命率の発表値は間違っている        /米国における接種義務化と法律事情
  /コンピュータ・シミュレーションに騙されるな    /接種の強制は倫理的に許されるのか
                            /地方紙が伝える真実とは
                            /ワクチン被害の裁判は可能か
                            /米国の最高裁判決とは
                            /ワクチン被害の証拠を残そう

Q2 ワクチンを受けない人たちの災難とは?     Q3 安心できるワクチンとは?
  子育て中の苦悩/アレルギー体質で接種拒否      国産ワクチンを評価する
  /悲痛な海外事情                  /鼻スプレーワクチン
  /打たない人は集団免疫に貢献できないのか

Q4 治療薬はいつできるのか?           Q5 なんとか予防はできないのか?
  国産初の飲み薬ゾコーバ               薬で予防はできない
  /イベルメクチン/抗体カクテル           /感染しても重症化しないために
  /疑惑の飲み薬モルヌピラビル            /肥満がリスクとなる理由が判明
  /レムデシビル再評価_有効性に疑問         /自宅療養に備える
  /ファイザー社の飲み薬は大丈夫か          /アルコール消毒はだめ
  /続々登場する新薬のまとめ             /意に反して接種してしまったら
  /重症化したらこんな病院に行きたい!        /民間療法は有効か?
                            /感染リスクが予測できるアプリ?
                            /マスクは要らないって本当?

Q6 コロナ禍を終息させる決め手とは?       Q7 専門家の言うことは正しいのか?
  風船現象を知る                   データに騙されないための心得帳
  /第5波が収束したわけ               /運び屋ウイルスのDNA組み込み
  /インフルエンザワクチンに学べ           /抗体依存性感染増強(ADE)
  /インフルエンザワクチンは打つべきか        /高齢者の死亡が減少しているわけ
  /ワクチンがウイルス変異を助長している       /接種を1回で止めてよいか
  /インフルとコロナは同時流行するか         /後ろ向き調査のまやかし
                            /全数把握・定点観測って何?
                            /中和抗体はなぜ無効なのか?

Q8 ウイルスの変異、これからどうなる?      Q9 実際に感染したら、どうする?
  ウイルスはどのように変異するのか          オミクロン株BA.5に感染したら
  /変異ウイルスのまとめ               /1年後も症状は残るのか
  /オミクロン株の種類                /学校の授業は安全か
  /オミクロン株はインフルエンザより軽症       /重症化しやすい人の体質:
  /デルタミクロンって何                 キラーT細胞の仕事とは
  /人間の遺伝子は強くなっていく           /隔離期間はもっと短くしよう
  /悪どいコロナの正体

Q10 ワクチンを巡るデータはねつ造?        Q11 うわさのウソ、ホント?
  報告されなかったデータ/重症例は増えたか      フェイクニュースの元締め
  /1回接種で十分/消えた協力者           /基礎疾患のウソ
  /ファイザー社の新論文は意味不明          /mRNAは永久に残るか
  /むしろ死亡率を高めている証拠           /mRNAは遺伝子に組込まれるか
  /消された証人たち/年をとると免疫は?       /トゲトゲ蛋白がDNAを破壊するか
  /有効期間は2ヵ月/まやかしの有効率
  /ワクチン治験を告発した女性

Q12 ワクチンは効いていない?           Q13 なぜ医師は正しい知識を持てない?
  接種率が高い国ほど感染者は増えている        医師たちが騙されたもう一つの理由
  /致命率の計算はほとんど不可能_行政のさじ加減
  /接種しても、しなくてもウイルス量は同じ
  /繰り返しの接種は大丈夫なのか
  /接種完了の施設で集団感染
  /ワクチンパスポートに根拠なし
  /11歳以下の接種を考える
  /オミクロンに中和抗体は無力
  /オミクロン用ワクチンは大丈夫?

Q14 なぜ致命的な自己免疫疾患を起こすのか?    Q15 因果関係を証明する方法はあるか?
  免疫性腎障害/免疫性心臓病             トゲトゲ蛋白はなぜ危険なのか
  /免疫性皮膚病/免疫性感染症            /尿中のトゲトゲ蛋白測定に初めて成功
  /免疫性眼疾患/ワクチンで突然死          /因果関係を証明する唯一の方法とは
  /接種後2ヶ月間で起こること            /トゲトゲ蛋白は4ヵ月血中に残る
  /接種後半年でわかったこと            
【妊娠・出産・育児を考える】
  /副作用は脾臓から始まる              ワクチンは母乳に影響しないの?
  /初めて国内学会で発表された副作用         /妊娠中のワクチン接種は絶対ダメ
                            /両親の接種は赤ちゃんに影響
                            /子供と赤ちゃんの接種を考える

