岡田正彦 Masahiko Okada, MD, PhD
新潟大学名誉教授(医学博士)
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新型コロナのエビデンス
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Q0 政府に間違ったデータを提供したのは誰なのか?
A 当ホームページの読者から、ワクチン接種後に生じた特殊な病気や死亡例についての情報が多数、寄せられています。他の病院から届く患者さんの紹介状に、「ワクチン接種後体調不良」という病名を目にすることも多くなりました。「自分が関係する範囲で新型コロナに感染して死亡した人の数と、ワクチン接種後に死亡した人の数が同じくらいになった」という話も聞きました。
厚生労働省が広報として発表している副反応(?)や死亡例は、氷山の一角ではないかと疑念を述べる人もいます。医師の中には、副作用ではないかと疑いをもっても、報告システムがないため、どうすればいいかわからないとか、因果関係を証明できないので触れないことにしているという人もいます。
日本では、副作用の実態を誰も知らない、という背筋の寒くなるような状況となっているのです。しかし、だからといって情報をまとめるのも簡単ではありません。なぜなら、いかなる医療データも、公表を前提に収集するには世界共通の倫理規定を守る必要があり、かつ論文を投稿しても、厳格な審査を受けて合格しなければならないからです。以下は、その手順をまとめたものです。
1 詳細な研究計画書を作成する
2 所属研究機関の倫理委員会に提出し、審査を受ける
3 許可をえたのち、本人から直筆の同意書をえてから調査開始
4 英文で論文を作成し、専門誌に投稿する
5 厳しい審査を受けることになるが、多くの論文は採用不可となり返却される
6 採用の見込みがあっても実験のやり直しや原稿の書き直しが繰り返し求められる
7 掲載されるのは早くて半年から1年後
つまり副作用や死亡例の分析は、大学病院など研究機関でなければできないことと、いまの雰囲気では、倫理委員会も腰が引けて不許可としてしまう可能性もあります。
だからと言って、上記の手続きを経ずに一般市民がデータを集めたとしても、いたずら投稿もあるでしょうから、正しさの検証ができません。何か良い知恵があれば・・・。
(2021.12.27)
(2) 「超過死亡」という言葉にご注意! 正しい理解が必要
2021年の暮れも押し迫ったころ、にわかに「超過死亡」という言葉が世間で語られるようになりました。いったい何のことでしょうか?
次のグラフをご覧ください。国内で、原因によらず亡くなった方の人数を、1月から12月までの月ごとにまとめたものです。期間は平成27年1月から令和3年10月までの7年間で、コロナ禍の2年間とその前の5年間を比べています。赤色で示した2021年の死者数が、それ以前に比べて多くなっていることから、「なぜなのか?」が話題になっているのです。
誰しもまず考えるのは、「コロナで亡くなった人が多かったから?」、あるいは「もしかしたらワクチンの副作用?」ということでしょう。令和3年の1月から10月までを、前年の同時期と比べると、この間に増えた全死者数は62,553人でした。一方、同じ期間に新型コロナで亡くなった人は14,775人でした。では、その差の5万人弱は何だったのでしょうか。
このグラフをよく見ると、コロナ禍の始まる前の5年間においても、死亡者の人数は年々増えているのがわかります。そこで思いつくのは、高齢化が進んでいるからではないかということですが、まさにその通りなのです。次のグラフは、横軸に75歳以上の人口(実数)を、また縦軸を全死亡者数にとって、過去7年間の実測データを表示したものです。ただし2021年分のデータが10月までしかありませんから、各年とも同じ10ヵ月分としています。
全死亡者数が本当に増えたと言えるのか、増えたとしたら理由は何なのかを判定するのは、実は非常に難しい問題です。「超過死亡」という言葉は、単に人数が増えたかどうかではなく、過去の変動データを組み込んだ予測式を求め、その計算結果に照らし合わせて「統計学的に有意な(偶然ではない)増加」であることを証明し、初めて成り立つものなのです。国立感染症研究所が行った計算によれば、千葉県など一部の地域を除いて「増加は有意でない」との結論でした。
当ホームページの最大の関心事は、やはりワクチンの副作用による死亡者が多かったのではないかということです。死亡者数は厚生労働省の発表値をはるかに超えているはずというのは、副作用を懸念する人たちの見方です。私が診療を担当している高齢者の中にも、ワクチン接種後に原因不明の死を遂げた方が少なくありません。しかし、因果関係を証明する手段がまだない現時点で、軽々しい推測や考察は控えるべきでしょう。
このグラフについて、どのような考察がありうるのか、皆様のご意見をぜひお寄せ下さい。ご提案があれば、私のほうで統計計算をしてみます。
(2022.2.21)
(3) コロナ致命率の発表値は間違っている
感染症の危険性を表わす指標として「致命率」がよく使われます。たとえばインフルエンザは致命率が0.06~0.1パーセントとされています。
新型コロナの場合、NHKの報道によれば30歳代で0.1パーセント、80歳代で11.1パーセントです。このような報道こそが、人々、とくに高齢者の恐怖心を煽り、「たからこそワクチンを・・・」との話に利用されがちです。この数字が正しのかどうか検証してみましょう。
世間では、「原因の如何を問わず、とにかく病院に運びこまれた時点でPCR陽性だった人はコロナ死とされる」とウワサされています。たとえば交通事故で死亡しても、入院時にPCR陽性であればコロナ死としてカウントされてしまう、というわけです。実際、私がコロナと診断し、専門病院に救急搬送したあと亡くなった方が何人かいましたが、老衰のため看取り間近という状態だったにもかかわらず、「直接死因は新型コロナ」との連絡が後日ありました。
通常、死亡の原因は、医師が作成する死亡診断書によって確定されますが、その作成には難しい問題があります。死亡診断書には病名を記入する欄が4つあり、上から順に「(ア) 直接死因」→「(イ) (ア)の原因」→「(ウ) (イ)の原因」->「(エ) (ウ)の原因」となっています。このスタイルは、ほぼ万国共通です。
昔から使われてきた、この死亡診断書を巡って、米国のニューヨークタイムズ紙上で、今更ながらの議論が展開されました。たとえば認知症を患っている人では、食物を誤って肺に吸い込み、いわゆる誤嚥性肺炎を起こして死亡する人が少なくありません。最近の調査で、認知症の人の3分の2で、この誤嚥性肺炎が「直接死因」として記載されていることがわかりました。つまり「認知症」が直接死因ではなく、「その原因」とされているというわけです。
死亡統計として世の中に公表されるのは、直接死因に記載された病名だけをカウントしたものであることから、ある専門家は「病気別の死亡数は、予防を考えるための大切な統計値であり、このままでは認知症が注目されなくなり、医学研究に支障をきたすことになる」と述べています。
しかし、その一方、認知症を直接死因にしてしまうと、その他の死亡理由、たとえば転倒や交通事故、栄養障害など、認知症のケアに社会をあげて取り組むべき課題が埋もれてしまうという問題が生じてしまいます。
私自身、仕事柄、死亡診断書を書く機会が多いのですが、直接死因の欄に何を書き込むべきなのか、いつも迷います。ひとつだけはっきりしているは、直接死因として「心不全」や「呼吸不全」という言葉を書かないようにとの指導が、どの国でもなされていることです。なぜなら人間の死とは、心臓と呼吸が止まることであり、決して原因ではないからです。
つまり、それ以外の直接死因は、医師の考え方しだいで大きくかわってしまうということなのです。
さて、コロナ死についてです。厚生労働省から出されている地方自治体への事務連絡に、「新型コロナウイルス感染症の陽性者であって、入院中や療養中に亡くなった方については、厳密な死因を問わず、「死亡者」として全数を公表するようにお願いいたします」と書かれています。
この文章を素直に読めば、交通事故に遭い、病院到着時にすでに死亡していて、あとで陽性が判明したという人は、入院中でもなく療養中でもありませんから、カウントの対象にならないはずですが、実際には含まれてしまっているでしょう。
テレビでは、高齢者の死亡数が毎日、報じられています。問題は、その中に、老衰が進行した状態でたまたま陽性となった人たちが含まれているという点です。とくに高齢者施設などでは、症状の有無にかかわらず全員に対して検査が行われることが多いため、無症状のまま最後(看取り)を迎えても「陽性者」とされてしまいます。死亡診断の直接死因の欄には、「老衰」と記載されているはずなのですが。
実際、テレビなどで日々発表される死亡者数は、死亡診断書をもとずいたものではなく、医療機関から別途、行政に報告される人数(原因を問わず)になっていて、その中に、老衰で天寿をまっとうした人も結果的に含まれてしまっているのです。
感染者の総数が増えれば、それに比例して高齢者の人数も増え、必然的に老衰死も多くなっていきます(もちろん老衰に限らず、高齢者に多い誤嚥性肺炎、あるいは腎臓や心臓の疾患、がんなどの末期でも同じこと)。したがって「高齢者のコロナ死亡が急増」などのニュースは、実態を正しく表わしていないことになります。
だからと言って死亡診断書をもとに数えても、問題が多々あることは、すでに述べたとおりです。真実を見極めるのは、なかなか難しいものです。少なくとも、メディアによる「正しくない報道」に怯えることがないようお願いします。
【参考文献】
1) Brody JE, When the death cerificate omits the true cause of death, New York Times, Feb 14, 2022
2) 大津秀一, 「厚生労働省が新型コロナの死亡者数を水増しする通達を出している」は正しくない情報. Yahoo! JAPANニュース, May 28, 2021.
(2022.12.12)
(4) コンピュータ・シミュレーションに騙されるな
次のグラフをご覧ください。これは以前、当ホームページに掲載したもので、第2波における毎日の新規感染者数(棒グラフ)と、私が作成した数式でシミュレーションした結果(点線のグラフ)を重ねて表示したものです。シミュレーションに用いた数式は、できるだけ実際の統計データに一致するように調整したものです。
この数式には、「海外から入ってくる1日当たりの感染者数」が含まれています。その値を1人から15人まで少しずつ増やしていくと、国内の新規感染者がどれくらい増えていくかを計算し、その結果もいっしょに表示しました(実線のグラフ)。
実は、このシミュレーション結果が正しいのかどうか、私にもよくわかりません。
なぜなら、このように、実際のデータと見かけだけ一致するだけでよいなら、数式はいくらでも作り出すことができるからです。つまり研究者が作成した数式によるシミュレーションの結果だけで「何かを判断」したり、あるいは「重大な決定」を下したりするのは無意味であり、ときに危険だということなのです。
国内には、コロナ関連のシミュレーションを行っている研究者が何人かいて、テレビなどにも登場しています。そのお一人が、ある学会主催の講演会で述べたひと言が気になりました。
自分の研究内容が内閣府の目にとまり、「内閣官房新型コロナウイルス感染等対策推進室 COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」という長い名前の組織の一員にされた、という話なのです。ある日、政府高官に呼ばれ、専門家会議の代表もいるところで「シミュレーションで感染者増加の予測や行動制限の効果が予想できること」、「ワクチンの有効性を証明できたこと」の説明を行った、ということでした。
その研究者が書いた論文には、デルタ株に対するワクチンの有効率として、「1回接種した人は60.5%、2回接種した人は75.6%だったこと、およびオミクロン株はデルタ株に比べて64.5%に低下したこと」を海外の文献から引用して、数式に代入したとありました。
しかし、この主張には2つの疑問があります。まず、数式にインプットした「有効率」が、すべて「後ろ向き調査」の結果でしかなかったことです。この調査方法の欠陥はすでに繰り返し述べてきたとおりです。二つ目の問題は、数式に予め有効率を与えておき、それをもとにシミュレーションを行えば、「ワクチンは効いていた」という結果になるに決まっている、ということです。
シミュレーション理論は難解ですから、政府高官には結論だけが伝わったはずです。もし、そのことが、ワクチン接種を狂信的なまで国民に強要してきた政府方針につながっていたのだとすれば、由々しき問題です。
ただし、内閣府の中での出来事は、他人にはうかがい知れないことです。新型コロナウイルス感染症に関わるシミュレーション研究を行っている方々には、この素朴な疑問に対し、どうぞSNSなど公開の場で反論していただき、もし私の理解に間違いがあれば正してくださるようお願いします。
【参考文献】
1) Furuse Y, Simulation of future COVID-19 epidemic by vaccination coverage
scenarios in Japan. J Glob Health, 11, 05025, 2021.
2) Tsuruyama T, Nonlinear model of infection wavy oscillation of COVID-19
in Japan based on diffusion kinetics. Sci Rep, 12:, 19177, 2022.
3) Tran V, et al., Tweet analysis for enhancement of COVID-19 epidemic
simulation: a case study in Japan. Front Public Health, Mar 31, 2022.
4) Kodera S, et al., Estimation of real-world vaccination effectiveness
of mRNA COVID-19 vaccines against delta and omicorn variants in Japan.
Vaccines, Mar 11, 2022.
5) Kodera S, et al., Estimation of mRNA COVID-19 vaccination effectiveness
in Tokyo for omicron variants BA.2 and BA.5: effect of social behavior.
Vaccine, Oct 28, 2022.
6) 新型コロナワクチンの接種状況に関するオープンデータ仕様 政府CIOポータル, accessed on Dec 11, 2022.
7) Tartof SY, et al., Effectiveness of mRNA BNT162b2 COVID-19 vaccine uo
to 6 months in a large integrated health system in the USA: a retrospective
cohort study. Lancet, Oct 4, 2021.
8) Andrews N, et al., Covid-19 vaccine effectiveness against the omicron
(B.1.1.529) variant. N Engl J Med, Mar 2, 2022.
9) Thomas SJ, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19
vaccine through 6 months. N Engl J Med, Sep 15, 2021.
10) Zeng B, et al., Effectiveness of Covid-19 vaccines against SARS-CoV-2
varinats of oncern: a systemic review and meta-analysis. medRxiv, Sep 26,
2021.
11) Buchan SA, et al., Effectiveness of COVID-19 vaccines against omicron
or delta symptomatic infection and severe outcomes. medRxiv, Jan 28, 2022.
Q1 接種の強制は倫理的に許されるのか?
(2021.12.27)
(1) 接種後の副作用で悩んでいる人たち
ワクチンを打たないために勤務先や家族のなかで疎外されている方々から、お悩みのお便りがたくさん届いています。一方、打ったあと、副作用による症状がなかなか回復せず、苦しんでいる人も少なくありません。
また、副作用で悩み、医療機関を探しまわって辿りついたクリニックで自費での検査が多数行われ、高額な料金を請求されたという人の情報もあります。
そこで、副作用が長く続いていて困っている場合の対処について、読者からのお便りも交え、まとめてみました。持病の有無や服用中の薬、体質などに大きな個人差がありますので、あくまで一般論です。
まず知っておきたいのは、副作用を直接的に証明する検査法がまだない、ということです。したがって、医療機関で副作用を証明するための検査を要求しても、ほとんど意味がありません。医師が必要と判断しない検査を要求すると、全額が自費払いになる可能性もあります。医療機関で健康診断を受けた経験がある方はご存知のとおり、自費診療は非常に高額です。
ただし例外的に、ワクチンとの関係が推測できる検査法が2つあります。ひとつは「血小板数」です。何らかの出血症状があった場合に、この値が著しく低下していれば、自己免疫性血小板減少症が副作用で起こったかもしれないことの傍証となります。もうひとつは「心電図検査」です。胸の痛みなどがあって心電図に異常があれば、やはり副作用の可能性があります。ただし意味があるのは、どちらの検査もワクチン接種を受けたあと1~2ヵ月以内くらいの症状に限られます。
血液が血管の中で固まる病気(血栓症)に対する検査を受けた、というお便りもいくつかありました。血栓症の話題がテレビでしばしば報じられてきたためと思われますが、これはアストラゼネカ社製のようにDNAを用いたワクチンに限られる副作用であり、ファイザー社やモデルナ社のワクチンではほとんど認められていません。また血栓ができる仕組みは複雑で、関係する検査も無数にあり、多くは専門の検査センターに外注することになるため費用も高額となります。したがって、無駄な検査の代表と言えるかもしれません。
当面の副作用として現れた症状の多くは、長くても3~4ヵ月ほどで自然に治っていくものであることがわかっています。読者からのお便りによれば、散歩などで積極的に体を動かすようにしたら克服できた、という人も多いようです。
「賢い患者学」をあえて挙げるなら、「医師に症状をたくさん訴えると、その数だけ検査が行われ、それ以上に薬が処方され、かえって不安が増してしまうことを知る」ではないでしょうか。
(2021.12.13)
(2) 米国における接種義務化と法律事情
米国では、大統領やニューヨーク市長が先頭に立ってワクチン接種を義務化すると意気込んでいて、あたかもアメリカ中で、と言わんばかりの報道がなされています。しかし実態は、そうでもなさそうなのです。
2021年12月2日発行の専門誌に興味深いデータが報告されました。米国では、連邦政府がすべての公務員に接種を義務付けると発表していますが、各州ではワクチン接種の義務化について、それぞれ反対と賛成の異なる法案が検討されています。
2021年9月15日現在、46の州でワクチン接種に関して148の法案が検討されています。そのうち88.5%に相当する131の法案は義務化に反対するという主旨のものでした。とくにワクチンパスポートの導入に対しては97.4%が「反対」となっています。具体的には、たとえば運転免許の更新条件にワクチン接種の有無を問わない、など差別を助長させないための法案が圧倒的に多いということです。
ただし、あくまで法律の案の段階であり、すべてが州議会で可決されているわけではありません。報告されたデータによれば、「義務化に反対する法案」131件中、可決したのは43件、一方「義務化を促進する法案」17件中、可決しているのは12となっていました。
翻ってわが国では、法制化の議論こそなされていませんが、日本人の生真面目さからテレビ報道などに過剰に反応してしまっている人が多く、勤務先や家庭内で人権侵害とも言える差別が横行しています。愚かな差別を助長させないため、法律ではない方法による対策が早急に望まれます。
【参考文献】
1) Fernandes B, et al., US state-level legal intervention related to COVID-19 vaccine mandates. JAMA, Dec 2, 2021.
(2022.1.3)
(3) ワクチン接種の強制は倫理的に許されるのか?
有名な医学専門誌に、法律家が投稿した論文が掲載されました。書いたのは英国の大学の法学部に所属する研究者たちで、医学関係者以外の論文が載ることは、これまで私の記憶でほとんどありませんでした。内容は誤解と偏見に満ちたもので、そのきっかけになったと思われるニューヨークタイムズ紙の記事と合わせてポイントをまとめました。
2021年12月、オーストリア政府は、すべての国民にワクチン接種を強制する法案を提出しました。これに続いて、ギリシャの首相は「60歳以上で接種を受けていない国民に罰金を課す」との声明を出しています。オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、インドネシア、イタリア、英国でも同様の動きがあります。
これらの動きに対し、欧州各国でワクチン接種の義務化に反対するデモが相次いでいるとのニュースは、テレビでも報じられているとおりです。英国の保健省大臣は「強制は倫理に反する」とテレビのインタビューに答えました。一方、同国のジョンソン首相は、ワクチンパスポートの導入に積極的で、法案が議会で可決したばかりです。しかし内情はいささか複雑で、大勢の保守派議員が造反し、法案に反対していたのです。そのとばっちりか、首相自らがロックダウン中に大勢で会食していた写真が暴露されるなど、与党内で窮地に立たされているようです。
さて論文の著者たちの主張は、「ワクチン接種の強制は憲法などに照らしても適切であり、反対するのは間違っている」というものでした。根拠として、2021年10月、欧州各国の裁判官50人が、接種強制は憲法などに照らし合わせても合法だと、国際ネットワークを通じて声明を出していることを挙げています。
その背景にあるのが、「欧州裁判所が定めた欧州人権条約第8条」なるものです。何人も、個々人とその家族の権利を守るべきことを定めたものです。これに従えば、「他人の健康を守るためには、強制接種も正当化される」というのです。「現に、はしか、おたふくかぜ、風疹、破傷風、ポリオなどのワクチン接種はどの国でも、ほぼ強制的にやってきたではないか」と。
強制は認められないとの主張に対する反論も、激しさを増してきています。英国のある社会心理学者は、「ワクチンをまだ受けていない人、拒否している人たちは、経済的に貧しいか、学歴の低い傾向がある」と侮蔑的な発言さえしています。
法律学者や社会学者などの人たちが犯している根本的な誤りは、新型コロナのワクチンが「安全性の確認されていない未知の方法であること」、「感染予防の効果も重症化予防の効果もほとんど認められないこと」、「変異ウイルスの発生を促している可能性が高いこと」、そして何より「体内で大量に作られたトゲトゲ蛋白が深刻な健康被害をもたらしている事実」をまったく理解していないことです。
「自分を犠牲にしてでも他人の健康を守れ!」と言っているに等しい主張は、倫理に反しています。世界中の人々が「ワクチン」という甘い言葉に幻惑され、社会の雰囲気に流され、真実を見極める努力を怠ってしまったのです。「ワクチンをまだ受けていない人や意図的に拒否している人たちは、経済的に貧しいか、学歴が低い」との言葉は、主語だけ取り替えて、そっくり発言者にお返ししましょう。
*脚注
倫理(ethics)とは、メリアム・ウエブスター辞典によれば、「地域社会において行動の善悪を判断する規範・ルールのこと」で、モラルという言葉より広い概念を持つ。古今東西、為政者が倫理を無視した法律を作った事例は無数にある。
【参考文献】
1) King J, et al., Mandatory COVID-19 vaccination and human rights. Lancet, Dec 23, 2021.
2) Guide on article 8 of the European convention on human rights. European Court of Human Rights, Aug 31, 2021.
3) Artcle 8: respect for your private and family life. Equality and Human Rights Commission, Jun 24, 2021.
4) Landler M, Vaccine mandates rekindle fierce debate over civil liberties. New York Times, Dec 10, 2021.
(2022.1.3)
(4) 地方紙が伝えた真実とは?
読者から貴重な情報をお知らせいただきました。2021年12月29日付けの北陸中日新聞に、『コロナワクチン接種 13日後死亡』という見出しのついた大きな記事が掲載されたという話題です。大勢の方々に読んでいただきたい内容なのですが、残念ながらデジタル版の記事は見当たりません。
72歳の女性が2回目のワクチン接種後、脳出血で亡くなり、診断書に血小板減少症の文字が記載されていたという情報とともに、「健康だったのに」との、ご家族の悲痛な思いが綴られた記事でした。このような主旨の記事が新聞に掲載されたのは、おそらく全国で初めてではないでしょうか。
NHKスペシャル『原爆初動調査 隠された真実』で、「無知学」という言葉を知りました。番組の内容は、広島、長崎に原爆を投下した直後に米軍が行った調査がテーマで、爆発による直接の被害ではなく、残留放射線が健康に及ぼす影響を調べたものでした。調査の結果、深刻な影響が出ていることがわかり、報告書を司令官に提出したところ、「なかったことにせよ」との命令が下されたのです。残留放射線による健康被害が知られてしまうと、国際社会から非難を受け、米国の核開発にブレーキがかかってしまうからという理由でした。
米国の歴史学者によると、これこそ無知学の典型例なのだそうです。つまり、利益を享受する一部の人たちにだけが有利となるような、偽りのデータや情報を流布させたり、隠ぺいしたりした国家規模の事件だったからです。
残留放射線という言葉を「ワクチンの副作用」に置き換えれば、いま起こっていることとまったく同じ出来事です。無知学の対象とさせないため、改めてジャーナリズムの奮起を期待するものです。
*脚注
無知学(agnotology)とは、"how we know" to ask: why don't we know what we don't know?(われわれが知らないことを、なぜ知らないのか、極めていくこと)とされている。
(2022.1.17)
(5) ワクチンの被害で裁判を起こす
ワクチンの深刻な副作用で悩んでいる人、あるいはワクチンにせいで最愛の家族を失った人が裁判を起こすことができるのかどうか、考えてみます。このような記事は、本来、法律家に書いてほしいものですが、私が探した範囲で見当たりません。
コロナワクチンを製造する企業がたくさんある米国では、実際の接種が始まる前から、すでにこの問題がいろいろと論じられてきました。あるメディアが綿密な取材と論考を行っていますので、まず概要をまとめておきます。
米国では、ワクチン開発の長い歴史の中で生まれた時限の法律があり、副作用で重大な健康被害がたとえ生じても(故意の不正がない)限り企業側の責任はいっさい問えないことになっています。2020年2月、保健福祉庁長官は、「2024年まで、新型コロナのワクチンと治療薬についてこの法律を発動する」と、早々に宣言しています。このとき、米国政府と各製薬企業との間には、何らかの取引があったはずで、政府が買い上げるワクチンの価格も異常に高額なものになっている、と指摘しています。
この法律の根底にあるのは、「主権免除」という考え方です。古く大英帝国の時代、「キング(王さま)を訴えることはできない」という大原則があり、それが現代の法律にも引き継がれているのだそうです。つまりワクチンで健康被害を受けても、国家機関であるFDA(米国食品医薬品局)を訴えることはできない、というのが同国の法律家の解釈です。この原則は、海外にも適用され、外国から米国の政府機関に対して、また国家からお墨付きをえた製薬企業に対しても、裁判を起こすことはことはできない、ということになります。
次に、たとえばレストランの経営者が従業員にワクチン接種を強要したような場合、顧客に対するサービスと考えての経営判断であれば、雇用契約として尊重されるべきと考えられています。つまり、つまり接種を強要された従業員が経営者を訴えることもできない、と判断されるというのです。
では、ワクチン接種で重大な健康被害を受けた場合は、どうなのかです。米国では、被害者を救済する制度がありますが、過去10年間、適用されたのは6パーセントにも満たないものでした。
国内に目を転じると、日本国政府もファーザー社やモデルナ社などと何らかの密約を交わしていると噂されていますので、米国の状況はそのまま国内にも通用することになります。つまり、われわれは米国の製薬企業を訴えることができないのです。副作用で健康被害を受けた場合、日本でも「予防接種後健康被害救済制度」があります。しかし厚生労働省のホームページをみると、あまりに手続きが複雑で、読んでいるだけで具合が悪くなりそうです。過去、どれくらいの割合で救済がなされたのは不明です。
さて、国内で裁判を起こすことにした場合、訴える相手は誰なのでしょうか? おそらく理由は人それぞれで、たとえば副作用による休業や治療費の補償を求めたい人、あるいはワクチンの副作用に対する十分な説明がなかったことに対して慰謝料を求めたい人もいるかもしれません。前者の場合は、先ほど述べた救済制度を利用すべきなのでしょう。難しいのは後者の場合です。当然、「因果関係」と「相手(国など)の過失」を証明する必要があります。
しかし現時点で、因果関係を証明する方法はありません。次の写真は、当ホームページのQ14で紹介したものと同じで、私が行った実験の結果です。ヒトの血管内皮細胞を用いて「ある特定のたんぱく質(コロナとは無関係)」に対する「抗体」を結合させ、さらにその抗体を特殊な方法で映像化したものです。方法はややこしいのですが、細胞内の特定のたんぱく質(の影)を顕微鏡で観察することができます。
もし心臓や腎臓、あるいは肺などに副作用と思われる異常があり、その細胞にトゲトゲ蛋白が大量に入り込んでいて、それとともに免疫細胞や炎症細胞が集まっていたとすれば、ワクチンの副作用である可能性が高いことになります。
この検査法を作るのは簡単なのですが、信頼性の担保が必要です。そこで全国の優秀な検査試薬メーカーにお願いです。ぜひこの方法を製品化(キット化)し、全国どこの医療機関でも同じ検査ができるようにしてください。
最後に残る問題は、相手、つまり国またはそれに準ずる立場の人たちに「過失」や「故意」があったことを証明できるかどうかです。当ホームページでは、ワクチンメーカーの手になる論文に、多数の不正疑惑があることを紹介してきました。当然、疑惑に対する強固な反論も予想され、簡単ではなさそうですが、裁判を通じて問題点をアピールするだけも、世論喚起の効果があるかもしれません。
【参考文献】
1) Halabi S, et al., No-fault compensation for vaccine injury - the other side of equitable access to Covid-19 vaccines. N Engl J Med, Dec 3,2020.
2) Sigalos M, You can't sue Pfeizer or Moderna if you have severe Covid vaccine side effect. CNBC, Dec 23, 2020.
3) 根本晋一, 国の行為に起因する国民の健康被害救済制度の研究―予防接種禍事故をめぐる損害賠償と損失補償の間隙に関する諸問題―. 日本大学歯学部紀要, 36: 85-94, 2008.
(2022.1.24)
(6) 米国の最高裁判決とは?
海外では、ワクチン接種を巡る裁判の話題が多くなっています。欧米の多くの国で、ワクチン接種を義務づける判断が下されていて、それが憲法違反なのではないか、という裁判なのです。
2022年1月13日、その先陣を切って、米国の最高裁判所は、バイデン政権が求めたワクチン接種義務化の方針に対し、「連邦政府の権限を越えている」との理由で、差止命令を出しました。
バイデン政権の方針は、2022年1月から、従業員100人以上のすべての企業に対し、従業員のワクチン接種、または週1回の検査を義務づける、というものでした。これに対する最高裁の判決は、「医療従事者を除いて、接種の義務化は各州、あるいは各企業の判断に委ねるべし」というものでした。
対する企業の反応は複雑のようです。あるレストランチェーンのオーナーは、全従業員に必ず接種を受けようにと業務命令を出したばかりで、「お客のためを考えて決めたことなのに、今さらどうすればいいのか?」と頭をかかえているとか。
最高裁判決が下る直前、ある法律事務所は、顧客543企業のうち57パーセントが従業員に対して強制的に接種を受けさせる予定にしていたと述べていました。一方で、全米小売業界は、ただでさえも離職者が多いいま、接種が義務化されたら、さらに多くの従業員が辞めてしまうので、この判決は歓迎するとコメントしています。
最終決断は、各州に委ねられた形ですが、フロリダ州の知事は、「バイデン政権は狂ってる、としか言いようがない。接種の義務化は医学的判断でなされたものではなく、単なる政治的パフォーマンスだ」と、気骨ある発言をしています。
ニューヨークタイムズ紙は、ワクチン推進の立場を崩していません。ワクチン接種を拒否して有名病院を解雇され、いまは小さなクリニックに職をえているという、あるナースのコメント「後悔はしていない。だって、このワクチンはまだ実験段階で、将来、何が起きるかわからないから」を紹介していますが、すぐそのあと、「多くの専門家はワクチンの重要性を強調している」との文章で締めくくっています。
これらの動きに対して、バイデン政権はかなりむきになっているため、命令に反した医療機関は高齢者医療保険が使えなくなるのではないかとか、介護施設への補助金がカットされるのではないか、との懸念も高まっていると報じられています。
以上は、ワクチン接種を義務づけている国のお話です。幸い、日本ではそのような動きはありません。それだけに、何に対して裁判を起こすことができるのかが、むしろわかりにくくなっています。また、たとえ裁判で勝訴となっても、問題がすっきり解決するわけではないという現実も突きつけられたようです。
【参考文献】
1) Supreme court allows CMS vaccine mandate to go into effect, blocks OSHA vaccine requirements. American Hospital Association, Jan 13, 2022.
2) Goldberg E, et al., Businesses are whipsawed again as the Supreme Court blocks OSHA's vaccine mandate. New York Times, Jan 13, 2022.
(2022.11.21)
(7) ワクチン被害の証拠を残そう
ICANという名の組織
米国にICANという名の組織があります。Informed Consent Action Networkの略号で、「患者の知る権利を守る会」という主旨のようです。ネット百科事典のウイキペディアによれば、「2016年に設立された米国の予防接種反対グループのひとつで、誤った情報を広め、世間を混乱させている」とのことです。
当ホームページは、いわゆるフェイクニュースに対する注意喚起も、目的のひとつとしてきました。それにもかかわらず、この組織の活動を取り上げることにしたのは、英国の伝統ある「報道および情報提供企業」のロイター社が報じた、ある記事が、今後の展開を考える上でヒントになると感じたからです。
だれでもOK!スマホ登録システム
米国には、ワクチン接種で受けた副作用を、いつでも誰でもスマホから登録できるというシステムがあります。登録すると、その後の健康状態を確認するためのアンケートが1年間、送られてくるようになっていて、v-safeと名づけられています。対象はファイザー社、モデルナ社、それにジョンソン&ジョンソン社製のワクチンに限られています。
情報を管理しているのは米国疾病予防管理センター(CDC)ですが、ある団体からの情報公開請求を受けて、このデータを2022年9月末までに公開する約束をしていました。しかし、約束は果たされないままとなっていました。
この請求をしたのがICANでした。裁判所の命令を受けたCDCは、しぶしぶ(?)データをICANに差し出した、というロイターニュースだったのです。
そのデータを集計したところ「登録者が782,913人いて、そのうちの7.7パーセントの人が、軽症・重症を含めて何らかの医療を必要としていた」ことがわった、というのです。CDCはコメントを拒否していますが、「接種後1週間以内の副反応は1~3パーセントに過ぎない」と記者の質問に答えています。
これに対してICAN側は、重大な副作用は接種のあと1週間以上してから出てくるものであり、CDCの言い分はおかしい、と反論しています。またICANの弁護士は、「これで裁判に持ち込むことができると確信した」とも語っているのです。
11月21日現在、なぜかCDCはv-safeの生データをまだ一般公開しておらず、真相は確認できないままの状態となっています。
被害者は裁判は起こせるか?
当ホームページでは、Q1において「ワクチンと法律」に関する世界の話題をシリーズで紹介したところです。その際、「米国内の時限の法律により、少なくとも2024年までは国やメーカーを相手に損害賠償を求めることはできないこと」、「サラリーマンは、勤務先で接種を強要されても、それが雇用条件とされている場合は裁判を起こしても却下されること」などの説明を行いました。
2018年、米国のニューヨーク州で麻疹(はしか)が流行したことから、当局は一部地域の学童に対してワクチン接種を義務づけることにしました。この決定に対し、宗教上の権利を定めた憲法に反するとして、父母から異議申し立てがなされたのですが、裁判所は審理することなく却下してしまいました。
ところが2022年11月9日、突然、裁判所はこの申し立ての審理を開始することにしたと発表しました。背景に何があったのかはわかりませんが、世論の変化によるものだとすれば、一歩前進したことになるのですが・・・。
裁判に必要な証拠
もうひとつ話題があります。ドイツの研究者が、新型コロナワクチン接種後に死亡した18人について病理解剖を行った結果を報告してくれました。論文で示されたのは以下の諸点でした。
・男女の割合は同じで、年齢は32~91歳
・接種後から死亡に至るまでの時間は、数分~14日
・肉眼で認められたのは、脳出血、心筋症、脳静脈洞の血栓、広範な脳出血など
・顕微鏡では、喉の粘膜の浮腫、アレルギー細胞の集積などが認められる
・ワクチンとの因果関係は十分に想像されるが、断定は難しい
・アナフィラキシーは複雑で、病理解剖だけで因果関係を断定するのは難しい
この論文の著者は、ワクチンが原因で死亡したと考えられる場合、少なくとも徹底した病理解剖を行うべきであり、加えて免疫・アレルギー関連のさまざまな化学的検査も必須だとしています。
この論文で残念だったことがあります。接種直後のアナフィラキシー反応と、数日以降に起こる自己免疫病が、まったく異なるものであるにもかかわらず、その区別がなされていなかったことです。そのため、当ホームページで繰り返し指摘してきた「細胞中のトゲトゲ蛋白の存在証明」(免疫組織染色)が行われていなかったのです。
病理解剖のあと、体の組織や細胞を特殊な液体(ホルマリン)で処理すると、長期の保存が可能になります。そのようなサンプルからでもこの分析は可能ですから、被害に遭った人は、とにかく保存を依頼しておくことです。
因果関係を証明することができるかもしれない、もう一つの技術は「糖鎖」の分析です。これは、細胞やたんぱく質の表面に生えている、うぶ毛のような構造物で、免疫システムが自分自身と侵入者(ウイルスなど)を見分けるための誘導灯のような役目を果たしています。次の図は私が発見した、ある糖鎖の形です(分析法は文献6に詳述)。
トゲトゲ蛋白は、この糖鎖を傷つけてしまうのです。すると、自分自身の細胞やたんぱく質が免疫システムによって敵とみなされ、攻撃されるようになってしまいます。これが一連の自己免疫病の始まりです。
したがって、糖鎖に異常が生じていることを示せれば、ワクチンとの因果関係を証明することができるかもしれません。ただし特殊技術のため、この分野の研究者を探し出し、理解と協力を求める必要があります。
まとめ
ドイツからの論文には、「自分の娘の死は予防接種のせいと、有名新聞の取材に答えた母親が、SNS上で攻撃され、ウソつき呼ばわりされた」という逸話も紹介されていました。病理解剖により娘の死因の一端が明らかになり、母親の汚名挽回もできたのだそうです。
ワクチン被害の解決には多くの難問が立ちはだかっていますが、一歩一歩前進していくしかありません。
【参考文献】
1) Greene J, New data is out on COVID vaccine injury claims. what's to make of it? Reuters, Oct 13,2022.
2) Informed Consent Action Network. accessed Nov 14,2022.
3) Sigalos M, You can't sue Pfeizer or Moderna if you have severe Covid vaccine side effects. the goverment likely won't compensate you for damages either. CNBC, Dec 23,2020.
4) Kalmbacher C, Federal appeals court revives religion-based lawsuit over
measles vaccine mandate for students in heavly Hasidic New York county.
Law & Crime, Nov 9, 2022.
5) Schneider J, et al., Postmortem investigation of fatalities following
vaccination with COVID-19 vaccines. Int J Legal Med, Sep 30, 2021.
6) Okada M, Sugar chain structure of apoliporotein B-100 and its role in
oxidation. bioRxiv, May 31, 2022.
Q2 ワクチンを受けないと決めた人たちの災難とは?
A 私のもとには、「ワクチンを受けないと決めた人たち」から、悲痛な思いを綴ったお便りが、たくさん届いています。
「組織の中で受けていないの自分だけで、周りの目が恐ろしい」
「閑職に回された」
「もし集団感染が起こったらお前のせいだ、と言われた」
「医療人として失格だとなじられた」
「周囲の目が急によそよそしくなった」
「毎日、上司から人格を否定するような言葉を投げかけられている」
「接種を拒否することは許されない、との指示書が回ってきた」
重大な人権侵害であることはあきらかです。パワハラなどと生やさしいものではなく、傷害罪にも等しいレベルではないでしょうか。今後は法律問題と捉え、各自が行動していく必要があるかもしれません。
もし法律家の方が、この文章を読んでいただいているなら、ぜひ「お悩み相談窓口」を開設し、疎外されている人たちを救ってあげてください。医学的な問題については、及ばずながら私がサポートをさせていただきます。本ページの最初に記したアドレスあて、メールをお待ちしています。
(2021.9.17)
(2) 子育て中ママたちの苦悩
以下、とくに子育て中ならではの悩みをご紹介します。プライバシーに触れないよう、部分的に抜きだしたり、合わせたりと編集を加えましたが、真意は変わらないはずです。それどころか、事実はもっと複雑で、はるかに深刻だとお考えください。
「自分は打ちたくないし、もちろん子供にも打たせたくない。しかし、このままでは子供が学校でいじめを受けるのではないか」
「子供が塾や習い事に行けなくなることを思うと、接種後の副作用くらいは覚悟しなければいけないのだと思う」
「祖父母から、孫のために早く打つように言われていて、ノイローゼになりそう」
「授乳中だけれど、接種後、赤ちゃんに本当に影響はないのか正しい情報が知りたい。テレビで言っていることは、あまりに一方的で信用できない」
「自分が感染してしまうと、子どもの面倒を見てくれる人がいない。でも、ワクチンの副作用で何日も寝込んだり、出血が止まらなくなったという人の話も聞いていて、まるで究極の選択を迫られているよう。どうしたらいいかわからない」
「もし副作用でずっと寝たきりになったりしたら・・・」
「いままでは他人事と思っていたが、いざ接種券が届いたら急にいろいろ考え込んで、怖くなった」
「悩み過ぎて、体がどうにかなりそう。助けてください!」
(2021.9.6)
(3) アレルギー体質は接種拒否の理由にならないのか?
ワクチン接種後に起こる、急激で重いアレルギー反応を「アナフィラキシー」と呼ぶことは、広く知られるようになりました。急速に血圧低下や呼吸困難が生じて、放置すれば死に至るというものです。
当初、政府は、「アナフィラキシーなど重いアレルギー症状が過去になければ、ワクチン接種を受けてほしい」と呼びかけていました。しかし、この言葉が次第に語られなくなり、またいくつかの学会が「アレルギー疾患患者の大半は接種を受けられる」との声明まで出すようになってきています。
8月31日付けで発表された論文で、アナフィラキシーの詳細がわかりましたので、この主張が正しいのかどうかを検証してみます。
その論文は、いくつかの条件、つまり「過去にアナフィラキシーを起こしたことがある」、「複数の薬に対してあきらかなアレルギーがある」、「複数の異なるタイプのアレルギー疾患がある」などを満たす429人に、ワクチンを受けてもらい、追跡調査を行ったものです。
その結果、接種1回目と2回目を合わせて3人(0.7%)がアナフィラキシーを起こしてしまいました。もちろん、専門医がそばに控え、万全の処置ができる体制を整えていたことから、幸い死亡した人はいませんでした。
このデータをどう理解すればいいでしょうか。「ワクチンを受けたくないが、職場で強要されている」、「アレルギー体質だと言っても、信じてくれない」と、悩みを打ち明ける人が少なくありません。
接種を勧めたい人たちは「ごくまれな出来事だから・・・」と済ませてしまうのでしょうが、強要されている人にとっては、「もし、この数字の中に自分が入ってしまったら」・・・、0.7%は重みをもった数字となります。しかも接種会場では、専門医が万全をきして待機しているわけでもありません。
別の調査によれば、コロナワクチンでアナフィラキシーを起こした人が、過去にも同じ症状があったとは限らない、ことがわかっています。少しでもアレルギー体質があってワクチンを受けたくない人は、そう申告すべきであり、それを認めない職場の責任者や担当医は、人命を脅かす罪を負ったことになるのではないでしょうか。
【参考文献】
1) Blumenthal KG, et al., Acute allergic reactions to mRNA COVID-19 vaccines. JAMA, Mar 8, 2021.