Q16 コロナの各検査法の利点と欠点?        Q17 あやまちを繰り返さないためには?
  PCRの原理を理解しよう              第1回 新型コロナはどこから来たのか
  /PCRで困ること/インチキな中和抗体検査     第2回 人々を狂わせたワクチン神話
  /3つの検査法の優劣                第3回 メディアのプロパガンダなのか
  /抗原検査を練習しておこう             第4回 そろそろ法律家の出番!
  /PCR検査を毎週受けた経験談           第5回 新薬とワクチンは期待できるか
  /陰性証明は難しい/唾液の検査は確かなの?     第6回 新型コロナはこれからどうなる
                            第7回 専門家がだまされた統計学とは
                            第8回 コロナ社会のこれからを考える

Q18 繰り返しのワクチン接種が免疫機能を破壊?
  第1回 神様の贈り物を汚すもの(インターフェロン物語)
  第2回 改造mRNAに毒性あり(謎のG4構造とは)
  第3回 敗者は抹殺せよ!(抗原原罪説の真実)
  第4回 mRNAを包む膜に毒性あり(脂質微粒子に猛毒))
  第5回 ワクチンを打つと悪性腫瘍に(発がんリスク多数)
  第6回 免疫細胞を暴走させるもの(糖鎖に重要なヒント)
  第7回 オーバーワクチン症候群(免疫反応が止まる))
  第8回 まとめ:ワクチンを打ち続けるのは危険




          

                   《執筆者紹介》

現代医療は、世界の巨大医療産業によって操作された偽りのエビデンスによって、間違った方向に誘導されている。その実態を明らかにするため、長年、薬品やがん検診に関するねつ造データの科学的検証を行っている。

著 書
 『人はなぜ太るのかー肥満を科学する』(岩波新書)、2006年(11刷)
 『がんは8割防げる』(祥伝社新書)、2007年
 『ほどほど養生訓』(日本評論社)、2007年(5刷)
 『放射能と健康被害 20のエビデンス』(日本評論社)、2011年
 『医者の私が、がん検診を受けない9つの理由』(三五館)、2016年(4刷)
 『医者が教える「家族に飲ませない薬」』(PHP)、2019年(1刷)
 『医療AIの夜明け:AIドクターが医者を超える日』(オーム社)、2019年
 『大丈夫か、新型ワクチン』(花伝社)、2021年(2刷)
 『本当に大丈夫か、新型ワクチン』(花伝社)、2022年
 『新型ワクチン騒動を総括する』(花伝社)、2023年、ほか多数

研究論文
 1. Abe T, Okada M, et al., Sleep duration is significantly associated with carotid artery atherosclerosis incidence in a Japanese population. Atheroslcerosis 217: 509-513, 2011.
 2. Okada M, et al., Low-density lipoprotein cholesterol can be chemically measured: a new superior metod. J Lab Clin Med 132: 195-201, 2998.
 3. Okada M, A metod for clinical data reduction based on "weighted entropy", IEEE Trans Biomed Eng BME-25: 462-467, 1978. など574編

経 歴
 京都府舞鶴市生まれ
 1972年 新潟大学医学部卒業
 1990年 同 医学部教授
 2012年 同 名誉教授(国立大学 教授定年退官後の称号)

診 療
 高脂血症・高血圧症・糖尿病などの予防治療

受 賞
 ・新潟日報文化賞、1981年
 ・臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」、2001年

主な発明・発見・特許
 ・低密度リポ蛋白中のコレステロールの定量方法(特許3058602)
 ・超低比重リポ蛋白及び中間比重リポ蛋白のトリグリセライド定量方法(特許4070958)
 ・LDLコレステロール検査法を世界で最初に開発
 ・重み付きエントロピー計算法の発明
 ・Bツリーによる重複情報カウント・アルゴリズムの発見

資 格
 ・医学博士
 ・日本循環器学会認定循環器専門医(~2010年)
 ・日本医師会認定産業医
 ・AHA Profesional Member(米国心臓学会、上級会員)
 ・IEEE Senior Member(米国電子工学学会、上級会員)

主な学会・社会活動
 ・IEEE T-BME(米国電子工学専門誌)共同編集長、1986年
 ・文部省大学設置・学校法人審議会、専門委員、1997年
 ・日本エム・イー学会誌『生体医工学』、編集長、1999年
 ・Frontiers Med Biol Engng(学会誌)、編集長、1999年
 ・公益信託臨床病理学研究振興基金、審査委員長、2000年
 ・文部科学省科学研究費補助金、審査委員、2002年
 ・全国国立大学法人病院検査部会議、議長、2005年
 ・第32会医療情報学連合大会、大会長、2012年
 ・Arch Prev Med (米国医学専門誌)、副編集長、2015年


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