2) Shavit R, et al., Prevalence of allergic reactions after Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccination among adults with high allergy risk. JAMA, Aug 31, 2021.
(2021.11.22)
(9) 悲痛な海外事情
当ホームページは、海外に在住する多くの邦人の方々にもご覧いただいています。お便りもたくさん届いていますが、その内容は「悲劇」としか言いようのないものばかりです。
そんな方々に対する日本からのエールとして、要約をいくつかご紹介し、悩みを共有させていただくことにしました。中には命がけでメールを書いておられる方もいますので、ご当人であることが決してわからないよう、個人情報にふれないのはもちろん、ウソにならない範囲での編集も加えてあります。
まずハワイから。勤務する会社から「宗教上の理由以外、拒否は許されない」との通達があった。持病とアレルギーがあり接種を拒否したいと考え、日本人医師を受診したが、診断書を出してもらえず。弁護士に相談しても「会社の指示に従うしかない」と言われてしまった。会社を辞めて帰国することも考えたが、家庭の事情で帰国もできず、途方に暮れている。
オーストラリアから。これまで激しいアレルギー症状を繰り返してきたため、接種を拒否するつもり。地元の医師に伝えたところ、「1回目の接種で重い副作用があった人以外は拒否できない」と言われた。同国では、世界一長いロックダウンが続いており、解除されないのは接種してない人がいるせい、との風潮が強い。市民の多くはテレビの見すぎで、コロナを極端に恐れている。同国の方針で、未接種者は飛行機に乗れないためため帰国もできない。どうか、診断書をかいてくれるお医者さんを紹介して。
ドイツに住んでいるご夫妻から。いま急速に感染者が増えていて、知り合いがあちらでも、こちらでも感染している。ほとんどが2回接種した人たちのはずだが、テレビは未接種者が感染しているとウソをついている。未接種者が行けるのはスーパーと薬局だけになった。ご近所さんが「未接種者は刑務所にぶち込め」と言っているのを耳にし、体調を崩している。
イタリアから。10月15日から全労働者の接種が義務化されたため、自分は有給休暇をとってしのいでいる。しかし間もなく有給を使い切ってしまうため、「72時間以内PCR検査陰性証明」で逃れるしか術がなくなった。
カナダから。公的機関の職員に対し未接種者は解雇するとの決定がなされた。そのため職を失ってしまい帰国を考えたところ、すべての移動を禁止するとの命令が出され、幽閉状態になってしまった。ただただ辛い。
カナダの留学生から。激しいアレルギー症状をきたした経験があり、接種免除の診断書をもらいにクリニックを受診したところ、「いかなる理由があっても免除の診断書を発行してはならない」との命令が公的機関から出てる、と言われた。手助けしてほしい。
(2021.9.5改訂)
(10) ワクチンを打たない人は集団免疫に貢献できない?
すでに感染した人の自然免疫が、どれくらい長く続くのかを調べた研究がたくさんあります。それらの報告値をまとめると、中和抗体が半分になるまでの期間は2~6ヵ月です。
知りたいのはワクチン接種の効果です。幸い、デルナ社ワクチンの臨床試験(第I相試験)に参加したボランティア33名を追跡したデータが報告され、中和抗体が半分に減るまでの期間が、やはり2~6ヵ月であることがわかりました。幅があるのは、免疫機能が複雑で評価の仕方がいろいろだからです。
このことが何を意味しているかといえば、数か月前に接種を受けた人たちは、すでに免疫が切れているということです。
英国では、ワクチン接種を受けた605人について、トゲトゲ蛋白に対する抗体がどれくら長持ちするのかが調べられました。2回接種を受けた人の血液を、時間を追いながら何回か採取したところ、「接種後21~41日目の抗体量」に比べ、「70日目以降の抗体量」が格段に減少していました。百歩譲ってワクチンが効いているとしても、せいぜい2ヵ月ちょっとなのです。
【参考文献】
1) Dan JM, et al., Immunological memory to SARS-CoV-2 assessed for up to 8 months after infection. Science, Jan 6, 2021.
2) Doria-Rose N, et al., Antibodies persistence through 6 months after the second dose of mRNA-1273 vaccine for Covid-19. N Engl J Med, Apr 6, 2021.
3) Quast I, et al., B cell memory: understanding COVID-19. Immunity, Feb 9, 2021
4) Rabin RC, C.D.C. will not investigate mild infections in vaccinated American. New York Times, May 25, 2021.
5) Zimmer C, We'll probably need booster shots for Covid-19. but when? and which ones? New York Times, Jun 6, 2021.
6) Shrotri M, et asl., Spike-antibody waning after second dose of BNT162b2 or ChAdOx1. Lancet, Jul 15, 2021.
7) Mandavilli A, Vaccinated people may spread the virus, though rarely. C.D.C. Reports. New York Times, Jul 30, 2021.
Q3 安心できるワクチンとは?
A すでに何種類かのワクチンが実際に使われていますが、さらに49種類もの新しいワクチンがほぼ実用化し、治験に入っています(2022年7月8日現在)。どちらも含めて、ワクチンは大きく2種類にわけることができ、ひとつはmRNAやDNAを用いた「遺伝子ワクチン」、もうひとつがいわゆる「不活化ワクチン」です。
いま世間の期待を広く集めているのは後者です。インフルエンザワクチンなどでお馴染みで、なんとなく安心感があるからでしょう。
簡単に言えば、遺伝子ワクチンがヒトの細胞内でコロナのトゲトゲ蛋白を作らせる方式であるのに対し、不活化ワクチンのほうは、実験動物や培養細胞内に遺伝子を注入し作らせてしまうものです。つまりヒトの体内に遺伝子を注入するか、しないかの違いがあるだけです。
あとで述べますが、コロナワクチンの最大の懸念は「きわめて有害なコロナのトゲトゲ蛋白を体内に入れる」という点にあるため、どちらのタイプのワクチンも危険であることにかわりはありません。
日本のメーカーなら安全なワクチンを作ってくれるはず、と期待を寄せている人も多いものと思います。しかし日本国内ならではの問題も山積です。
・開発に乗り遅れてしまった
・日本独自の技術がなく、海外の特許を利用するために莫大なお金がいる
・すでに、多くの人がワクチン接種を受けてしまった今、本物のワクチンと偽ワクチン(プラセボ)を使ったランダム化比較試験ができなくなった
などなどです。いずれにしても安心できるワクチンが製品化されるまでには、少なくとも10年はかかりますから、その間に、コロナ禍は終息してしまっているでしょう。
【参考文献】
1) Kaabi NA, et al., Effects of 2 inactivated SARS-CoV-2 vaccines on symptomatic COVID-19 infection in adults. a randomaized clinical trail. JAMA, May 26, 2021.
2) Broom, 5 charts that tell the story of vaccines today. World Economic Forum, Jun 2, 2020.
3) Zimmer C, et al., Coronavirus vaccine tracker. New York Times, Jul 8, 2022.
(2021.12.13)
(2) 国産ワクチンを評価する
遺伝子ワクチンは嫌だけれど、国産ワクチンには期待を寄せている、という人が多いようです。そこで最新の情報と、冷静な評価をまとめてみました。
国産だからといって安全とは限りません。すべての製品に共通している問題は、最終的に体内で生ずるのがトゲトゲ蛋白であるという点です。インフルエンザワクチンが安全なのは、作り方ではなく、危険なトゲトゲ蛋白がない、という点にあります。不活化ワクチンと呼ばれていることから、安全神話が生まれ、誤解が生じているように思われます。
主成分の運び屋にも気になる点があります。ファイザー社やモデルナ社のワクチンは「脂質微粒子」という石鹸の泡粒のような膜に包まれて血液中を運ばれていきます。しかし、この成分自体が体内で炎症を起こすことが実験的に知られています。したがって運び屋の作り方によっては、もっと副作用が高まる可能性もあります。
もうひとつ問題があります。トゲトゲ蛋白はあまりに小さく、それだけでは免疫反応が起こりません。そのため反応を促進する特殊な物質をいっしょに混ぜておく必要があります。アジュバントと総称されるそれらの物質は、しかし企業秘密となっていて、情報公開がなされていないのです。
これら懸念がすべて払拭され、われわれが安心して接種を受けられるようになる唯一の条件が、年余にわたる臨床試験と使用実績です。ほかの項でも述べましたが、そのために必要な月日は最低でも10年です。
【参考文献】
1) Ndeupen S, et al., The mRNA-LNP platform's lipid nanoparticle component used in preclinical vaccine studies is highly inflammatory. iScience, Dec 17, 2021.
2) Felberbaum RS, The baculovirus expression vector system: a commercial manufacturing platform for viral vaccines and gene therapy vectors. Biotechnol J 10: 702-714, 2015.
(2022.12.19)
(3) 鼻にスプレーするワクチン
薬を鼻にさすためのスプレー(点鼻薬)が昔からありました。多くの人が使っているのは、花粉症対策の鼻スプレーです。抗アレルギー剤やステロイドホルモン剤が配合されています。実は、ワクチンも、昔から鼻スプレーが研究されていました。あまり普及していないのは、いろいろ問題もあったからです。
多くの人が期待するのは、鼻スプレーでワクチン接種ができれば、痛い思いをしなくとも済むし、なんとなく安心、ということではないでしょうか。注射が嫌いなのは、子供に限ったことではありません。例年、インフルエンザ・ワクチンを大勢の人に打ってきましたが、「痛いのはイヤ」とばかり、叫び声をあげながら接種会場を逃げ回る大人もいたりして、それはそれは大変なのです。
新型コロナウイルスのワクチンが、驚くほどの速さで世界中に広まった背景には、トランプ元大統領の肝入りで始まった「光速ワープ作戦」という、いささか子供じみた名前のアメリカの国家戦略がありました。
しかし最近は、ワクチンへの要求度が急速に低下してきたことから、その世界戦略を担ってきた米国で、ある議論が巻き起こっています。これまで政府が投じてきた莫大なワクチン投資が、財源難に加えて政争(民主党と共和党の争い)も重なり、暗礁に乗り上げてしまったのです。
そこで困ったのは、次世代のワクチンは「鼻スプレー」しかないと意気込む、大学の研究者たちです。鼻スプレーにこだわるのは、外から体内に侵入してくるウイルスや細菌、花粉、排気ガスなどと最初に戦う場所が鼻の粘膜で、いろいろな免疫細胞が集まっているからです。
困ったのは、研究費だけではありませんでした。アイデアは簡単でも、臨床試験は簡単にいきません。少なくとも、これまで使われてきた筋肉注射用のワクチンと比べる必要がありますが、そのワクチンがなかなか手に入らないのです。
なぜなら、これまでコロナワクチンで荒稼ぎをしてきた製薬企業の思惑があるからです。大量の売れ残ったワクチンを下水に流しているとも言われている一方、ライバルにだけは1個たりとも渡したくないのです。
そんな困難にもめげず、多くの研究者、あるいはバイオベンチャーが鼻スプレーワクチン開発に取り組んでいて、成果が発表されています。以下の表は、内容が明らかになった3つの試作品をまとめたものです。
ただし発表の多くは1年ほど前のものであり、その後の進展がほとんど見られていません。理由のひとつは、鼻スプレーに固有の難しさがあるからです。2010年にインフルエンザ治療薬の鼻スプレーが登場し、私も多くの患者さんに処方してきましたが、効果が実感できませんでした。
鼻から噴霧した薬剤の多くは、肺に吸い込んでしまうか、あるいは胃の中に呑み込んでしまいます。つまり吸入の仕方が難しく、実際に鼻の粘膜に吸着する薬の量が人によってバラバラになってしまうのです。また肺などに直接入ってしまった薬剤が、何か悪さをしないのかなど、わかっていないこともいろいろあります。
新型コロナワクチンの鼻スプレーに対する過度な期待は禁物です。
【参考文献】
1) Park J-G, et al., Immunogenicity and protective efficacy of an intranasal live-attenuated vaccine agaist SARS-CoV-2. iScience, Sep 24, 2021
2) van Doremalen N, et al., Intranasal ChAdOx1 nCoV-19/AZD1222 vaccination reduces viral shedding after SARS-CoV-2 D614G challenge in preclinical models. Sci Transl Med, Aut 18, 2021.
3) Rubin R, COVID-19 vaccine nasal spray. JAMA, Sep 28, 2021.
4) Hassan AO, et al., A single-dose intranasal ChAd vaccine protects upper
and lower respiratory tracts against SARS-CoV-2. Cell, Oct 1, 2020.
5) Mueller B, The end of vaccines at 'Warp Speed.' New York Times, Nov 18, 2022.
6) Armitage H, COVID-19 nasal spray vaccine in the works at Stanford Medicine. accessed on Dec 18, 2022.
7) Lavelle C, Mucosal vaccines - fortifying the frontiers. Nat Rev Immunol, Apr, 2022.
8) Hartwell B, et al., Intranasal vaccination with lipid-conjugated immunogens promotes antigen transmucosal uptake to drive mucosal and systemic immunity. Sci Transl Med, Jul 20, 2022.
9) Tech2 News Staff, Bharat Biotech's intranasal vaccine for Covid-19:
everything we know as far about BBV154. TECH2, Aug 2, 2021.
Q4 治療薬はいつできるのか?
A これまで、さまざまな薬が「新型コロナにも効くのではないか」と報じられ、消えていきました。そんな薬の数々について考察してみます。
(2022.11.28)
(1) 国産初の飲み薬エンシトレルビル(商品名ゾコーバ)の正体
国産初のコロナの飲み薬が緊急承認されました。 1年間の期限付きです。開発コードがS-217622でした。原理はすでに使われているアストラゼネカ社製のパクソロビドとほぼ同じで、ウイルスが分裂する際に必要な酵素をブロックする薬です。
純粋の日本製ということで期待が集まっていました。薬が作用する仕組みもよくわかっていて、発明の経緯が立派な論文として発表されました。しかし、その臨床試験は疑問だらけだったのです。
調査は、2021年9月28日から2022年1月1日の間に行われました。対象は、新型コロナウイルスに感染して無症状、軽症、または中等症だった男女計43名(年齢12~69歳)で、低用量群(125mg)、高用量群(250mg)、そしてプラセボ群の3つにランダムに分けられました。わかったことは以下の3点でした。
・無症状の人も含まれているため、症状の回復効果は不明
・体内のウイルス量がゼロになるまでの日数
低用量群 61.3時間
高用量群 62.7時間
プラセボ群 111.1時間
・何らかの副作用があった人
低用量群 11名
高用量群 6名
プラセボ群 9名
問題は、対象者がわずか43名でしかなかったこと、無症状者が含まれていたため症状の回復効果がわからなかったこと、無症状や軽症者に薬を飲ませる意義がわからないこと、など数え上げればきりがありません。
新薬が世の中に登場したとき、もっとも着目すべきは副作用です。極めて短い期間(最大21日)の調査であったにもかかわらず、血液検査のビリルビン値や中性脂肪値が上昇し、大切な善玉コレステロール値が低下したと記載されていました。このような副作用がある薬はめったにありません。
最大の問題点は、健康に生きていくために必要な他の酵素もブロックしてしまう可能性があることです。そのため重大な副作用も懸念され、大規模かつ長期にわたる追跡調査が不可欠です。メーカーのホームページには、「この論文のあとに臨床試験が追加された」と記載されており、確かにテレビのニュースでも新たなデータが報じられていました。しかし、いくら探してもそのようなデータが論文として公表された形跡がありません。
私自身、新薬開発に携わったことはありませんが、新しい臨床検査法をいくつか開発し、認可を受けるため膨大な資料を携えて役所を日参した経験があります。その際の必須条件は、臨床試験のデータが「印刷された論文」として公表されていることでした。
もしこの薬の緊急承認が、非公開のデータにもとずいて密室でなされたのだとすれば、国民の信頼を裏切る行為です。
【参考文献】
1) Unoh Y, et al., Discovery of S-217622, a noncovalent oral SARS-CoV-2 3CL protease inhibitor clinical candidate for treating COVID-19. J Med Chem, Mar 30, 2022.
2) Mukae H, et al., A radomized phase 2/3 study of ensitrelvir, a novel oral SARS-CoV-2 3C-like protease inhibitor, in Japanese patients with mild-to-moderate COVID-19 or asymptomatic SARS-CoV-2 infection: results of the phase 2a part. Antimicrob Agents Chemother, Sept 13, 2022.
(2022.9.5改訂)
(2) イベルメクチン
イベルメクチンという薬に望みを託している人は少なくありません。。日本人が発見しノーベル賞受賞となった薬で、寄生虫を駆除する作用があり、ヒトよりも家畜用として広く使われてきました。
この薬を評価したという論文が、たくさん発表されてきました。新薬などに注目が集まるたび、それを評価した論文が大量に発表されるのは世の常ですが、中には薬を売り込むための宣伝にすぎず、ねつ造に近いものもあったりします。そこで登場したのが「メタ(超)分析」という研究方法です。関係する論文を手あたり次第に集め、ずさんなものを排除した上で、総合評価をくだすものです。
イベルメクチンに関しては、2021年8月8日現在で7つのメタ分析論文が発表されています。しかし、30年以上にわたって論文不正の調査研究を行ってきた私が、すべてに目を通してして感じたのは、以下のような疑念の数々でした。
・正式な論文、つまり専門家の審査を受けたのは2編しかない
・分析対象となったデータの多くが未発表
・2つのグループを公平に設定し、実薬とプラセボを割り当てて行われた試験が少ない
・そのようにして行われた試験でさえ、対象者が24~400人ときわめて少ない
・「致命率を62パーセントも下げた」など、結論が不自然
・臨床試験を実施した地域が開発途上国に集中している
「開発途上国で臨床試験が行われた」ことに関しては、言及すべき歴史があります。2012年、ファーザー社がナイジェリアの子供たちに対し、親の承諾をえることなくモルモットのように抗生剤新薬の臨床試験を行い、同国の裁判所から賠償金を請求されたという事件があったことです。
このような状況の背景にあるのは常に論文不正であり、医学を混乱させる元凶となってきたのは、歴史が教えてくれるところです。2021年8月、科学専門誌「ネイチャー」に、この問題を告発した記事が掲載されました。内容は私の考察をはるかに超えるものでした。
イベルメクチンに関する全論文を子細に分析したところ、ねつ造や盗作のオンパレードであり、対象者がどんな人たちだったのかを検証することさえできない、ずさんさなものだった、というのです。主だった論文の共著者にインタビューしたところ、「不正はなかったと信ずるが、元データは見せられていない」と答えていたそうです。
その後、唯一の科学的評価法である「ランダム化比較試験」が2つ行われ、いずれもイベルメクチンは効果なしとの判定が下されました。
以上から、最終結論はイベルメクチンを新型コロナ感染症の治療に使ってはならないということになります。
【参考文献】
1) Lopez-Medina E, et al., Effect of ivermectin on time to resolution of symptoms among adults with mild COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA, Mar 4, 2021.
2) FDA, Why you should not use ivermection to treat or prevent COVID-19. on line.
3) Wadvalla B-A, Covid-19: ivermectin's politicisations is a warning sign for doctors. BMJ, Apr 1, 2021.
4) Bryant A, et al., Invermectin for prevention and treatment of COVOD-19 infection: a systemic review, meta-analysis, and trial sequential analysis to inform clinical guidelines. Am J Ther, Jun 21, 2021.
5) Reardon S, Flawed ivermectin preprint highlights challenges of COVID drug studies. Nature, Aug 2, 2021.
6) Lim SCL, et al., Efficacy of ivermectin treatment on disease progression among adults with mild to moderate COVID-19 and comorbities, the I-TECH randomized clinical trial. JAMA Intern Med, Feb 18,2022.
7) Reis G, et al., Effect of early treatment with ivermectin among patients with covid-19. N Emgl J Med, Mar 30, 2022.
(2021.8.20)
(3) 抗体カクテル
もうひとつ、「理に適っている」という振れ込みで登場したのが、話題の「抗体カクテル」です。まず、次の動画をご覧ください。
その薬は、トゲトゲ蛋白がヒトの細胞の受け皿と結合しないようブロックする、人工の中和抗体です。2種類を作って混ぜたので、カクテルです。抗体は、ホルモンと同じで元々体の中にもあるものですから、安全、かつ理に適っているわけです。
しかし、理屈は優れていても、本当に効くのか、副作用はないのか、などの疑問に答えてくれなければ、安心して使えません。幸い、臨床試験の結果を報じた2021年8月4日付の論文で概要がわかりました。
試験の目的は、「家族内感染が防げるか?」と「ウイルスの増殖を防げるか?」の2つで、まさに誰もが期待して止まなかった薬の効果です。対象は、家族の1人が感染していて、他に感染者がいない、という条件を満たした家庭に限られました。まだ感染していない総勢1,505人です。この人たちを無作為に2群にわけ、一方には抗体カクテルを、他方にはプラセボ(生理的食塩水)を注射しました。
こんな難しい設定で臨床試験を行った研究者たちには脱帽です。論文の結論は、抗体カクテルが、家庭内感染の割合を66.4パーセント下げた(抗体カクテル群4.8%:プラセボ群14.2%)、というものでした。また体内のウイルス量が下がったことから、症状が出た人の割合が81.4パーセントも下がっていました。何らかの副作用が出た割合も、プラセボ群と同じだったとのことです。
この薬は、米国のベンチャー企業が開発し、REGEN-COVという商品名で世界的製薬企業のロッシュが販売を行っているものですが、早くも2020年12月に論文の第一報が出されていました。日本では、中外製薬がライセンス契約を行い、世界で最初に国の認可を受けたところです。2021年8月19日現在、この論文に対する批判もまだありません。
価格は未定ですが、従来の同系統の薬から推測すれば、最低でも1回分数万円、あのオプジーボは最初73万円でした。米国では、対象を絞って無料にすることを決めています。また点滴で使う薬のため、病院内でしか使えないという制約もあります。
気になる点は、ほかにもいろいろあります。まず、これを掲載したのが、ファイザー社ワクチンに関する、あの疑惑だらけの論文(Q10参照)を載せた専門誌だったことです。実際、論文の執筆者は36人でしたが、うち26人が当の製薬企業の社員でした。
新薬が世に登場したとき、その信頼性を判断する際の鉄則があります。
・製薬企業が関わった論文には必ず忖度や不正がある!
・良すぎるデータは疑え!
・新薬にはすぐ飛びつくな!
【参考文献】
1) Caricchio R, et al., Effect of canakinumab vs placebo on survival without invasive mechanical ventilation in patients hospitalized with severe COVID-19, a randomized clinial trial. JAMA, Jul 20, 2021.
2) RECOVERY Collaborative Group, Tocilizumab in patients admitted to hospital COVID-19 (RECOVERY): a randomised, controlled, open-label, platform trial. Lancet, May 1, 2021.
3) Yang C, et al., Tocilizumab in COVID-19 therapy: who benefits, and how? Lancet, Jul 24, 2021.
4) O'Brien MP, et al., Subcutaneous REGEN-COV antibody combination to prevent Covid-19. N Engl J Med, Aug 4, 2021.
5) Weinreich DM, REGN-COV2, a neutralizing antibody cocktail, in outpatients with Covid-19. N Engl J Med, Dec 18, 2020.
(2021.12.20)
(4) 疑惑の飲み薬(モルヌピラビル)
政府は、新型コロナのワクチンや治療薬の施策に前のめりとなっています。そのひとつが、米国メルク社が開発した飲み薬「モルヌピラビル」です。新聞各紙は、初の飲み薬として特例承認され、すでに160万人分の購入契約を同社と結んでいると報じました。重症化率を30パーセント下げる効果があった、というのが根拠のようです。
しかし世界では、この薬の賛否を巡る激しい応酬が行われているところなのです。と言っても、この薬を支持する意見は、ほぼメルク社の経営陣と同社専属の研究者からに限られています。
否定的な見解を示している大多数の研究者たちは、主に2つの理由を挙げています。ひとつは、効果に重大な疑問があるということです。プラセボと比較した臨床試験が2つあり、一方が762人を対象にして2021年の5月から8月初旬に、他方は646人を対象に8月から10月初旬にそれぞれ行われたものでした。
ところが、前者の調査で、モルヌピラビルを飲んだ人たちがプラセボに比べて重症化する割合が半減したと結論されたにもかかわらず、後者では効果がまったく認められなかったのです。企業側は「理由はわからない」とコメントしていますが、政府委員のひとりは「後者の臨床試験が行われた時期はデルタ株が全盛だった」とし、この薬は変異株に効かないようだと述べています。
もっと遙かに重大な懸念は、この薬が「ウイルスのRNAを書き換えて死滅させる」という働きをすることから、ヒトのDNAにも組み込まれてしまうのではないかということです。
米国ノースカロライナ大学の研究者は、試験管内で、ハムスターの細胞にモルヌピラビルを32日間加えたところ、DNAに組み込みが起こっていたと報告しています。これに対し企業側は、「同じ条件で、げっ歯類で実験を行ったがDNAへの組み込みは認められなかった。人間では5日間服用するだけなので問題ない」とコメントしました。
研究者の多くは、その原理から考えて、ヒトのDNAへの組み込みが起こる可能性は高いと考えています。メルク社に対し「げっ歯類で行った実験のデータ」を論文にして公表すべしと迫っていますが、いまのところ応じる気配はありません。
この薬は、ウイルスのRNAのコピーが作られるとき、つまりウイルスが分裂する際、無意味な人工コードを組み込むように設計されており、もし、それがヒトのDNAにも起こるようなら、がんの発生や胎児への重大な影響を心配しなければならないことになります。
【参考文献】
1) Kabinger F, et al., Mechanism of molnupiravir-induced SARS-CoV-2 mutagenesis. Nat Struct Mol Biol 28: 740-746, 2021.
2) Eastman Q, Molecular picture of how antiviral drug molnupiravir works. The Emory Health Science Research Blog, Sep 8, 2021.
3) Kozlov M, Merck's COVID pill loses its lustre: what that means for the pandemic. Nature, Dec 13, 2021.
4) Muwller B, Merck's Covid pill might pose risks for pregnant women. New Yor Times, Dec 13, 2021.
5) O'Brien, et al., Effect of subcutaneous casirivimab and imdevimab antibody combination vs placebo on development of symptomatic COVID-19 in early asymptomatic SARS-CoV-2 infection, a randomized clinical trial. JAMA, Jan 14, 2022.
(2022.2.4)
(5) 治療薬レムデシビルを再評価したら
「レムデシビル」という薬をご存知でしょうか? コロナ禍になって最初に世界中のメディアが特効薬として報じた薬です。当時のトランプ大統領が、ホワイトハウスに製薬企業のトップを集めたあと、記者会見で口にした名称でもあります。トランプには初耳だったようで、演説原稿に書かれたスペルを読めずに四苦八苦していました。その夏、彼が感染して軍病院に入院した折、主治医団がこの薬を使ったと語っていました。
レムデシビルは、コロナウイルスが分裂する際、RNAの間に忍び込んでウイルスを死滅させるという働きをします。この薬については、これまで膨大な数の臨床試験が行われてきましたが、その多くは「効果なし」との判定を下したものでした。それらの論文の信憑性を加味した評価結果が、以下の表の記載内容です。
2022年1月27日、この薬を改めて評価した論文が発表されました。臨床試験の対象になったのは、12歳以上で、重症化の危険因子をひとつ以上もっている感染者です。そのうち同意の得られた567人を均等に2つのグループにわけ、一方にレムデシビルを、他方にプラセボ(偽薬)をそれぞれ使いました。
わかったことは2つありました。入院治療が必要になった人の割合でみると、プラセボ群が5.3パーセントだったのに対し、レムデシビル群では0.7パーセントに下がっていて、あきらかな効果が認められました。この差を1,000人当たりの人数に換算すると、レムデシビル群のほうが47人少なくなるという計算になります。
ところが、体内のウイルスを調べて比べたところ、両群で差が認められなかったのです。この点は、過去に行われた多くの調査でも指摘されていて、「これでは他人に感染させてしまうリスクは改善されない」と批判されていました。ウイルス量が減らないにもかかわらず、重症化率が小さくなった理由はわかっていません。
この薬は、最低でも3日間の点滴が必要です。したがって普通は、病院で受けることになりますが、点滴が必要なほかの薬と比べると、一部の抗体カクテルでウイルス量も減らせる効果がすでに示されており、レムデシビルの出番はないことになります。また国内で1人分の価格が25万円(投与量によって異なる)もすることから、経済面でもメリットはありません(現在、国内では特例として無料で受けられる)。
この薬に対する私の最終評価は、「効果に疑問あり」ということになります。
【参考文献】
1) Heil EL, et al., The Goldilocks time for remdesivir - is any indication just right? N Engl J Med, Dec 22, 2021.
2) Gottlieb RL, et al., Early remdesivir to prevent progression to severe Covid-19 in outpatients. N Engl J Med, Jan 27, 2022.
(2022.1.24)
(6) ファイザー社の飲み薬は大丈夫か?
2022年1月18日、ファイザー社は、自社のホームページで、「お知らせ:コロナの錠剤『パクソロビド』がオミクロン株に対し有効であることを、試験管内の実験で見事に証明しました」との文章を掲載しました。その直前の12月22日、米国食品医薬品局(FDA)は緊急使用許可を出しています。この薬は大丈夫なのでしょうか?
新型コロナウイルスは、一本のひも状になった遺伝子情報(RNA)を持っているだけで、それ以外の高度な仕掛けはいっさいありません。そのひも状の遺伝子情報には、トゲトゲ蛋白のほかにも、ウイルス自身が生きていくための必須の酵素などを作るためのコードも含まれています。
ファイザー社の薬は、その酵素のひとつをブロックするように設計されたものです。そのためウイルスは増殖することができず、生き残れないはずだというのです。
実はこの薬(パクソロビド)は、一種類だけでは効果が弱く、昔から使われてきたエイズ(HIV)の薬といっしょに服用するようになっています。しかし、エイズの薬は他の薬との相互作用がきつく、エイズの治療経験がない医師はよく勉強してから使ってほしい、と米国の国立衛生研究所が注意を喚起しています。
どういうことかと言うと、酵素をブロックする作用があるため、ヒトの体内にある大切な「薬物を代謝する酵素」まで止めてしまうからです。いっしょに服用してはいけない薬は無数にあり、たとえば降圧剤の一部、鎮痛解熱剤、抗がん剤、ワーファリン等などです。
この薬が優れているのか、いないのか、現時点で結論をくだすのは困難です。そこで以下、これまでの情報を「評価できる点」と「疑わしい点」とにわけてまとめました。
〈評価できる点〉
培養細胞と本物の新型コロナウイルスを使った実験が行われていて、その結果が非常に詳しく、かつ詳細な学術論文として発表されています。論文の数も多いのですが、すべてファイザー社の社員が書いたものとなっています。印象深いのは、論文の記載が、まるで学校の教科書のように、平易な英語で丁寧に書かれていることです。この一事から推測できるのは、論文が宣伝用パンフレットとして使えるよう、専門のライター(ゴーストライター)に執筆が依頼されただろうということです。
もうひとつ印象的なのは、実験のレベルが高いことです。同社には、大勢の優秀な研究者が雇用されていて、基礎研究を大学などに頼る必要がないようです。
〈疑わしい点〉
臨床試験は、2022年1月24日現在、まだ終わっていません。それにもかかわらず同社のホームページには、「重症化を89%防ぐ」との掲示がなされているのです。試験が行われたのは昨年の夏で、まだオミクロン株がなかった時期のデータということになります。感染して入院にいたった人(日本では重症化と称される)は、この薬を使ったグループで389人中3人、プラセボ群で385人中27人だったとのこと。
つまり、臨床試験がまだ終わっていないにも関わらず、少数の臨床データで米国政府に認可を求めたことになります。しかもオミクロン株に対する臨床試験が行われていないにも拘わらず、試験管内の実験データを理由に、オミクロン株にも有効だと主張しているのです。一緒に服用してはいけない薬もあまりに多く、危険な副作用が起こりうることを考えると、果たして臨床現場で適切な判断ができるのか気になります。
【参考文献】
1) Pfizer shares in vitro efficay of novel COVID-19 oral treatment Paxloid against omicron variant. Pfizer, Jan 20, 2022.
2) Pfizer's novel COVID-19 oral antiviral treatment candidate reduced risk of hospitalization or death by 89% in interim analysis 2/3 EPIC-HR study. Pfizer, Nov 5, 2021.
3) The COVID-19 treatment guidelines panel's statemant on potential drug-drug interactions between ritonavir-boosted nirmatrelvir (Paxlovid) and concomitant medications. NIH, Dec 30, 2021.
4) Owen DR, et al., An oral SARS-CoV-2 Mpro inhibitor clinical candidate for the treatment of COVID-19. Science, Dec 24, 2021.
5) Rai DK, et al., Nirmatrelvir, an orally active Mpro inhibitor, is a potent inhibitor of SARS-CoV-2 variants of concern. bioRxiv, Jan 19, 2022.
6) Greasley SE, et al., Structural basis for nirmatrelvir in vitro efficacy against the omicron variant of SARS-CoV-2. bioRxiv, Jan 19, 2022.
(2023.10.94改訂)
(7) 新薬の総合評価
新薬の評価結果が続々と発表されています。以下、2022年2月28日現在の最新情報をまとめました。評価がやや辛めになっていますが、ほとんどの論文が製薬企業の社員が書いたものとなっていて、信頼性に問題がある点も考慮した結果です。
名 称 エビデンス 米国認可 日本
[ウイルスの増殖を抑える]
レムデシビル 最初からもっとも広く使われている ○ ○
効果はほぼ否定されている
モルヌピラビル 初の錠剤、メルク社製 ○ ○
(ラゲブリオ) DNAを組み換えるリスクあり
ニルマトレルビル + リトナビル 錠剤の第2弾、ファイザー社製 ○ ○
(パクスロビド) 併用すると危険な薬が多数あり ○ ○
エンシトレルビル 錠剤の第3弾、塩野義社製 × ○
(ゾコーバ) 米国未承認、国内審査に批判あり
アビガン インフルエンザ治療薬、効果証明できず○ ○
日本の製薬企業が開発した
[ウイルスをブロックする]
組み換えACE-2 トゲトゲ蛋白をブロック、効果不明 × ×
イベルメクチン 広く使われているが、効果はランダム △ △
化比較試験で完全に否定された
オレアンドリン 強力な毒物で危険 × ×
ロピナビル、リトナビル エイズの薬、効果は否定的 × ×
クロロキン マラリアの薬、効果は完全に否定 △ △
[抗体治療薬]
バブラニブマブ・エテセビマブ 抗体カクテル、使用は限定的 ○ ×
ロナプリーブ(REGEN-COV) 抗体カクテル ○ ○
点滴または皮下注射
ソトロビマブ 単一抗体、軽症~中等症に有効? ○ ○
エバシェルド(AZD7442) アストラゼネカ社製 ○ ○
感染予防効果が半年続くが、重症化
予防は、製薬企業の調査で効果あり、
それ例外の調査で効果なしとの結論
オミクロン株には効果なし
トシリツマブ 関節リウマチの薬、中外製薬 ○ ○
効果は疑問
[その他]
回復者血漿療法 日本でも治験中、効果は否定的 ○ ○
インターフェロン 治験中、効果は不明 △ △
デキサメタゾン 昔からあるホルモン剤 ○ ○
重症者での有効性が確立(6mg/日)
アクテラム(トシリズマブ) 過剰な炎症物質(IL-6)をブロック △ △
2つの臨床試験で効果なしの判定
アジスロマイシン 昔からある抗生物質の1つ ○ △
効果は否定的
バリシチニブ 関節リウマチの薬、イーライリリー社 ○ ○
効果は疑問 .
右列の「米国認可」は、制限つきとか迅速承認とか複雑な仕組みなのですが、とにかく何らかの形で米国政府がお墨付きを与えたという意味です。右端の「日本」は、健康保険の対象になっているか、あるいは政治判断で税金から料金が支払われることになったものと解釈してください。△は、他の病気では保険が効くが、コロナではダメということです。
ウイルス感染症の治療には、3つの段階があります。最初は体内に侵入したウイルスが細胞内に入り込まないようにする段階、次が細胞内でウイルスが増殖しないようにする段階、そして最後はウイルスが暴れ回ったあと体内で炎症物質と消炎物質が入り乱れて収拾がつかなくなった段階です。最初の段階で働くのが抗体カクテル、次の段階ではレムデシビルやモルノピラビルなどの薬、最後はウイルスと無関係に起死回生の働きをするデキサメタゾンなどのホルモン剤です。
ここまで、第一段階で有効性が確認されていた唯一の治療法が、抗体カクテルのロナプリーブ(米国リジェネロン社)でした。しかし、残念ながらオミクロン株には効かないことがわかりました。
国内で緊急使用が認められた2つの飲み薬(第二段階で働く)については、製薬企業が自分で評価したデータしかなく、しかも有効率だけが強調されていて、重大な副作用が懸念されているにもかかわらず、それらがいっさい伏せられたままとなっています。
いまのところ、細胞内へのウイルスの侵入を阻止したり、重症化を予防したりできる薬で、安心して使えるものはひとつもないと考えてよいでしょう。
【参考文献】
1) Wu KJ, et al., Coronavirus drug and treatment tracker. New York Times, Oct 7, 2021.
2) Spinner CD, et al., Effect of remdesivir vs standard care on clinical status at 11 days in patiens with moderate COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA, Aug 21, 2020.
3) The COVID STEROID 2 Trial Group, Effect of 12 mg vs 6 mg of dexamethasone on the number of days alive without life support in adults with COVID-19 and severe hypoxia, The COVID STEROID 2 Randomized Trial. JAMA, Oct 21, 2021.
4) Temple C, et al., Toxic effects from ivermectin use associated with prevention and treatment of Covid-19. N Engl J Med, Oct 20, 2021.
5) Robbins R, Pfizer says its antiviral pill is highly effective in treatng Covid. New York Times, Nov 5, 2021.
6) Writing Committee for the REMAP-CAP Investigators, Effect of convalescent plasma on organ support-free days in critically ill patients with COVID-19, a randomized clinical trial. JAMA, Oct 4, 2021.
7) Takashita E, et al., Efficacy of antibodies and antiviral drugs against Covid-19 omicron variant. N Engl J Med, Jan 22, 2022.
8) RECOVERY Collaborative Group, Casirivimab and imdevimab in patients admitted to hospital with COVID-19 (RECOVERY): a randomised, controlled, open-label, platform trial. Lancet, Feb 12, 2022.
9) Hermine O, et al., Effect of tocilizumab vs usual care in adults hospitalized with COVID-19 and moderate or severe pneumonia, a randomised clinical trial. JAMA Intern Med, May 3, 2021.
10) Authors not mentioned, Tixagevimab and cilgavimab (Evusheld) for pre-exposure prophylaxis of COVID-19. JAMA, Jan 25, 2022.
11) Young C, et al., Tocilizumab in treatment for patients with COVID-19. JAMA Intern Med, Apr 5, 2021.
12) Arbel R, et al., Nirmatrelvir use and severe Covid-19 outcomes during the omicron surge. N Engl J Med, Aug 24, 2022.
13) Levin MJ, et al., Intramuscular AZD7422 (tixagevimab-cilgavimab) for prevention of Covid-19. N Engl J Med. Apr 20, 2022.
14) ACTIV-3-Therapeutics for Inpatients with COVID-19 (TICO) Study Group, Tixagevimab-cilgavimab for treatment of patients hospitalised with COVID-19: a randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet Respir Med, Jul 8, 2022.
15) Montgomery H, et al., Efficacy and safety of intramuscular administration of tixagemab-cilgavimab for early outpatient treatment of COVID-19 (TACKLE): a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Respir Med, Jun 7, 2022.
(2022.3.7)
(8) 重症化したらこんな病院に行きたい!
新型コロナウイルスに感染して入院した人が、どのような治療を受けていたかを調べたという興味深い論文が、栃木県にある「栃木医療センター」から発表されました。対象となったのは、すでに論文発表の時点で1,056人もの感染者を収容していた同病院の患者で、年齢は平均50歳、男性が63パーセント、女性が37パーセントでした。
使われていた薬は、すべて当ホームページQ4(6)で「エビデンスあり」として紹介したものばかりです。多い順に、デキサメタゾン(ホルモン剤)が18.9パーセント、ロナプリーブ点滴薬(抗体カクテル)が7.8パーセント、そしてアクテラム点滴薬(炎症物質阻害剤)が1.5パーセントの人に、それぞれ使われていました。レムデシビルやイベルメクチンが使われた人はいませんでした。
論文を書いた医師たちの関心事のひとつは、「抗生物質がどれくらい使われているか」でした。この薬は、細菌感染に使われるもので、コロナのようなウイルス感染に対する直接的な効果はありません。調査の結果、同病院に搬送されてくる前からすでに抗生物質が使われていた人が9.9パーセントだったのに対して、入院後は1.7パーセントに留まっていることがわかりました。ウイルス感染と同時に細菌感染が起こることもありえますから、抗生物質の使用が必ずしも間違いと言えませんが、この点でも適切な判断がなされていたようです。
この病院では、最新のエビデンスに従った最適な薬剤選択がなされていたことになります。あくまで特定の病院内での調査結果であり、ほかの医療機関でどのような治療がなされているのかはわかりません。全国どこでも賢明な選択が行われていることを願うばかりです。
【参考文献】
1) Komagamine J, et al., Evaluation of antimicrobial drug use and concurrent infections during hospitalization of patients with COVID-19 in Japan. JAMA Network Open, Feb 18, 2022.
(2021.8.24)
Q5 なんとか予防はできないのか?
A 「コロナにかかりたくない」「どんなことをしてでも予防したい」。これは誰もが望んでいることです。
新型コロナウイルスの流行が始まったばかりの頃、ある噂がささやかれていました。喘息などの人が使う「ステロイド吸入剤」に予防効果があるのではないか、ということでした。この情報を知る一部の医療関係者だけが、他人には内緒で自分たちだけ、毎日、こっそり吸入していたため、製薬企業の倉庫が空になるという、ブラック・ジョークのような話もありました。
ステロイド剤は、体の中にもあるホルモンで、アレルギーや過剰な免疫反応を抑える作用があります。最近の研究では、トゲトゲ蛋白がヒトの細胞に結合する際に必要な「受け皿」の数を減らしたり、ウイルスの分裂もブロックするらしいとも言われ始めていて、理屈の上では、まさに万能の薬になりそうなのです。
もしそうなら「シュッ、シュッ」と、ひと吸いするだけでいいのですから、理想的な予防法です。2021年8月10日、感染が判明し自宅療養をしている、約2千人を対象に行われた臨床試験の結果が、英国から発表されました。使った吸入剤は、国内ではパルミコート、シムビコートなどの商品名で広く使われているものです。
結果は、この吸入剤を1日2回ずつ2週間使い続けると、症状が3日早く回復するというものでした。しかし予防効果はなく、重症化を抑える効果もありませんでした。
「プラセボ効果」という言葉をご存知でしょうか。何かすばらしい薬を使っているという気分だけで、人間は症状が軽くなったり、病気が治ったりするものです。この調査結果も、それであった可能性が否定できません。またステロイドホルモンには「免疫を止める作用」がありますから、むしろ感染を助長してしまうはずなのです・・・。
【参考文献】
1) Yu L-M, et al., Inhaled budesonide for COVID-19 in people at high risk of complications in the community in the UK (PRINCIPLE): a randomised, controlled, open-label, adaptive platform trial. Lancet, Aug 10, 2021.
(2021.8.25)
(2) 薬で予防するのは難しい?
インフルエンザの治療薬として知られているのがタミフルです。ひと昔前、国を挙げて「インフルエンザの予防にタミフルを!」と呼びかけていたことがあります。その後、誤りに気づき、すぐ撤回されたのですが、しかし国民はそれで洗脳されてしまいました。
私が勤務する施設でも、かつてインフルエンザ感染者が出るたび、「全職員にタミフルを配布してほしい」との要望が出される、という余波が続いていました。しかし、その要望に対する私の答えは、いつもノーでした。理由は以下のようなものでした。
・どんな薬にも必ず副作用がある
・タミフルの場合、標準の5日間の服用でも重大な肝障害を起こすことがある
・予防したいならシーズンが続く限り毎日、飲む必要がある
・その分、副作用は、はかりしれないものとなる
・薬を飲み続けて本当に予防ができていたのか(得したか)は、誰にもわからない
・副作用を被った分だけ損したのではないか
これは、インフルエンザに限らず、薬で感染症を予防する際に必ず生じるジレンマなのです(ジレンマは、あちら立てれば、こちら立たずの状態を意味するギリシャ語)。
(2021.8.30)
(3) 感染しても重症化しないために
重症化を防ぐための基本を考えてみます。米国にCDCという公的機関があります。感染症対策の総本山ですが、コロナに関しては対策が後手後手となり、なにかと批判の矢面に立たされています。それでも、さすがにCDCです。感染者54万人のデータを分析し、どんな人が重症化しやすいのかをまとめてくれました。
まず圧倒的な第1位と2位が「肥満」と「喫煙」でした。肥満については、BMIが25(たとえば身長160cmで体重64kg)を遙かに超える人は、ダイエットに励みましょう。今日からでも遅くはありません。タバコは言うまでもないことですから、直ちに禁煙を実行してください。昨年の春、有名なタレントが感染して亡くなった折、ヘビースモーカーだったと報じられていました。実は、本当の第1位は「年齢」だったのですが、これだけはどうすることもできません。
ほかには、がん、腎臓病、喘息やCOPD、認知症、合併症を伴う糖尿病、ダウン症、心筋梗塞や心不全、免疫異常、重い肝臓病、脳卒中などの既往症ですが、年齢とともに誰にでも生じてくるものですから、個々の病名に怯えないようにしましょう。CDCの分析によれば、これらの病気が2~5つ以上ある人は、さすがに気をつけたほうがよさそうですが。
以下は私の考察です(エビデンスはありません)。重症化するかしないかの最大の分かれ目は、体内に入ってくるウイルスの量の違いと考えられます。目の前に感染した人がいて、「マスクをせずに」、「飲食をしながら」、「大声でしゃべれば」、いっきに大量のウイルスを肺の奥まで吸い込んでしまうため、急速に重い肺炎に進行するリスクが高まります。逆に、嗅覚異常などの症状で始った人は、軽い症状のまま回復することになります。
私の周辺で起こった集団感染でも、既往症の有無はあまり関係がなく、まさにこの一点で重症化したか、しなかったかが決まったように感じています。このことは、家庭内感染を防ぐ知恵ともなるはずです。
「新型コロナを予防する」ことを謳い文句にした民間療法が、さまざま伝わっています。しかしエビデンスはいっさいありませんので、のめり込まないことです。コロナに限りませんが、病気を予防する生活習慣としてエビデンスが示しているのは、「日々の運動習慣」と「野菜・果物をたくさん食べる」の2つだけです。「コロナを予防する○○茶」・・・などに払うお金があれば、美味しい果物を買ってください。
【参考文献】
1) Kompaniyets K, et al., Underlining medical conditions and severe illness among 540,667 adults hospitalized with COVID-19, March 2020-March 2021. Prev Chronic Dis, July, 2021.
2) CDC, People with certain medical conditions. CDC on line, Aug 21, 2021.
(2021.12.20)
(4) 肥満が重症化リスクとなる理由
新型コロナに感染した際、肥満が重症化のリスク要因であることがテレビでも報じられるようになりましたが、その理由は謎のままでした。2021年10月25日に発表された論文で重要な事実が判明しました。結論を先に言えば、「新型コロナウイルスは脂肪組織に侵入しやすく、そこで秘かに増殖し全身に広がっていく」ということです。ある研究者は、脂肪組織はアキレス腱になっていると形容しています。
どういうことか、詳しく見ていきましょう。次の写真は、私が実験で用いていたヒトの脂肪細胞の顕微鏡写真です。十数個の細胞が写っていますが、それぞれの中に見える無数の小さな白い粒が脂肪滴です。
脂肪細胞は、単に余分な脂肪を溜め込むだけではありません。脂肪自体が活性酸素(正確にはフリーラジカル)などの攻撃を受けやすく、動脈硬化症や糖尿病など、さまざまな病気の原因のもとになっていることがわかっています。
傷ついた細胞は、炎症をもたらすさまざまな物質を分泌し、遠方にある臓器に悪影響を与えるのです。また脂肪組織には、脂肪細胞だけでなく免疫細胞も多く集まっているのですが、それらが直ちに免疫反応を起こすわけではなく、じわじわと効いてくるという特徴があります。
実験は、手術で得られたヒトの脂肪組織を用いて行われました。まず脂肪細胞だけを取り出して、試験管内で新型コロナウイルスを加えて培養するという実際に即した方法でした。その結果、ウイルスのRNAが細胞内できわめて増加しやすいことがわかりました。
つぎに脂肪組織に含まれるさまざまな細胞を分離し、同じ実験を繰り返していったところ、ウイルスはまず免疫細胞に侵入し、そのあと脂肪細胞に入り込んでいく様子が確認されました。これらの細胞にはウイルスの受け皿とされる物質(ACE2受容体)が存在せず、何か未知の侵入経路が存在することもわかったのです。
以上、実験が複雑でポイントがわかりにくいのですが、コロナ感染症における脂肪組織の役割は、「アキレス腱」というよりもトロイの木馬のようだというのが私のまとめです。
【脚注】トロイの木馬とは、ギリシャ神話でに出てくる逸話。ギリシャの遠征軍は、敵軍が逃げ込んだトロイアの町の城門を攻めあぐねていた。一計を案じたギリシャ軍は巨大な木馬を作り、それ門前に置き去りにして退却したように見せかけた。敵方は、物珍しさから城門を開いて木馬を中に引き入れてしまったが、実は木馬の中に体の小さな兵士が大勢潜んでいて、あっという間に攻略されてしまった。ちなみにアキレス腱の故事もギリシャ神話に由来している。
【参考文献】
1) Rabin RC, The coronavirus attacks fat tissue, scientists find. New York Times, Dec 8, 2021.
2) Martine-Colon, et al., SARS-CoV-2 infects human adipose tissue and elicits an inflammatory response consistent with severe COVID-19. bioRxiv, Oct 25, 2021.
(2021.9.1)
(5) 自宅療養に備えよう!
「自宅療養」は、明日は我が身です。対策をまとめておきましょう。
米国で大規模なサマーキャンプがあり、参加した子供たち627人中、351人が集団感染するという事件がありました。そこで感染した子供たちが家に帰ったあと、家族にどのように感染が広がったかを追跡調査した、という興味深い論文が発表されました。
追跡できたのは、主に症状があった224人で、年齢は7~19歳でした。対象となった家族は大勢いましたが、PCRで感染の有無を確認できたのは延べ377人で、うち46人(12%)が家庭内感染してしまいました。感染を避けられた人たちとの違いは、ただ一つ「直接、体に触れたこと」でした。
この事実に加え、日米の住宅事情の差も加味すると、家庭内で感染を拡大させないためのポイントを、以下のようにまとめることができます。
・感染した人の食事は部屋をわけるか、時間をわける
・寝室も別にする。無理な場合はできるだけ離す。たとえ1メートルでも
・入浴は最後にする
・感染者に触れる場合は、必ず手袋をする
・テーブル、イスなどは、水を浸した厚手のペーパータオルでよく拭く
・手は石鹸でよく洗う(消毒用アルコールは、いずれの場合も使わない)
・全員がマスクをする
・食欲がない感染者には、十分な水分と果物をとらせる
・ワクチンの効果は期待しない
家庭内感染は、半日から3日の間隔をおいて次々に起こっていくのが特徴です(オミクロン株の場合)。また最後の感染者が解熱してから5日間、家族全員が他人に感染させるリスクを有するため、外出はできません。
そのために必要となるのが日頃の備えです。米、パン、牛乳、生鮮品など家族全員が1週間くらい生きていけるだけの食品が必要です。赤ちゃんのミルク、トイレットペーパーや薬、ペーパータオル、手袋、マスクなども欠かせません。地域によっても異なりますが、行政はほぼ何もしてくれないと考えておいたほうがよさそうです。
過日、知人宅が自宅療養となり、しばらくしてから電話をかけてみました。「お米は?」→「なくなった」、「パンは?」→「なくなった」、「行政からは?」→「わずかな品物が1回届いた」とのこと。もっと早く電話すべきだったと、悔やむことしきり。仕事を放り投げて近くのスーパーに駆け込み、大量の生鮮品を買い込んで玄関先に置いてきたところです。
【参考文献】
1) Chu VT, et al., Household transmission of SARS-CoV-2 from children and adolescents. N Engl J Med, Jul 21, 2021.
2) CDC, Caring for someone sick at home. CDC on line, Jul 21, 2021.
(2021.9.4)
(6) アルコールは使わないこと
今から20年以上も前の話です。当時、病院の診察室や採血室には、ピカピカ輝く銀色の小さな丸い缶が必ず置いてありました。病院によく行っていた人は、見覚えがあるかもしれません。その中にはアルコールに浸した脱脂綿が入っていて、注射や採血をする際の皮膚消毒に使っていたのです。
あるとき、その缶が実は、ばい菌だらけであることを見つけた人がいました。「アルコール大好き菌(耐性菌)」が大量発生していたのです。原因は、缶を洗わずにアルコールを継ぎ足し、継ぎ足していたためでした。全国の病院が大騒ぎとなり、以来、アルコール綿は個包装した製品に置き換わっていきました。
そんな歴史も踏まえて、手指やテーブルの消毒にアルコールは使わないほうがいい9つの理由をあげておきます(アルコール以外の消毒液も同じこと)。
1 ウイルスは、たっぷりのアルコールに30秒以上浸けておかないと死なない
2 ついつい、少量のアルコールで消毒した気になってしまう
3 広いテーブルなどは、拭く前に乾いてしまう
4 アルコール濃度が不十分な商品が多い
5 噴霧式のアルコールは肺に吸い込んで危険
6 子供が口にすると危険
7 人によっては手が荒れ、皮膚の感染症を起こしやすくなる
8 アルコール耐性菌が発生し、将来、消毒の手段がなくなってしまう
9 テーブルや床の塗料が溶けてしまい、コロナ禍が終息したあと家の中がボロボロ
【参考文献】
1) Tejeda V, How much can hand sanitizer really protect you from coronavirus? Health, Mar 11, 2020.
(2021.9.11)
(7) 意に反して接種してしまったとき
同調圧力に負け、あるいは十分な知識がないまま接種を受けてしまい、副作用が心配だという人が大勢います。どう考え、どう対処すればいいのでしょうか。
何回目かにかかわらず、接種を受けたあと2ヵ月くらいは体調のチェックが必要です。当ホームページのQ15に示したような、副作用が起こりうるからです。
もっとも多いのは皮膚の変化で、注射をした部位以外に生じる「皮下出血」「かゆみと発赤を伴った腫れ」「血管のミミズ腫れ」「紫色の変色」「ただれ」などです。多くは1~2週間で自然に治りますが、症状が強い、範囲が異常に広い、どんどん悪化する、などがあれば皮膚科を受診した方がよいでしょう。
トゲトゲ蛋白によって生じる自己免疫病の症状はさまざまです。隠れていた病気が出てくることも、また未知の病気もあるかもしれず、特定の症状で判断することはできません。基本的には、出血が続く、いつもと違う強い倦怠感(だるさ)がある、食欲不振、心臓がどきどきする、呼吸が苦しい、全身のむくみ、視力の異常、粘膜の荒れなどは、要注意です。
病院へ行っても、ワクチンとの関係は否定されると思いますが、いまのところ検査法がないため、止むを得ません。どちらにしろ、それぞれの病気に対する一般的な治療しかありませんが、重症化する人が少ないのが救いです。
接種後3ヵ月を過ぎて体調に異常がなければ、当面は大丈夫と考えてよいでしょう。その後、長期にわたる副作用については不明ですが、これからも確かな情報を刻々、当ホームページに掲載していく予定です。
過度に心配しないよう、またSNS上を流れている無数の「いたずらニュース」に、だまされないよう、お願いします。
(2021.11.15)
(8) 民間療法は有効か?
新型コロナの感染に対しては、決定的な予防法も治療法も、いまだ存在しません。米国のある医師は、「次から次へと効果がない薬を思いつきで使っているだけで、絶望を感じている」と医学専門誌のインタビューに答えています。
そんな背景もあって、東洋医学で使われてきたカワラタケやエブリコなどのキノコ、あるいはハーブなどいわゆる「生薬」に改めてスポットを当てた研究が始まっています。中国の武漢市は、世界で最初に新型コロナの感染者がでたところですが、デキサメタゾン(Q4参照)など最新医学の薬と合わせ、当初から生薬が使われていました。「後ろ向き調査」ですが、致命率が50パーセント下がったとの報告もなされています。
そこに目をつけた米国の医師たちが、いくつかの臨床試験をスタートさせました。東洋医学には消極的だった米国FDAも、しぶしぶ承認したのだとか。まだ少数例の臨床試験が行われているだけですが、ある研究者は「きのこの成分の多糖類(でんぷんやセルロースなど)の受容体が免疫細胞にあり、ウイルス感染に予防的に働く」と述べています。
一部のキノコ、とくにエブリコは、確かに昔からインフルエンザなどのウイルス感染症に有効だとされていました。またインフルエンザの特効薬タミフルも、生薬にヒントをえたとされています。
ハーブについては21種類が有力だとして、さまざまに組み合わせた臨床試験が始まっています。たとえばオウゴンというハーブは、肺の熱を冷まし、ウイルスが受容体にくっつくのを阻止するとのことです。
ただし、効果と副作用の両面で実用性が証明されたものはまだありません。なんとしてでも感染を予防したいとの思いから、生薬など民間療法に熱い期待を寄せる人が少なくありません。しかし生薬の中には、感染を重症化させてしまう(サイトカイン・ストームを助長する)ものもあるとされます。しばらくは民間療法も慎重にしたほうがよさそうです。
【参考文献】
1) Slomski A, Trials test mushrooms and herbs as anti-COVID-19 agents. JAMA, Nov 3, 2021.
(2022.1.10)
(9) 感染リスクが予測できるアプリ?
米国の新聞に、ある慎重すぎる家族の行動が紹介されていました。その家族は、実家に帰省して両親とクリスマス休暇を過ごすため、まず8歳と10歳の子供も含め家族全員が2回のワクチン接種を受けました。帰省の日も迫った数日前、一家全員は自らを自宅隔離にし、さらにマスク、手洗いなど万全な感染予防対策を準備して帰省することにしました。しかし直前になって、またまた不安が募り、あるアプリにすがったのです。
そのアプリとは、インターネット上で誰もが利用できる「感染リスク予測計算アプリ」なるものでした。「何人で集まるのか?」「集まる人たちの年齢は?」「ワクチンを接種しているか?」「室内であつまるのか、屋外か?」「歌たったりするのか?」「飲食は?」などの質問が次々に表示され、それらにすべて答えると、感染するリスクがどれくらいあるか計算してくれるのです。
実は、このようなアプリは、すでに欧米でたくさん作られています。作っているのは、大学などの研究者や政府機関、あるいはNPOなどで、ライブなどの集会に感染者が混じっている割合などを計算してくれるアプリもあります。他人と密に接する理容や美容、あるいは虫歯の治療などは気になるところですが、そんなピンポイントのリスクを計算してくれるものもあります。
中には、毎朝、アプリでリスクを計算しないと、不安で外出ができなくなった人もいるのだとか。しかし感染リスクは、国により、地域により、あるいは時期などによっても刻々と変化していますから、簡単ではないはずです。
私も、検査データや症状から病気の発生を予測する数式をたくさん作ってきましたが、やはり簡単ではありませんでした。いま手元にあるデータにぴたりと合うような数式は簡単に作れるのですが、未来の予測(たとえば明日、帰省先で感染するかなど)は、いわば神のみぞ知る部分もありますから、言ってしまえば不可能なのです。
日本製の「感染リスク予測計算アプリ」があるかどうか、寡聞にして知りませんが、たとえあったとしても、私の経験からお勧めはしません。感染予防の大原則は、不確かな未来を占うことでなく、やはり「同居の家族以外と飲食をしないこと」の一事につきます。
(Covid-19、infection, calculatorなどのキーワードでアプリを検索してみたところ、コンピュータウイルスを装った悪質な広告誘導サイトがありましたので、お気をつけください)
【参考文献】
1) Krueger A, Going out and worried about Covid safety? there's a calculator for that. Dec 30, 2021.
2) Nasa P, et al., Expert consensus statements for the managaement of COVID-19-related acute respiratory failure using a Delphi method. Crit Care 25:106, 2021.
(2022.1.31)
(10) マスクは要らないって本当?
「マスクは無意味」と主張する人たちがいます。そうでしょうか。昔からテレビなどでウイルスの専門家が語っていたのは、「ウイルスは超微小でマスクの織り目をすり抜けてしまうため意味がない」という説明でした。
しかしウイルスは、基本的にヒトや動物の細胞の中でしか生きられません。人から人へ感染するのは、患者のくしゃみや咳とともに空中に放出される霧滴に、ウイルスに侵された細胞片が混じっているためであり、ウイルスが感染力を保ったまま、単独で空中を浮遊しているわけではありません。
事実、米国で行われた実験によれば、インフルエンザに感染した患者から咳とともに排出されるウイルスの58パーセントは、直径1ミクロンより大きな霧滴の中に含まれていました。ちなみに1ミクロンとは、毛髪の直径の80分の1ほどです。
等身大のマネキンに人間と同じように呼吸をする装置を組み込んでおき、ヒトの咳を再現した装置で霧状の微粒子を吹きかけるという実験も行われています。マネキンにはマスクを着けましたが、このとき「普通に着ける」「完全に隙間を塞ぐ」など、条件をいくつかに分けて実験が行われました。
結果は明快で、マスクの隙間を粘着テープで塞いだ場合は100パーセントの霧滴をブロックできましたが、普通にマスクを着けただけでは34パーセントに留まっていました。
もっとわかりやすい実験も行われています。インフルエンザ感染が確認された407人の患者に協力を求め、2つのグループに分けた上で、一方には本人とその家族にマスクと手洗いを励行してもらい、他方には何もしないで生活をしてもらいました。その後、7日間にわたって同居の家族にインフルンザが感染したかどうかを追跡調査したのです。
実験後、マスクと手洗いをした家庭では、何もしなかった家庭に比べて家族間感染の割合が3分の1になっていました。また手洗いだけでは効果が不十分であることもわかりました。
気をつけたいのは、マスクの周囲にできる隙間からの「横もれ」です。次の写真は、私がガーゼで作ったマスク(左)と、市販の不織布マスク(右)とを比べたものです。市販の不織布マスクは横もれしやすい点に、まずご注目ください。
また私が行った実験によれば、ガーゼを2枚重ねるだけで空中に浮遊する霧滴をほぼブロックできるのですが、写真のガーゼマスクは念のため12枚重ねにしています。さらに米国での実験によれば、ガーゼは、繰り返し洗うにつれ線維が毛羽たち、織り目がいっそう密になっていきます。つまり繰り返し洗濯ができるのです。
布きれ1枚など薄すぎる素材のマスクは論外ですが、逆にビニールのような空気を通さない素材では、横もれが100パーセント起こってしまいます。満員電車に乗るときなどはガーゼマスク(市販品でも可)を内側に、不織布マスクを外側につけるのが私のお勧めです。これは、私が10年以上も前からインフルエンザ・シーズンに実行してきたことです。もちろん今も。
【参考文献】
1) Neil DG Jr, Mask hoarders may raise risk of a coronavirus outbreak in the U.S., New York Times, Jan 29, 2020.
2) Lindsley WG, et al., Measurements of airborne influenza virus in aerosol particles from human coughs. PLoS One 5(11): e15100, 2010.
3) Lai AC, Effectiveness of facemasks to reduce exposure hazards for airborne infections among general populations. J R Soc Interface 9(70): 938-948, 2012.
4) Cowling BJ, Facemasks and hand hygiene to prevent influenza transmission in households. Ann Intern Med 151(7): 437-446, 2009.
Q6 では、コロナ禍を終息させる決め手は何なのか?
A ワクチンも新薬も、すぐには期待できないとなれば、何に望みをかければいいのでしょうか。
どんなウイルスも、宿主である人間がいなければ生き延びていくことができません。ウイルスが地球上に出現したのは30億年前とされますが、このときから現代まで人間を絶命させることなく、共存してきたことになります。
ウイルスは、自分が生きのびるため「ヒト→ヒト感染」を繰り返していきますが、1度感染した人には免疫ができるため、逆向きに伝わっていくことはありません。また感染しやすい人、しにく人もいますから、ある「閉じた集団」、たとえば離島や山奥の集落などでは、一定の期間が過ぎれば必ず終息することになります。その速度は、感染力が強いウイルスほど早く、弱いウイルスではゆっくりです。
次に、インフルエンザやコロナなどのウイルスは、高温・多湿で分裂力が弱くなることが動物実験で確認されています。次のグラフは昨年の今頃、作成したもので、いくつかの国の新規感染者数のグラフに雨季の時期を重ねて示したものです。高温多湿が、感染の消長に何らかの影響を与えていることもわかります。
ここで、私が行っている研究の一部をご紹介します。コンピュータを使って感染拡大の予測をするというものです。まず、上でも述べたウイルスの性質や人間の行動、緊急事態宣言、それに気温・湿度のデータをコンピュータにインプットし、毎日の新規感染者数を再現してみることにしました。
次の図は、2020年の3~6月に発生した第2波における、東京都内の新規感染者数を青色の棒グラフで、またコンピュータで再現したグラフを黒色の破線で、それぞれ示しています。この時期を選んだのは、新規感染者がほぼゼロの状態から始まっていて、条件を明確に整理できるからです。
この計算で重要な要素のひとつが、閉じた空間(東京都内)に外部(海外)から入り込んだ感染者の1日当たりの人数です。第2波のデータから逆計算した結果は、1日平均で約1人となりました。わずか1人ずつの感染者が入り込むだけで、これだけの感染拡大が起こってしまったことになります。
次に、かりにこの人数が5人、10人、15人になると、感染がどのように拡大するのかを計算してみました。図は、その様子を順次、アニメで表示していますので、じっくりご覧ください。
感染の拡大は、常に「閉じた空間」から「別の閉じた空間」への感染者の移動によって起こります。海外から東京へ、東京から地方へ、そして町から町へです。
(2) 風船現象を知る
次の動画は、2020年の5月30日から今年6月まで1年間の都内23区における「新規感染者数の絶対数」を1週間ごとにまとめたものです。感染が東京都内でどのように広がってきたのか、おおよそ理解できます。
動画:東京都内23区における感染者数の伝播(2020年5月~2021年5月)
この動画では、あたかも新宿という大きな風船が膨んだり縮んだりするがごとく、感染者が外に向かって押し出され、あるいは戻ってきている様子を示しています。これを風船現象と名づけたいと思います。これは東京から地方へ、また海外から日本国内への感染伝播にも当てはめることができます。
その元を絶つには、もちろん入国制限と国内での行動制限しかありません。
【参考文献】
1) Flam F, Asymptomatic spread has become bizarrely contorversial. the japantimes. Jul 22, 2020.
(2021.9.30)
(3) なぜ第5波は急に収束したのか?
第5波は、2021年7月~10月に認められた、デルタ株による新規感染者数の大きなピークでした。標記のテーマでご意見を募ったところ、2021年9月28日までに48通のお便りをいただきました。中には長文のお手紙もあり、皆さまのご熱意には、心からの敬意を表するしだいです。この問題の正解は誰にもわかりません。そこでまず、いただいたご意見を大胆にまとめてみました。一人で複数の解答を寄せられた方もいたため、合計数は48通より多くなっています。
・ウイルスが弱体化した→ 12通
・自然の集団免疫ができた→ 8通
・季節が影響している→ 7通
・PCRの実施件数が少なくなった→ 7通
・政府が検査件数や数値を操作している→ 6通
・人々の感染予防への認識が深まった → 4通
・ウイルスの世代交代の時期→ 4通
・オリパラが終わったから→ 4通
・リスクの高い人がひととおり感染した→ 3通
・秋になって建物の換気がよくなった→ 3通
・政府による行動規制が功を奏した→ 2通
・ワクチンの効果→ 2通
・もともとアジア人には免疫があった→ 2通
・ウイルス自体に何らかの仕組みがある→ 2通
・第5波はまだ収束していない→ 1通
ウイルスは、人間がこの世に誕生する、ずっと前から存在していたとされます。自ら子孫を増やすことができないウイルスは、動物や人間に寄生して生きていくしかありません。同時に、悠久のときを経て、人間の遺伝子全体(ヒトゲノム)にウイルスの遺伝子が少しずつ組み込まれていき、いまでは10パーセント近くを占めているとも言われています。
組み込まれたウイルスの遺伝子は、「ウイルスの侵入を助ける」、あるいは「ほか外敵の侵入をブロックする」などの働きをしているようです。その様子は、あたかもウイルスがヒトゲノムをハイジャックしているようだと、ある研究者は語っています。
一方、ウイルス、とくにコロナウイルスは1本のRNAしか持たない単純な構造物です。したがって、周囲の様子をうかがいながら「もっと暴れてやれ!」とか、「みんなが休んでいるから自分も」などとは考えないはずです。またヒトゲノムには、細胞の分裂回数を数える仕組みがあり、一定数に達すると生命を終えるようになっているのですが、ウイルスにはそれもありません。
ウイルス変異については、遺伝子解析やコンピュータ・シミュレーションの専門家たちが、それぞれの技術を駆使して研究を積み重ねてきました。その結果、わかったのは、ウイルスのRNAで起こる変異は、すべて確率的、つまり常に偶然、起こっているものであり、予測は不可能だという事実でした。結果的に、中和抗体などに負けることなく、たまたま生き残ったウイルスが世の中にはびこっていくことになります。
ある国際的な「ウイルス遺伝子データベース」には、2021年の5月時点で百万件を超える新型コロナの遺伝子配列が登録されました。それだけ無数の変異が新型コロナだけでも生じているというわけです。ほとんどが無害なものですが、その中から第2のデルタ株が生まれないとも限りません。
さて、ここまでの事実関係からわかってくるのは、第5波の収束が、ウイルスの側の事情とは、あまり関係がないかもしれないということです。関係があるとすれば、「季節の影響(気温と湿度)」くらいなのでしょう(当ホームページQ6参照)。
では、第5波のような大きな変化をもたらした要因は、何だったのでしょうか? 当ホームページQ6において、「ひとつの閉じた空間内で感染は必ず収束する」「閉じた空間から別の閉じた空間に感染者が移動することで感染は再拡大する」という、2つの原則を示しました。
「ひとつの閉じた空間」とは、たとえば市町村など、人の行動単位を指します。収束の条件は、その空間に居住する全員が感染することではなく、感染リスクの高い人たちに限られます。たとえば出歩くことが多い人、同居の家族以外と飲食することが多い人、あるいはその濃厚接触者などです。第5波も、この2つの原則に従って消長しているように思われるのです。
これ以上の考察は、科学的根拠をもって語ることができません。皆さまが指摘された多くの事柄も、少しづつは関与しているのでしょう。「自然の集団免疫」は大いに期待したいところですが、すでに第1波から第4波まで同じようなパターンを繰り返していることから、要因としては弱そうです。「PCRの実施件数が減ったせい」というのは、当ホームページQ12でも示したとおり、あるのかもしれません。「政府が操作している」との見解は、・・・どうなんでしょうか。
【参考文献】
1) Saplakoglu Y, Is there a limit to how much the coronavirus can mutate? Live Science, Feb 11, 2021.
2) Our complicated relationship with viruses. Science Daily, NIH, Nov 28, 2016.
3) Maxmen A, Popular genome site hits one million coronavirus sequences. Nature, May 6, 2021.
(4) インフルエンザ・ワクチンに学べ
1962年から1987年の26年間、日本では学童に対するインフルエンザ・ワクチンの集団接種が行われていました。覚えている人も多いと思います。この間、肺炎による高齢者の死亡数が激減し、年間、約4万人の命が救われました。それ以前、日本では高齢者の肺炎死亡が欧米に比べて格段に多く、開発途上国なみだったのです。
その後、ワクチン接種に対する反対意見の高まりを受けて法律が改正され、集団接種から任意接種へと変わったのですが、その途端、高齢者の肺炎死亡数が急増し、元に戻ってしまいました。
インフルエンザ感染は学校生活で集団発生し、子供たちが家庭に持ち帰って拡大します。当時、日本では三世代同居が普通でしたから、祖父母がまず感染し肺炎になってしまったのです。
以上は、20年ほど前、日米の研究者が共同で発表した論文であかされた話です。当時、インフルエンザワクチンの効果を証明した研究がひとつも存在せず、私自身、その効果について半信半疑だったのですが、この論文を読んで確信に変わりました。2007年に発表した拙著『健康の新常識100』を初め多くの著作物で、このデータを紹介してきたところです。
ときは流れ、2020年、もっとも信頼性が高いとして世界中の研究者が認める組織から、インフルエンザ・ワクチンのメタ分析論文(当ホームページQ4(1)参照)が発表されました。結果は、「有効率59パーセント」、「重症化を防ぐ効果はない」というものでした。多くの人にワクチンを接種し、また数々の論文を精査してきた私にとって、大いに納得のいく内容でした。
一方、ワクチンに関する論文不正も多く、世の中に誤った情報が流れているとの指摘もなされてきました。
この歴史から学ぶべきは2点、つまりワクチン接種は、(本当に有効なら)高齢者でなく活動性の高い世代から先に行うべきことと、いかなるワクチンも効果は限定的であることです。
【参考文献】
1) Reichert TA, et al., The Japanese experience with vaccinating schoolchildren against infuluenza. N Engl J Med 344: 889-896, 2001.
2) Demicheli V, et al., Vaccines for preventing influenza in healthy adults (review). Cochrane Database Syst Rev, CD001269, 2020.
3) Jefferson T, et al., Oseltamivir for influenza in adults and children: systemic review of clinical study reports and summary of regulatory comments. BMJ g2545, 2014.
(2021.10.5)
(5) インフルエンザ・ワクチンは打つべきか?
過去2年間、インフルエンザ・シーズンの推計感染者数は、ほとんどゼロでした。では、この次の冬はどうなるのでしょうか?
「インフルエンザ・ワクチンを打っていた人がコロナに感染するとどうなるか」を調べた研究論文がいくつか発表されました。結論を先に言えば、どの研究も「インフルエンザ・ワクチンを前シーズンに受けていた人は、コロナに感染しても重症化リスクが低い」となっていました。
しかし、どれも「後ろ向き調査」であり、その信憑性は著しく低いと断言できます。理由は、当ホームページのQ7(9)で説明したとおりです。また、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの間には、免疫上の接点がなく、理屈の上でも考えにくい話なのです。
そんな不確かな話よりも、冬に向けて、インフルエンザ・ワクチンは、受けたほうがいいのかどうかです。万一、インフルエンザが大流行したりすると大変です。集団免疫が失われてしまっているはずですから、重症化する人が増える可能性があるからです。
すでにコロナワクチンを打ってしまった人は、どうすればいいでしょうか。人類は、これまで性質の異なる、さまざまなワクチン接種を受けてきました。現在、赤ちゃんは半年間で15回もの接種を受けることが推奨されています。幸い、重大な副作用の報告も目立つほどにはないようです。したがって、コロナワクチンを受けたあと、インフルエンザ・ワクチンを打つことに重大な懸念はなさそうにも思えますが、長期的な副作用については、まったく不明です。
インフルエンザ・ワクチンの有効率が、わずか59パーセントしかないことも露呈しています。あれこれ考えると、インフルエンザ・ワクチンを積極的に受けるべきかどうかは微妙、ということになります。私自身、これまで毎年、受けてきましたが、数量が足りないなら辞退してもいいかな、と思っています。
歯切れの悪い結論になってしまいましたが、これらを参考の上、受けるかどうかは、どうぞご自分でお決めください。
(2021.11.8)
インフルエンザは、これまで2~3年ごとに大きな流行を繰り返してきました。インフルエンザは、新型コロナに比べて桁違いに多くの人が感染してきましたので、まさに集団免疫が効いていたものと考えられます。したがって、コロナ禍のあとには大きな流行になる可能もあります。
では今度のシーズンに限れば、どうなのでしょうか? 参考になるのは南半球の状況です。北半球とは季節が逆ですから、すでにインフルエンザシーズンが終わり、いま夏に向かっているときですが、幸い大きな流行はありませんでした。その理由は「感染対策が行き届いていたから」と考えられます。
インフルエンザのワクチンは、前年に流行したウイルス株を分析し、それに合わせて製造がなされてきました。ところが前シーズンは南半球での流行がなかったことから、その変異株を分析することができなかったと米国の専門家は述べています。したがって予期せぬ変異株が出現すると、今年のワクチンでは対応できないことになってしまいます。実際、2019年のデータによれば、有効率はわずか39パーセントしかありませんでした。
もしインフルエンザ・ワクチンを接種するなら、ベストなタイミングは12月初旬です。なぜなら、免疫がつくのに約1ヶ月かかり、実際に流行するのは1~3月で、しかも有効期限がほぼ3ヵ月しかないからです。
もし今度のシーズンで大きな流行があるとすれば、コロナワクチンを接種した人たちが「ワクチンパスポート」を金科玉条のごとく振りかざし、肝心の感染対策を怠ってしまうためでしょう。その場合、コロナとインフルエンザが同時に流行することになります。
打つか打たないかは、どうぞ自分でご判断ください。
【参考文献】
1) Yang MJ, et al., Influenza vaccination and hospitalizations among COVID-19 infected adults. J Am Board Fam Med, Feb, 2021.
2) Taghioff SM, et al., Examining the potential benefits of the influenza vaccine against SARS-CoV-2: a retrospective cohort analysis of 74,754 patients. Plos One, Aug 3, 2021.
3) Moyer MW, This flu season is different - here's how to prepare. New York Times, Nov 3, 2021.
(2022.10.17)
(6) ワクチンがウイルス変異を助長している
Pandemic is over (コロナは終わった)。これは米国のバイデン大統領が、2022年9月18日のテレビ・インタビューに答えた際の発言です。もちろんコロナ禍はまだ収まっていませんので、政治的な発言であるのはあきらかです。アンダーコントロールという言葉を思い出してしまいます。
それにしても、コロナはそろそろ終わりに近づいているのではないか、という雰囲気が国内外に満ちているのは確かです。当ホームページでも、種々の根拠をもとに、「しだいに弱毒化して落ち着いたあと、やがて普通の風邪ウイルスとして残っていく」との見解を示していたところです(Q17の第6回)。
新型コロナウイルスの感染が最初に中国で確認されたのは2019年12月で、その1か月後の翌2020年1月には、早くもウイルスの遺伝子配列が学術専門誌に発表されました。
各メーカーは、この発表の直後からワクチン開発に取りかかり、アストラゼネカ社は同年の6月24日から、またファイザー社とモデルナ社は同時に7月27日から、それぞれ大規模な臨床試験(治験)を開始していました。開発着手から半年も経っていません。
次の表は、ワクチンが登場した年(2020年)の9月から約2年間、「変異株」が現れた時期を日付け順に並べたものです。
気になるのは、オミクロン株を除くすべての変異株が、ワクチンの治験、あるいは本格的接種の開始時期に集中し、しかもその度にワクチンが効きにくくなってきた点です。オミクロン株の出現もまた、この表を見るとワクチンと関係がありそうに思えます。
ウイルスの変異は、その遺伝子に生じる偶然のコピーミスによって発生するものですが、当然、ワクチンに打ち勝ったものだけが自然淘汰で生き延びていくことになります。海外のあるメディアは、この状況を「火に油を注いだ」と表現しています。
次に着目すべきは、オミクロン株の出現まで10ヵ月ほどの空白があり、その後も1年以上、新たな変異株が現れる気配がないことです。この状況をどう考えればいいのでしょうか?
次の図は、全世界における日々の接種の総件数を示したグラフです。ワクチン接種が開始された2020年12月からの2年間の推移です。とくに2022年8月以降は、急速に件数が減少しています。今後、もし(オミクロン対応)ワクチンの接種が再び増えるようなことになれば、新たな変異株が出現するリスクも高まるのではないでしょうか。
一方、世界中の研究者のほとんどは、「ワクチンを打っていない人が集団で感染したときに変異株は発生しやすい」と主張しています。しかしワクチンを打っても打たなくても感染する率に変わりはなく、症状にも違いがないため、この説明は根拠を欠いています。
およそ100年前の1918年2月に発生したスペイン風邪は、ワクチンのない時代でしたが、マスク、手洗い、ソーシャルディスタンシングの徹底により3年間で終息しました。
ウイルス感染症の行く末を予測できる理論はないため、その答えは誰にもわかりません。しかし、ワクチン接種を中止さえすれば、「新型コロナはしだいに弱毒化して落ち着いたあと、やがて普通の風邪ウイルスとして残っていく」というのが、データに基づいた私の論考の結論です。皆様は、これらの情報をどう読み解くでしょうか。
【参考文献】
1) Sabes A, President Biden declares that the COVID-19 pandemic 'is over'
weeks before the midterm elections. Fox News, Sep 18, 2022.
2) Madhi SA, et al. Efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 covid-19 vaccine against
the B.1.351 variant. N Engl J Med, Mar 16, 2021.
3) Polack FP, et al., Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA covid-19
vaccine. N Engl J Med, Dec 31, 2020.
4) Baden LR, et al., Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine.
N Engl J Med, Feb 4, 2021.
5) Harris R, COVID-19 could add fuel to evolution of coronavirus mutations.
npr, Feb 20, 2021.
6) Kennedy DA, et al., Why the evolution of vaccine resistance is less
of a concern than the evolution of drug resistance. PNAS, Dec 18, 2018..
7) Fan Y, et al., SARS-CoV-2 omicron variant: recent progress and future
perspectives. Signal Transduct Target Ther, Apr 28, 2022.
(2022.10.31)
(7) インフルエンザとコロナは同時流行するか
「今年はインフルエンザの大流行が考えられ、感染する人が両方合わせて△△万人と想定される。だから、もっとワクチン接種を!」と、脅迫めいた報道が繰り返されています。本当でしょうか?
報道の根拠は、今年、南半球でインフルエンザが大流行したから、ということのようです。南半球の冬に流行したインフルエンザ・ウイルスが、旅行者によって北半球に持ち込まれる、という説明は、すでに当ホームページでも報告したとおりで(Q17-第6回)、この点は正解です。
オーストラリア政府の公式発表によれば、まず同国での過去5年間のデータに比べると、感染した人は多かったが、重症化した人は、むしろ少なくなっていた、とのことです。しかし過去5年間のうち、2年間はコロナ禍の真っ最中でインフルエンザの流行はありませんでしたから、それと比べて「今年は多かった」とする解釈は間違っています。
ある米国の専門家は、「コロナ禍によりインフルエンザが流行せず、人々に自然免疫がつかなかった。かつコロナに対する感染予防もずさんになってきているので、この冬は、大変なことになる」と述べていました。ただし、これは1年前の話で、大変なことにならなかったのは、ご存知のとおりです。
2021~2022年のシーズン、米国でインフルエンザの小規模な流行があり、A香港型と呼ばれるタイプによるものでした。インフルエンザ・ウイルスにも、トゲトゲ蛋白のような構造物があり、その変異の組合せで呼び名が決められるため、香港型はH3N2が正式名です。米国での流行は、だらだらと続き、数千人が重症化して入院したと報じられていました。従来では、ありえない流行パターンでした。
コロナに対する予防策をまったく講じていなかった国でも、インフルエンザは流行しなかったという事実もあり、よくわからないことばかりなのです。長年、インフルエンザ・ウイルスの追跡調査を行なってきた専門家は、「ウイルスの行動は予測不能」とコメントしています。別の専門家は「インフルエンザ・ウイルスはファンキーだ」と言ったとか。ファンキーは、「かっこいい」ではなく、「汚い奴」というのが元の意味です。
さてコロナとインフルエンザが一緒に流行することがあるのか、考えてみましょう。
2022年の初め、インフルエンザが影を潜めた頃にオミクロン株が出てきたことから、両者には互いに反発する力が働くのではないか、とする説が現れ、SNS上で話題になっています。しかし、本当にそんなことがあるのか、あるとすればなぜか、など真相はまったく不明です。
2つの感染症に対する賢明な態度は、流行がどうあれ「予防する方法」と「罹ってしまったらどうするか」をまとめておくことに尽きます。
幸い、南半球で流行したウイルスはH3N2型で、以前から日本で製造されてきたワクチンにもその抗原が含まれているため、大丈夫ということになります。ただし、その有効率は2019年の調査で39パーセントしかありませんでした。かつ高齢者ほど効き目が悪いのは、どのワクチンでも同じことです。
かりに有効であったとしても、注射の1ヵ月後から効き始めて、せいぜい2~3ヵ月の間です。10月に接種を済ませた人は、流行期には、すでに効力が切れていることになります。
インフルエンザは、コロナに対する感染予防対策でほぼ抑え込むことができました。つまり、感染対策の手を抜かないことが、インフルエンザ予防の原則なのです(私は、ずっと昔から、インフルエンザ・シーズンになるとマスクを2重に着けて外出していました)。
では、かりに両者が同時に流行したとして、発熱などの症状があったら、どうすればいいのでしょうか。それぞれに抗原検査法がありますので、医療機関を受診して両方の検査を受ければ、診断は確定します。
そこで理解しておきたいのは、当ホームページで繰り返し述べてきたように、どちらであっても、症状と治療がほぼ同じだということです。
インフルエンザには「タミフル」という特効薬(?)があります。しかし重症化を防ぐ効果はいっさいなく、ただ症状を17時間(約半日)短かくできるだけの薬であることが証明されています。副作用で肝臓を悪くする人もいます。つまり、あえて服用する必要もない薬なのです。一方、新型コロナのほうも、安心して使える薬は、今のところありません。
高熱があって辛いとき、無理して医療機関に行っても体力を消耗し、かつ混みあう待合室で別の感染症を移されてしまうだけです。このように考えてくると、医療機関に行って検査を受ける意味はなく、解熱剤(アセトアミノフェン)を使い、十分な水分と果物をとりながら自宅で静養を続けるのが、もっとも賢明な対応ということになります。
【参考文献】
1) Australian influenza surveilance report. Australian Government Department of Health and Aged Care, Oct 9, 2022.
2) Rubin R, The dreaded twindemic of influenza and Covid-19 has not yet materialized - might this be the year? JAMA, Oct 18, 2022.
3) Butler D, Tamiflu report comes under fire. Nature, Apr 24, 2021.
4) Ali ST, et al., Prediction of upcoming global infection burden of influenza seasons after relaxation of public health and social measures during the COVID-19 pandemic: a modeling study. Lancet, Nov, 2022.
Q7 専門家の言うことは正しいのか?
A ワクチンを促進したい人も、反対する人も、まず正しい理解が大切です。以下、専門家の意見もわかれるような複雑な問題について、最新、かつ確かな情報をまとめおくことにします。
(2021.9.25)
(1) 専門家が示すデータに騙されないための心得帳
【性質の異なる集団は比べられない】
「死亡者の8割はワクチン未接種」など、人心を惑わす報道が続いています。これは、ワクチン接種を「自分の意思で受けた人」と「受けなかった人」を比べてみたら、という話です。このような比較は正しいでしょうか。
この2つのグループは公平に分けられたものではありません。たとえば接種を受けた人たちの多くが年長者で、もともと健康に関心があり、日頃から感染予防もしっかり行っていたかもしれません。一方、受けなかった人たちは、その逆だったかもしれません。
もしそうだとすれば、ワクチン未接種の人たちの致命率が大きくなっても、不思議ではありません。このような方法は「後ろ向き調査」、あるいは「観察研究」などと呼ばれ、コンピュータ内のデータを単純に計算するだけですむため、手軽で費用もかからず、昔からよく用いられてきました。医師たちがテレビで語る「最近はワクチンの有効性を示すデータが続々・・・」は、すべて、この種のデータのことです。
しかし、ときに意図的な誘導が可能であり、また常に誤った結論を出してしまうことから、医学を混乱させる原因ともなってきたのです。後ろ向き調査のデータは、科学的根拠になりません。
【昔と今は比べられない】
「以前は高齢者の死亡が多かったが、いまはワクチンのお陰で少なくなった」というのは、どうでしょうか? いまは高齢者施設に勤務するすべての従業員に対して毎週、PCR検査が行われるようになり、施設での集団感染が激減しています。つま「以前」と「いま」では、社会情勢が異なるため、単純に数字だけを比較することはできないのです。
【比べなければ意味がない】
「○○薬を使ってみたら、たちまち症状改善!」と、テレビのニュースで医師が語っていました。病気の多くは自然に治るものです。もし治らないなら、いまごろ人類は滅亡していたことでしょう。何もしなくても治りかけている人に薬を投与すれば、いかにもその薬が効いたようにみえます。しかし、使わなくても治っていたのでは、ありませんか?「使った人」と「使わなかった人」を比べなければ、意味がありません。
【気のせいではないですか?】
その昔、パン屑を丸めて「血圧の新薬」とウソをつき、何人かに飲ませたところ、全員の血圧が下がった、という実験をした研究者がいました。心と体は、つながっていることを見事に示した実験でした。本物とそっくりに似せて作った「薬もどき」をプラセボと言いますが、そのプラセボ自体に意外と効果があるのです。これを称して「プラセボ効果」と言います。「○○療法はコロナに有効」などのニュースに騙されないようにしましょう。
(2) アストラゼネカ社ワクチンの運び屋ウイルスは、DNAへの組み込みをしない?
同ワクチンでは、運び屋としてチンパンジーのアデノウイルス(風邪のウイルス)が使われています。人の風邪ウイルスは、すでに免疫を持っている人が多く、運び屋しては使えないからです。
多くの専門家は「アデノウイルスはDNAへの組み込みをしないので安心」と述べています。しかし最近の動物実験で、この説は覆されました。結論だけ言えば組み込みは必ず起こり、ワクチン接種を2回受けると、肝臓だけで96か所に組み込みが起こる計算が成り立ちます。
つまり、このワクチンに含まれるコロナのトゲトゲ蛋白を合成する遺伝子は、あなたのDNAの中に永久に残ってしまう可能性があるということです。
【参考文献】
1) Stephen SL, et al., Chromosomal integration of adenoviral vector DNA in vivo. J Viol 84: 9987-9994, 2010.
(3) 抗体依存性感染増強(ADE)って何?
1960年代の初め、麻疹(はしか)のワクチンが開発されました。ところが、そのワクチンを接種した子供たちが、数年後、さらに重い麻疹に罹ってしまう、という不思議な現象が起こりました。
当時、理由はわからないままでしたが、最近になって研究が進み、何が起こっていたのか、あきらかになってきました。その仕組みを言葉で説明すると、眠くなってしまいそうです。以下のアニメをご覧ください。
このほかにも仕組みは、いろいろあって複雑です。この現象が「抗体依存性感染増強」と呼ばれているものです。問題は、これが、コロナワクチンでも起こっている可能性があるということです。ただ信頼性の高い情報がまだなく、わかりしだい追記を行っていく予定です。
【参考文献】
1) Ricke DO, Two different antiboby-dependent enhancement (ADE) risks for SARS-CoV-2 antibodies. Front Physiol, Feb 24, 2021.
2) Halstead SB, et al., COVID-19 vaccines: should we fear ADE? IDSA, in press.
3) Lovdal T, et al., Fc receptor mediated endocytosis of small soluble immunoglobulin G immune complexes in Kupffer and endothelial cells from rat liver. J Cell Science 113: 3255-3266, 2000.
(4) 高齢者の死亡が減少しているのはワクチンのお陰?
→ 国内でも海外でも、これまで高齢者施設での集団感染と、それによる死亡例が圧倒的多数を占めていました。とくに米国では、高齢者施設における感染対策について論じた論文が続々と発表されてきました。
昨年、私が勤務する施設でも集団感染があり、複数の方が亡くなられました。痛恨の出来事でしたが、当然、超高齢者が中心ですから、老衰も進行しており、軽い風邪をひいただけでも命の最後の灯が消えてしまいます。
そのとき感じたことが2つありました。ひとつは行政の方針で、PCRが陽性という理由だけで、すべて「コロナ死」として記録されてしまい、本当の死因、本当の致命率がわからなくなってしまったことです。
もうひとつは、高齢者施設での感染予防がうまくできさえすれば、新規感染者数も死亡者数も格段に改善するのではないか、ということでした。
そんな中、2021年3月から、すべての高齢者施設のすべての職員に対する週1回のPCR検査が開始されました。その効果は疑問ですが、職員の自覚が高まったのは確かです。いずれにしても、「ワクチンのお陰で高齢者の死亡が減少した」との政府や専門家の説明は間違っています。
(5) 接種を1回で終わりにしても大丈夫?
インフルエンザ・ワクチンは、その昔、大人も子供も2回接種が原則でした。ところが希望者が予想外に多く、また製造法がアナログ的なため生産も追いつかず、いつの頃からか「成人は1回」と思い込まされてしまった、という歴史があります。
幸い、コロナワクチンのほうは、当ホームページQ10「疑惑その3」に記したとおり、公式論文のデータを正確に読み解けば、接種1回と2回でほとんど差がなく効果は同じなのです。
「接種を1回だけでやめると、何か体に悪いことはないか」と心配する人もいますが、インフルエンザ・ワクチンで実証されているとおり、問題は何もありません。
ワクチンを2回接種するのは、免疫システムの記憶力が強化されるはずという発想に基づくもので、昔からブースター効果と呼ばれてきました。ブースターとは打ち上げロケットの2段目という意味です。しかし、その効果について厳密な実証がなされていないことと、2回目の接種で予期せぬアレルギー反応が起こったり、いわゆるADE(当ホームページQ7(4)参照)が生じたりするリスクもあります
当ホームページで紹介しているさまざまな事実から、コロナワクチンを1回だけ接種してやめても、何も問題はないと言えます。
(2022.2.7)
(6) 後ろ向き調査のまやかし
テレビなどで専門家と称する人たちが繰り返し述べているのは、「ワクチン接種の有効性については科学的根拠がある」というものです。この『根拠』なるものが、あきらかな間違いであることは、すでに当ホームページで述べてきたとおりです。
その根拠なるものは、「ワクチンを自分の意思で打った人たち」と「打たないことにした人たち(何らかの事情で打てなかった人も含む)」を比べたら、「打った人たちのほうで感染が少なかった、あるいは重症化した人が少なかった」から、というものです。
このような方法は、結果がわかったあとになって、振り返って2つのグループに分け比べているだけですから、「後ろ向き調査」とも言われています。一方、ボランティアを募り、生活習慣や病歴などさまざまな情報を集め、すべてが均等になるように2つのグループを事前に設定し、結末を見届ける方法は「前向き調査」と呼ばれます。
過去、さまざまな医療行為について、前向き調査と後ろ向き調査が行われてきましたが、両者で正反対の結論になるのが常でした。前向き調査が、真実を証明する唯一の手段であることは世界中の研究者が認めているところですが、論文の発表件数でみると、後ろ向き調査のほうが圧倒的に多くなっています。その理由は、すでにコンピュータに入っているデータを集計するだけで済むため、お金も人手も、そして時間もかからないからです。
それにもかかわらず一流とされる学術専門誌の多くが、これらの論文を掲載し続けているのですが、「このような条件でデータを分析すれば、こんな結果になる」と、一応は研究発表のスタイルに適っているからなのです。あとは読み手の責任だというわけです。
しかし、その甘さが、現代医療に混乱をもたらす原因のひとつになってきたのはあきらかです。私自身、20年以上前から、この誤りを正すための数学的検証を重ね、その結果を論文にまとめて海外の専門誌の投稿したことがあります。タイトルは「後ろ向き調査のデータは専門誌に掲載すべきでない」でしたが、論考不十分との理由で不採択となったまま、いまに至っています。
2021年の暮れ、英国スコットランドの当局が発表したデータは、ワクチン接種を受けた人たちのほうで、感染率がむしろ高くなることを示すものでした(当ホームページQ12(5)参照)。典型的な後ろ向き調査ですが、このデータに対し英国保健安全局は、ブログで以下のような注意喚起を国民に行っています。
『このデータは、条件がそろっていないグループを比べただけであり、ワクチンの効果を否定するものではないので、誤った解釈をしないように。以下は、比べていけない理由である。
・接種した人たちは、もともと健康に関心が強く、コロナの検査も積極的に受けたはず
・接種した人たちは、年齢や家庭環境から感染リスクが高く接種にも積極的だったはず
・接種した人たちは、自由に動き回るなど、感染リスクも高まっていたはず
・未接種者は、とっくに感染していて、調査期間中には自然免疫ができていたかも 』
私が言いたかったことを、適切にまとめてくれました。もしデータが逆の結果だったら、そしらぬ顔で「ワクチンの効果は改めて証明された。だから3回目も」とコメントしたのでしょうね。
【参考文献】
1) Ramsay M, Transparency and data - UKHSA's vaccines report. UK Health Security Agency, Nov 2, 2021.
(2022.9.26)
(7) 全数把握、定点観測って何?
「一家で感染したが全員、自宅療養だった。生命保険に入っていたお陰で、自宅療養でも入院給付金がもらえることがわかって、よかった!」という話を、周囲からよく聞くようになりました。
「みなし入院」と呼ばれるこの対応は、国からの要請に各生命保険会社が答えた形で始まったものです。しかし自宅療養者が全国で日に100万人を超えるようになり、保険会社も想定外の危機的状況に陥ってしまったようです。
2022年8月24日、政府は「全数把握を見直す」と、唐突に発表しました。同時に、特別措置法によって危険な感染症に指定されていた新型コロナを、インフルエンザなみの扱いする方向で検討する、というややこしい話でした。
日本政府は、法律上の扱いを変えようとしない、かたくなな態度を取り続けてきました。経団連の一翼を担う業界からの苦情に抗しきれず、しかし表向き、全数把握の問題を持ち出すことで、突然の方針転換の体裁を繕ったのではないか、と勘繰りたくなる話です。ともかく、全数把握とは一体、何なのでしょうか?
全数把握は文字通り、感染した人の数を余すところなく完全に国家が把握する方式です。たとえば過去に流行したウイルス感染症で、もっとも危険なものの一つがエボラ出血熱です。これにヒントを得たダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレイク」では、感染の恐怖がドラマティックに描かれていました。危険な感染症では、たった一人の患者を見逃すだけで、数え切れないほど人の命が奪われることになるため、全員のフォローが絶対条件です。
しかしオミクロン感染症は、状況がまったく違います。全数把握は、労多くして役立つ場面はありません。参考になるのはインフルエンザです。次のグラフは、過去5年間のインフルエンザ感染者数の推移を示したものです。国立感染症研究所が公表している数字を元に私が作図しました。
データは、全国の約5,500の医療機関(定点)に協力を求め、1週間ごとにインフルエンザ患者の人数を報告してもらっているものです。ここで大切なことは、協力医療機関が完全に無作為に選ばれた、という点です。無作為に選んだサンプルから、全体像を推測するのは統計学の大原則だからです。これが「定点観測」と呼ばれる処理法です。
上記のグラフは全国のデータを集計したものですが、地域ごとに公表している都道府県もあります。私は、いつもインフルエンザシーズンが始まる頃になると、地域のグラフをネットで見ながら、いつ頃から、どれくらいの規模で流行が始まるのかを予測し、ワクチンの発注数量や接種開始の時期を見定めてきました。また刻々と変わる状況を職員に伝え、予防対策の徹底もはかってきました。
このデータがあれば、全国の総感染者数を以下のように求めることができます。
(定点での感染者数÷全定点の外来患者総数)×全国の総患者延べ数
「全国の総患者延べ数」は、2014年9月に行われた全国実態調査で得られたものを用います。
次の図をご覧ください。上の図と同じものですが、赤い折れ線は2019年9月からのデータです。この年の暮、新型コロナウイルスが中国武漢市で最初に確認されました。その頃から、赤い折れ線は、インフルエンザが急増する気配を見せていました。年明け、点線のグラフようになっていくのではないかと、緊張したのを覚えています。しかし結果はご覧のとおり。コロナに対する感染対策の徹底で、インフルエンザが明らかに抑え込まれています。
実は、この図には2020年と2021年のグラフも描かれているのですが、インフルエンザにかかった人がほぼゼロであったため、横軸と重なり合って区別がつきません。
定点観測データはきわめて有用、かつ十分なのです。しかし国は、高齢者や基礎疾患のある人に限定して今後も全数把握を続ける、と発表しました。この判断は、「無作為でサンプルを集める」という統計学の大原則に反しています。
かつ感染症の流行は、「活動的な若い世代の間でまず広がり、家庭に持ち込まれ、その子供たちの学校で一気に拡大し、やがて高齢者にも伝わっていく」、という形をとるものです。百歩譲って、対象を絞ってでも全数把握を続けたいのであれば、それは高齢者でなく、若い世代のほうでしょう。人類が長年の経験と学術調査を通して学んできた、この感染症の大原則が、すっかり忘れられています。
「全数把握をやめると医療から取り残される人が出てくる」とテレビで述べていた人もいました。しかし現代医療の仕組みは、病める人を差別なく癒すように構築されてきたものであり、それはこれからも変わることがありません。こんな簡単な医療の大原則さえ理解されていないようです。
【参考文献】
1) Reicher TA, et al., The Japanese experience with vaccinating schoolchildren against influenza. N Egl J Med 344, 889-896, 2001.
(2022.10.10)
(8) ワクチンでできた抗体はなぜ無効なのか?
2022年9月5日付の当ホームページ記事『重症化しやすい人の体質』で、ワクチンによってできた抗体は、感染予防にほとんど無効であることを述べました。この記述に対して、「本当なのか?」、「なぜ?」という問い合わせを多数いただきましたので、改めてエビデンスをまとめることにしました。
「マムシに咬まれたら抗血清をすぐ打たないと死ぬ!」という話が、都市伝説のように伝えられてきました。抗血清とは、マムシの毒液を馬に接種し、抗体ができたころ血液を採取して精製したものです。中和抗体の働きに期待したものですから、理にかなっているように思えます。
ところが、実際は違っていました。効果がなかなか証明されず、使わないことにしていると述べる救急専門医が多いのです。致命率がそれほど高くなく、副作用のほうが遙かに深刻であることも、その背景にあります。
同じ発想で行なわれているのが、新型コロナ感染症の治療です。感染したあと、しばらく経った人の血液中には、ウイルスに対する抗体が含まれていることが期待できるため、それを治療に使おうというアイデアです。
ヒトの血液は、その45パーセンが、赤血球、白血球、血小板などの細胞成分で、残りの55パーセントが血漿と呼ばれ、いろいろな酵素や抗体、たんぱく質、塩分などを含む水分となっています。そこで、感染から完全に回復した人の血管に針を刺して血液循環装置につなぎ、赤血球、白血球、血小板などの成分を装置の中で分離して体内に戻していきます。この処理を行いながら、血漿だけを400mlほど集めて容器に保存するのです。当然、肝炎ウイルスなどの病原菌がいないかどうかをよく知らべます。
こうして安全性が確認された血漿を、感染した人の血管内に点滴として注入する方法が「回復者血漿療法」です。2021年の夏、トランプ前大統領が感染した折、この治療を受けたと自ら語っていました。
コロナ禍が始まって以降、この療法の効果と安全性を評価するための研究が、世界中で行なわれてきました。しかし、ほとんどが「効果なし」との結果に終わってしまったのです。マムシの抗血清や新型コロナの回復者血漿療法は、同じ発想に基づくものですが、なぜどちらも効果が証明できなかったのでしょうか?
免疫システムによって体内で作られる抗体は動物と人間で異なること、ヒト同士であっても個人差がかなり大きいことなどが、その一因と考えられています。免疫は簡単でありません。
コロナワクチンによって体内で作られる「抗体」に、話を進めます。ヒトの免疫システムは、体内に忍び込んでくる異物や微生物に対して、それぞれ異なる抗体を作り出すことができます。その限界は、1兆のさらに百万倍種類にもなることが、最近の研究でわかりました。以下の図は、抗体が異物を捉える仕組みです。
ワクチン接種によって体内にトゲトゲ蛋白が注入されると、免疫システムは直ちに「抗体」を作り始めます。ただしトゲトゲ蛋白は複雑な形をしていますから、その形状、つまり「抗原」に対応した、さまざまな抗体が手あたり次第に作られます。したがって出来上がった抗体のすべてが、ウイルスの攻撃を防ぐ力を持つとは限りません。
次の動画は、本物のコロナウイルスが体内に侵入したとき、ワクチンによって作られたさまざまな抗体と会合するシーンをイメージものです。
このようにウイルスの侵入をブロックしてくれる抗体だけが、真の「中和抗体」です。
極小の中和抗体が、大海のごとく広大な血液の流れの中で特定の「抗原(トゲトゲ蛋白の先端部分など)」と偶然に出会うのも、奇跡的としか言いようがありません。誰かが両者を導いてくれるわけではなく、ぎりぎりまで近づいたときに初めて、凹と凸がくっつき合う「分子の力」が働くにすぎないからです。つまり、トゲトゲ蛋白だけを対象にしたワクチンで作られる抗体はあまりに儚く(はかなく)、効果が極めて限定的だということなのです。
ではワクチン接種でなく、実際に感染したあとにできる抗体(自然免疫)は、どうなのでしょうか?
2021年6月10日に発表された研究によれば、新型コロナウイルスには、トゲトゲ蛋白以外にも病原性を発揮する危険な部位がいくつかあり、それらに対する免疫システムの反応も確認できた、とのことでした。
ヒトの免疫システムは極めて優れていて、それだけにメカニズムも複雑です。「殺し屋細胞」の挙動(Q9(4)参照)なども含め、まだ解明されていない部分がたくさんあります。少なくとも、現行のワクチンがそれに取って代わるほど単純なものでないことは確かです。
さまざま調査データも合わせ考えると、ワクチンによって作られる抗体は「ほとんど無効」と断言できるのです。
「中和抗体が測定できます」との宣伝文句で、多くの簡易検査キットが発売されています。しかし真の中和抗体は「簡易」には測れません(Q12(9)参照)。「ワクチン接種後、中和抗体が△△倍に増加」などのニュースもよく耳にしますが、ワクチンメーカーの宣伝に、この言葉が悪用されています。
【参考文献】
1) 辻本登志英, ほか, 抗毒素血清投与を行なわなかったマムシ咬傷38症例の検討. JJAAM, 28: 48-54, 2017.
2) Convalescent plasma. Cleveland Clinic, accessed: Oct 3, 2022.
3) NIH study shows no significant benefit of convalescent plasma for COVID-19
outpatients with early symptoms. NIH, Aug 21, 2021.
4) Kolata G, Uncertain results in study of convalescent serum for covid-19.
New York Times, Jun 10, 2020.
5) Hicklin T, Decoding the variety of human antibodies. NIH, Feb 12, 2019.
6) Janeway CAJr, et al., "The interaction of the antibody molecule
with specific antigen". in Immunology: the immune system in health
and disease. 5th ed, Garland Science, New York, 2001.
7) Xia B, et al., SARS-CoV-2 envelope protein causes acute respiratory
distress syndrome (ARDS)-like pathological damages and constitutes an antiviral
target. Cell Res, Jun 10, 2021.
Q8 ウイルスはどのように変異し、どこへ行くのか?
A インフルエンザではタミフルという特効薬があります。この薬が効かない変異ウイルスが蔓延しているのですが、実はその原因が「日本人がタミフルを乱用したため」と諸外国から非難を受けています。同じ話がコロナワクチンにもあります。
コロナワクチンの効果に関する調査が盛んですが、多くは「効果が高い」ように見せかけるためのメーカー主導で行われているものです。5月20日、それらとは一線を画す、かなり厳格な調査が南アフリカで行われました。同国は、アストラゼナカ社ワクチンの治験が最初に、かつ濃密に行われたところです。
調査では、アストラゼネカ社ワクチンが、同国で発生した変異株に有効かどうかが検証されました。結論は、同社のワクチンは変異株に対して有効性がまったくないというものでした。
この結論から考えられることはただひとつしかありません。「南アフリカで変異ウイルスが発生したのは、同国で集中的に使われたワクチンが原因だった」ということです。私の当初の懸念が現実のものとなってしまいました。
日本でワクチン接種が集団で行われたあと、もしそこでクラスターが発生したりすると、そのときこそウイルスにとって、ワクチンに負けない変異を遂げるチャンスとなります。ワクチン接種を受けた人たちには、ウイルスを変異させないよう最大限の注意を払う、つまり自身が絶対感染しないという責任が生じたのです。
「集団接種が行われた町には怖くて行けない」、「職員の全員が接種を受けた病院は嫌だ」、「一家全員が接種を受けた親戚とは縁を切りたい」・・・。今後、そんなことを考える人が出てきてもおかしくはありません。
【参考文献】
1) Tracking coronavirus vaccinations around the world. New York Times, May 26, 2021.
2) Madhi SA, et al., Efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 Covid-19 vaccine against the B.1.351 variant. N Engl J Med, May 20, 2021.
(2) ウイルスはどのように変異するのか?
数年前、ダーウインの進化論の現代語訳が『種の起源(上下巻)』という邦題で出版されました。それを読んで、進化論の奥深さに触れると同時に、この説を否定する声が高まっていることも知りました。
否定意見というのは、たとえば「キリンの首が長いのは、高い木になっている実を食べることができ生存競争に打ち勝ったから、というのであれば地球上の生き物はすべて首が長くなっているはず」といったツッコミです。しかし自然淘汰説が根本から間違いなのではなく、生物の種ごとに何か固有の力も一緒に働いてきた、ということではないでしょうか。
そう考えると、ウイルスが変異を遂げてきた理由もわかってきます。インフルエンザ・ウイルスがよく研究されていてますので、これで見ていきましょう。まず、ウイルスの変異には以下の3つの様式があります。
・遺伝情報1個単位の突然変異
・まとまった遺伝情報の大幅な組み換え
・性質が異なるウイルスに同時感染した場合の相互組み換え
この順番に変異は大きくなり、ときに困ったことが起こります。以前、大きな問題となった新型インフルエンザや鳥インフルエンザは最後のタイプで発生したと考えられています。
人間のDNAは、ファスナーのように2本で1組のひも状となっています。その片方に変異が生じると、部分的に壊れたファスナーのように凹凸が生じるため、酵素がそれを見つけ自動的に修復するようになっています。
しかし、コロナもインフルエンザも1本のRNAしか持たないため、自動修復機能が効きません。そのため、絶えずランダムに生じている突然変異がそのまま残り、溜まっていくことになります。
そこで自然淘汰が働き、ワクチン接種による中和抗体、あるいはタミフルのような 特効薬から逃れることができた変異を有するウイルスだけが生き残って いく、ということではないかと推測されるのです。
以上の考察から、ウイルスの変異を促す要因はあきらかです。「感染が濃厚に発生している」か、あるいは「ワクチン接種が大集団で密に行われている」ことですが、私の推測では、ほぼ100%が後者です。日本固有の変異ウイルスも、すでに生まれているはずです。
【参考文献】
1) Steward K, Antigenic drift vs antigenic shift. Microbilogy, Oct 25, 2018.
2) How the flu virus can change: drift and shift. CDC, Oct 15, 2019.
(2022.9.5改訂)
(3) 変異ウイルス一覧
→ 難しいのは、変異ウイルスの「感染力」や「致死率」をどうやって求めるのかです。たとえば、大勢の若者がスポーツ観戦などで大騒ぎをして、たまたまその中に変異ウイルスの感染者が1人いたため100人くらいに感染が広がったとします。単純に統計をとれば、この変異ウイルスは感染力が強い、ということにされてしまうでしょう。
つまり多様で、予測不能な人間の行動様式が絡み合っているため、ウイルスの性質だけをわけて求めることができないのです。
たとえば200匹くらいのネズミを用意して公平に2つのグループにわけ、それぞれを大きなカゴに閉じ込めた場面を想像してください。その一方に、変異ウイルスを感染させたネズミを、もう一つには従来型ウイルスを感染させたネズミを、それぞれ1匹ずつ入れます。1週間後くらい経ったら、すべてのネズミを解剖して、何匹に感染が起こっていたかを調べる、という方法なら、少しはましなデータが得られそうです。
方法はともかく、そんな困難を乗り越えて世界中の研究者たちが実験や予測をしてくれたデータがありますので、それらを次の表にまとめてみました。左端の「WHOの新呼称」とは、「ブラジル株、イギリス株、・・・」などの呼び方をして、その地域に汚名を着せることにならないようにとの配慮から考えだされたもので、ギリシャ文字を順に使っています。注目ポイントのひとつは、「ニュー」と「クサイ」の2つが飛ばされてしまっていることです。
ここで、デルタ変異ウイルスについての最新情報(2021年8月26日現在)をまとめておきます。
・感染力は2倍以上、強い
・致死率(病原性)は他の変異ウイルスより強いが、正確なところはわからない
・12歳以下の子供が、とくに罹りやすいかもしれない
・ほかのウイルスと異なり、暑い季節ほど感染が拡大する傾向がある
・ファイザー社、モデルナ社ワクチンの効果は、最初の変異ウイルス(イギリス株)
に対する効果とほぼ同じ
2021年11月26日、WHOは、新しい変異株「オミクロン」が南アフリカで発見されたと発表しました。新しい「変異ウイルス」の出現に役立つ点があるとすれば、世界各地、とくに日本国内にどのようなルートで入り込んでくるのか、感染者の動きが明確に追跡できることです。もし、このウイルスが羽田空港から入国した人から広がったとすれば、空港検疫が甘かったことになります。もし米軍基地の周辺から広がったとすれば、日米地位協定に甘さがあったことになります。つまり新たなピークを防ぐための重要なツールになるということです。
変異ウイルスの話題は、ともすればワクチン接種を推進する宣伝に使われたりしかねません。張り切っているのはワクチンメーカーです。メッセンジャーRNAタイプのワクチンは、変異ウイルスに合わせて簡単に作り替えることができるからです。表の下から2行目にあるように、WHOの信頼度も地に落ちています。メディア報道に振り回されることなく、事態の推移を冷静に見守っていきたいものです。
【参考文献】
1) Wu F, et al., A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature, Mar 12, 2020.
2) Corum J, et al., Coronavirus variants and mutations. New York Times, Jun 4, 2021.
3) Anthes E, Covid's lambda variant: worth watching, but no cause for alarm. New York Times, Jul 8, 2021.
4) Bernal JL, et al., Effectiveness of Covid-19 vaccines against the B.1.617.2 (delta) variant. N Engl J Med, Jul 31, 2021.
5) Anthes E, The delta variant is sending more children to the hospital - are they sicker, too? New York Times, Aug 9, 2021.
6) Classification of omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 variant of concern. WHO, Nov 26, 2021.
7) SARS-CoV-2 variant classifications and definitions. CDC, Oct 4, 2021.
8) Wires N, WHO skips Greek letter Xi for COVID variant omicron. WATCH TV LIVE, Nov 26, 2021.
9) Zimmer C, New virus variant stokes concern but vaccines still likely to work. New York Times, Nov 26, 2021.
(2022.2.28)
(4) 2種類のオミクロン株の違いとは
オミクロン株には、BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5の5つの亜型が見つかっています(2022年7月15日現在)。最初に流行したのはBA.1でしたが、すぐにBA.2(ステルス・オミクロン)が広がりました。テレビでは、BA.2のほうが感染力が強く、重症化しやすいと報じられていましたが、本当でしょうか? 以下、オミクロン株についての確かな情報をまとめてみました。
日本人の研究者グループが発表した、ある論文が話題となり、国内外の多くのメディアで取り上げられています。その研究とは、実験動物にウイルスを感染させたり、培養細胞にウイルスを反応させたり、さらにはコンピュータ・シミュレーションで計算したりと、多岐に渡るもので、以下のようなことがわかったとしています。
・ハムスタ―の肺で認められたウイルス量は、(BA.1感染に比べて)BA.2感染のほうで多かった
・ハムスターの肺の炎症は、(以下同じ)BA.2のほうで強かった
・ひとりの感染者が他の人に感染させる割合(感染率)は、BA.2のほうで1.4倍ほど大きいようだ
一方、海外でも、オミクロン株について膨大な数の研究が行われていて、以下のようなことがわかってきました。
・オミクロン株に対するワクチン効果は、デルタ株に対する効果の4割以下(ほとんど効かないということ)
・「ワクチン未接種」「2回接種」「3回接種」を比べると、BA.2に感染する率は同じ
・感染の速度が(BA.1より)BA.2のほうが早い(潜伏期が短い)
・実際の感染者で比べると、BA.1とBA.2で重症度に違いがない
・抗体カクテル(ロナプリーブ:Q4(4)参照)はBA.1とBA.2の両方で無効
・単一抗体(ソトリビマブ:Q4(4)参照)がBA.2だけに効く
・実験動物と異なり人間の行動は複雑なため、感染率や病原性はウイルス遺伝子の違いだけで説明できない
・すでにBA.2に置き換わっているデンマークや南アフリカで、新たな感染ピークは認められていない
以上をまとめるとポイントは3つ。まず実験動物で得られたデータが、そのままヒトには当てはまらず、結論としてBA.1とBA.2に大きな違いはないということです。2つめは、BA.1もBA.2も遺伝子変異があまりに大きく、ワクチンの効果がまったく期待できないということ。そして3つめが、BA.2のほうが感染の広がる速度が速いため、終息も早く、新たなピークの原因にはならないと考えられることです。
【参考文献】
1) Classification of Omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 variant of concern. WHO, Nov 26, 2021.
2) Buchan AS, et al., Effectiveness of CIVID-19 vaccines against Omicron or Delta infection. medRxiv, Jan 1, 2022.
3) Yu J, et al., Comparable neutralization of the SARS-CoV-2 Omicron BA.1 and BA.2 varinats. medRxiv, Feb 7, 2022.
4) Yamasoba D, et al., Virological characteristics of SARS-CoV-2 BA.2 variant. bioRxiv, Feb 15, 2022.
5) Callaway E, Why does the Omicron sub-variant spread faster than the original? Nature, Feb 16, 2022.
(2022.3.14)
(5) オミクロン株感染症はインフルエンザより軽い?
テレビは、10歳未満の子供のコロナ死を大きく報じるなど、相変わらず恐怖を煽っています。オミクロン株の時代となり、コロナをどのように理解すればよいのでしょうか?
米国の研究者が、5~11歳の子供でオミクロン株に感染した子供のうち、入院に至った事例を、2017年のインフルエンザ感染事例と比べ、致命率について考察したという論文が発表されました。2017年は、コロナ禍になる前の10年間で、インフルエンザがちょうど平均的に流行していた時期です。その結果(致命率)は、以下のようなものでした。
【オミクロン株の場合】
新型コロナウイルス 5.1%
インフルエンザ 17.0%
あきらかに、インフエンザのほうで致命率が高かったのです。実は、オミクロン株が流行する前に行われた調査でも、ほぼ同じ結果が得られていました。トルコの研究者たちが行った調査で、対象は0~18歳。新型コロナウイルス、またはインフルエンザに感染し入院した子供たちでした。両者の致命率は以下の通りで、2つの調査の結果はほとんど同じだったのです。
【従来株の場合】
新型コロナウイルス 1.2%
インフルエンザ 15.2%
つまり、新型コロナウイルス感染症より、インフルエンザのほうが、遙かに危険な病気なのです。
【参考文献】
1) Yilmaz K, et al., Does Covid-19 in chiledren have a milder course than influenza? Int J Clin Pract, June 1, 2021.
2) Encinosa W, et al., Severity of hospitalizations from SARS-CoV-2 vs influenza and respiratory syncytical virus infection in children aged 5 to 11 years in 11 US states. JAMA Pediatr, Feb 21, 2022.
(2022.3.21)
(6) 新しい変異株『デルタクロン』とは?
またまた新しい変異株が発生しました。デルタ株とオミクロン株を合体させたような遺伝子構造を持っていることから、デルタクロン、あるいはデルタミクロンと呼ばれています。
当ホームページのQ8(2)で、ウイルスが変異を遂げる道筋が3種類あることと、そのひとつは「性質が異なるウイルスに同時感染した場合の相互組み換え」であることを紹介しました。デルタクロンは、まさに相互組み換えで発生したものと考えられます。トゲトゲ蛋白の遺伝子はオミクロン株、またウイルスの体の部分はデルタ株でできています。
最初はフランスで3人、米国で2人の感染者から検出され、2022年3月8日に正式報告がなされました。その後、すでに2022年1月には、欧州各地で同じ変異株が発見されていたこともあきらかにされました。
したがって、もしこの変異株の感染力が大きく、病原性も強いのであれば、とっくにオミクロン株と入れ替わっているはずですから、性質はおとなしいと考えられるのです。
第一報を伝えたのはイギリスの通信社ロイターでしたが、記事の中で面白いニュースがついでに紹介されていました。感染者と感染してないボランティアの「汗の匂い」を犬に嗅がせたところ、前者を97パーセント、また後者を91パーセント当てることができたというのです。もしこの数字が正しければ、いかなるPCRや抗原検査より信頼性が高いことになります。でも、そんな犬がデパートの入り口にいて「2回吠えたら、あなたは陽性」などと言われたりするのも嫌ですね。
【参考文献】
1) Lapid N, Variant that combines Delta and Omicron identified; dogs sniff out virus with high accuracy. Reuters, Mar 9, 2022.
2) Zimmer C, New 'Deltacron' varinat is rare and similar to Omicron, experts say. New York Times, Mar 11, 2022.
3) Grandjean D, et al., Diagnostic accuracy of non-invasive detection of SARS-CoV-2 infection by canine olfaction. medRxiv, Mar 8, 2022.
(2022.11.28)
(7) 人間はどのように感染症を克服してきたのか?
ペストという伝染病の名前を聞いたことがあるでしょうか。原因はペスト菌という細菌で、ネズミなどに取りつくノミが媒介します。
致死率が100パーセントとも言われ、激しい皮下出血のために全身が黒ずんだ状態で死亡することから、黒死病とも呼ばれてきたものです。なぜかヨーロッパで流行を繰り返してきました。14世紀には、その大流行があり、正確な記録は残っていませんが、中世ヨーロッパに住む人の半数が死亡したとも伝えられています。
WHOの世界統計によれば、最近の6年間で3,000人強の感染者がいて、500人ほどの死者が出ています。日本では1926年以降、確認されていません。
2022年10月19日、米国の研究者チームは、「多くの生物が集団で死ぬような事態が生じたとき、それにに打ち勝った遺伝子をもつ個体が生き残り、次の世代に受け継ついでいるはず」との仮説のもと、大規模な調査を行い結果を発表しました。
研究対象に選んだのは、なんとロンドンのお墓に埋葬されている318体の遺骨で、11世紀から15世紀の頃に埋葬されたことが、放射性炭素年代測定法などの諸技術で確認された人たちでした。
その遺伝子を徹底的に分析した上で、黒死病の大流行があった時代の前後に生きた人たちの間で何か違いが生じていなかったかを調べました。その結果、大流行が終わったあとの時代の人々の遺伝子には、免疫に関係した数百ヵ所で変異がみつかりました。
さて、ここで人間の遺伝子が変異する仕組みについて、簡単に触れておきましょう。遺伝子は、世代を重ねるごとに刻々と変化を遂げていくものです。そうでなければ、人間も含めた生物は進化できないことになってしまいます。
その変異には、2つの異なるタイプがあります。ひとつは、まったくランダムに起こっている変異で、生き物にとってプラスにもマイナスにもならないもので、「遺伝的浮動」と呼ばれています。もう一つは、「環境に適した変異をきたしたものが生き残っていく」という、ご存知、自然淘汰です。
話を戻します。問題は、遺骨からみつかった数百ヵ所の変異が、遺伝的浮動なのか、自然淘汰なのかです。黒死病に対する自然淘汰が働いたのであれば、大流行した前後の世代で、各個体に共通する変異が認められ、一方、それ以前、あるいはそれ以後の時代の人々にバラバラに生じていた変異は遺伝的浮動ということになります。
彼らは、その後、デンマークでも同様の調査を行い、コンピュータ解析により両者で一致した4つの変異が自然淘汰によるもので、その遺伝子をもつ人が「黒死病に強い体質」を獲得していた、と断定しました。理由もおおよそ解明され、ウイルスや細菌が体内に侵入した際に、これら遺伝子がある種のたんぱく質を作り、免疫システムに警報を鳴らすから、ということでした。
さて、ここまで新型コロナウイルスとは関係のない話を繰り広げてきましたが、もうご想像はついたものと思います。これだけ世間を騒がせたコロナ禍でしたから、われわれ人類、とくに感染して生き残った人々の遺伝子にも、何か有益な変化が起こっていたのかもしれません。
一方、幸いにして、濃厚接触があったにもかかわれず感染を免れた人たちの遺伝子にも、過去に大流行したかもしれないコロナウイルスに打ち勝つ遺伝子変異をすでにもっていた可能性があります。
ただし黒死病の研究から言えるのは、大勢の「子をなす世代」が特定の感染症で死亡した場合に、生き残った人たちの遺伝子の好ましい変化が次の世代に受け継がれていく可能性があるということです。しかし世間を騒がせた新型コロナウイルス感染症では、報じられている死亡率が黒死病に比べて遙かに小さく、しかも多くは高齢者で、老衰や誤嚥性肺炎が直接死因であったなど、状況はかなり異なっています。
したがってコロナ禍を経験した次の世代に、遺伝子がどう変わっているかは想像の域を出ませんが、少なくとも人類と微生物は共存共栄をなしてきたわけでなく、まさに死闘の歴史だったことがわかります。そして、これからも・・・。
【参考文献】
1) Klunk J, et al., Evolution of immune genes is associated with the Black
Death. Nature, Oct 19, 2022.
2) Zimmer C, How the 'Black Death' left its genetic mark on future generations.
New York Times, Oct 19, 2022.
(2022.12.5)
(8) 悪どいウイルスの正体
新型コロナウイルスの「悪者ぶり」が、かなり詳細にわかってきました。そこで、世界中のウイルスの研究者やグラフィクスの専門家たちが発表した最新情報を、以下の動画にまとめてみました。わりやすさを優先するため、あえて詳細を省略した部分もあり、逆に、まだよくわかっていない点は、私が想像を巡らして作成しました。
かつて地球上に存在した、どんな微生物よりもずる賢い性質をもったウイルスであるかが、おわかりいただけたものと思います。
ご自分が科学者になったつもりで、この悪魔のような存在を退治するにはどんな薬を創ればいいのか、想像を巡らしながら、ぜひもう一度、動画をご覧ください。
ただし、どんな薬も思わぬ部位に作用する可能性があり、ときに死に至るような重大な事態(副作用)が生じるかもしれません。何が起こるかは、大勢の人が使ってみて初めてわかることであり、事前の予測は不可能です。人間の体はあまりに複雑だからです。そのこともお忘れなく。
【参考文献】
1) Scudellari M, How the coronavirus infects our cells, Scientists are unpicking SARS-CoV-2's life cycle. Science, July 29, 2021.
Q9 オミクロン株BA.5に感染したら?
(2022.8.1)
A いまや誰もがBA.5に感染する可能性があります。症状は、咽の痛み、声がれ、発熱、頭痛、腰痛、頭のもやもやが中心です。これらの症状があれば、ほぼBA.5に感染したと考えられます。粗悪な検査キットも出回っていて、結果があてになりませんので、検査をしてもらえる医療機関がなければ、あえて受ける必要もないでしょう。
まずなすべきは、家族内感染の予防です。室内でも、家族全員がマスクをする、食事の時間を分ける、ベッドを離す、発病者に触れる際はプラスティック手袋をする、発病者の入浴を最後にする、などの対策で、感染をかなり防ぐことができます。ただし潜伏期間が短く、半日~3日です。したがって直ちに対策しなければなりません。5日間、症状がなかったら、家庭内感染はなかったと考えられます。
発熱が続く場合、アセトアミノフェンという成分のみを含む解熱剤が安心で、効果的です。1日3回服用します。すぐに解熱しないこともあり、3日ほど続けます。食事ができないようなときに飲んでも大丈夫な、唯一の薬でもあります。
発熱後のだるさは、活性酸素などフリーラジカルという過激物質が体内に溜まるためで、それらを消去する「抗酸化物質」が有効です。もっとも多く含まれているのは生の果物です。食欲がないときは、果物と水分をとってください。種類は問いません。ミキサーにかけるか、すりおろし器でジュース状にするとよいでしょう。とくにリンゴは皮に豊富な抗酸化物質が含まれていますので、よく洗ったあと皮のまま、すりおろします。
無症状であれば、5日間ほどで他人に感染させるリスクがなくなります。発熱などが続いた場合、(初日を0日として)7日目に隔離は解除です。ただし最後の3日間に発熱がないことが条件です。
当然、ここで述べた体温計、解熱剤、マスク、手袋、食料、果物などは、常備品としておくべきものです。解熱剤は余計な成分を含まない製品を購入してください。たとえば、タイレノール、ノーシンアセトアミノフェン錠、小児用バファリンCII、こどもパブロン座薬など。ネットでも買えます。
テレビでは、BA.5感染の恐怖を煽るような報道が続いています。しかし、他のオミクロン株に比べて、症状が重いというエビデンスはありません。感染者が桁違いに多くなっていることから(分母が大きく)、高熱などの症状が続く人が相対的に多くなっているだけです。症状が重かった場合でも、インフルエンザ程度です。入院が必要となる人は、きわめて少なく、たとえ微熱や咳が1~2週間続いても、慌てないことです。
ワクチンを打っていない人や高齢者が重症化するという専門家の説明も根拠がありません。ご高齢でワクチン未接種の方が感染しても、私が診療を担当している皆さまは、すぐ回復しお元気です。ワクチン接種と未接種で、発熱などの症状に差はありませんが、もっとも重かった人はワクチンを3回、あるいは4回接種していました。
(2021.9.27)
(2) 症状は1年後も残るのか?
「感染してしまうと、いつまでも重大な後遺症が・・・」と、まるで脅し文句のような言葉がテレビで語られています。だからワクチンを打ちなさい、というわけですが、本当にそうなのでしょうか?
中国から「新型コロナに感染し入院した患者の1年後」と題する論文が発表されました。1年後の健康状態が追跡できた1,272人の物語です。主なテーマは、1年後にちゃんと仕事に復帰できていたかを確認するという、きわめて実際的なものでした。
まず後遺症については、1年後までなんらかの症状が残っていると答えた人は約半数いて、もっとも多かったのは疲れる、筋力が落ちたという訴えでした。幸い「肺活量」などは問題なく、「白血球数」や「リンパ球数」などの検査値も健康者と比べてほとんど差のないものでした。
感染する前に、すでに退職していた人が多く、定職に就いていたのは479人(38%)でした。したがって、この人たちの「その後」ということになります。そのうち422人(88%)は完全に元の仕事に戻ることができていました。復職しなかったのは57人(12%)でしたが、体力が回復しなかったためとしていたのは18人(32%)だけで、そのほかは何らかの理由で解雇されたか、仕事が嫌になったからというのが理由でした。
この調査は、中国で行われたものであり、また検査で陽性となった人のうち酸素吸入などを必要として入院した患者が対象でした。したがって結果をそのまま日本に当てはめることはできませんが、テレビ報道の偏りを正して余りあるものが、あったのではないでしょうか。
【参考文献】
1) Huang LH, et al., 1-year outcomes in hospital survivors with COVID-19: a longitudinal cohort study. Lancet, Aug 28, 2021.
(2021.9.28)
(3) 学校再開で感染は広がるのか?
小学校や中学校を再開して、感染が広がるかどうかを調べた研究が、たくさんあります。
たとえば多数の小学校を4つのグループに分け、「リモート授業だけ」「通常の授業」「感染対策を徹底した」「感染対策をしない」をそれぞれ実践してもらい、感染状況を比べた、という研究があります。結果は、リモート学習と通常の授業で生徒の感染率に差はなく、「感染対策をしたかどうか」が決定的に重要であることがわかりました。
また、学校を閉鎖するよりも、再開したほうが、むしろ感染率が低かったことを示した研究もあります。学校生活で感染することはあっても、子供から大人に感染が大きく広がることはないという結論なのです。
どの研究でも、「学校の再開で、地域での感染が拡大することはない」というのが結論となっています。「マスク、手洗い、ソーシャルディスタンス」をきちんと実行させることで安全は保たれるので、通常の授業を再開すべきだというのです。
ソーシャルディスタンスは、子供たちが手を広げて互いに体が触れない程度としています。したがって教室内の生徒の人数は制限しなければならず、工夫が必要であることと、部活などの安全性は別途、検討を要することになります。
これらの研究は、いずれも欧米で行われたものです。住宅事情の異なる日本では、家庭内感染に対する配慮も合わせて必要となるでしょう。
【参考文献】
1) Willyard C, The science behind school reopenings. Nature, Jul 8, 2021.
2) Walsh S, et al., Do school closures and school reopenings affect community transmission of COVID-19? a systematic review of observational studies. BMJ Open, Jul 16, 2021.
3) Zimmerman KO, et al., Incidence and secondary transmission of SARS-CoV-2 infections in schools. Pediatrics, Apr, 2021.
(2022.9.5)
(4) 重症化しやすい人の体質とは? キラーT細胞の仕事
「ワクチンを打ったら血液中の抗体が増えた。だからワクチンは有効だ」との説明がテレビなどで繰り返しなされています。しかし、この説明は、間違っていることが証明されました。以下のアニメをご覧ください。
【参考文献】
1) Dolton G, et al., Emergence of immune escape at dominant SARS-CoV-2 killer T-cell epitope. Cell, Aug 4, 2022.
(2022.10.3)
(5) 感染後の隔離期間は、もっと短くしよう
誰もがオミクロンに感染するリスクがある今、もし自分がかかってしまったら、仕事はいつまで休めばいいのか、どれくらい隔離が必要なのか、改めて知識を整理しておく必要があります。
ただし科学的データをもって、この点を証明するのは簡単でありません。大勢の感染者から、サンプルを日ごとに採取し、ウイルスを分離して、実際に感染を起こすかどうかを実証する必要があるからです。本記事の最後に、日本発の研究も含めて関係する文献を列挙しましたが、そのレベルに達したデータはまだありません。
それでもなお、米国疾病予防管理センター(CDC)や英国国民保健サービス(NHS)を初め、いくつかの国の政府機関が、隔離期間に関する明確なメッセージを発表しています。どれも、ほぼ同じ内容ですので、概要を以下にまとめておきます。症状が出た日をゼロ日目として数えてください。無症状の場合は、検査で陽性となった日がゼロ日目です。
1)自分が検査で陽性になり、発熱などの症状がある場合;
6日目に隔離解除。ただし24時間以内に発熱がないこと。10日目までマスク着用
2)自分が検査で陽性になり、症状がない場合;
6日目に隔離解除。10日目までマスク着用
3)同居の家族が陽性になり、症状がある場合;
家族の症状が出てから5日目まで自分が無症状であれば、6日目に隔離解除
4)同居の家族が陽性になり、症状がない場合;
陽性が確認されてから3日間、家族も自分も無症状であれば、4日目に隔離解除
5)症状が出た人と濃厚接触していた場合;
接触後、3日間、自分が無症状であれば4日目に隔離解除
キーワードは「5日間」です。その根拠は、オミクロン株が流行の中心となった以降の経験から、「症状が出る前の1~2日間、および症状が出たあとの2~3日間に感染のほとんどが起こっている」ことがわかったからです。
注目すべきは、どの国の指針も、ワクチン接種を受けているかどうかは無関係だとしている点です。また隔離解除の条件として、検査で陰性になることを求めていません。なお3)~5)は、種々のデータに基づいて私がつけ加えたものです。
この指針は、実はインフルエンザにかかった人に対して指導されてきた、出勤や登校の禁止期間より短くなっています。
このような状況で感ずるのは、「新型コロナ」と「オミクロン」は、まったく別のウイルスだということです。新型コロナの流行はすでに終息しており、今はオミクロンという名の新らしいウイルス感染症が流行っていると考えると、諸々納得がいきます。オミクロンの致死率は、インフルエンザや新型コロナのそれより遥かに低いのです。
「コロナの特効薬とされてきた薬はどれも効果が証明できていない」、「ワクチンで感染を予防できないのは明らか」、「介護施設などで毎週行われてきたPCR検査は集団感染の予防にまったく役立たなかった」、「新規感染者数がテレビで毎日放送されるのはストレスでしかない」、・・・。
そろそろコロナの終息宣言をして、こんな大騒ぎは終わりにしてよいのではないでしょうか。
追伸: 今やコロナに関しては一億総評論家。「3.5パーセントの人々が、非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わる」。これは、斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(集英社新書)で紹介されていた米国の政治学者の言葉です。
【参考文献】
1) Massetti GM, et al., Summary of guidance for minimizing the impact of
COVID-19 on individual persons, communities, and health care systems -
United States, August 2022. CDC, Aug 11, 2022.
2) Torjesen I, COVID-19: peak of viral shedding is later with omicron variant,
Japanese data suggest. BMJ, Jan 13, 2022.
3) Takahashi K, et al., Duration of infectious virus shedding by SARS-CoV-2
omicron varinat-infected vaccinees. Emerging Infectious Diseases, May 2022.
4) Jefferson T, et al., Viral culture for COVID-19 infectious potential
assessment - a systematic review. Clin Infect Dis, Dec 3, 2020.
5) Finnis A, When is Covid contagious? how long you are infectious and
the incubation period of coronavirus explained. i, Jul 18, 2022.
6) LaFraniere, et al., Walensky, citing botched pandemic response, calls
for C.D.C. reorganization. New York Times, Aug 17, 2022.
7) Zimmer C, Why omicron might stick around. New York Times, Sep 22, 2022.
Q10 ワクチンを巡るデータのねつ造
A ファイザー社ワクチンが世界でもっとも多く使われています。効果が高く、副作用も少ないと説明されていますが、本当でしょうか?
有効性を示す唯一の根拠とされているのが、2020年12月31日に発表された1編の論文でした。そこで示された「有効率95パーセント」との情報が世界を駆け巡り、ワクチンを推進する人たちのバイブルとなっています。この論文を掲載した専門誌も、よほど自慢らしく、会員となっている私の手元にも、繰り返し「掲載のお知らせ」が届きます。
しかし、この論文には数々の疑惑があります。
疑惑その1:データの隠ぺい工作
もっとも重大な疑惑は、有効率95パーセントという数値そのもにあります。総人数が36,523人と多い点は評価できるのですが、高熱などあきらなか症状を呈した人だけにしかPCR検査が行われていなかった点です。
米国の政府機関FDAあてに会社から提出された大部の資料によれば、3,410人の疑い例があったにもかかわれず、PCR検査が行われていませんでした。これらを合算すると、有効率は95%でなく、わずか19%となってしまいます。
疑惑その2:重症化は増えている
次に、「ワクチンが重症化を防ぐ」と政治家や専門家が述べていますが、それもこの論文がもとになっています。掲載されているデータを、著作権に触れないよう形を変えて以下にまとめてみました。
このデータから、論文の執筆者は「接種したグループでは重症化した人が1名しかおらず、重症化を防いでいる」と書いています。
この記述はあきらかな間違いです。なぜなら、「重症化した人÷感染した人」という計算をすべきだからです。その結果は、最下段に示したようになりますが、接種した人のほうが、はるかに重症化しやすいことがわかります。もちろん、この数字は論文には記載されていません。
疑惑その3:2回必要のウソ
論文には、「1回目の接種をしたあとから、2回目直前までの3週間」における有効率が52.4%に過ぎなかったと記載されています。
ところが、この計算には「1回目の接種直後から7日以内に感染した人数」が意図的に加えられていました。この期間は、ワクチンの効果がまだ現れていないはずから、感染者を数えれば、ワクチン接種群とプラセボ群で同じくらいになるはずです。
このことに気づいたフランスのある研究者が、この人数を除外して計算しなおすと有効率は92.6%になる、という主旨の記事を最近、発表しました。執筆者らが報告したものより、本当はずっと良い値だったのです。
さて、このややこしい話はどう理解すればよいのでしょうか? なぜ執筆者らはわざと低い値を報告したのでしょうか?
もう、おわかりだと思います。「ワクチンは2回打たないと効果がない」という話にしたかったのです。そうでなければ、会社の売り上げが半分に・・・?
疑惑その4:消された協力者
ファイザー社と米国FDAのと間で交わされた文章「ブリーフィング記録」を入手することができました。それを見ていて気づいたことがあります。
論文には、1回目の接種を行ってからの112日間、「ワクチン接種群」と「プラセボ接種群」における、新規感染者数の推移を記録した折れ線グラフが提示されています。
一方、ブリーフィング記録には、そのグラフに加え、日を追うごとに対象者数が減っていく様子も示されていて、77日目には早々と半数を割っていることがわかりました。これが何を意味しているかといえば、慎重に進めるべき追跡調査の途中で、協力者がどんどん脱落し、いなくなっていたということです。
途中で脱落していく人が多ければ、グループ間に偏りが生じるなど、調査結果の信頼性を著しく損ねることになります。実際、ずさんな調査ほど脱落者が多いことは、歴史が示しています。「副作用がきつくて嫌になった」などは、脱落理由の定番として知られています。
今日現在、判明している疑惑は以上です。
この論文の掲載を決めた編集長エリック・J・ルービン氏(ハーバード大学非常勤教授)は、「全人類」の未来永劫にわたる健康被害(?)に対する責任を負ったことになりますが、どのように考えているのか、聞いてみたい気がします。
南スーダンに派遣された自衛隊を取材し、政府の隠ぺい体質を告発した、布施祐仁・三浦英之著『日報隠蔽』(集英社)という優れた報道ノンフィクションがあります。その帯に書かれていた言葉を最後に引用させていただきます。
「結局、すべてがウソなんじゃないか」
【参考文献】
1) Polack FP, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med, Dec 31, 2020.
2) Pharm XW, Correspondence to 'Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine.' N Engl J Med, Feb 17, 2021.
3) Doshi P, Pfeizer and Moderna's '95% effective' vaccines -- we need more details and the raw data. thebmjopinion, Jan 4, 2021.
4) Skowronski DM, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med, Apr 21, 2021.
5) Pfeizer and BioNTech, Vaccines and related biological products advisory committee meeting. FDA Briefing Document, Dec 10, 2020.
(2021.9.21)
(2) ファイザー社の新論文は意味不明
9月15日付けでファイザー社は重要な論文を発表しました。なぜ重要かと言えば、「ワクチン接種後6ヵ月間の効果と安全性」というタイトルだったからです。概要は以下のとおりです。
・1回接種の11日目から2回接種直前までの有効率は91.7%
・2回接種後7日目から2ヵ月以内の有効率は96.2%
・2回接種後2ヵ月目から4ヵ月未満の有効率は90.1%
・2回接種後4か月以上の有効率は83.7%
死亡は、ワクチン接種群が15人、プラセボ(生理食塩水)接種群が14人で、ワクチンを打ったほうが高めという結果でした(両群の総人数は、ほぼ同数)。
数字ばかり見ていると頭が痛くなってしまいますから、この論文の意味するところを考えてみます。
まず気になるのは、執筆者の過半数が製薬企業(ファイザー社とモデルナ社)の所属だったことです。これは普通、ありえないことで、当ホームページQ4「抗体カクテル」で述べたごとく重大問題なのです。
有効率について立派な数字が並んでいますが、論文のタイトルに「6ヵ月」と謳っておきながら、本文では「4ヵ月以上」としか書いてありません。公平であるべき2つのグループ(ワクチン群とプラセボ群)をどのように定めたのかも書いてありません。前項で紹介した論文と同様に、脱落例に関する記載もありません。もしかしたら、6ヵ月経たないうちに、誰もいなくなっていたのではないかと疑りたくなります。
「プラセボ群に割り当てられた人たちには、ワクチンを接種した」など意味不明の記述が多く、何回読み返しても理解できません。
学術論文では、冒頭に必ず「要約」があります。そこだけ読めば、結論がわかるようになっているのですが、「当社のワクチンには、6ヵ月の間に徐々に効果は低下するものの、感染を予防する高い効果と安全性が認められた」と書かれていました。
これらは、意図的にデータをわかりにくく粉飾し、一部の結果だけを強調するために、よく使われる手段です。
【参考文献】
1) Thomas SJ, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine through 6 months. N Engl J Med, Sep 15, 2021.
(2021.11.8)
(3) むしろ致命率が高まるという証拠
ファイザー社の新論文には、もう一つ重大な事実が記載されていました。これまで同社が公表した各資料にはいっさい記載されていなかったことです。ワクチン接種群の死者数が15人で、プラセボ接種群の死者数は14人だったのです。つまりワクチン接種を受けた人たちの方で「総死亡」が多くなっていたのですが、これは「健康で長生きしたいから」という、人々が医療にかける期待を根本的に裏切るものです。
【参考文献】
1) Thomas SJ, et al., Six month safety and efficact of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine. medRxiv, Jul 28, 2021.
(2021.10.4)
(4) 消された証人たち
ファイザー社が昨年12月31日に発表した「あの論文」の最後に、こんなことが書いてありました。「この調査研究は2年間にわたり続ける予定である。しかし、このワクチンが正式に認可されたあとは、倫理上の問題から、プラセボ(生理食塩水)注射群の観察をそのまま続けるのは許されないだろう」。
これは、製薬企業がスポンサーになって新製品の臨床試験を行う際、都合の良い結果が得られた時点で調査を打ちるための口上として、しばしば用いられてきたものです。「この新薬が有効であることがわかったいま、このままプラセボ投与を続けるは、倫理的に許されないと判断した」と。
しかし実際には、第三者がより長期にわたって臨床試験を行ったら、新薬とプラセボの差がなくなってしまった、という場合がほとんどなのです。中には、新薬がプラセボより劣っていることが暴露されたケースさえありました。医薬品の効果と副作用を長期にわたって追跡し検証するためには、プラセボ群に割り当てられた人々の健康状態と比べる必要があります。
もしプラセボ群がなかったとしたらどうでしょうか。かりに何年か経ったあと、新薬を使った群で、がんになった人が多くなっていたとします。しかし比べる相手がありませんから、「全員が年をとって、がんが増えただけさ」という言い訳を許してしまうことになります。
さて、問題はここからです。前項でファイザー社が発表した続報を紹介した際、そこに「プラセボ群に割り当てられた人たちには、ワクチンを接種した」など意味不明の記載があると述べました。その後、論文をもう一度読んでみて、その意味するところがわかりました。
これは、物言わぬ証言者たちを消し去ってしまうことが目的だったのです。
【参考文献】
1) Polack FP, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 caccine. N Engl J Med, Dec 31, 2020.
2) Thomas SJ, et al., Safety and efficacy of the BNT172b2 mRNA Covid-19 vaccine through 6 months. N Engl J Med, Sep 15, 2021.
(5) 年をとると免疫はつかなくなるのか?
「もう歳だから打つことにした」「いい年齢だから打つのやめた」「打ったら熱が出た!自分も捨てたもんじゃない」「あなたの歳では熱も出ないから解熱剤はいらないと医者に言われ、頭にきた」などなど、世間は訳のわからない会話で盛り上がっています。
やはり誰もが気になっていたのは、年をとると副作用も出ないのか、もしそうなら免疫もつかないのか、ということです。
その答えがやっとわかりました。米国でワクチン接種を2回受けた50人の血液を調べ「年齢別に中和抗体の量を比べた」という、有難い研究が行われたのです。使ったワクチンはファイザー社製で、「従来の新型コロナウイルス」と「ブラジル型変異ウイルス」のそれぞれに対する中和抗体を同時に調べたものです。
データは、「年齢が高い人ほど、若い世代に比べ極端に免疫がつきにくい」ことを示しています。研究対象となった50人には個人差もありますから、そのバラツキの範囲を楕円で表示しました (グラフは、著作権を侵害しないよう、発表データをもとに筆者が作図したもの)。
それにしても、かなりショッキングなグラフですから、気が弱い人の目に入らないよう、表示は止めてあります。ショックを受けても大丈夫な方だけ、点線の枠内にカーソルを合わせてご覧ください。
【参考文献】
1) Bates TA, et al., Age-dependent neutralization of SARS-CoV-2 and P.1 variant by vaccine immune serum samples. JAMA, Jul 21, 2021.
(6) ワクチンはどれくらいの間、効いているのか?
待望のデータが2021年7月31日に発表されました。ワクチンの効果がどれくらい続くのかを実証した、初めての報告です。中和抗体量ではなく、接種後の時間が経つにつれ、感染率がどれくらい悪化していくのかを実測したものです。
その方法が見事です。場所はイスラエル。早い時期から接種が行われていましたが、そのうち2021年の「2月に接種を受けた人」と「4月に接種を受けた人」に限定して、比べたものです。対象は2回接種を終えた50万人ほどです。この2つのグループの全員に対して、6月1日からの約2ヶ月間で、いっせいにPCR検査を実施しました。
その結果は明快でした。感染した人の割合は、「2月に接種を受けた人たち」が「4月に受けた人たち」に比べて2.0倍も高くなっていたのです。ワクチンの効果は、そもそも世間で言われているほど大きくありませんから(Q10、Q12参照)、接種して2ヶ月もすると効き目は、ほとんどなくなるということになります。
この調査が優れていたのは、2つのグループを設定する際、年齢、性別はもちろん、居住地や収入、さらには肥満度、高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病、自己免疫疾患などを徹底的に調べ上げ、偏りがないようにコンピュータで調整していたことです。そのため対象から外されてしまう人も少なくありませんでしたが、設定としてはほぼ完ぺきだったと言えるでしょう。
このデータから言えるのは、2ヵ月前に接種を終えた人たちは、効果がほとんど切れてしまっている、ということです。ただし前項で述べたとおり、あくまで50歳以下の人たちに限る話であり、それ以上の年齢層では最初から免疫はついていなかったでしょう。
【参考文献】
1) Mizrahi B, et al., Correlation of SARS-CoV-2 breakthrough infections to time-from-vaccine; preliminary study. medRxiv, Jul 31, 2021.
(2021.10.9)
(7) 「有効率」の本当の意味とは
新型コロナワクチンの「有効率は95パーセント」とされています。インフルエンザ・ワクチンでは、長い年月をかけた議論の結果、「有効率が59パーセント」であることが確定しました。それにしても、この有効率とは、いったい何を意味しているのでしょうか。
まず極端な例で考えてみましょう。もし「ワクチンを接種したグループで感染した人がゼロ」、「接種しなかったグループで数人いた」とすれば、(その人数にかかわらず)有効率は100パーセントとされてしまいます。もし、「両方のグループで感染した人の割合がまったく同じ」だったとすれば、打っても打たなくても違いがないわけですから、有効率はゼロ・パーセントです。
次の図は、「各グループが100人ずつ」の少人数の場合と、「それぞれ1,000人ずつ」の大勢だった場合の2つを例示したものです。有効率を計算すると、どちらも50パーセントになります。なぜなら、ワクチンを打ったグループで感染した人の割合が、ちょうど半分になっているからです。
ここで、ちょっと考えてみてください。2つの例題で、人数がこれだけ違っているにもかかわらず、有効率が同じというのは、変だと思いませんか。
実は、有効率を求める方法が、もうひとつあります。図の1つ目の例題で考えてみましょう。ワクチンを接種したのは100人で、感染したのは5人ですから、感染率は5パーセントです。一方、接種を受けなかった100人のうち感染したのは10人でから、感染率10パーセントです。
その差は5パーセント(ポイント)ですが、この値が意味するのは「100人にワクチンを接種すると、そのうち5パーセントの人は感染を免れる」ということです。「5人の感染を予防するには、100人にワクチンを打たなければならない」と、言い換えてもいいでしょう。これが、もうひとつの計算方法なのです。
同様に2つ目の例題では、差がわずか0.5パーセントですから、「1,000人もの人に接種しても、5人しか感染を防げない」ことが、わかります。
この計算法のほうが、ずっと明快だと思いませんか。ファイザー社が主張する「有効率95%」の元になったデータから、この方法で計算すると、有効率はわずか0.84パーセントになってしまいます(データに不正があるため実際はさらに低い)。人間だれしも、見栄えの良いほうを選ぶものです。世界中の人々が見事にだまされた、というお粗末なお話でした。
(2021.11.1)
【計算例】
ファイザー社ご自慢の「有効率95%」を実際に計算してみましょう。論文で提示された数字は、
ワクチンありで感染した人 8人
ワクチンなしで感染した人 162人
でした。これから、
8/162=0.049・・・が、ワクチンを打っても感染してしまうリスク
1-8/162=0.950・・・は、ワクチンで感染を予防できた割合
となり、100倍すれば、あの虚偽にまみれた有効率「95%」が得られます。
【参考文献】
1) Understanding absolute and relrative risk reduction. UWA Medical and Dental Library.
2) Olliaro P,et al., COVID-19 vaccine efficacy and effectiveness - the elephant (not) in the room. Lancet, Apr 20, 2021.
(2022.1.10)
(8) ワクチン治験を告発した女性
本項では、ここまで「医学専門誌に掲載された論文が真実を伝えているとは限らない」という実例を紹介してきました。英国のある専門誌は、製薬企業に媚びない学術記事を掲載することで知られていますが、2021年の暮れ、全人類の生命に関わるかもしれない告発文のような記事を掲載しました。
コロナ禍が始まったばかりの2020年夏、ファイザー社は第III相試験(発売前の最終臨床試験)を開始しました。153の組織が協力し44,000人のボランティアを集めるという世紀の一大治験がスタートしたのです。協力したのは、医療機関だけでなく、近ごろ増えてきている「治験請負い会社」でした。そんな会社のひとつベンタビア社は、業界でも知られた存在です。
治験コーディネーターのブルック・ジャクソンさんは、15年以上の経験があるベテランで、この会社に引き抜かれたばかりでした。すでに千人ほどのボランティが決まっていて、間もなく実際の接種が始まりました。しかし彼女は、仕事に着いてすぐ、治験のやり方に重大な問題がたくさんあることに気づきました。たとえば、接種を受けた大勢のボランティアたちが、健康チェックも受けず、誰もいない廊下でただ待たされていました。
副作用があれば、即日、外部の調整機関に報告する約束になっていましたが、それも放置されたままでした。接種に用いたあとの注射針も、ずさんな処理がなされていました。使用後の注射針については、安全に廃棄するための万国共通ルールがあります。私ごとになりますが、行政からの依頼を受け、医療関連施設の立ち入り調査をする役を担っていたことがあります。そのときの経験で言えば、使用済みの注射針を集めたケースの中を見るだけで、その施設全体の安全教育が適切に行われているか否かが、ひと目でわかります。この会社は、その扱いがずさんだったのです。
中でも極めつけは、ワクチンを収めたのケースに、接種を受けるグループに割り当てられたボランティアのID番号が記入されていたことです。これが、なぜ問題なのか・・・。
それは、リストと突き合せれば、誰にワクチンを接種し、誰にプラセボ(生理食塩水)を注射するのかが、わかってしまうからです。つまり、製薬企業にとって都合の良い結果が出るように、誰かがボランティアの名前を意図的に差し替えることができてしまうことを意味しています。治験は、誰に本物の薬を使い、誰にプラセボを投与するかを、本人にも、また医師など現場スタッフにも絶対に内緒にし、コンピュータだけが真実を知っているという状況で進行するのが絶対条件です。
これは、過去、多くの論文不正で常套手段として行われてきた行為であり、社会に対する重大な裏切り行為の元凶ともなってきました。
9月24日、彼女は、これらを同社の上司に伝えました。しかし上司は、「確かに問題だが、われわれにとって毎日が初めての経験だからね」と答えただけでした。翌25日、彼女は当局(FDA)に宛てて告発状を送りました。そして、その日の午後、彼女のもとには、会社からの解雇通知が届きました。
思い悩んだ末、彼女は、現場写真などあらゆる証拠を添えて、英国の医学専門誌に手紙を送ったのです。それを受けてジャーナリストが原稿にまとめたものが、ここで取り上げている論文です。
さすがは学術専門誌です。前後に会社を退職した2人の元同僚にインタビューし、彼女の証言の真偽を確認しています。報復を恐れる2人は、匿名を条件に「彼女の言っていることはすべて正しい」と答えました。さらに、「477人が新型コロナの症状を訴えていたにもかかわらず、PCR検査が行われなかった」との重大な証言をしました。
【参考文献】
1) Thacker PD, Covid-19: researcher blows the whistle on data integrity issues in Pfizer's vaccine trial. BMJ, Nov 2, 2021.
Q11 うわさのウソ、ホント?
A もともらしいウソの数々をまとめてみました。
(1) フェイクニュースの元締め
コロナが流行り始めたばかりのころ、「スーパー・スプレッダー」という言葉が世界的に話題になりました。スプレダーは「ばらまく人」という意味です。一人で大勢にウイルスを移してしまう人のことで、集団感染の原因を作っているとされます。本人に罪があるとは限らず、何か特異体質があるわけでもなく、たまたま最初のきっかけになっただけなのでしょう。
そんな人がスーパー・スプレッダーと呼ばれたのですが、いま、この言葉がまったく別の意味で使われ始めています。
ワクチンに反対するためのフェイクニュースがあとを絶ちませんが、世界中で流れている65パーセントの発信源が特定され、12人いることがわかりました。ブラックリスト入りしたこの人たちには、すでにニックネームもあり「ディスる12人」(Disinformation
Dozen)です。ハリウッド映画『オーシャンズ12』のパロディでしょうか。その頂点に君臨(?)しているのが、米国フロリダ州に住むマーコーラ博士なる人物です。
この人は、バリバリの「ワクチン反対主義者」で、それどころか現代医療のすべてを否定し、その陰で自然食品のブランドを立ち上げ大儲けしているのだそうです。本人は「細々とツイッターに投稿しているだけ」と釈明していますが、そのフェイクニュースは世界中の言語に翻訳され、全世界を駆け巡っています。もちろん日本も例外ではありません。
以前の本項で、「さまざまなサイトに載っているからといって真実とは限らない。元を正せば一人のいたずらだったり」と紹介しましたが、そのとおりだったのです。コロナワクチンは、(善悪は別にして)最新医学の話ですから、フェイクニュースを流すにも、ある程度の知識が必要です。もっともらしいウソが多く、単なる愉快犯の仕業と違うようだとは感じていましたが、犯人は博士の肩書をもつ人だったのです。
SNS上に溢れる、過激な言葉に彩られた話、荒唐無稽としかいいようのないニュースには決して振り回されないよう、改めてお願いします。フェイクニュースは、ワクチン問題を真剣に考える人たちの意思と善意を傷つけています。
【参考文献】
1) Frenkel S, The most influential spreader of coronavirus misinformation
online. New York Times, Jul 24, 2021.
2) Kavi A, How HIPAA law works and why people get it wrong. New York Times, Jul 24, 2021.
(2) 基礎疾患のウソ
「基礎疾患のある人ほど感染すると死亡リスクが高いので・・・」。これも最近、よく聞くようになった言葉のひとつです。
以前、全国の新聞に「コーラは風邪を予防する」という、海外ニュースが掲載されたことがあります。コーラがよく売れる夏は、かぜをひく人が少ないなからと説明されていたのですが、どうでしょうか。
正しくは、コーラが売れるのは暑い季節→暑いとウイルスも元気がなくなる→だからかぜをひく人も少ない、という関係があるだけです。つまり、コーラの売り上げとかぜが関係しているわけでなく、どちらも「暑い」という隠れた要因と因果関係にあるわけです。結局、コーラの宣伝に世界中が騙されたという話でした。
さて、基礎疾患の定義はよくわかりませんが(本来の意味から逸脱して使われているので)、何らかの体調不良を訴える人は65歳以上の半数、血圧の薬を飲んでいる人は40歳以上の2人に1人という統計もあります。
感染した場合の死亡リスクは基礎疾患の有無で左右されるわけでなく、「年齢」という要因と因果関係があるだけなのです。私自身、さまざまな病気のリスク因子をビッグデータで探る研究を行ってきました。しかし、いつも圧倒的な第一位が「年齢」となってしまい、論文を書くのに困っていました。
これは自然の摂理です。基礎疾患という言葉に怯えないようにしましょう。
(3) メッセンジャーRNAは永久に残る?
ワクチンの主成分である「改造mRNA」が永久に体内に残るという噂が広がっているようです。私が投稿した動画から誤解が広がったのかもしれませんが、正しくは、いつまで残るかは不明ということです。
わかっているのは、原理を発明した2人の研究者が行った動物実験で、mRNAを改造したところ、分解されるまでの時間が1日だけ長くなった、ということだけです。彼らが実験室でつくった改造mRNAと、ファイザー社やモデルナ社が製品化したものとは別物で、かつ非公開であること、それにヒトでの実験データがまったくないというのが実情です。
【参考文献】
1) Vasileiou E, et al., Interim findings from first-dose mass COVID-19 vaccination roll-out and COVID-19 hospital admissions in Scotland: a national prospective cohort study. Lancet, Apr 23,2011.
2) Makowski M, et al., Antibody persistence through 6 months after the second dose of mRNA-1273 vaccine for Covid-19. N Engl J Med, Apr 6, 2021.
3) Bryant A, et al., Ivermectin for preventive and treatment of COVID-19 infection: a systemic review, meta-analysis, and trial sequential analysis to inform clinical guidelines. Am J Ther, not accepted, 2021.
(4) 改造mRNAは遺伝子に組込まれるか
ヒトの遺伝子(正確にはゲノム)は、細胞内で「核膜」と呼ばれる袋に包まれ、大切に保存されています。その本体であるDNAは、単に遺伝情報を子孫に伝えるだけでなく、日々の生命活動を支えるため、刻々と活躍しています。
たとえば、血液中のぶどう糖は大切なエネルギー源ですが、それが不足してくると、まず信号がゲノムに伝わります。すると、「ぶどう糖を細胞内に取り込むたんぱく質」を作るコードがゲノムからコピーされ、メッセンジャーRNAとなります。これは直ちに核膜を通り抜け、細胞内の「たんぱく合成工場」に運ばれていきます。
合成が無制限に続いてしまうのは困りますから、メッセンジャーRNAは「決して核の中にはもどらず」、「短時間で分解されてしまう」という運命をたどります。核膜は、mRNAがゲノムの近くに戻っていかないよう、一方通行の整理を行っているからです。一方、核の中では、ゲノムDNA→mRNA→DNAへ逆変換→別の場所に組込む、という出来事がまれに起こっています。理由はわかっていませんが、発がんなど病気の原因になっているとも言われています。
これらの事実から、以前の当ホームページで「細胞内でmRNAがDNAへ逆変換されることはなく、組込みも起こらない」と書きました。
しかし、その後、スウェーデンの科学者が行ったある実験から、この話は全面的に書き改めなればならないことになりました。実験は、ファイザー社製ワクチンをがんの培養細胞に加えたところ、あってはならない出来事、つまり「改造メッセンジャーRNAがDNAに逆変換される」ことが確認されたのです。「生物の大原則」を覆したこの実験結果は、しかし、わかってみれば十分に納得できるものでした。
これを理解するポイントは2つあります。ひとつは、細胞が分裂する際、DNAも2つにわかれますが、そのとき核膜が消えDNAが露出するのです。実験に使ったのは、がん細胞でしたから、当然、分裂も盛んです。もうひとつのポイントは、核内でしか働かないはずの特殊な「RNA→DNA逆変換酵素」が、細胞分裂の際、核外にしみ出てしまうということです。
細胞分裂は(脳神経系を除く)すべての細胞で絶えず起こっていますから、この出来事は誰にでも、いつでも起こることになります。とくに次世代につながる精子にも起こりうるのです(卵子は細胞分裂しない)。
ただし、逆変換されたDNAがヒトのゲノムに組み込まれるかどうかは、まだわかっていません。人類のゲノムがワクチンによって侵されるかどうかという最重要課題ですから、研究の進展を注視していく必要があります。
【参考文献】
1) Zhang L, et al., Reverse-transcribed SARS-CoV-2 RNA can integrate into the genome of cultured human cells and can be expressed in patient-derived tissues. PNAS 118, 21, 2021.
2) Sit THC, et al., Infection on dogs with SARS-CoV-2. Nature, Oct 20, 2020.
3) Cullen BR, Nuclear RNA expot. J Cell Sci 116: 587-597, 2003.
4) Vargas DY, et al., Mechanism of mRNA transport in the nucleus. PNAS 102: 17008-17013, 2005.
5) Nirenberg E, No, really, mRNA vaccines are not going to affect your DNA. on line, Nov 25, 2020.
6) Zhang L,et al., SARS-CoV-2 RNA reverse-transcribed and integrated into the human genome. bioRxiv, Dec 13, 2020
7) Sousa A, et al., mRNA, nanolipid particles and PEG: a triad never used in clinical vaccines is going to be tested on hundreds of people. Biomed J Sci Tech Res, Feb 22, 2021.
8) Alden M et al., Intracellular reverse transcription of Pfizer BionNTech COVID-19 mRNA vaccine BNT162b2 in vitro in human liver cell line. Curr Issues Mol Biol, Feb 25, 2022.
9) Mita P, et al., LINE-1 protein localization and functional dynamics during the cell cycle. eLIFE, Jan 8, 2018.
(2022.1.17)
(5) トゲトゲ蛋白はDNAを破壊する?
世界の多くのメディアが取り上げたニュースの中には、真偽の判断ができないものもあります。たとえば「トゲトゲ蛋白がDNAをハイジャック」というタイトルの記事があり、出処はウイルスの専門誌でした。
試験管内で培養した細胞に、トゲトゲ蛋白の遺伝子を導入して作らせ、細胞のDNAに生じた変化を調べた、という研究です。結論は、免疫の仕組みに関わるDNAの重要な一部分が破壊された、というショッキングなものでした。
この論文を読んだ私の感想は、「実験方法も書き方も、ずさん」というものでした。この種の実験を行うには、他の物質や別の遺伝子でどうなるのか、繰り返し行っても同じ結果になるのか、結果に影響を与えた条件は他になかったのか、などなど膨大な実験を繰り返す必要があります。この論文では、そのような記載がほとんどなかったのです。
またコロナワクチンについて「トゲトゲ蛋白の全体を作らせる現行のワクチンは危険だが、一部だけに限定した(不活化ワクチンのような)ものにすれば安全」と、論文の最後に重要なことを書いているのですが、そのような実験は行われていませんでした。
この論文が掲載された3日後、同じ専門誌に「この論文は疑わしい」との記事が投稿されました。わずか10行の記事でしたが、まさに私の懸念を指摘したものでした。
不思議なのは、このようにずさんな論文が、なぜ審査をパスしてしまったのかです。専門誌に論文の原稿が投稿されると、編集長は複数の専門家に審査を依頼します。その結果は「少し文章を直せば掲載可」「追加の実験が必要」などから、「無条件に却下」までさまざまです。もし私がこの論文の審査を依頼されていたとすれば、無条件却下の判定をくだしていたと思います。
この論文の結論が正しいのかどうかはわかりません。少なくとも正しいことの証明がなされていない「もっともらしい話題」がメディアで報じられてしまうと、世の中はますます混乱してしまいます。当ホームページでも、いっそう気をつけて情報の収集に当たる必要があることを痛感した話題でした。
【参考文献】
1) Jiang H, et al., SARS-CoV-2 spike impairs DNA damage repair and inhibits V(D)J recombination in vitro. Viruses, Oct 13, 2021.
2) Freed EO, et al., Expression of Concern: Jiang, H.; Mei, Y.-F. SARS-CoV-2 spike impairs DNA damage repair and inhibits V(D)J recombination in vitro. Viruses 13, 2056, Dec 22, 2021.
Q12 ワクチンは効いていない
A 英国は、ワクチン接種が順調に進んでいる国として知られています。次のグラフは、英国における「新規感染者数の推移(青)」と「ワクチン接種率」との関係を示したものです。ワクチン接種のグラフは、2020年12月1日~2021年7月18日までの間に1回受けた人をピンクで、2回受けた人をグレイでそれぞれで表しています。どちらも全国民に対する割合(%)です。
グラフから、1月(網掛け部分)に新規感染者数が激減したことがよくわかります。英国でワクチン接種が始まったのは2020年12月13日でしたが、効果が出るとすれば2~4週後のはずです。上の図は、接種のグラフを2週間だけ右にずらしたときの関係もわかるように工夫してあります。
着目すべきは、2021年1月5日に「ロックダウン」が始まっていたことです。外出が禁止され、大学などの学校も閉鎖されるなど、日本とは比べものにならないほど厳しい行動制限でした。
これらのデータは2つの事実を示しています。ひとつは、ワクチン接種がわずか1~2パーセントしか実施されていなかった時期に、新規感染者数が激減していたこと、もうひとつは、その時期、2回接種を受けた人がほとんどいなかったことです。
つまり、もしこれがワクチンのお陰と言うのであれば、2つの新事実が判明したことになります。
① 国民の1~2パーセントが接種すれば、集団免疫ができ感染が終息する
② ワクチン接種は1回で十分
これはあきらかな矛盾です。
【参考文献】
1) Vasileiou E, et al., Interim findings from first-dose mass COVID-19 vaccination roll-out and COVID-19 hospital admissions in Scotland: a national prospective cohort study. Lancet, Apr 23, 2021.
2) Coronavirus (COVID-19) in the UK, GOV.UK, May 2, 2021.
3) Holder J, Tracking coronavirus vaccinations around the world. New York Times, May 11, 2021.
(2021.12.6)
(2) ワクチン接種が進んだ国ほど感染者が多い
テレビ報道は、「感染を抑え込むにはワクチンしかない」の大合唱です。このことを証明したデータは、ただのひとつも存在しませんので、専門家と称する人たちは単なる思い込みで発言していることになります。
この思い込みがあきらかな間違いであることを示す、明快なデータが発表されました。まず次のグラフを、説明なしでじっくりご覧ください。
これは米国とカナダの研究者が、2021年9月30日に発表した論文で示されたものです。データは、グラフに示したとおり2021年の初秋、世界68の国で記録されたものです。「ワクチン接種率が高い国」ほど、専門家たちの思い込みとは逆に「新規感染者数が多くなっている」ことを示しています(図は、著作権を侵害しないよう、同論文の付録資料としてネット上に公開された原データをもとに私が作図したもの)。
これとは別に、もう一工夫を凝らした調査が、米国の2,947市町村を対象に行われました。「調査前の1週間」と「調査期間1週間」の新規感染者数をそれぞれ調べ、その差を縦軸にとって分析したのです。このような処理を行うことで、ワクチン接種で新規感染者数が増えたか減ったかが、より明確になります。
グラフは省略しますが、結果は上の図と同じになり、ワクチン接種率と新規感染者数の増減は完全に無関係であることが示されました。
【参考文献】
1) Subramanian SV, et al., Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States. Eur J Epidemiol, Sep 30, 2021.
(2021.9.10)
(3) 致命率の計算はほとんど不可能
致命率を求めるには、母数が必要です。つまり割り算をするときの分母ですが、「致命率」の場合は「新規感染者数」です。問題はその値が正しいかどうかです。
PCRは当初、制約が厳しく、なかなか受けることができませんでしたが、最近は状況が大きく変わり、比較的に自由に受けられるようになりました。次のグラフをご覧ください。上段は国内でPCRを日々受けた人の数、下段は新規感染者数です。
上下2つのグラフを見て気づくのは、ほぼ両者がいっしょに増減していることです。コロナ禍の真っ最中なのですから、PCRの実施件数も一定の割合で徐々に増えてよさそうなものですが、そうなっていないのは、なぜなのでしょうか。
このグラフからわかるのは、保健所の判断や人々の心理状態など人為的な要因によって、分母がよって大きく変わってしまうことを示しています。米国で行われた調査では、実際の感染者数は、公表されている値の10倍から100倍くらい多いとも指摘されています。
だとすれば、実際の致命率はもっと遙かに小さく、かつ背景の異なる外国と比べることはできず、以前と現在の比較も意味がないことになります。大切なのは、意図的に歪められた報道に振り回されないことでしょう。
【参考文献】
1) Johns Hopkins University and Medicine, Coronavirus Resource Center, Sep 7, 2021.
2) Schwalbe N, et al., We could be vastly overestimating the death rate for COVID-19. Here's why. World Economic Forum, Apr 4, 2020.
(2021.11.22)
(4) 接種をしても、しなくてもウイルス量は同じ
もしワクチンが本当に有効なら、どんな効果を期待しますか? 感染を予防したい、万一感染しても重症にはなりたくない、あるいは他人に移さないようにしたい、などなどあるでしょう。高齢者の医療・介護に従事している私の同僚たちは、「自分のせいでお年寄りが感染してしまうのが怖い」と口々に語っています。
果たしてワクチンはそんな期待に答えているのか、きわめて直接的な方法で調べたデータが発表されました。ワクチンを接種した人と、しなかった人がそれぞれ感染してしまったとき、体内のウイルス量にどれくらいの違いがあるのかを、ずばり数えてみたというものです。
ワクチンを接種しないで感染した人が、もし体内でウイルスがどんどん増えてしまうものなら、自分自身が困ったことになるだけでなく、周囲にも迷惑をかけてしまうことになります。
対象者は、米国カリフォルニア州の2つの町(A地区とB地区)に暮らす人たちで、A地区で369人が、またB地区は500人がそれぞれ協力しました。調査期間は2021年6月中旬からの約2ヵ月半で、全員が唾液によるPCR検査を受けました。「接種ありグループ」は2回接種して2週以上すぎて感染した人たちです。打っていたのはファイザー社かモデル社のワクチンでした。「接種なしグループ」は接種せずに同じころ感染した人たちです。
陽性が確認された人には、改めて鼻腔からサンプルを採取してPCR検査を行い、コピー回数(当ホームページQ17参照;Ct値のこと)を調べました。サンプル中にいるか、いないかわからない、いたとしても超微量なウイルスを検出するのは大変す。PCR検査は、サンプル中のウイルスを2倍、4倍、8倍、16倍、……と繰り返しコピーしていき、一定量に達した時点で判定するという方法です。
もしサンプル中に最初から大量のウイルスがいれば、コピー回数が少なくとも、検出可能な量に達します。つまりコピー回数は、サンプル中にいたウイルスの量に逆比例していることになります。そのコピー回数を比べた結果が、次のグラフです。
コピー回数は、1回違うだけでウイルス量に2倍の差がありますから、わずかな差も重要な意味を持ちます。グラフでは、A地区で接種なしグループの値がわずかに大きく(ウイルス量が少ない)、B地区で逆になっていますから、両グループの差はなかったと判断できることになります。また症状があった人となかった人でも差はなく、年齢による違いもありませんでした。ちなみに検出されたウイルスは、ほとんどがデルタ株でした。
この項を書いているとき、私あてに1通のメールが届きました。「自分の子供になんとしてもワクチンを打たせたくないが、もし打っても打たなくても体内のウイルス量に違いがないなら、接種の無意味さを主張できるはず。そんなデータがもしあれば…」との内容でした。本項で紹介した論文に偶然、出会うまで、恥ずかしながら私には思いもよらぬ着想でした。
ワクチン接種の無意味さを見事に証明した、この研究者たちはもちろんのこと、その重要性にとっくに気づいておられた読者の方にも、心からの賛辞を送りたいと思います。
【参考文献】
1) Acharya CB, et al., No significant difference in viral load between vaccinated and unvaccinated, asymptomatic and symptomatic groups infected with SARS-CoV-2 delta variant. medRxiv, Sep 29, 2021.
(2022.2.7)
(5) 接種を繰り返し受けるとどうなるか
まず、次のグラフをご覧ください。ある米国の集団で、2021年12月10日~2022年1月1日の間に記録された、「ワクチン接種の有無や回数」と「新規感染者数」との関係を表わしたものです。
このグラフには、いくつか着目すべき点があります。ひとつは、オミクロン株に注目すると、「未接種の人」より「2回接種した人」のほうが感染する割合が高くなっている点です。2つ目は、3回接種すると感染率が小さくなるように見えていますが、実は、接種後1ヶ月までしか調べていません。つまり2ヵ月以上経ったときにどうなるか、まったくわからないのです。
次のグラフは、英国のスコットランドにおいて、同じ目的で行われた調査データを私がグラフにしたものです。調査期間は2022年1月8日~1月14日までで、米国の調査(上のグラフ)の1週間後ということになります。デルタ株とオミクロン株にわけてはいませんが、時期的にほぼすべてがオミクロン株と考えてよいでしょう。
やはり「未接種の人」に比べて「2回接種した人」のほうで感染率が圧倒的に高くなっています。さらに不思議なのは、「3回接種した人」も「未接種の人」より感染率が高くなっている点です。
このデータを発表したスコットランド当局は、「比べた相手は性質の異なる集団(ワクチンを打った人と打たなかった人)であり、本来、比べてはいけないものだ。だから、このデータから間違った(ワクチンは効いていないという)判断をしないように!」と、躍起になって説明しています。話の辻褄が合っていないことにお気づきでしょうか。この点についての考察はQ7(9)で行っています。
【参考文献】
1) Accorsi EK, et al., Association between 3 doses of mRNA COVID-19 vaccine and symptomatic infection caused by the SARS-CoV-2 omicron and delta variants. JAMA, Jan 21, 2022.
2) Public Health Scotland COVID-19 and Winter Statistical Report, as at 17 January 2022, Public Health Scotland, Jan 19, 2022.
3) Ramsay M, Transparency and data - UKHSA's vaccines report. UK Health Security Agency, Nov 2, 2021.
4) Spitzer A, et al., Association of a third dose of BNT162b2 vaccine with incidence of SARS-CoV-2 infection among health care workers in Israel. JAMA, Jan 10, 2022.
(2021.9.29)
(6) 接種済みの施設で集団感染
日本では、集団感染があると、施設名などは大々的に報じられても、詳細が伏せられてしまうため国民に状況が伝わりません。そのため、貴重な経験を次に生かすことができないまま、今日に至っています。
フランスから、貴重なデータが学術論文として公開されました。ある高齢者施設でワクチンの集団接種が行われ、しばらくて新型コロナの集団感染が起こったという報告です。
入居者と職員を合わせて176人の施設で、計106人が接種を受け、70人が未接種でした。半月後ほどして、ひとりの入居者のもとを面会に訪れた家族が感染者でした。その入居者は5日後に発熱しました。訪問者が感染していたことが施設に知らされたのは、その2日後でした。
その後、感染は5日くらいの間隔をおいて次々に施設内に広がっていきました。状況は、以下のようでした。
ワクチン接種あり(106人)、そのうち感染者19人(約18%)
ワクチン接種なし( 70人)、そのうち感染者10人(約14%)
接種を受けたほうの人たちのほうで、感染する割合が高かったのです。ワクチンの効果が(もしあるのだとすれば)もっとも高まっていたはずの時期での集団発生だったのです。重症になった人もかなりいて、ワクチンは「感染予防効果がなく」、「重症化を予防する効果もない」ことがあきらかにされた出来事でした。
日本国内では、ワクチンの効果を否定するようなニュースは、いっさい報道されないため、貴重な情報となりました。
【参考文献】
1) Burugorri-Pierre C, et al., Investigation of an outbreak of COVID-19 in a French nursing home with most redidents vaccinated. JAMA, Sep 13, 2021.
(2021.10.11)
(7) ワクチンパスポートにエビデンスなし
米国での感染症対策の元締めCDCは、同国民に対して次のような呼びかけを行っています。
「CDCが発行する接種証明書は、2回目、3回目を受ける際に必要となるので、大切に保存しておくこと。CDCでは記録を保存していないため、紛失した場合は、州ごとに設置されているワクチン担当部署に問い合わせること。なお、偽の証明書を買ったり、用紙を偽造したりしないこと。」
この文面から、いわゆる「ワクチンパスポート」としての使用が、あきらかに想定されていることがわかります。世界各国が、その方針に一気に乗ってしまったのです。
米国が前のめりになる一方、英国では冷静な研究が行われています。ある研究では、16,000人を対象に「国家としてワクチンパスポートが導入されることになったら、あなたはどうしますか?」と問うアンケート調査が行われました。
結果は、「それなら、ワクチン接種は受けないことにする」という人がむしろ増えてしまう、というものでした。
また同国のスコットランド地方では、サッカー観戦やレストランで、ワクチンパスポートの提示を求めないことにした、と報じられています。取材した記者は、科学的根拠がなく、予算の無駄遣いであり、バカバカしい茶番としか言いようがない。人間の尊厳を冒すもの、とまで言い切っています。
ワクチンの効果は、高齢者ではほとんど期待できず、若い世代でもせいぜい2ヵ月で消えてしまいます。それどころか、ワクチン接種が変異ウイルスの発生を促してしまっていることが、当ホームページで紹介した数々のエビデンスで示されています。英国の記者が書いたレポートが光ります。
【参考文献】
1) Watson PJ, Scottish venues rebel against vaccine passport scheme. SUMMITNEWS, Oct 5, 2021.
2) Getting your CDC COVID-19 vaccination record card. CDC, Oct 5, 2021.
3) Figueiredo de A, et al., The potential impact of vaccine passports on inclination to accept COVID-19 vaccinations in the United Kingdom: evidence from a large cross-sctional survey and modeling study. EClinicalMedicine, in press.
(2021.11.1)
(8) 11歳以下の接種を考える
ファイザー社は、新型コロナワクチンを5~11歳に打つことの効果と安全性を確認した、としてアメリカ食品医薬品局(FDA)に認可を申請したと報じられました。その発表は、バイデン大統領が「従業員100人以上の企業ではワクチン接種を義務化する」と発表した日でした。子供への接種を懸念する人は多いと思いますので、米国のメディアで報じられた情報を、まとめておくことにします。
米国の統計では、18歳以下の590万人がコロナに感染し、そのうち5~11歳の死亡が125例とされています。日本では、11歳以下の死亡例はありません(2021年10月末現在)。
治験は2,268人の子供を対象にして、その2/3に2回の接種が行われ、また1/3には生理食塩がプラセボとして使用されました。
しかし、この発表は問題だらけです。まず人数があまりに少ないことが気になります。すでに当ホームページでも紹介したように、子供では接種後に「心筋炎」が多発しており、最新の米国の統計では、10歳代の5,000人に1人の割合とされています。したがって、治験対象が2,000人程度だったとすれば、副作用の検証はできていなかったことになります。
最大の欠点は、もっともらしく有効率が報じられてはいますが、あまりに調査期間が短く(詳細不明)、本当に感染が予防できたのか、あるいは重症化を減らすことができたのかが、わからないことです。申請で強調されていたのは、「中和抗体が上がった」ということだけでした。
米国FDAは2021年10月30日、これを承認しました。ファイザー社の重役が「ハロウィーンまでには認可がおりるだろう」とメディアに語っていましたが、そのとおりになったのです。FDAと製薬業界との間には癒着があると、昔からささやかれていました。また、その背後には、トランプ、バイデンと続く政治家たちの思惑が絡んでいます。「俺の業績だ!」と。そして「アメリカが決めたのだから」と、思慮のない判断が日本政府でも、またなされていくのでしょう。
同国で、子をもつ親に対して行われた世論調査では、26%が「認可がおりたらすぐに打たせる」、40%が「様子をみたい」、そして25%が「絶対に打たせない」と答えていました。
【参考文献】
1) LaFraniere S, et al., Pfizer asks F.D.A. to authotize its Covid-19 vaccine for children 5 to 11. New York Times, Oct 12, 2021.
2) LaFraniere S, et al., Pfizer and BioNTech submit data backing vaccine for children 5 to 11. New York Times, Oct 26, 2021.
(2022.9.12)
(9) オミクロンに中和抗体は無力
従来のワクチンがオミクロン株に有効かどうかを調べる研究が、米国で行なわれました。健康な男女27名に協力を求め、ワクチン3回接種後にできた中和抗体を血液から採取。これを従来株とオミクロン株BA.1~BA.5の各ウイルスに加え、増殖を抑えたかどうかを調べたものです。次のグラフをご覧ください。
横軸の左端「最初の株」は、2019年の末に中国武漢市で最初に検出された新型コロナウイルスのことです。ファイザー社とモデルナ社のワクチンは、この株に合わせてメッセンジャーRNAを合成し、かつヒトの血液中に出現する中和抗体量がもっとも多くなるよう調整したものでしたから、左端のグラフが高くなるのは当然です。
これに対して、オミクロン変異株、とくに2022年に大流行しているBA.5(BA.4も性状が似ているため一緒にしてある)に対しては、ウイルスを抑える効果が極端に弱く、「最初の株」の20分の1以下しかないことがわかります。
このデータは、試験管内での実験結果を示したものに過ぎません。当ホームページ2022.9.5付の記事では、「抗体は予防効果を示す指標にならない」とも報告しました。
一方、専門家と称する人たちは「抗体こそワクチン効果を示すもの」と主張して譲りません。百歩譲ってその主張を認めるとしましょう。ではなぜ、ワクチンによって生じた抗体がオミクロン株に効いていないにもかかわらず、今なお接種を勧めているのでしょうか。
「抗体は予防効果を表わす指標ではない」、「オミクロン株に対しては、その抗体さえ効いていない」という2つの重要な事実が正しく理解されていないようです。
【参考文献】
1) Hachmann NP, et al., Neutralization escape by SARS-CoV-2 omicron subvariants BA.2.12.1, BA.4, and BA.5. N Engl J Med, Jul 7, 2022.
(2022.9.19)
(10) オミクロン用のワクチンは大丈夫?
2022年6月の下旬、「この秋に向けてコロナワクチンにオミクロン株の成分を加えるかどうかの公聴会」が、米国の食品医薬品局(FDA)で開催されました。公聴会では、モデルナ社とファイザー社が試作した新らしいワクチンの試験データが公開され、それに基づいて議論が行われました。
翌日、WHO、CDC、FDA、そしてモデルナ、ファイザー、ノババックス各社の代表による会議が招集され、従来のワクチンにオミクロン株の成分を加えることが正式決定されました。製造に当たるメーカーは表向き公募とされ、国が買い上げる条件として、従来のワクチンの成分を変えないこと、オミクロン変異株BA.4とBA.5のトゲトゲ蛋白成分を加えること、そして製造をこの秋に間に合わせることの3点が提示されたのでした。
ところが、この会議では、21名の委員のうち、賛成は19人で、2人の委員が反対票を投じていました。反対した1人は、公聴会で報告されたデータはBA.1の成分を加えただけのものであり、BA.5に置き換わってしまった現在、ナンセンスだとの意見でした。BA.1の成分だけを加えた試作品が従来のワクチンに比べ有効なのか、データを出すべきだとも主張しましたが、モデルナ社とファイザー社の担当者は「BA.4とBA.5に対する中和抗体もできる・・・」と口頭で繰り返すだけでした。
もうひとつの反対意見は、新型コロナウイルスは、どんどん変異を遂げており、新しいワクチンができた頃には、流行遅れになっているのではないか、というものでした。これから必要になるのは、ウイルスの変異を後追いするのでなく、万能のワクチンを開発するなど発想を変えた取り組みだ、というもっともな主張なのです。
結局、反対派の2人が述べた意見は無視され、いま各メーカーは、当然のごとくBA.4とBA.5の成分を加えたワクチンを開発中で、まもなく米国で認可される見込みです。
この原稿を書き始めた2022年9月12日、日本では「厚生労働省の専門部会が、オミクロン株に対応した新しいワクチンを承認」というニュースが流れました。もちろんBA.1にしか対応していないワクチンです。米国が使用を見合わせた大量の流行遅れ在庫品ということになります。
現在、感染した多くの人は重症化することなく、何もしなくても回復しています。一方、接種後10日~2ヵ月後に生ずるワクチンの副作用には、重いものが多く、その治療に私も日々翻弄され続けています。また9月12日付け当ホームページ掲載のグラフからも明らかなように、変異株がワクチンに抗して発生してきたのは自明です。ワクチン接種が続く限り、この懸念も払拭されないことになります。
2価って何?
インフルエンザ・ワクチンは、A型とB型それぞれ2つずつ、合わせて4種類のウイルスたんぱく質(抗原)が含まれていて「4価」と呼ばれる。「価」とは抗原の数のこと。
なぜ対象が従来ワクチンを2回以上接種した人なの?
臨床試験が「従来のワクチンを2回以上接種した人」だけにしか実施できなかったから、というのが表向きの理由。まだ1回も打っていない人は、まず従来ワクチンを2回受けなさい、ということ。なお、これまで日本政府は8億8千万回分ものワクチンの購入契約をしているという報道もあった。かりに全国民が4回ずつ打ったとしても半分は余っている計算になる・・・
モデルナ社とファイザー社の違いは?
前者は18歳以上、後者は12歳以上が対象。理由は、臨床試験を行った対象が、たまたまそうだったから。どちらも最後の接種から2ヵ月以上(なぜか日本では5ヵ月以上)、間をあけることとしている。両者に違いはない。だから両社で特許を巡る紛争が起きている。米国の識者は、「チョコレートケーキを想像してみて。砂糖、バター、薄力粉などの材料はどれも同じ。でもチョコの量で味がちょっと違うでしょ。違いはその程度!」と解説している。
抗体が上がるらしいけど?
抗体の値が予防効果を示すものでないことは、2022年9月5日の当ホームページで報告した通り。
【参考文献】
1) Rubin R, COVID-19 boosters this fall to include omicron antigen, but questions remain about its value. JAMA, Jul 8, 2022.
2) Gross J, U.K arrptoves covid booster vaccine that targets two variants. New York Times, Aug 15, 2022.
3) Blum D, What to know about the new booster shots. New York Times, Sep 2, 2022.
Q13 なぜ医師はワクチンについて正しい知識を持てないのか?
A 冒頭で紹介したyoutubeで、多かった感想のひとつが、これでした。以下、その理由を箇条書きで説明します。この考察は、私が30年ほどの歳月をかけて集めた国内外の確かな資料、および自身の体験に基づくものです。
1. 医師は、医学部を卒業したあと附属病院で研鑽を積む。しかし、そこは製薬企業からの莫大な寄付金が集まる場所であり、若手の指導に当たる教授、準教授、医局長などの肩書を持つ人たちは、常に製薬企業に忖度せざるをえない状況となっている。
2. そこで指導を受けた若い医師たちは、製薬企業からもたらされる情報で洗脳を受けた状態で市中病院に就職し、あるいは自身のクリニックを開設し、同じ発想で医療を実践していくことになる。
3. 市中病院やクリニックでは、MRと呼ばれる製薬企業の営業マンから新薬の情報や論文のコピーをもらい、勉強したように気にさせられてしまう。病院内で開催される新薬についての勉強会で、製薬企業のMRが講師を務めることもしばしば。
4. ほとんどの医師は、医師免許のほかに専門医の資格を取得していくが、その資格を継続するには、定期的に開催される学会主催の講演会などに参加しなければならない。講演会では大学教授など有名医師が演壇に立つが、彼らは製薬企業から高額な謝礼と旅費を受け取り、豪華なホテルでの宿泊が約束されている。もちろん研究費と称する寄付金も受け取っている。
5. つまり医師たちの耳には、製薬企業に不利な情報はいっさい入ってこない仕組みが出来上がっている。医師たちは「製薬企業の手のひらで踊らされている」と言っても過言ではないだろう。
6. では正しい情報はどこにあるのか。これは、海外で日々発表される膨大な論文を読みこんでいくしかないが、当然、英文で書かれており、しかも高度な統計学が駆使された内容であるため、簡単に理解することはできない。
7. というよりも学術論文には、巨大製薬企業が雇った数学のプロによる巧みな修飾が施されていて、医師たちはその罠から逃れることができないのである。『歪められた現代医療のエビデンス』に、その一端を記した。
【参考文献】
1) Becker C, Relationships between academic medicine leaders and industry - time for another look? JAMA, Nov 10, 2020.
2) Justice department annouces largest health care fraud settlement in its history - Pfizer to pay $2.3 billion for fraudulent marketing. The United States Department of Justice, Sept 2, 2009.
(2022.1.31)
(2) 医師たちが騙されたもう一つの理由
世界の巨大製薬企業は、これまで数々の論文不正を犯してきました。とくにコロナの時代になってからは、いっそう目に余る状況となり、当ホームページでも証拠となる事例をいくつか紹介してきたところです。しかし・・・、世界を見渡しても、そんな視点で真実の検証を行っている研究者やジャーナリストはほとんどいませんでした。
2022年の初め、頼もしい味方が現れました。すでに他の項でも紹介したことがある英国医学専門誌の副編集長たちグループが、告発文を発表してくれたのです。
内容をひと言でいえば、新型コロナのワクチンと治療薬に関する論文を書いているのは、すべて製薬企業の社員であり、しかも統計分析を行った元のデータがいっさい公開されていないことに対する批判でした。
論文に疑惑もあり(製薬企業にとって)不都合なデータが隠されているのではないか、と述べているのです。さまざま立場の人が製薬企業に生データの公開を求めていますが、いまのところすべて拒否されています。たとえばファイザー社に対してワクチンの治験データを請求したところ、治験が最終的に終わってから2年後、つまり2025年5月まで公開できないとの回答だったそうです。
モデルナ社の回答は、治験が終わればすぐに公開できるだろう、というものでした。公式発表によれば、その日時は2022年10月27日です。アストラゼネカ社の回答は、2021年12年31日以降、第III相試験(最後の臨床試験)のデータをリクエストがあれば開示するということでした。とっくに過ぎていますが、同社のホームページには、請求後、準備に1年くらいかかるかもしれないと、訳のわからないことが書いてあります。
新型コロナのワクチンほど「全人類の健康に悪影響を及ぼした医薬品」は、前代未聞です。当然のごとく素朴な疑問、ねつ造疑惑などが相次いでいる中、臨床試験でえられたすべてのデータを公開すべきことは、誰が考えても当然のことです。中心となっている3つの製薬企業(ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社)は、口裏合わせをしたかのように開示拒否しているのです。
その昔、製薬企業が裁判所の命令で報告書を公開したことがあったのですが、数万ページにも及ぶもので解読不能だったそうです。子供じみた意地悪ですね。そんな過去もあり、真実を求めて製薬企業との戦いに挑む医師はほとんどいない、・・・というよりも大部分の医師たちは無関心を決め込んでいるのが現状です。
告発論文を投稿した著者たちの次の言葉は、まさに「疑いを抱く、すべての人々の気持ち」を代弁しています。「世界の製薬企業は過去にも同じ罪を犯してきた。その代表的な例がインフルエンザの特効薬タミフルだ。ほとんど効果がないにもかかわらず、論文になっていないデータを宣伝に使い、数少ない論文もすべて製薬企業が社員が作ったもので、しかもゴーストライターに書かせたものだった。そして今また、コロナビジネスで巨万の富を独占している・・・・」と。
【参考文献】
1) Doshi P, et al., Covid-19 vaccines and treatments: we must have raw data now. BMJ, Jan 19, 2022.
2) AstraZeneca Clinical trials website. https://astrazenecagrouptrials.pharmacm.com/ST/Submission/disclosure
Q14 なぜmRNAワクチンは致命的な自己免疫病を起こすのか?
A ファイザー社・モデルナ社のワクチンが、副作用として致命的な自己免疫病を起こすメカニズムが明らかになってきました。
免疫性血小板減少症
血小板は、細胞の抜け殻のような物質で、出血を止めるために必須の物質です。ポイントは血小板の表面にある「糖鎖」でした。ワクチンで再合成されたコロナのトゲトゲ蛋白は、この糖鎖に結合しやすく、しかもその先端部(シアル酸)を切断する酵素のような働きをすることがわかったのです。
免疫細胞は、そんな血小板の異常な形を認識し、攻撃してしまうのです。このように自分自身を異物と誤認し、攻撃してしまうために起こる病気が「自己免疫病」です。
血小板が破壊されると、小さな出血も止まらなくなってしまいます。その病状の詳細が、米国で発表されています。因果関係が確実とされたのは、ファイザー社ワクチンで15名、モデルナ社ワクチンで13名です。年齢は22~82歳、女性が15名、男性が11名、性別不明2名です。ほとんどが2回目の接種後1~23日目に発病していますが、1回目でという人もいました。
症状は、皮膚の点状出血、広範な皮下出血、鼻出血、歯茎の出血、不正性器出血、脳出血などです。死亡が2例あり、それぞれ脳出血と心筋梗塞でした。
詳細はここをクリックしてください。動画で説明しています。
免疫性腎障害
腎臓にも障害が出てくることがわかりました。全身のむくみで発症した人の腎臓を、バイオプシーという方法で調べたところ、免疫異常で起こることが知られている変化が認められたのです。ワクチンとの因果関係は証明できないとしながらも、接種直後の出来事であることがら、懸念が示されています。
免疫性心臓病
mRNAタイプのワクチンで心筋炎が起こることは、すでに広く知られていますが、その最新情報が米国で発表されました。
心筋炎のみならず、心外膜炎や心臓周囲組織の炎症などを起こす人が多く、2021年6月23日時点で、すでに1,200人を超えています。接種1回目より2回目のあとのほうが多く、年齢はさまざま。男性のほうが女性より多くなっています。接種者100万人当たりで計算とする12.6人です。
2021年5月28日、国民の多くがワクチン接種を受けてしまったイスラエルからも詳細な論文報告がありました。3週間で6名が入院しましたが、年齢は16~45歳で、うち5名は2回目の接種が終わって24~72時間で発症、あとの1名は1回目の接種後16日も経ってからでした。
最初の症状は胸痛、または胸苦しさです。血液検査のデータが正常値の10~400倍も上昇しており、体内で激しい炎症が起こっていることを物語っていました。特徴的だったのは心電図です。インフルエンザ感染などでも起こりうる「心外膜炎」の徴候とともに、心筋梗塞にも似た波形になっています。
イスラエルの冬は12~3月で日本と同じですが、この時期、同国での心筋症の患者は各シーズン平均で1.17人であり、それに比べて6名という人数は、異常だと報告者は述べています。その後、メディアは、すでに同症が148人に達したと報じています。
自己免疫性心臓病はあきらかに増加している
ワクチン接種後、「副作用としての自己免疫病があきらかに増えている」ことを明確に示す初めての論文が2021年8月、発表されました。これまで、とくに米国では「極めてまれ」とか「普段の発症率と同じ」という説明で言い訳がなされてきましたが、そうではなかったのです。
まずワクチン接種が始まる直前までの2年間、全米40の病院を受診した患者のうち、心筋炎と心外膜炎の人数(月平均)を数えておき、接種したあとに発症した人の数を比べたものです。接種したワクチンは、ほとんどがファーザー社かモデルナ社製で、接種が1回だけの人も含まれています。実際のデータは以下のとおりでした。
ワクチン開始前 ワクチン接種後
心筋炎 16.9人/月 27.3人/月
平均 26~48歳
男女比 1:3
接種後の日数 3~11日
心外膜炎 49.1人/月 78.8人/月
年齢 46~69歳
男女比 1:2.7
接種後の日数 6~41日
自己免疫性皮膚病
私の周辺でも気になることが起こっています。第1回目の接種から1~2週間して、皮膚の激しい炎症症状を示す人が少なからずいるのです。同じことが起こっていないか調べたところ、ファイザー社やモデルナ社のワクチン接種後、激しい皮膚の湿疹を呈した414名についての詳細な報告が米国でありました。
第1回目の接種後1~2週間してから、注射とは異なる部位に、蕁麻疹のような変化を認めた人が半数近くいたのです。またドイツからの報告によれば、接種後、全身エリテマトーデスという自己免疫病の症状を呈し、検査データでも確認できたという人がいました。潜在的な病気が、ワクチン接種によって呼び覚まされたのではないか、というのが報告した研究者の考察です。
さらに国内のネット上では「多形滲出性紅斑」という皮膚病の名前も飛び交っています。薬の副作用などで起こる皮膚病のひとつの形なのですが、それがワクチン接種後に認められたという話です。
私が見聞きしている皮膚の症状も、これらに非常によく似ています。「注射した部位とは異なること」「接種していから5日以上経っていること」「皮膚症状がさまざまであること」などが特徴で、メディアで語られている「想定された副反応」とは、あきらかに異なるものです。
ただし皮膚の病気は原因がさまざまで、症状も多彩、かつ頻度の高いことから、すべてをワクチンと結びつけることはできません。一方、高齢者医療に従事している私の経験から、「普通でない事態が進行している」と言えるのも確かです。具体的な皮膚症状は、文献13)で見ることができます。
自己免疫性感染症
私が個人的に見聞きできる範囲で、気になることが相次いで起こっています。高齢者を中心に2回目のワクチン接種を終えたあと10日ほどしてから、蜂窩織炎、急性腎盂腎炎、肺炎、不明熱など、炎症をともなう病気が少なからず認められるということです。
いずれも高齢者に多い病気ですが、頻度が普段より多いことに加え、ワクチン接種後の日数が共通している点が気になっています。共通点は、細菌感染が起こり、その結果、血液中の白血球といういう細胞が増えること、ひと言でいえば「炎症」です。初期の症状は発熱、全身倦怠感などです。
これは昔から、たとえば糖尿病や抗がん剤治療中など免疫力が低下する状態で、起こりやすいと言われてきました。いまのところトゲトゲ蛋白との関係はまったく不明です。
(2021.9.6)
免疫性の眼疾患とは?
眼の一番奥にあるのが網膜です。物を見るための細胞が並んだ、大切な場所です。また眼球全体を包んでいる白い膜、いわゆる白目が強膜と呼ばれます。実際のコロナ感染では、これらの部位の病気がよく認められますが、2021年9月2日付で発表された2つの論文で、ワクチン接種後にも起こりうることがあきらかになりました。
いわゆる「不活化ワクチン」の治験がアブダビ首長国連邦で行われたのですが、論文のひとつは、その際に認められた眼疾患について報じたものです。7人に異常が認められ、上強膜炎1人、前強膜炎2人、急性黄斑部神経網膜症2人、傍中心窩急性中間層黄斑症1人、網膜下液1人でした。
いずれも聞きなれない病名ばかりですが、目がかすむ、目が突然見えなくなった、目が充血して痛い、頭も痛いなどの症状で救急外来を受診し、発見されました。ワクチン接種後、6日目前後の出来事でした。
もうひとつの論文もよく似ていて、網膜の細い血管が血栓で詰まった人がいたという報告で、急性黄斑部神経網膜症という病名がつけられました。2週間前に「ジョンソン&ジョンソン社ワクチン」を接種していましたが、これはアストラゼネカ社ワクチンとほぼ同じで、トゲトゲ蛋白のDNAをウイルスに組み込んで注射するものです。
この2つの報告から、(改造mRNAワクチン以外で)トゲトゲ蛋白が血液中を流れるようなタイプのワクチンによって重い眼疾患が起こることがわかりました。
【参考文献】
1) Seneff S, et al., Worse than the disease? reviewing some possible unintended consequences of the mRNA vaccines against COVID-19. IJVTPR, May 10, 2021.
2) Mandavilli A, C.D.C. is investigating a heart problem in a few young vaccine recipients. New York Times, May 22, 2021.
3) Welsh KJ, et al., Thrombocytopenia including immune thromcytopenia after receipt of mRNA COVID-19 vaccines reported to the Vaccine Adverse Event Reporting System (VAERS). Vaccine, Apr 30, 2021.
4) Mouch SA, et al., Myocarditis following COVID-19 mRNA vaccination. Vaccine, May 28, 2021.
5) Lebedev L, et al., Minimal change disease following the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. AJKD, Apr 8, 2021.
6) Sekar A, et al., ANCA glomerulonephtitis after the Moderna COVID-19 vaccination. Kid Int, poorf, 2021.
7) Lebedev L, et al., Minimal change disease and acute kidney injury following the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. Kid Int, Proof, 2021.
8) Mandavilli A, Heart problems after vaccination are very rare, federal researchers say. New York Times, June 23, 2021.
9) McMahon DE, et al., Cutaneous reactions reported after Moderna and Pfizer COVID-19 vaccination: a registry-based study of 414 cases. J Am Acad Dermatol, Apr 7, 2021.
10) Gambichler T, et al., Prompt onset of Rowell's syndrome following the first BNT162b2 SARS-CoV-2 vaccination. JEADV 35: e411, 2021.
11) Montogomery J, et al., Myocarditis following immunization with mRNA COVID-19 vaccines in members of the US military. JAMA, Jun 29, 2021.
12) Kim HW, et al., Patients with acute myocarditis following mRNA COVID-19 vaccination. JAMA, Jun 29, 2021.
13) Merrill ED, et al., Association of facial pustuler neutrophillic eruption with messenger RNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. JAMA, July 28, 2021.
14) Diaz G, et al., Myocarditis and pericarditis after vaccination for COVID-19. JAMA, Aug 4, 2021.
15) Jampol LM, et al., COVID-19, COVID-19 vaccinations, and sebsequent abnormalities in the retina, causation or coincidence? JAMA, Sep 2, 2021.
16) Pichi F, et al., Association of ocular adverse events with inactivated COVID-19 vaccination in patients in Abu Dhabi, JAMA, Sep 2, 2021.
(2021.9.2)
(2) ワクチンで突然死するわけ
ワクチンの接種後、数日から2週目くらいの間に、若い世代の人が突然、死亡するという事例が少なからずあります。アナフィラキシーショックとはあきらかに異なる経過をたどるものですが、日本では、いつも「因果関係不明」で終わりにされてきました。
その理由があきらかになりました。ワクチン接種後、重い心臓病になり入院した2人についての詳細な報告が、米国でなされたのです。1人は入院3日目に死亡しています。どちらも心臓の筋肉の一部が採取され、顕微鏡による分析が行われました(バイオプシー検査)。その結果、心臓の筋肉細胞の一つ一つが広範囲にダメージを受け、収縮できない状態になっていたことがわかりました。
つけられた病名は「劇症型心筋炎」。滅多に使われることのない病名で、原因不明、最後は心臓移植しか治療法がないとされてきたものです。心筋梗塞は血管が詰まって起こる病気ですが、そのような変化はまったくありませんでした。トゲトゲ蛋白の危険性が改めて浮き彫りになったようです。
【参考文献】
1) Verma AK, et al., Myocarditis after Covid-19 mRNA vaccination. N Engl J Med, Aug 18, 2021.
2) Anthes E, et al., Heart problem more common after Covid-19 than after vaccination, sutdy finds. New York Times, Aug 25, 2021.
(2021.9.6改訂)
(3) 接種後2ヶ月間の副作用まとめ
接種後の2ヶ月間に起こりうる副作用が、ほぼ明確になりました。ここまでに記した自己免疫性病に加え、2021年8月25日にイスラエルから発表された大規模データ分析の結果も合わせて、まとめをしておきます。
以下は、その一覧です。順不同で、カッコ内の数字は、接種していない人と比べた場合の発生倍率です。最後の1つは、まだ論文発表はありませんが、私自身の経験、あるいは当サイトに医師の方々から寄せられた確度の高い情報です。ほかにあれば、ぜひ情報をお寄せください。
・血小板減少症(脳出血、性器出血、皮下出血、歯肉出血など)(倍率不明)
・心筋炎、心外膜炎、心不全(3.24倍)
・腎炎(倍率不明)
・多形滲出性紅斑(もっとも多いが倍率は不明)
・劇症型心筋炎(致命的、倍率不明)
・虫垂炎(1.40倍)
・帯状疱疹(1.43倍)
・リンパ節腫脹(2.43倍)
・眼疾患(強膜炎、網膜など)
・細菌感染症(蜂窩織炎、腎盂腎炎、肺炎など)
【参考文献】
1) Barda N, et al., Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide setting. N Engl J Med, Aug 25, 2021.
(2021.10.8改訂)
(4) 接種後6か月でわかったこと
ワクチン接種が、多くの国で本格的に始まって半年以上が経った2021年10月、イスラエルで改めて行われた調査から、副作用に関するより詳しい状況がわかりました。同国は、ファイザー社、アストラゼネカ社の実験場とも言われていて、不誠実な論文が数多く作られてきたことは、すでに述べたとおりです。
同国では、全国民の健康情報がコンピュータでしっかり管理されています。気骨あるイスラエル人研究者たちはそれを利用して、製薬企業と対決するかのごとく、真実の情報を流し続けています。そんな彼らの論文が相次いで2つ発表され、半年後の状況を伝えてくれました。
論文のひとつは、同国で1回以上の接種を受けた2.5百万人を対象に、1回目の接種が終わって42日以内に発生した「心筋炎と心外膜炎」(以下、心筋炎と呼ぶ)の発生状況をまとめたものです。結果は、心筋炎の54例が副作用によるものと判定されました。平均年齢は27歳、男性のほうで多くなっていました。
論文には、そのデータが見事なグラフで示されています。著作権に触れないよう私が手書きでイラスト風に書き直したものが、以下の図です。横軸は1回接種してからの日数、縦軸は心筋炎と診断された患者の人数(累積)です。
大部分の人は、21日後に2回目の接種を受けていましたが、その日を少し過ぎた辺りから急速に患者数が増えているようすがよくわかります。「因果関係不明」とは言わせない、明快なデータになっています。なお、もう1つの論文もほぼ同じ結論でしたので、説明は省略します。
心筋炎の発生率は、接種していない人が罹った割合の1.62倍、男性に限れば4.12倍にもなっていました。根拠なくワクチンを推奨している専門家と称するたちは、このグラフを見ても、なお「因果関係不明」と言い続けるのでしょうか。
【参考文献】
1) Witberg G, et al., Myocarditis after Covid-19 vaccination in a large health care organization. N Engl J Med, Oct 6, 2021.
2) Mevorach D, et al., Myocarditis after BNT162b2 mRNA vaccine against Covid-19 in Israel. N Engl J Med, Oct 6, 2021.
(5) 副作用は脾臓(ひぞう)から始まる
ファイザー社とモデルナ社のワクチンの基礎をつくった2人の研究者(ワイズマンとカリコ)の動物実験から、筋肉注射したメッセンジャーRNAは、ほぼすべてが「脾臓(ひぞう)」と「網状赤血球」に集まることがわかっています。
米国では、ファーザー社かモデルナ社のワクチン接種を受けたあと高熱を出して入院した人に対しPET‐CTという画像検査で全身を調べたところ、脾臓のほかに「腋窩リンパ節」にも激しい炎症が起こっていることがわかった、という論文が発表されています。実際の写真も公表されていて、かなりショッキングです。
脾臓は、お腹の左側、横隔膜の下にある鶏卵大の臓器です。小児期では赤血球、白血球、血小板をつくっていますが、成人ではウイルスに侵された細胞や、老化した赤血球を除去する役割を担っています。わりやすく言えば、免疫機能によって破壊された細胞や微生物の残骸を血中から取り除いてくれているのです。
そのため、接種を受けた夜から数週間にわたり、発熱や倦怠感、関節痛、頭痛、下痢などの症状に悩む人が3~4割います。「こんな苦しい思いは初めて」と述懐する人も少なくありません。テレビでは、多くの医師が「想定された症状であり、体が守られている感じする」と述べていますが、大きな間違いです。免疫システムに重大な障害が起きているかもしれないのです。
(2022.11.7)
(6) 初めて日本の学会で発表された「ワクチンの副作用」とは
コロナワクチンの副作用で悩んでいる人がたくさんいます。中には肉親が接種後、突然、亡くなったという人も少なくありません。多くの方は、医師に相談しても「因果関係なし」と突き放され、ひとりで悩みを抱えています。不幸な目に遭っているのは自分だけ? と孤独を感じている人も少なくないようです。
当ホームページを見ていただいている方から情報提供があり、『全国有志医師の会』なる人たちが、さまざまな学会で口述発表された「コロナワクチン副作用」に関する報告例を集めていることがわかりました。2021年12月~2022年9月の間に発表されたものです。早速、数えてみると、全部で276件もの研究発表がなされていることがわかりました。
通常、口述発表される研究では、短くまとめた要旨(抄録)が事前に提出され、抄録集として会員に配布、あるいはネット掲載されます。しかし残念ながら、ほとんどの抄録は非公開になっていて、第三者は見ることができません。
そこで、「抄録がネット上に公開されていて」、「検索が可能で」、かつ「発表者がワクチン接種による自己免疫病であることを強く疑っている」という報告例をまとめてみることにしました。したがって全体像を表わすものではなく、あくまで事実の一端とお考え下さい。
その結果、16件の発表を確認することができましたが、うち3件は接種直後のいわゆる「副反応」をまとめたもので、発熱や腫れ、じんましんなどの頻度を集計しただけのものでした。
次の表は、残る13件の発表をまとめたものです。腎臓病がもっとも多く、以前、拙著で述べた懸念が現実のものとなってきたように感じます。
死亡例については、抄録非公開の発表も含めタイトル中に「死亡」または「剖検(病理解剖のこと)」という文字を含む発表を、改めて数えたところ、全部で7件の報告がありました。どれもタイトルしか見ることができませんでしたので、死亡者の実数は不明です。
副作用で苦しんでいる方々には、少なくとも自分一人でないことを知っていただけたものと思います。同時に、医師たちの間に理解が広がり始めていることがわかり、先が見えてきた感じがします。
国内には無数とも言える学会組織があり、ほとんど会員制になっているため、会員でない人には、発表されたという事実さえ知る機会がありません。それにもかかわらず、貴重な情報を収集してくださった「有志会の医師たち」のご努力には、心からの敬意を表するものです。
なお、当ホームページで集計の対象にした抄録は、すべてここに参考文献として明記すべきですが、件数が非常に多いことと、全国有志医師の会のホームページから参照ができるため、省略させていただきました。
コロナ関連の研究発表は、全国民の命に関わる重大事ですから、誰でもネット上で閲覧できるようにしてほしいものです。全国にある学会組織の意識改革を望みます。
【参考文献】
1) 日本におけるコロナワクチンと疾患の関連報告.全国有志医師の会,アクセス日2022.11.7.
Q15 因果関係を証明する方法はあるか?
A ワクチンのリスクを考える際、全身の血管にある内皮細胞が、決定的に重要であることがあきらかになってきました。
ここで私自身の研究について少しだけ紹介することにします。動脈硬化症を予防するための研究として、ヒトの血管内皮細胞を試験管内で培養し、さまざまな刺激を与えてmRNAがどのように反応するかを調べてきました。
左側の写真は、私が育てていた内皮細胞の顕微鏡写真です。数十個の細胞が隙間なく並んでいます。この細胞には重要な役割がたくさんあり、たとえば血液中の栄養素やホルモンを取り込んだり、血圧を調節したり、血液をさらさらにする司令塔ともなっています。
ところが、この細胞は非常にナイーブで、わずかな刺激や環境変化ですぐ死滅してしまいす。部分的に死滅しても、周囲の細胞がすぐ分裂して隙間を塞いでくれるのですが、私の経験では分裂を7~8回繰り返すと、すべての細胞は分裂をやめてしまいます。つまり血管死です。
ワクチンによって内皮細胞内で再合成された「コロナのトゲトゲ蛋白」は、なかり激しい性質を持っていることがわかってきました。そのひとつが血小板の糖鎖を切断してしまうことでしたが、内皮細胞自体にも深刻な損傷を与える可能性があります。
上の右側の図は、私が発見した悪玉LDL上の「糖鎖」です。先端は「シアル酸」と呼ばれる分子になっていて、細胞やたんぱく質の性質を決定づける重要な働きをしています。私が行っていた実験は、LDLのシアル酸を人工的に切断すると、内皮細胞にどのような障害が生じるかを調べるものでした(コロナとは無関係)。
こんな構造物が、内皮細胞にも、また多くのたんぱく質にも存在しています。トゲトゲ蛋白は、LDLや血小板に限らず、あらゆる部位のシアル酸を切断してしまうリスクを孕んでいます。
コロナワクチンは、そもそも発想が間違っていたのです。トゲトゲ蛋白を体内に入れるのは危険です。
【参考文献】
1) Okada M, et al., Effects of modified low density lipoprotein and hypoxia on the expression of endothelial adhesion molecule-1, Eur Int Med 24: 483-488, 1995.
2) Okada M, et al., Difference in the effects of cytokines on the expression of adhesion molecules in endothelial cells. Ann Med Interne 148: 125-120, 1997.
(2021.10.25)
(2) トゲトゲ蛋白の測定に成功!
トゲトゲ蛋白はあまりに小さく、病院内で行われている普通の検査では測定することができません。幸い、米国でこれを測る方法が開発され、その第一報が報告されました。私自身がもっとも待ち望んでいた情報です。
ともあれ、どうやって測ったのか、見てみしょう。次の図は、報告された原理を私がイラストにしたものです。
もしサンプル中にトゲトゲ蛋白があれば、試験管の底が赤く着色するため、その色ぐあいを機械で測ればいいことになります。原理はよく知られているもので、私自身も(コロナではありませんでしたが)微小物質の研究によく用いていました。
発表された論文では、コロナに感染した125人の尿がサンプルとして使われました。測定の結果、成人91人中、23人(25%)にトゲトゲ蛋白が検出されました。子供たちは全員がマイナスでしたが、不思議なことに、PCR検査で陰性だった子供1人の尿にトゲトゲ蛋白が検出されたそうです。その理由は不明です。
残念ながら、対象は「新型コロナに感染した人たち」だけでした。もっとも知りたいのは「ワクチンを接種し、まだ感染はしていない人」でどうなるのかですが、この点は今後の研究に待つしかありません。ワクチンを接種したあと、尿や唾液、あるいは母乳、輸血などにトゲトゲ蛋白が出てこないのか、大いに気になるところです。
【参考文献】
1) George S, et al., Evidence for SARS-CoV-2 spike protein in the urine of COVID-19 patients. Kidney360, June, 2021.
2) Jones JM, et al., Estimated US infection- and vaccine-induced SARS-CoV-2 seroprevalence based on blood donations, July 2020-May 2021. JAMA, Oct 13, 2021.
(2021.11.14)
(3) 因果関係を証明する唯一の方法とは?
ワクチン接種後、重大な副作用が生じても、すぐ「因果関係不明」と断じられてしまいます。なぜなのでしょうか?
原理を発明した2人の研究者が行った実験は、こうでした。まず実験動物のラットに改造mRNAを注射したのち、しばらくしてから殺し、肝臓や脾臓などさまざまな臓器を取り出します。それぞれをペースト状にすり潰して、注射した改造mRNAがどこに集まっていたかを、特殊な方法で調べたのです。
しかし、そんな実験、いや検査をヒトでできるわけもありません。しかもトゲトゲ蛋白については、動物実験すら行われていませんでした。人間で証明することの難しさが、ここにあります。
では、どうすればいいのか。思いつくのは2つの方法です。まず次の顕微鏡写真をごらんください。昔、私が行った実験で、血管内皮細胞に強い刺激を与えたのち、動脈硬化症の原因となる有害物質を、「抗原抗体反応を利用した染色方法」で処理したものです。細胞が6個写っていますが、そのうちの1つに多数の微粒子が褐色に染まって見えます。これが、可視化した異常物質の影です(この説明はトゲトゲ蛋白と関係なく、ただ方法について述べたものです)。
たとえば、患者さんの肝臓や腎臓に針を刺して調べる「バイオプシー」という検査法があります。その際、この方法で染色を行えば、トゲトゲ蛋白がどの臓器の、どの細胞に溜まっているかを可視化できるはずです。
もうひとつは、血液の中に流れ出したトゲトゲ蛋白の量を測る、新しい検査法を開発することです。原理は、ホルモンなど超微量な物質を測る検査(化学発光免疫測定法)として、すでに病院の中で使われているものがありますから、比較的簡単に実現できるでしょう。
この2つの方法が実用化すれば、因果関係の証明に近づけるように思われるのです。
【参考文献】
1) Kariko K, et al., Incorporation of pseudouridine into mRNA yields superior nonimmunogenic vector with increased translational capacity and biological stability. Mol Ther 16: 1833-1840, 2008.
2) Anderson BR, et al., Nucleoside modifications in RNA limit activation of 2'-5'-oligoadenylate synthetase and increase resistance to cleavage by RNase L. Nucleic Acids Res 39: 9329-9338, 2011.
3) Steinberg J, et al., 18Fluorodeoxyglucose PET/CT findings in a systemic inflammatory response syndrome after COVID-19 vaccine. Lancet, Mar 8, 2021.
4) Adin ME, et al., Association of COVID-19 mRNA vaccine with ipsilateral axillary lymph node reactivity on imaging. JAMA, Jun 10, 2021.
(2021.11.29)
(4) 接種後のトゲトゲ蛋白は4ヵ月以上、血中に残る
メッセンジャーRNAタイプのワクチン(ファイザー社製、モデルナ社製)を接種したあと、人間の血液中にトゲトゲ蛋白がいつまで残るのかが、ヒトを対象にした研究で初めてあきらかになりました。
実験に協力したのは8人の健康なボランティアで、時間を追って血液を採り、血液中のトゲトゲ蛋白を測定したという研究です。採血の具体的なスケジュールは、ワクチン接種の前と接種後の7日目、2週目、2回目接種の2週目、そして4ヵ月目です。
ワクチンを接種すると、メッセンジャーRNAはさまざまな細胞に取り込まれ、細胞内では、その遺伝子情報にしたってトゲトゲ蛋白の合成がなされます。やがてトゲトゲ蛋白は、細胞の外側に塊りとなって分泌されるのですが、そのとき、細胞の膜に包まれ小さな粒となります。このような粒は「エクソソーム」と呼ばれます。エクソは「細胞外」、ソームは「物体」という意味です。
エクソソームは、ワクチンとは無関係に、普通に血液中に認められるもので、その中身はさまざまです。そのためワクチン接種によって生じたエクソソームかどうかを識別する必要があります。そこで、この研究者は一計を案じました。あらかじめ用意したトゲトゲ蛋白の抗体に金の微粒子をくっつけておき、トゲトゲ蛋白と結合させたあと、その金微粒子を電子顕微鏡で撮影したのです。トゲトゲ蛋白そのものは、あまりに小さく電子顕微鏡でもはっきりとは見ることができないからです。
さて結論は明快です。ワクチン2回接種の2週後、血液中のエクソソームは最大量となり、その後、4ヵ月をすぎても残っていることがわかりました。
これは私の予想を超える長さでした。このことが、今後、長期にわたる副作用を考えるとき、どのような意味を持つのかはわかりません。またエクソソーム、つまり血液中のトゲトゲ蛋白がいつまで残るのか、あるいは細胞内でトゲトゲ蛋白がどうなっているのかについても、依然として不明のままということになります。
【参考文献】
1) Bansal S, et al., Cutting edge: Circulating exosomes with COVID spike protein are induced by BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) vaccination prior to development of antibodies: a novel mechanism for immune activation by mRNA vaccines. J Immunol, Nov 22, 2021,
2) Edgar JR, Q and A: What are exosomes, exactly? BMC Biol, 14: 46, 2016.
3) Zhang H, et al., Cooperative transmembrane penetration of nanoparticles. Sci Rep, May 27, 2015.
【妊娠・出産・育児を考える】
(5) ワクチンは母乳に影響しない?
カリフォルニア大学の研究者が適切な実験をやってくれました。ボランティア7人を募り、ファイザー社かモデルナ社のワクチンを「接種する前」と「2回接種したあと」で母乳を提供してもらい、改造mRNAが含まれているかどうかを、実際に測定してみた、というものです。
結論を先に言えば、接種後の母乳に改造mRNAは、いっさい含まれていませんでした。一見、簡単そうにみえる、この研究を私は高く評価したいと思います。なぜなら、ヒトの体液に含まれる改造mRNAを実際に測定したのは、おそらく世界で初めてのこと。誰も測ったことがない物質の測定は、非常に難しいものだからです。
「別の物質を測ったりしていないのか」「別の人が測っても同じ結果になるのか」「超微量でも測れているのか」「逆に過剰に含まれていても大丈夫なのか」「母乳などサンプルを保存する温度はどうだったのか」等など、果てしないツッコミに答えられなければ、確かに測ったとは言えません。この論文を発表した研究者たちは、測定の大原則とも言うべく、これらの課題を見事にクリアしていました。
などという難しい話は別にして、結論だけを見聞きした専門家や政治家が「ワクチンは授乳中でも大丈夫」と言い出しかねず、要注意な情報です。
2021年8月11日、母乳に与える影響の第2報が出ました。授乳中の女性33名に協力を求め、ワクチン接種前と、2回接種の2週間後、それに4週間後の3回ずつ母乳を提供してもらって調べた結果です。対象にしたワクチンはファイザー社製のみです。
測定したのはトゲトゲ蛋白に対する抗体です。中和抗体とは限らず、(IgGと呼ばれる)抗体のすべてです。結果は明快で、2週間後も4週間後も、どちらも接種前の約240倍にも上昇していることがわかりました。もちろん上昇の程度には個人差があり、母親の血液中の抗体量が多いほど、母乳中の量も多くなっていました。
赤ちゃんは、母乳を介してお母さんから免疫物質を受け取るとされていますが、コロナワクチンの場合、良い影響を受けるのか、それとも副作用を被るのかは、いまのところ不明です。一番知りたいのは、お母さんの血液中を流れているトゲトゲ蛋白が、母乳に移行しないのかということです。しかし、それを測る方法がまだないことから、いまのところ調べた人はいません。
【参考文献】
1) Golan Y, et al., Evaluation of messenger RNA from COVID-19 BTN162b2 and mRNA-1273 vaccines in human milk. JAMA, Jul 6, 2021.
2) Esteve-Palau E, et al., Quantification of specific antibodies against SRSR-CoV-2 in breast milk of lactating women vaccinated with an mRNA vavccine. JAMA, Aug 11, 2021.
(2022.3.7)
(6) 妊娠中のワクチン接種は絶対ダメ! 偽りの論文を告発する
米国の研究者が2021年6月17日づけで発表していた論文が、波紋を呼びました。その論文は、「妊娠中にワクチン接種を受けた人たちを調べたところ、流産や低出生体重、奇形などの割合が従前の統計値とほぼ同じで、悪影響は認められなかった」と報じたものでした。
次の表は、その論文に載っていた一部を私が日本語にしたものです。表中のv-safeとは、米国疾病対策予防センター(CDC)が作ったスマホ・アプリのことです。アプリをダウンロードした利用者には、ワクチン接種を受けると、自動的にアンケートが送られてくる仕組みで、妊娠経過や副作用などを登録できるようになっています。
この論文は日本でも話題となり、当時のワクチン担当大臣が「妊婦にも悪影響がないことが証明された」と発言していました。ところが半年ほど経ったいまになり、この論文についてとんでもない事実が判明しました。データが間違いだらけで、「この論文は取り消しにすべし」との激しい非難が相次いでいるのです。指摘されている問題点は多々あるのですが、そのうち、もっとも深刻なのが「流産の頻度」についてでした。
この表には、妊娠20週(5ヵ月)未満で827人がワクチン接種を受け、うちが104人が流産となり、率にして12.6パーセントになると記載されています。しかし表の欄外に「827人中、700人は妊娠20週以降に接種した」と、小さな文字で記載されていました。したがって正しくは、827人から700人を除いた127人が分母となり、流産の率は82パーセントと計算すべきだったのです。
さらに、比較対象とした「過去の統計値」にも引用の間違いがあり、表中「妊娠20週未満の流産は過去の報告で10~26パーセント」と記されているにもかかわらず、その元となる文献には(私もすべて読んでみましたが)、どれも10パーセントくらいとしか書かれていませんでした。つまりデータを正しく解釈すれば、「妊娠20週以内にコロナワクチンを接種すると、流産の可能性が8倍以上も高まる」ということになります。
指摘を受けた著者らは、表の一部を以下のように訂正しました。表中、赤線の枠内が修正された箇所です。
一応の訂正はなされているのですが、単に数字を消しただけであり、本文中の説明は以前のままになっています。
この論文の筆頭著者トム・T・シマブクロ氏はCDCの高官です。企業との関係を取り沙汰したネット情報もあるのですが、信頼性の確認ができないため、これ以上は触れないことにします。
それ以上に問題なのは、有名な医学専門誌に掲載された論文が、読者の知らないところで勝手に書き替えられ、注釈もないまま掲載が続けられている点です。書き換えがなされた時点で、著者および編集者のコメントが小さな文字で同誌に掲載されたのですが、論文をコンピュータで検索する読者には、訂正された事実が伝わりません。
私自身、ある米国専門誌の共同編集長を長く勤めてきましたが、このような対応は「学術誌の運営上ありえない行為」であり、(何らかの意図があるのかと)恐ろしささえ感じています。雑誌の名称「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」と、筆頭著者の名前は(今後も物議をかもす可能性があり)覚えておいたほうがよさそうです。
【参考文献】
1) Shimabukuro TT, et al., Preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Jun 17, 2021.
2) Sun H, To the editor on preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Oct 14, 2021.
3) Brock AR, et al., Spontaneous abortions and policies on Covid-19 mRNA vaccine use during pregnancy. Sci Publ Health Pol and Law, Nov, 2021.
4) Mcleod D, et al., Letter to Editor - commnet on "mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons", Shimabukuro et al., (NEJM Apr 2021), unpublished.
5) The Practice Committee of the American Society for Reproductve Medicine, Evaluation and treatment of recurrent pregnancy loss: a committee opinion. Fertil Steril, Jun 25, 2012.
6) Clinical Management Guidelines for Obstetrician-Gynecologist, Early pregnanct loss, Number 200. Obstet Gynecol, May, 2015.
7) Dugas C, et al., Miscarriage. NCBI Bookshelf, Jun 29, 2021.
(2022.10.24)
(7) 両親の接種は赤ちゃんに影響を与える
かつて、ワクチン担当大臣が「ワクチンで不妊になるというのはデマです」と語っていました。産科婦人科系の複数の学会が、「母体や赤ちゃんに重篤な合併症が発生したという報告はなく、妊婦さんもワクチンを接種することができます」という声明を発表したのも、同じ頃でした。
この問題に関しては、当ホームページでも、「専門誌に掲載された論文に捏造があり、これらの発言の根拠となった情報は信用できない」との記事を掲載したことがあります(Q15(4))。つまり捏造されたデータを修正して計算し直すと、「妊娠20週以内のコロナワクチン接種で、流産の可能性が8倍以上も高まる」という結論に変わるというものでした。
2022年9月、米国の専門誌に新たなデータが2つ発表されました。そのひとつは、妊娠・出産に関するもので、ワクチンを接種したあと、体外受精(胚移植)を受けた女性3,052人が、そのあと妊娠を継続できたかどうか知らべたものでした。
ワクチン接種後から体外受精実施までの日数でグループを分けて比べたところ、以下のようになりました。
_________________________________
日数で分けた群 人数 妊娠が継続できた割合 接種なし群との比
_________________________________
30日以内 35 34.3% 0.61
30~60日 58 36.2% 0.63
61~90日 105 51.4% 0.96
91日以上 469 56.3% (61日以上として計算)
_________________________________
接種なし 2385 60.3% 1.00
_________________________________
たとえば表の最上段は、「接種後30日以内」に体外受精を受けたのは35人で、そのうち34.3%だけが妊娠を継続できた、という意味です。右端の「接種なし群との比」は、接種をせずに体外受精を受けた人たちが妊娠を継続できた割合を1.00とみなした場合の比率ですが、複雑な統計処理を施してあるため、単純な割り算にはなっていません。
赤字で示した数字0.96は、「61日以上を1つの群」にまとめ、「妊娠が継続できた割合」を接種なしのグループと比べたものですが、統計学上、差はないと判定される結果でした。これより上の段は「有意差あり」だったことから、つまりワクチンを接種してから60日以内は、体外受精の施術を受けないほうがいいという結論なのです。
もうひとつの研究発表は、母乳に関するものでした。出産後、6ヵ月以内にコロナワクチンを接種した母親11人に協力を求め、接種の1時間後から5日目までの間、母乳をできるだけ繰り返し取り分けてもらいました。
合計131回分の母乳を分析したところ、5人の母親から提供された母乳のうち、接種45時間以内のサンプルから、「ワクチン由来のメッセンジャーRNA」が検出されたのです。
「抗体」が母乳から検出されたという報告は以前ありましたが、メッセンジャーRNAそのものが検出されたという報告は世界初です。
コロナワクチンは妊娠・出産・育児にいっさい影響しないというのが、世界中の専門家の主張でした。しかし2つの最新研究によって、ワクチン接種が胎児や乳児に与える悪影響が、否定できなくなってきました。
従来の情報を鵜呑みにせず、絶えず疑う目を持ち続ける必要がありそうです。
【参考文献】
1) Shi W, et al., Association between time interval from COVID-19 vaccination to in vitro fertilization and pregnancy rate after fresh embryo transfer. JAMA Netw Open, Oct 14, 2022.
2) Shandley LM, et al., In vitro fertilization outcomes after inactivated COVID-19 vaccine. JAMA Netw Open, Oct 14, 2022
3) Hanna N, et al., Detection of mesenger RNA COVID-19 vaccines in human breast milk. JAMA Pediatr, Sep 26, 2022.
(2022.11.14)
(8) 子供や赤ちゃんの接種はどう考えればいいのか?
新型コロワクチン接種の対象年齢がどんどん引き下げられています。成人における副作用の実態が明らかになり、オミクロン変異株の弱毒化も進んできた今、幼小児にまでなぜ接種が必要なのか、副作用は大丈夫なのかと疑問や不安を抱く人が多くなっています。幼小児の接種を、政府がやっきになって勧めている根拠はどこにあるのか、考えてみます。
まずファイザー社ワクチンです。5歳から11歳を対象にした調査が行われており、3編の論文が発表されています。しかし、どれも「後ろ向き調査」(当ホームページQ7(7)参照)でしかなく、著しく信頼性に欠けるものとなっています。効果と安全性に関して信頼できるデータが公表されないまま、米国政府の認可を得てしまっています。
一方、モデルナ社ワクチンのほうは、前向き試験(ランダム化比較試験;脚注参照)が行なわれていて、2編の論文が発表されています。次の表は、その2つの論文で示されたデータを、私がまとめたものです。「6ヵ月から23ヵ月」、「2歳から5歳」、「6歳から11歳」の3グループにわけて臨床試験が行われていましたので、それぞれを左から順に記述してあります。
細かな数字に興味のない方は、「有効率」を示す赤字の部分だけをご覧ください。新型コロナワクチンについて行われた最初の前向き調査で、あの有名な「有効率95%」という数字が発表されたのをご記憶と思います。まず、それと比べてみてください。
この表の出処(2つの論文)は、なかなか複雑怪奇で、何回も繰り返し読まないと内容が理解できないような書き方になっていました。
私の経験によれば、臨床試験の結果が明確だった場合、発表論文の記述も簡単明瞭で一目で結果がわかるようになっているものです。複雑な書き方をしている理由は、ただひとつ。製薬企業にとって不都合な結果になってしまったとき、わざとわかりにくくして世間の目を欺くためなのです。どちらの場合も、いわゆるゴーストライターが原稿を書いていますので、どっちもどっちなのですが・・・。
さて、上の表で「6-11歳」の有効率が「記載なし」となっています。出処となった論文には、「接種を1回行ったあとの有効率が88.0%」だったことが強調されていました。
なぜ1回目の結果だけを強調しているのかについては、「2回目接種後は、ワクチン群もプラセボ群も感染した子供が少なく、また参加者の協力が得られず調査を早々に切り上げざるをえず、分析ができなかった」としています。さらに、「この調査は、副作用を調べるために計画されたものであり、この点で憂慮すべき問題は見つからなかった。有効率を調べるのが目的ではない・・・」とも。
この2つの論文には、 副作用がわずか28日間しか調べられておらず、また 著者欄に連ねられた30名ほどの名前のうち、およそ半数がモデルナの社員になっているなど、気になる点がほかにも多々あります。
従来の倫理・規範に従えば、発売元の企業の社員が学術論文の著者欄に名を連ねるなど、ありえないことでした。コロナの時代になり、学問の世界が無法地帯と化しています。
同表からわかる、もうひとつ大切なことは、オミクロン変異株BA.1やデルタ変異株を対象にして調べた結果であり、BA.4やBA.5変異株ではなかった点です。
つまり、日本政府がワクチン接種の根拠とする「子供や赤ちゃんに対する効果と安全性を保証するデータ」は、存在しないのです。
脚注: ランダム化比較試験とは、大勢のボランティアを集め、病歴や生活状況などあらゆる背景を調べて、それらが均等になるようにコンピュータで2群に分け、一方に本物の薬を、他方に偽薬(プラセボ)を投与するという方法。数年~10年をかけて追跡し、結果を見届ける。エビデンスを探る唯一の方法であり、2群の背景が完全に等しくなっていることが最重要。しかし上記2論文では、その記述がいっさいなされていない。また本物とプラセボのどちらが割り当てられているかを、本人にも医師にも知られないようにすることも鉄則。上記論文では、途中で本人たちに知らせたとしている(理由は不明)。
【参考文献】
1) Creech CB, et al., Evaluation of mRNA-1273 Covid-19 vaccine in children
6 to 11 years of age. N Engl J Med, May 11, 2022.
2) Anderson EJ, et al., Evaluation of mRNA-1273 vaccine in children 6 months to 5 years of age. N Engl J Med, Oct 19, 2022.
3) Walter EB, et al., Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 vaccine in children 5 to 11 years of age. N Engl J Med, Nov 9, 2021.
4) Cohen-Stavi CJ, et al., BNT162b2 vaccine effectiveness against omicron in children 5 to 11 years of age. N Engl J Med, Jun 29, 2022.
5) Tan SHX, et al., Effectiveness of BNT162b2 vaccine against omicron in children 5 to 11 years of age. N Engl J Med, Jul 20, 2022.
6) Sacco C, et al., Effectiveness of BNT162b2 vaccine against SARS-CoV-2 infection and severe COVID-19 in children aged 5-11 years in Italy: a retrospective analysis of January-April, 2022. Lancet Jun 30, 2022.
7) Dorabawila V, et al., Effectiveness of the BNT162b2 vaccine among children
5-11 and 12-17 years in New York after the emergence of the omicron variant.
medRxiv, Feb 28, 2022.
(2021.8.26)
Q16 コロナの各種検査法の利点と欠点?
A コロナ感染対策の第一歩は、なんといってもPCRです。しかし、その意味が正しく理解されていないために、さまざまトラブルや悲劇が生じています。PCRの本質について理解を深めておかないと、自分が損をしてしまいます。
まず次のアニメをご覧ください。おおよそのイメージをつかめるはずです。ややこしい話は嫌いだという方はスキップしても大丈夫です。
(2021.8.27)
(ややこしい話がお嫌いな方は、このあとの「PCRで困ること」だけご参照ください) PCRでは、サンプルの中に、たとえばウイルスが1個あったとすると、それが1→2→4→8,
…と倍々に増えていくことになります。もし10個あれば、10→20→40→80,…ですから、超微量な遺伝子でも楽々と測定できるようになるのです。
次の図は、PCRの途中経過を示したグラフです。横軸はコピーの回数、縦軸は光の強さ、つまりコピーで増えた遺伝子の個数です。5つのサンプルを同時に測定したもので、一番右端(緑色)のグラフは、なかなか増えていませんから、元々のサンプル中に遺伝子が少なかったことがわかります。ただしこのグラフは、コロナと関係なく昔、私が行った実験データです。
PCRでもっとも大切なポイントは、アニメの中でピンク色とオレンジ色で示した人工のDNA断片で、「プライマー(最初のものという意味)」と呼ばれるものです。唾液などのサンプル中には、うようよ雑菌もいます。ときにはインフルエンザ・ウイルスなどもいるかもしれません。それらを区別するのがプライマーの仕事です。
プライマーは、新型コロナにしか存在しない遺伝子情報をコンピュータで探し出し、その中から必要最小限の長さのDNAを人工合成したものです。地球上のあらゆる生命体の遺伝子情報が、共同利用可能なコンピュータに登録されているため、そのような検索が簡単にできてしまうのです。私自身もいろいろなプライマーを作ってきましたが、(と言っても)種を明かせばインターネットで注文するだけで作ってくれる会社が世界中にあります。
繰り返しますが、プライマーの定義は「唯一無二」であることです。したがって理論上は、PCRが間違った結果を出すことはありえません。ただし分析条件の調整が非常に難しく、さまざまな民間企業が検査を請け負うようになったいま、若干の不安は残ります。
(2) PCRで困ること
さてPCRは、理論的には完璧と言ってよい方法なのですが、応用する上で重大な問題点が2つあります。ひとつは、唾液などのサンプルがうまく取れず、たまたまコロナウイルスが入っていなければ、感染者であっても誤って陰性と判断されてしまうことです。海外での調査によれば、その割合は4割にも昇るとされています。つまり見落としですね。
もうひとつは、ウイルスが死滅して、ばらばらになったあとでも、プライマーが結合する遺伝子断片が残っていれば、陽性になってしまうことです。昨年の春、感染者の退院を許可する基準が国際的に統一されました。たとえば無症状の人は、「サンプル採取日から10日経てば退院可」となります。PCR陰性が退院の条件ではなくなったのです。
コロナウイルスの断片がいつまでも体内に残ることがあるため、PCR陰性を条件にしてしまうといつまでも退院できず、いつまでも自宅待機が強制されることになってしまいます。日本では、保健所がPCRを重視するあまり、自宅待機の期間が不必要に長くなっていて、悲劇が家族をおそっています。
【参考文献】
1) Wang W, et al., Detection of SARS-CoV-2 in different types of clinical specimens. JAMA, Mar 11, 2020.
2) Wyllie AL, et al., Saliva or nasopharyngeal swab specimens for detection of SARS-CoV-2. N Engl J Med, Aug 28, 2020.
(2021.11.8)
(3) インチキ検査法にご注意
「中和抗体がズバリわかります」という宣伝文句で、さまざまな簡易検査法が登場しています。検査の希望者が殺到しているとのテレビ報道もありました。しかし「中和抗体」という言葉が流行語になり、それに便乗した怪しげな検査法も多いようです。
そもそも中和抗体とは何なのでしょうか? 文字どおりに解釈すれば、当ホームページQ7(4)のアニメで示したように、ウイルスの周囲にくっついて細胞への侵入を防いでくれるような抗体(免疫)のことです。しかしヒトの免疫システムは複雑ですから、以下のような問題を考える必要があります。
1 抗体にもいろいろあり、すべてが感染を防いでくれるわけではない
2 本当の中和抗体の測定には、生きた細胞や模擬ウイルスを用いる必要がある
3 数値がいくつ以上であれば感染を予防できるのか、エビデンスがない
4 免疫機能には、抗体だけでなく記憶細胞もかかわっている
米国では、一回分の検査費用が170ドル(約18,700円)とかなり高額なため、「富裕層の検査」とも揶揄されています。同国では、医師と患者とが1対1で年間契約を結び、待ち時間なく優先的に医療を受けられるという不思議な仕組みがあります。コンセルジュ・ドクターなどと呼ばれ、そんな医師たちがお金儲けのために行っているとも言われています。日本では、あたかも朗報のように報じられていました。
しかし、上で述べた4つの問題が解決されておらず、まったく無意味な検査なのです。このような検査を非難する論文が医学専門誌に掲載され、そのタイトルも「抗体検査はインチキ科学」でした。
誤った数値で「自分は免疫で守られている」との認識が広まり、マスクなしで出歩いたりするようになることが心配です。
【参考文献】
1) Abbasi J, The flawed science of antibody testing for SARS-CoV-2 immunity. JAMA, Oct 21, 2021.
2) Muruato AE, et al., A high-throughput neutralizing antibody assay for COVID-19 diagnosis and vaccine evaluation. Nat Commmun, 11: 4059, 2020.
3) Krueger A, Some rich people are counting their antibodies 'like calories'. New York Times, Sep 18, 2021.
(2021.9.14)
(4) 3つの検査法の優劣
接種証明証(ワクチンパスポート)が国策として利用されることになった場合を想定し、対策を考えておくことにしましょう。
極端な場合、接種証明書を提示しないと、飲食店、スーパー、デパート、映画館などに入れなくなり、スポーツ観戦や音楽鑑賞ができなくなるおそれがあります。それどころか、学校の授業や入学試験に行けなくなるのではないか、との声さえあります。すでに「発熱者お断り」という信じがたい病院もあることから、診療拒否に遭う事態も覚悟しておかなければならないのかもしれません。ここまでくると、もうブラックジョークの世界です。
では、ワクチンを受けなかった人は、どう対応すればいいのでしょうか。救いは「陰性証明」でもよい、としていることです。そこで現実的な対策として、新型コロナの検査法に対する理解をまず深めておきたいと思います。
テレビなどで報じられているように検査法は3つあります。以下、要点をまとめました。
1.PCR法
もっとも基本となる検査法。詳細は当ホームページのQ16に。
利点:精度が高い(ただしサンプル採取の段階で4割ほどの見落としあり)
欠点:医師の診察が必要。結果が出るまで数日かかる
2.抗体検査法
実際の感染かワクチン接種後、血液中にできる免疫(抗体)を測る方法。
利点:集団免疫などの調査に有効
欠点:いま感染しているかどうかはわからない。血液が必要で、痛い
3.抗原検査法
ウイルス自体(抗原)を測る方法で、鼻腔に綿棒を入れてサンプルを採る。
利点:自分でできる。15分で結果が出る
欠点:信頼性の高い製品ほど値段が高い
あきらかに「抗原検査」がよさそうです。私自身も、診療中に疑い例に出会うと、これを行うことにしています。もっとも広く使われている製品では、以下のような性能が学術論文として発表されていて、PCR法に匹敵する信頼性が確認されています。
価格は、業務用で1回分7,000円。ネット上で安いものは1回分500円ほどですが、信頼性は不明です。世界中の製品を比較した研究によれば、性能の差があまりに大きく、要注意だとしています。
[抗原検査の性能]
・陽性者を確実に陽性と判定する割合:86.4%
(ウイルス量が多く感染性が高い場合:100%)
・陰性者を確実に陰性と判定する割合:100%
【参考文献】
1) Takeuchi Y, et al., The evaluation of a newly developed antigen test (QuickNavi COVID-19 Ag) for SARS-CoV-2: a prospective observational study in Japan. J Infect Chemother, Mar 4, 2021.
2) Dinnes J, et al., Rapid, point-of-care antigen and molecular-based tests for diagnosis of SARS-CoV-2 infection (review). Cochrane Library, Issue 4, 2021.
3) Knizek Z, et al., Cribriform plate injury after nasal swab testing for COVIID-19. JAMA, Sep 9, 2021.
(2021.9.14)
(5) 抗原検査を練習しておこう
「ワクチンパスポートなど絶対に認めない」という人も、いざというときの心の準備だけはしておきましょう。そのひとつが「自分でやる抗原検査」のイメージ・トレーニングです。やり方は、次の図を見ていただけば一目瞭然、簡単です。
あとの課題は、価格の適正化、信頼性の保証、証明書発行システムの確立です。需要が増えれば価格は下がり、信頼性のお墨付きは学会の仕事です。証明書の発行は国の責任。やるべきことはあきらかです。
(2021.9.22)
(6) PCRを定期的に受けた経験談
「陰性証明がPCRでなければだめ」となった場合を想定して、問題点を検証しておきましょう。筆者は、職業上、毎週、PCR検査を受けていますので、参考のため、その手順と感想などをご紹介します。
すべてを仕切るのは、各地方自治体から委託を受けた業者(検査センター)です。検査センターは、担当エリアの各施設に対し希望人数を聞き、毎週、その数だけ「検査キット」を宅配便で送り届けます。
検査キットの中身は、唾液を入れる小さなチューブとバーコードラベル、それに説明書です。一人分は手のひらに乗るくらいの小さなものです。検査を希望する職員は、決められた期間内に各自、所定の場所からキットを取り出し、感染対策を施した場所で唾液を採取し、バーコードラベルをチューブに貼り付けます。
バーコードと同じ数字が印刷された一覧表に、自分の名前を記入して終わりです。あとは担当者がサンプル・チューブをまとめて梱包し、宅配便で送り返すだけです。もし陽性者がいれば、翌日、該当するコード番号を知らせる電話が来ることになっています。さらに、その翌日、全員の結果がコード番号とともに電子メールで届く、という仕組みです。
という具合に、大勢の人が簡単に検査を受けられ、費用の自己負担もありません。実施が決まったとき、「ストレスだ」「面倒くさい」「陽性だったらどうしよう」というのが、私の偽らざる心境でした。しかし、かなりの時間が経ったいまは、それなりに慣れてしまい、これで自分も職場も安心だという気分もあって、ストレス・安心が半々という感じになっています。
しかし考えるまでもなく、一般市民が個人で、定期的に検査を受けるのが、いかに困難なことであるのかが、あらためて浮き彫りになってきます。
(2021.9.23)
(7) PCR検査と陰性証明
以下は、唾液でPCR検査を受ける際に用いるサンプルチューブです。私自身が検査を受ける際に撮影した写真ですが、指で持っているのが提出するチューブで、青色の部分はサンプル採取後に破棄します。
検査を受けるには、「医療機関を受診する」、「民間の検査センターへ行く」、それに「ネット・サービスで検査キットを購入する」の3つの方法があります。発熱などの症状があれば医療機関へ行くことになりますが、医師の判断によってPCRを行う場合もあれば、行われない場合もあります。保険証を使って、窓口で自己負担分の料金を払う必要があります。
症状がなく、ただ健康診断の目的で医療機関へ行っても、PCR検査は受けられません。民間の検査センターやネット購入は、保険証が効かず、1回当たり2万円前後の費用が請求されます。
問題は「陰性証明書」の発行です。いずれの方法でも、証明書は医師でなければ発行できませんので、とくに後者の場合、発行手数料を別に支払い、業者が提携している医療機関に発行を依頼することになります。
しかし多くの医療機関で、証明書の発行を断られる可能性があります。理由は2つ。ひとつは多忙な病院ですから、証明書を求めて人々が殺到すると診療ができなくなってしまうからです。
もうひとつは、誤って陽性が陰性と判定されてしまう可能性が4割ほどあるため、真に「陰性であることの保証」はできないからです。下手に保証して、あとで「実は陽性だった」ことが判明したりすると、訴訟にもつながりかねません。
ここまで、抗原検査、PCR検査へと話を進めてきました。結論は、期待を裏切ることになってしまいますが、現行の法律のままでは、どうやっても「陰性証明書」の入手は簡単でないということです。国には、憲法で定められた基本的人権を侵害しない方策を考えてもらうしかありません。
(2021.10.2)
(8) 唾液によるPCRは大丈夫?
今年の5月、あるネット新聞に、「プロ野球選手のつば吐き禁止すべし」というタイトルの記事を投稿しました。唾液には新型コロナウイルスが高濃度に存在しているため、つばを吐くと球場が汚染されるという内容でした。
反響はまったくなかったのですが、当時、その根拠となる研究論文が発表されたばかりでした。つまりPCR検査をする際、綿棒を使って鼻腔からサンプルをとる方法と、唾液をサンプルにする方法を比べたところ、唾液の方が陽性になる割合が少しだけ高く、有効だという結果を報じたものでした。
しかしその後、9月21日になって、このデータを打ち消すような研究成果が発表されました。評価の方法が優れ、対象数も圧倒的に多いことから、こちらの研究に軍配を上げ、結論を訂正することにします。
対象となったのは、家庭内感染があった家族404人でした。各家庭で1人目の感染が判明した日から、毎週1回ずつ1か月以上にわたり、家族全員のPCR検査を続けました。その際、鼻腔から採取したサンプルと唾液の両方をセットにして、比較・検証が行われたのです。
最終的にわかったのは以下の3点で、唾液は「感染者が本当に陽性と判定される割合(感度)」がかなり低いという結果でした。
・症状がある人は、感染後1週間以内に限り、感度は鼻腔サンプルとほぼ同じ
・感染から1週間すぎると、感度は大幅に低下する
・無症状の人では、感度は鼻腔サンプルの6割以下になる
つまり、前の項で紹介した「抗原検査」のほうが優れているということです。もしかりに、政府が強引に「陰性証明」政策を推し進めるなら、簡便性の面も合わせ、抗原検査が適していることになります。
【参考文献】
1) Congrave-Wilson Z, et al., Change in saliva RT-PCR sensitivity over the course of SARS-CoV-2 infection. JAMA, Sep 21, 2021.
(2022.3.28)
Q17 あやまちを繰り返さないために? ―第1回―
A
<パート1> 野生動物の怖さ
コロナ騒動の終息に向けて、過去、現在、未来の問題点を何回かに分けてまとめていくことにします。その第1回は、新型コロナウイルスが、どこで、どうして発生したのか、そして問題点はどこにあったのかを考えます。地球上には、人類の生命を脅かすかもしれない未知のウイルスが、無数にいるとされています。新型コロナウイルスの発生源を知ることは、新たな脅威に対処するための必須要件です。
当ホームページでは、すでに2020年5月掲載の記事で以下のように報告しました。つまり新型コロナウイルスの発生には2つの説があり、ひとつは中国・雲南省の大洞窟に生息するコウモリが持っていた、とするものです。コウモリは赤や緑の光を好む性質があるため、およそ1,000キロメートルを飛び越え、大河・長江(揚子江の上流)の畔にあって光輝く湖北省武漢市の海鮮市場にやってきたというのです。
もうひとつは、武漢市にあるウイルス研究所で、コウモリが持つコロナウイルスの遺伝子改造を行っていたのではないか、という説です。研究所に勤める職員が、改造したウイルスに感染し、それが武漢市の市民に広がっていったのではないとの仮説でした。中心的役割を果たしたのは、当時57歳の女性科学者シー・ジェンリーだった、と欧米のメディアは名指しで報じていました。
以下、新たな情報に基づいて、さらなる考察を行ってみます。オーストラリアのウイルス学者エドワード・ホルムズ氏は、2002年に中国で発生した重症呼吸器感染症(SARS)の流行以降、同国内に生息する野生動物のウイルスを調べていました。メディアは彼を「ウイルス・ハンター」と呼んでいます。
SARSの流行のあと、コウモリの体内にいるウイルスが、ハクビシンやタヌキを介してヒトに感染したと報じられたことから、中国当局は表向き、市場での野生動物の売買を全面禁止にしたと宣言していました。
しばらく経った2014年、ホルムズ氏は武漢市の海鮮市場を訪れた際、ヘビ、アナグマ、ネズミ、鳥など生きたままの野生動物がカゴに入れられ食用として売られている現場を目撃し、ショックを受けました。同行した中国当局の職員に気づかれないよう、スマホでこっそり写真に撮っていたのですが、使い道もなく放置していました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、これこそ発生源を示す重要証拠と考え、写真を添えて論文を発表しました(実際の写真は参考文献7)で見ることができます)。
<パート2> 隠ぺい体質
しかし、今となっては海鮮市場で売られていた野生動物が、どのようなウイルスを持っていたのか調べることはできません。なぜなら、中国当局がすべて撤去し隠ぺいしてしまったからです。ホルムズ氏が公表した写真もフェイクだとしています。
ホルムズ氏は、中国の張永振という研究者の要請を受け、武漢市で多発している謎の肺炎の調査に当たっていました。2019年12月26日、二人は、武漢中央病院に入院したある患者が謎の病気に特有の症状とレントゲン像を呈していたことに注目し、肺から採取したサンプルを入手しました。未知の病原体の遺伝子配列を確定することに成功したのは、年が明けた2020年1月5日でした。
早速、二人はそのデータを論文にまとめ、2020年1月7日、専門誌「ネイチャー」に投稿しました。ところが、中国側の共同研究者だった張氏は、当局から遺伝子情報の公開を禁じられていて、その禁を破ったことから彼の研究室は閉鎖されてしまうのです。
中国側には、ほかにも複数の研究者が協力していたのですが、その中心人物の肩書が軍の大佐であったことが判明し、話はややこしくなっていきます。「実はホルムズ氏は中国から研究費の助成を受けていた」と一部メディアが報じ、一方、ホルムズ氏が所属するシドニー大学は、「そのような事実はない」と否定するなどゴタゴタが続いています。
<パート3> まとめ
そんな具合で、いまだ話は混とんとしているのですが、マレーシアと米国の研究チームが行った冷静な研究報告も含めて、ここまでの情報をまとめてみます。
新型コロナウイルスの発生源としてもっとも有力な説は、武漢市の海鮮市場、あるいは武漢市を流れる長江の下流(揚子江)にある浙江省舟山市の市場で売られていた野生動物が最初から新型コロナウイルスを持っていて、それらが複数の市民に同時多発的に感染したというものです。
当時、揚子江河口にある浙江省では、タケネズミと呼ばれる動物が食用として流行していました。「華寧兄弟」という人気のユーチューバーが流行らせたもので、最初は自家繁殖でしたが、人気に便乗して野生のタケネズミも売られていたようなのです。
これまで多くの研究者が主張してきたのは、すでに紹介したとおり雲南省の大洞窟に生息するコウモリから感染が広がったとする説です。しかし前出のホルムズ氏の分析では、コウモリの体内にいるウイルスの遺伝子配列は、新型コロナウイルスとはかなり異なっていて、直接の原因ではなさそうです。
米国のトランプが最初に主張した「武漢市のウイルス研究所で生物兵器として作られたウイルス」との説も、物語としては興味深いものの、あり得ないと思われます。なぜなら、炭素菌やサリンに代表される生物化学兵器は、戦闘現場でのみ殺傷力をもたらしますが、ウイルスはパンデミックを起こしてしまうため、使った側にも甚大な被害が及ぶからです。
いずれにしても中国当局は、武漢市の海鮮市場も、また武漢市のウイルス研究所も、発生源としては認めたくないのです。その一方で、中国の一部医師とウイルス研究者たちが、驚くべき早業で、かつ非常に高いレベルで遺伝子解析の結果や患者の病状を専門誌に発表しており、この点は称賛に値します。
私がまだ大学の研究室に在籍していた1980年ころのことです。同僚の一人が突然、高熱を発し、急性腎不全の状態になりました。その後、複数のスタッフが同じ症状を呈し大騒ぎとなったのですが、全国の研究施設でも同様の事例が多発していることがわかり、死者も出ていました。原因は、海外から輸入したラットなど実験動物の体内に生息するウイルスでした。鳥インフルエンザもそうですが、ウイルスの脅威は身近にあります。
次回の第2回は、人々を狂わせた「ワクチン神話」が生まれたターニングポイントを考えます。
【参考文献】
1) Holmes E, Novel 2019 coronavirus genome. https://virological.org/t/novel-2019-coronavirus-genome/319, Jan 10, 2020.
2) Wu F, et al., A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature, Feb 3, 2020.
3) Pinghui Z, Chinese laboratory that first shared coronavirus genome with world orderd to close for 'rectification', hindering its Covid-19 research. South China Morning Post, Feb 28, 2020.
4) Sun Z, et al., Potential factors influencing repeated SARS outbreaks in China. Int J Environ Res Public Health, Mar 3, 2020.
5) Andersen KG, et al., The proximal origin of SARS-CoV-2. Nature Med, Mar 17, 2020.
6) Lam T T-Y, et al., Identifying SARS-CoV-2-related coronaviruses in Malayan pangolins. Nature, Mar 26, 2020.
7) Zhang Y-Z, et al., A genomic perspective on the origin and emergence of SARS-CoV-2. Cell, Apr 16, 2020.
8) Markson S, The Covid files: how the red army oversaw coronavirus reesearch. The Daily Telegraph, May 11, 2020
9) Zimmer C, New Research points to Wuhan market as pandemic origin. New York Times, Feb 27, 2022.
10) Zimmer C, 'He goes where the fire is': a virus hunter in the Wuhan market. New York Times, Mar 21, 2022.
(2022.4.4)
―第2回― 人々を狂わせたワクチン神話
<パート1> 製薬企業の事情
ドイツのベンチャー企業ビオンテック社は、以前からファイザー社と共同で、インフルエンザなどのワクチン開発を新技術のmRNA法で取り組んでいました。その会社を経営する二人の技術者(夫婦)は、パンデミックが明らかになった2020年3月1日、ファイザー社の取締役に「コロナワクチンを一緒にやらないか」と持ちかけます。
オファーを受けた取締役は、獣医の資格をもち家畜用の医薬品開発を担当していた人ですが、同時に9万人の社員の生活を守る責任も負っていたことから、一瞬のためらいを感じました。いまだ誰も実用化に成功していない技術だったからです。しかし決断は早く、ビオンテック社と利益を折半するという条件で、臨床試験や販売戦略を担当することに合意しました。
早速、社用ジェットをドイツに飛ばしてmRNAワクチンのサンプルを受け取ったファイザー社スタッフは、ニューヨーク州にある同社の研究所に持ち込み、動物実験に取りかかりました。
モデルナ社のほうも、すでにmRNAワクチンの研究を進めていたことから、早くも2020年1月13日に開発に着手し、2日後には最初のサンプルが出来上がっていた、と報じられています。ウイルスの遺伝子配列をコンピュータに入力さえすれば、どんなワクチンもつくれる準備ができていたからです。
<パート2> 大統領と米軍の関与
米国食品医薬品局(FDA)ワクチン部門の責任者は、感染者が急増する中、一刻も猶予がならない事態と考え、国が資金を出し、軍が指揮を執る形で製薬企業にワクチンを作らせるという計画を考え出しました。その名はオペレーション・ワープ・スピード(光速ワープ作戦)、人気テレビドラマに出てくる言葉です。
2020年3月2日、当時のトランプ大統領は、主だった製薬企業のトップを集め、「今年の10月までに完成させるように」と指示を出しました。その年の11月には自らの再選がかかる大統領選挙を控えていたからでした。
同年5月、トランプ大統領は、オペレーション・ワープ・スピードの発足を、メディアに向けて声高らかに宣言しました。実務者の会合は、官民一体というよりも官僚と軍人が一体になったもので、FDAトップと製薬企業の担当者、それに統計学の専門家、予算担当者などが招集されました。
会合は、毎朝8時きっかりに始まっていました。米軍が得意とする「4日間リズム戦略」、つまり4日ごとにやり方を変えていくという方式(意味不明)が取られ、「少佐」と称する軍人が指示を出していました。ある参加者は、軍人の名も知らされず、「まるで軍隊で秘密作戦に従事しているようだった」と、のちに語っています。
当初、ファイザー社の計画では、ワクチン群とプラセボ群を合わせて32人のコロナ感染者が確認された時点で臨床試験をいったん終わり、まとめをすることになっていました。しかし、会合の席上、感染者数をもっと増やす必要があるとの指摘がなされました。また対象者全体の人数も少なく、黒人などマイノリティをもっと加えるようにとの指示も出されました。
同社は、この指示に従って、臨床試験の途中で計画を変更してしまいます。
<パート3> 永遠の謎
大統領選が終わった5日後、ファイザー社の取締役は、役員会の席で臨床試験の統計担当者からのリモート報告を待っていました。「やりました! 感染者が94人いて、そのうち90人はプラセボ群からでした」。英語で90と19は発音が似ています。「いま19って言った? それとも90?」と、取締役が聞き返したほどでした。彼らはソーシャルディスタンスも忘れ、互いに抱き合って喜びを分かち合いました。
この結果は、直ちにバイデン新政権発足チームに報告されました。あと回しにされ怒り狂ったのは、政権末期のトランプでした。
さかのぼること数か月前、オペレーション・ワープ・スピードによって、政府は、ワクチンが完成したらファイザー社から1億回分を1,900億円(1ドル100円換算)で買い上げるという契約を結んでいます。開発に失敗した場合、経費がどうなるのかは明らかにされていません。一方、モデルナ社のほうは、買い取りではなく、原材料の調達や工場の拡張費用として2,500億円を国から受け取るという契約をしています。
トランプ前大統領が業績を焦るあまり、「ワクチン」という甘い言葉に自ら酔い、製薬企業に脅しをかけるような手段で開発を急がせた、というのが、そもそも神話が醸成される素地となったのでしょう。
その年の暮れに発表された臨床試験の報告論文で「有効率95パーセント」が報じられたわけですが、この数字に意図的な操作がなされていたのは、当ホームページで繰り返し指摘してきたとおりです。報告を受けた製薬企業の重役たちが歓声を上げた、という話がもし本当であれば、彼ら自身もデータの操作を知らなかったことになります。一方、これらは当事者しか知らない話ですから、作り話であった可能性も否定できないわけです。
もし製薬企業の役員たちが本当に知らなかったのだとすれば、裏で誰かがデータの操作をしていたことになります。トランプが何を指示したのか? 名も明かさない軍人が一連の計画で何をしていたのか? 臨床試験がスタートしていたにもかかわらず、途中で都合よく計画を変更するという「禁じ手」を打ってしまったことを、製薬企業はどう釈明するのか? そして、その道のプロたる製薬企業の役員たちが、出来過ぎのデータを見て何も疑問を感じなかったのか?・・・など、多くの謎が残ります。
<パート4> まとめ
「有効率95パーセント」・・・このマジックワードが、専門家・医師たちを狂わせた「ワクチン神話」の始まりでした。
かりに製薬企業の発表したデータにねつ造がなかったとしても、この数字にはトリックが仕組まれているのも、知っておく必要があります。この数字をどのように理解しましたか? 「100人のうち95人でワクチンは有効だ」と思ったのではありませんか?
論文には、計算前の調査データは以下のようであったと記載されていました。
ワクチン群18,198人, うち感染したのは 8人
プラセボ群18,325人, うち感染したのは162人
プラセボ群とは、ワクチンの代わりに食塩水を打った人たちのことです。この数字を全部つかって、有効率を計算し直してみます。
ワクチン群の感染率: 8/18198×100≒0.04(%)
プラセボ群の感染率:162/18325×100≒0.88(%)
引き算をすると、0.84パーセントとなります。つまり「ワクチンを接種したら100人当たり1人弱の感染が予防できた」ということです。残りの99人以上は、ワクチンを打っても感染するか、あるいは感染リスクがないにもかかわらずワクチンを打って、副作用で損をするだけかもしれない、ということなのです。
一方、論文で強調された有効率95パーセントは、(1.0 - 8/162)×100と計算したものです。公認の算出法のひとつではありますが、製薬企業の宣伝に悪用されてきたという歴史があります。公表される情報には、巧妙な罠が十重二十重に仕組まれています。
次回の第3回は、「メディアのプロパガンダ」です。
【参考文献】
1) "What is Operation Warp Speed?", NIAID, Jul 1, 2020.
2) Weise E, US cuts $1.95 billion deal with Pfeizer for 100 million doses of COVID-19 vaccine. USA TODAY, Jul 22, 2020.
3) LaFraniere S, et al., Politics, science and the remarkable race for a coronavirus vaccine. New York Times, Nov 30, 2020.
4) Kollewe J, From Pfeizer to Moderna: who's making billions from Covid-19 vaccines? Guardian, Mar 6, 2021.
5) Tinari S, The EMA covid-19 data leak, and what it tells us about mRNA instability. BMJ, Mar 10, 2021.
(2022.4.11)
―第3回― メディアのプロパガンダ?
<パート1> 週刊誌、新聞、そしてテレビ
「プロパガンダ」という言葉をよく聞くようになりました。広辞苑によれば、「特定の思想によって個人や集団に影響を与え、その行動を意図した方向に仕向けようとする宣伝活動」のことです。コロナワクチンに関するメディアの一方的な報道も、プロパガンダではないか、という疑問について今回は検証します。
2021年の初め、日本国内でもワクチン接種が始まろうとしていたころのことです。いくつかの週刊誌から意見を求められました。そのひとつは、誰でも知っている有名な週刊誌で、私のコメントは「試験期間があまりに短く、どんな副作用があるのかわかっていない」、「だから私は受けない」という主旨のものでした。
ところが、発売された週刊誌の見出しが「医師が打ちたくないわけ」という主旨のものだったことから、同記事内で技術解説を行った別の研究者から編集部あてに「自分はそんな発言をしていない」とクレームが寄せられ、また同誌に連載中の某作家が出版社に抗議文を送る、というゴタゴタに発展しました。同社は、「読者の誤解を招く恐れがあった」との理由で、ネット上のデジタル版を丸ごと削除してしまいました。
同じような出来事がもうひとつ。別の有名週刊誌から意見を求められたときのことです。ワクチンを推進する立場の識者と、副作用を懸念する私のコメントがいっしょに掲載されたのですが、発売直後、前者(推進派識者)から編集部に対し、後者(岡田)のコメントは間違っている、とのクレームがあったのです。編集部は、同記事のデジタル版を掲載する際、私のコメントだけを削除するという処置をとりました。
ネット上では、この記事を読んだ読者から「ワクチンを否定するような記事を載せたのは許せない」との書き込みが相次ぎました。いわゆる炎上です。出版社に直接、抗議の声を寄せる人たちも多かったようです。
その前後、いくつかの新聞が私のコメントを記事にしてくれたのですが、しばらくして、それぞれの担当記者からメールが届き、「会社を辞めることになった」、「社内で配置転換させられた」との知らせでした。
その後、ワクチンの副作用としての「心筋炎」が世間で話題になり始めたころ、NHKの記者から電話があり、コメントを求められました。解説めいたことを縷々述べたあと、「心筋炎は、無数にある副作用のひとつでしかない。頻度が少ないとの報道で終わりにしないでほしい」とつけ加えました。忘れたころ、NHKニュースは「心筋炎はきわめて稀なので、ワクチンを控える理由にならない」と報じていました。
<パート2> 自己規制
拙著『本当に大丈夫か、新型ワクチン:明かされるコロナワクチンの真実』の中で、対談相手となってくださった、科学ジャーナリストの倉澤治雄氏の言葉をここで引用します。テレビ局に役員として勤務したご経験のある方で、局内の実情について以下のように述べておられます。「日々、ワイドショーやニュースを作っている記者に、科学や医療の専門知識はありません。つまりテレビ局の記者に期待するのは最初から無理なんです」。
テレビ局には、ワクチン報道に関して政治的圧力があったりするのかという私の問いに、氏は「少なくとも、民放ではありえない」と断言しておられました。つまりNHKなら、ありそうだということです。
真実を伝えるというジャーナリズムの役割を、メディアが果たしていないのはあきらかです。しかし、その背景は意外と単純なのかもしれません。新聞社や出版社、あるいはテレビ局では、政治の圧力を受けているわけではなく、社員一人一人がワクチン神話を信じて疑わない、という異常事態に陥っているだけなのです。
ワクチン批判をテーマとして取り上げても、読者や視聴者からクレームが殺到するため、どのメディアも保身のために自己規制せざるをえなくなっている、という状況もあります。テレビのバラエティ番組では、出演者に批判的な発言は許さず、意識的にワクチン接種を勧める発言を促しているようにも見えます。あたかも視聴者に媚びを売っているかのようです。
<パート3> まとめ
以上が、私自身の実体験を中心にまとめたメディアの裏事情です。メディアを巡る議論では、エビデンスと呼べるような客観的データが存在しないため、このような論考になってしまうことをお許しいただきます。
10年ほど前の出来事です。イタリアのある地方で弱い地震が頻発していました。6名の地震学者が「大きな地震にはならない」と予測し、テレビで安全宣言をしたのですが、その6日後、大地震が同地方を襲い、宣言を信じて逃げ遅れた300人余りが犠牲となりました。6人の科学者は過失致死罪で告発され、裁判で禁固刑の判決を受けてしまいます。のちに無罪にはなるのですが、科学者と政治との関わりについて大きな議論が巻き起こったのは言うまでもありません。しかし、簡単に答えが出る問題でもありませんでした。
一連のワクチン報道に重大な偏りがあるのはあきらかですが、日本国内に限って言えば、誰かが特定の意図をもって仕組んだことではないため、プロパガンとも言えません。責任の所在を追及しても、意味はないでしょう。そのメカニズムを考えるとき、過去の戦争責任や現代のウクライナで起こっている悲劇など、どれとも共通点がないことに気づきます。専門家や政治家も含む大多数の国民が洗脳され、群集心理に陥ってしまったという、有史以来、前代未聞の事態がいま進行しているのです。
時が流れ、現代人よりも賢くなっているであろう後世の人たちが、この「コロナワクチン狂騒」をどのように読み解いてくれるか、聞いてみたい気がします。
次回の第4回は、「法律家の出番」です。
(2022.4.18)
―第4回― そろそろ法律家の出番!
<パート1> 海外の事情
今回は、ワクチンによる健康被害をどのように解決していけばよいのか考えます。行き詰った感のある現状を打破するには、最後の手段として裁判を起こすしかなさそうです。
まず米国での現状を見ておきましょう。 米国オハイオ州では、ある小児病院の従業員66人が接種を拒否して解雇され、集団訴訟を起こす準備を始めています。訴えは、「いかなる理由も認めず強要したのは、表現や宗教の自由を定めた米国憲法に反する」というものでした。
彼らの弁護人は、「解雇された従業員の復職と未払い分賃金の弁済を要求する」としています。一方の病院側は、「従業員のワクチン接種は、入院している子供たちの健康を守る最良の手段だ」と主張して譲りません。この騒動に対し、ある大学の教授は「雇用主は従業員に対し、検査を受けたりワクチンを打ったりすることを、雇用の条件とすることができる。また国が接種を勧めている以上、裁判は難航するだろう」とコメントしています。
ほかにも、米国の保険会社の従業員250人が同じ理由で解雇され、うち185人が集団訴訟を起こすなど、同様の動きが広がりをみせています。一方、私あてのメールで多いのは、解雇されたというよりは、「接種を迫られて自ら退職せざるをえなかった」、「接種を受けないと大学などで実習をさせてもらえない」、「強制されて仕方なく接種を受けたが、その後、体調が悪い」などというものです。
<パート2> 日本での裁判は?
日本で裁判を起こすとすれば、その目的は大きく2つに大別できそうです。ひとつは、ワクチンの副作用によって死亡したり、重大な健康被害を被ったことに対する賠償の請求ですが、副作用の説明をしなかった国家責任を問うてもよいのかもしれません。もうひとつは職場や学校で接種を強制され、著しく権利を損ねられたことに対する地位の保全です。
私あてに届いたお便りの中に、「家族が健康被害を受けたため、救済を申請する証拠書類を役所に提出したところ、手続きに1年以上かかると言われた」というものがありました。こんな現状を打開するには、集団で訴訟を起こしてメディアで話題にしてもらうなど何らかの舞台設定が必要でしょう。もちろん、因果関係を証明する医学データの確保は必須条件です。
2022年3月12日付けでネット上に、ある重要な記事が写真とともに公開されました。以下は、ネット上に発表された顕微鏡写真を私がイラストにしたものです。
図中、中央の丸い構造物が血管の断面です。茶色の部分が、血管の内皮細胞に残る無数の「トゲトゲ蛋白」の塊りを特殊な方法で染めたものです。青い点々は細胞の核です。その記事には、心臓の筋肉細胞などの顕微鏡写真も一緒に掲載されていて、トゲトゲ蛋白によって激しい炎症が起こっている様子が見事に映像化されています(参考文献4で実際の写真を見ることができる)。
この検査は「免疫組織染色法」といい、コロナワクチンが深刻な副作用を起こした「決定的な証拠」となるものです。病理医がいる病院であれば、どこでも簡単にできます(すべての検査材料はネットで購入できる)。ただし現状では、どの病院の医師も「コロナワクチンで重大な副作用は起こらない」と決め込んでいるため、患者の立場で要求しても拒否されてしまうに違いありません。
そこで、たとえばバイオプシー検査を受けた人は、まず弁護士に相談し、検査材料(サンプル)について「証拠保全申し立て」を行うことです。バイオプシーは、腎臓などに針を刺し、細胞の一部を取って顕微鏡で調べる検査ですが、採取したサンプルは「ホルマリン固定」という方法で処理すると長期保存が可能になります。亡くなった場合に行われる病理解剖についても同じことが言えます。
<パート3> 職場の圧力
日本では、法律で「接種を受けるよう努めなければならない」とされているのですが、これを補足する形で「接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益な扱いは許されない」との決議も国会でなされています。したがって、職場や学校での強制は、表向き、国の方針に反し、また国民の「健康権」を定めた憲法にも反することになります。
しかし簡単にはいかないでしょう。たとえば居酒屋チェーンの経営者がワクチンの効果を信じ切っていて、「お客様の安全を守るためのやむを得ない判断だった」と主張したとします。当然、裁判官も人の子であり、ワクチンの効果を信じ切っているでしょうから、被告に同調してしまいそうです。
したがって、この目的で裁判を起こす場合も、「ワクチンの効果は限定的であること」、「パンデミックを抑える効果はないこと」、「副作用が深刻であること」を原告側が証明し、主張しなければならないのです。
<パート4> まとめ
弁護士の多くもワクチンの効果を信じ切っているため、このような訴訟を引き受けてくれる人を探すのが、まず大変です。私に寄せられる情報の中に、「ある地方の弁護士グループが立ち上がったようだ」というのも、ときどきあるのですが、実際に裁判が始まったという話はまだ聞こえてきません。
単なる「お悩み相談」では、問題は解決しません。日本弁護士連合会は「新型コロナウイルスワクチン接種に関する提言書」を発表していますが、提言だけで世の中が変わることもありません。「行動する弁護士の先生方」が、早く名乗りを上げてくれるよう願うばかりです。
(なお、顕微鏡写真を報じた記事はまだ正式な論文になっておらず、また私が転載許諾を求めるメールをドイツの発表者に送っても返信がありませんでした。真偽に関して疑問もありますが、検査の方法は正当なものです)
次回の第5回は「新しいワクチンと治療薬は期待できるか?」です。
【参考文献】
1) Davis K, Six employees and one student of Southern California community college allege civil rights violations. San Diego Union-Tribune, Apr 9, 2022
2) Jarvis J, Class-action lawsuit filed against Akron Children's Hospital over vaccine mandate firings. News 5 Cleveland, Apr 1, 2022.
3) Spencer D, et al., Fired Blue Cross workers who refused COVID-19 vaccine mandate may file lawsuit. Fox 2 Detroit, Jan 25, 2022.
4) Covid vaccine injuries: the German pathologists' findings. Swiss Policy Reaserch, Mar 12, 2022.
(2022.4.25)
―第5回― 新しいワクチンや治療薬は期待できるか?
<パート1> ワクチンの過去、現在
「最初の49週、米国では感染者が28,816人に達していた。翌年の同じ時期、感染者数はおよそ半減したが、この年、ワクチンの集団接種が始まっていた。同年、英国では、ワクチン接種はほとんど進んでいなかったが、それにもかかわらず感染者数が前年に比べ、やはり大きく減少していた。この減少が、果たしてワクチンの恩恵だったのか、それとも自然の増減だったのか、判断は困難」
この文章、実は、いまから65年ほど前、ポリオ(小児麻痺)が世界的に大流行していたころの記録です。
インフルエンザ・ワクチンの歴史も見ておきましょう。医薬品の信頼性を確認できる唯一の科学的方法が「ランダム化比較試験」であることは、当ホームページで繰り返し述べてきたとおりです。しかしインフルエンザ・ワクチンに関して、そのような調査は日本で一度も行われたことがありません。「ワクチンだから」効果があるに決まってる、という思い込みだけで接種が続けられてきたのです。
さすがに海外では、不十分ながらも調査データがあり、それらを集めて再評価をした、という研究発表が最近ありました。結論は、接種すれば感染を半分くらいに減らせる(かもしれない)ということと、重症化を防ぐ効果はいっさいないというものでした。日本で集団接種が始まってすでに60余年、今さら言われても・・・、という話なのです。
ランダム化比較試験は、ボランティアを偏りなく2群に分け、一方に本物の医薬品を、他方にプラセボ(偽薬)を割り当てて、追跡するという調査法です。誰がどちらの群に割り当てられたかは、本人にも、また医師にも内緒にし、コンピュータだけが知っているという状態で行われます。この一見、明快な調査法も、誤りの入り込む隙が無数にあり、それだけ製薬企業による隠ぺい、ねつ造の温床ともなってきました。
<パート2> 裏切られた新薬
インフルエンザの特効薬として有名なタミフルはどうでしょうか? 米国の当局が認可したのがおよそ20年前。私もこの薬をしばしば処方してきましたが、患者さんからは「お陰様で、あのあとすぐ熱が下がりました。よく効く薬ですね!」という言葉が返ってきます。権威あるWHOやCDCも推薦していて、世界中で使われている薬です。
数年前、イタリア、オーストラリア、米国、それに英国の共同研究チームが、タミフルの試験結果を報じた論文をすべて集め、総合評価を下したという研究発表をしました。なんとかランダム化比較試験らしきものが世界中で83件行われていましたが、まともなものは23件しかなく、分析結果も、がっかりするものでした。つまり、「インフルエンザに感染すると7日間ほど発熱などの症状が続くが、タミフルを服用すると、それが6.3日に短縮される」というもので、重症化を防ぐ効果も、まったく認められませんでした。
「薬を飲んだらすぐ熱が下がった」という人は、薬を飲まなくても治る時期だったのです。WHOもCDCも、そして専門家の言うことも、あてにはなりません。
<パート3> コロナワクチンの宿命
インフルエンザなどのワクチンは、その製造法から「不活化・・・」とも呼ばれます。文字通り、ウイルスをバラバラにして、病原菌としての活性をなくしたものという意味です。しかしコロナウイルスには、他のウイルスと決定的に異なる点があります。コロナのトゲトゲ蛋白自体が強い毒性を持っていて、致命的な副作用の元凶になっているということです。不活化してもそのまま残るため、リスクは同じなのです。
<パート4> まとめ
感染症に限らず、どの新薬も、発売当初は製薬企業の巧みな宣伝戦略に医師が踊らされ、ヒット商品のようにもてはやされます。その後、10年以上の歳月をかけた再評価(市販後調査)がなされるようになると、最初はだれも気づかなかった副作用が浮き彫りになってきます。これは、高血圧、糖尿病、高脂血症など、あらゆる病気の治療薬で一般的に認められる事象です。
医薬品は、体内の特定の細胞、特定の部位(作用点と呼ばれる)に結びつくことによって効果が発揮されるよう設計されています。しかし、人間の体は複雑ですから、ほかにも作用点がたくさんあって、予期せぬ反応が出ることになります。これが、短い時間では見つけることができない「副作用」なのです。
これまでお寄せいただいたお便りの中で多かったのは、「試験期間があまりに短く、安心できないと思った」というご意見でした。世の中には、そう思った人と、思わなかった人がいたことになります。
いまのところ、新型コロナのワクチンや治療薬で、安心して使えるものは、ただのひとつもありません。コロナの時代も、そろそろ終わりに近づいていますので、いまさら新薬に飛びつき、副作用の被害だけが残ったという愚は避けたいものです。
次回の第6回は、「新型コロナはこれからどうなる?」です。
【参考文献】
1) Rutstein DD, How good is the polio vaccine? The Atlantic, Feb, 1957.
2) Montedori A, et al., Modified versus standard intention-to-teat reporting: are there differences in methodological quality, sponsorship, and findings in randomized trials? A cross-sectional study. Trials, 12: 58, 2011.
3) Hammond J, et al., Oral nirmatrelvir for high-risk, nonhospitalized adults with Covid-19. N Engl J Med, Apr 14, 2022.
4) Demicheli V, et al., Vaccines for preventing influenza in healthy adults (Review). Cochrane Database Syst Rev, Feb, 2018.
5) Jefferson T, et al., Oseltamivir for influenza in adults and children: systematic review of clinical study reports and summary of regulatory comments. BMJ, Apr 9, 2014.
(2022.5.2)
―第6回― 新型コロナはこれからどうなる?
<パート1> 過去に流行したウイルスからわかること
今から100年ほど前のこと、「スペイン風邪」と呼ばれる恐ろしい伝染病が大流行しました。肺炎などで死亡した人が多く、致命率10パーセント以上。世界で5千万人が命を落としたとされています。現代の人口に換算すれば1.8億人です。発生源は、スペインでなく中国との説が有力です。そのウイルスは3年後、消滅しました。
記憶に新しいのは、今から20年ほど前に流行したSARS(サーズ)です。重い肺炎を起こし、致命率がやはり10パーセントと報じられ、世界中がパニックに。原因は中国で発生したウイルスで、幸い、日本に上陸することなく、1年半ほどで終息しました。日本が流行から免れた理由は、海外からの入国者がまだ圧倒的に少ない時代だったからです。
いわゆる「普通のカゼ」は、その約3割がOC43という名のコロナウイルスによるものです。複数の研究者が、「このウイルスは130年前に世界的に大流行し、徐々に弱毒化しながら、今まで残ってきたもの」と報告しています。
<パート2> インフルエンザはなぜ季節性なのか?
毎年、冬になるとインフルエンザが流行りますが、なぜ夏にはないのでしょうか? 米国で行われた動物実験で、インフルエンザのウイルスは、高温・多湿の環境におかれると、分裂する頻度と感染する能力が極端に低下することがわかりました。
そのため、北半球が夏になると、高温・多湿の環境におかれたウイルスは、ほとんど死滅してしまいます。その間、季節が逆の南半球では、ウイルスが元気いっぱい増殖し、人から人へと感染を繰り返します。やがて、そこも夏になると、ウイルスは死滅します。
では季節が夏から冬に変わったとき、インフルンザ・ウイルスはどこから来るのか? 答えは簡単です。北半球と南半球を行ったり来たりする旅行者が持ち込んでくるのです。スペイン風邪が大流行した当時は第一世界大戦の真っただ中で、兵隊がウイルスをばらまいていました。新型コロナには、そんな「季節性」がなく、夏にもかかる「普通のカゼ」と似ています。
<パート3> ウイルスはどう変身していくのか?
ウイルスが分身を作る際、複製された遺伝コードに、たまたま「コピーミス」が生じることがあります。そのコピーミスによって作られたウイルスの分身では、たとえばトゲトゲ蛋白の形が少し違ったものになるかもしれません。
ほとんどのコピーミスは、些細なものですから、ウイルスにとっても、また感染した人間にとっても影響はありません。しかし、軽微なミスも、少しずつ溜まっていくうち、増殖する能力や病原性に強い影響を与えるものも出てきそうです。
ウイルスの立場になって考えてみましょう。コピーミスによって、もし病原性がすごく強くなったとすると、感染した人間は、すぐ重症になり、死亡するか、病院に隔離されてしまい、伝染を広げていくチャンスを失います。一方、伝染する力が高まれば、あっという間に多くの人間に移っていくことができますから、仲間を増やすチャンスです。
<パート4> まとめ
専門家がよく口にするのは、「感染者が増えると地域全体で免疫力が高まり、流行は収束する」という説です。いわゆる集団免疫です。米国でわかりやすい実験が行われました。15人の健康なボランティアに風邪のコロナウイルスを感染させ、1年後に再び同じことをしました。その結果、1年後も、やはり全員が発熱などの症状を示したということです。一度の感染で免疫がついても、短期間で効力が切れてしまい、感染は繰り返すのです。
では、なぜスペイン風邪やSARSは終息したのでしょうか?
多くの研究者が指摘するのは、やはり感染予防に対する人々の理解が深まったから、ということです。「マスク着用」、「手洗い励行」、「ソーシャルディスタンシング」という3つのフレーズは、実は100年前に作られたものです。加えて、時を経るごとにウイルスの病原性が弱まり、感染力は高まっていくという、自然の摂理も働らいたでしょう。この摂理が働くのは、大流行によってウイルスの分裂が激しく繰り返された場合に限ります。
ただし、反論もあります。「エボラ、ジカ、肝炎などのウイルスは、弱毒化せずに残り続けている」という反論です。エボラの場合、感染する人が圧倒的に少ないため、自然の摂理が働きません。ジカ熱は、何年か前に南米で大流行した感染症で、蚊がウイルスを媒介します。したがって、蚊を退治できたかどうかの問題でしかありません。肝炎ウイルスは、感染力が弱いことに加え、人間の体内にずっと残る性質があるため、そのまま変わることなく社会に居座ってしまったのです。
新型コロナウイルスは、「しだいに弱毒化して落ち着いたあと、やがて普通の風邪ウイルスとして残っていく」というのが最新エビデンスに基づく考察の結論です。
次回の第7回は、「誤った統計学が世界を狂わせた?」です。
【参考文献】
1) Holmes B, Why SARS disappeared in 2003 while the coronavirus keeps on spreading. Genetic Literacy Project, Aug 17, 2020.
2) Zelazko A, How long did the flue pandemic of 1918 last? Britannica, Mar 14, 2020.
3) Bamford C, The original Sars disappeared – here’s why coronavirus won’t do the same. The Conversation, Jun 5, 2020.
4) Spanish flu: the deadliest pandemic in history. All About History, Mar 13, 2020.
5) Flu virus trots globe during off season, mixes with other viral strains. ScienceDaily, Sep 21, 2007.
6) The reason for the season: why flu strikes in winter. Harvard University The Graduate School of Arts and Sciences, Blog, Dec 1, 2014.
(2022.5.9)
―第7回― 専門家がだまされた統計学とは
<パート1> 専門家たちの言い分
専門家と称する人たちによるワクチンの説明が、突然、変わりました。テレビを見ていてお気づきだったでしょうか? 「ワクチンは感染を予防するものでなく、重症化を防ぐ効果があるので、受けてほしい」と。ワクチンは感染予防のためだったはずなのですが、いつの間に・・・?
この話が本当なのか検証してみましょう。何事も比べてみなければわからないものです。たとえばファイザー社が新型ワクチンを当局に申請するために行った調査は、ワクチン群をプラセボ群と比べるという(形だけは)正当なものでした。しかし数々の不正操作が行われていたのは、すでに紹介したとおりで、しかも、このスタイルの調査はその後いっさい行われていません。
<パート2> 根拠とされるデータの疑義
「ワクチンは重症化を防ぐ」との主張の根拠になっているのは、アラビア半島のカタールで行われた調査のデータです。対象はすべてPCR検査を受けに来た人たちで、陽性と判定された人のうち「ワクチン接種を2回受けていた人」の割合を調べたものでした。
問題は、比べた相手が公平なものだったか、どうかです。年齢や性別はもちろん、持病、服薬、検査データ、食習慣、運動習慣、職業、居住地、さらには学歴など、ありとあらゆる情報を調べ、完全にそろえたグループを準備して比べなければ、ワクチンの効果だったのか、あるいは単に体質や環境による違いだったのか、区別することができません。カタールで行われたこの調査では、PCR検査で感染なしと判定された人たちが比べた相手でした。
次のグラフは、重症化した人たちと感染なしの人たちの接種率の違いから「ワクチンの有効率」を計算し、経時的に並べたものです。感染予防に対する有効率(青色のグラフ)は、4ヵ月目あたりから急速に低下していますが、重症化を防ぐ有効率(ピンクのグラフ)は半年くらいまで続いているように見えます。
<パート3> ウソを見抜く
論文には、「検査を受けに来た人たち」という共通項があるため、両群は似た者同士であり、比べることに問題はない、と書いてあります。読者からの批判を予め想定した言い訳ですが、専門家と称する人たちは、このひと言に騙されてしまいました。
この説明が誤っているのは明らかです。検査で陰性だった人たちは、たとえば普段からマスクをきちんと着け、会食も控えるなど慎重派だったかもしれません。だからこそ感染せず、だからこそワクチン接種も早々に済ませていただけ、なのではないでしょうか。比べ方が公平でなければ、接種率の違いは無意味となり、有効率も間違ったものになります。
この論文には、もうひとつ重大な問題があります。性別、年齢、人種、検査を受けた動機、それに検査を受けた日の5項目だけ調べ、それらが両群でそろうよう月ごとに人数を加減していたのです。そのため、論文の記述が非常にわかりにくく、専門家が読んでも正しく理解できなかったのではないかと想像されます。
このような操作は、間違いとまで言えないものの、これまで論文不正の温床となってきました。私が行なったコンピュータ実験によれば、患者データを一人分、「なかったことにする」だけで、差がないはずのデータも「両群で統計学的に明らかな差を認めた」という話にすり替えてしまうことができます。
<パート4> まとめ
この方法は、test-negative(検査陰性)デザインと呼ばれ、最近の流行となっています。コンピュータ上のデータを集計するだけで済むため、予算も人手もかかりません。研究者にとって業績を上げる格好のテーマであり、製薬企業にとっては、自社製品を思い通りに宣伝できる便利な手段になっています。
「ワクチンは重症化を防ぐ」との説明は間違っています。専門家をも騙してしまったこの統計学は、今後もワクチンを宣伝するための道具として使われていくものと思います。くれぐれも騙されることのないようお願いします。
次回の第8回は、「総括:コロナ社会のこれからを考える」です。
【参考文献】
1) Thomas SL, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine through 6 months. N Engl J Med, Sep 15, 2021.
2) Goldberg Y, et al., Waning immunity after the BNT162b2 vaccine in Israel. N Engl J Med, Oct 27, 2021.
3) Mizrahi B, et al., Correlation of SARS-CoV-2-breakthough infections to time-from-vaccine. Nature Commun, Nov 4, 2021.
4) Chemaitelly H, et al., Waning of BNT162b2 protection against SARS-CoV-2 infection in Qatar. N Engl J Med, Dec 9, 2021.
5) Accosi E, et al., Association between 3 doses of mRNA COVID-19 vaccine and symptomatic infection caused by the SARS-CoV-2 omicron and delta variants. JAMA, Jan 21, 2022.
(2022.5.16)
―第8回― コロナ社会のこれからを考える
<パート1> ワクチンの総括
新型コロナのワクチンが、どれくらい有効で、どれくらい危険なのか、改めてエビデンスをまとめておきましょう。信頼できるデータから断言できるのは、(1) 高齢者はほとんど免疫がつかない、(2) 50歳以下では抗体ができるが、2ヵ月で効果が半減する(感染率が2倍になる)、(3) 接種しても感染する、(4) 重症化は防げない、の4点です。
副作用の実態は不明ですが、論文として報告されているだけでも、以下のようなものがあります。
・血小板減少症(脳出血、性器出血、皮下出血、歯肉出血など)(倍率不明)
・心筋炎、心外膜炎、心不全(3.24倍)
・腎炎(倍率不明)
・多形滲出性紅斑(もっとも多いが倍率は不明)
・劇症型心筋炎(致命的、倍率不明)
・細菌感染症(蜂窩織炎、腎盂腎炎、肺炎など)(倍率不明)
他にも、眼疾患(強膜炎、網膜など)、虫垂炎(1.40倍)、帯状疱疹(1.43倍)など多数あり、全部合わせると、とても無視はできない数です。登録システムが日本にはなかったため、副作用で亡くなった方の人数は不明です。このことが国家としてはもっとも反省すべき点であり、国民にとっては最大の不幸でした。
<パート2> これからも、なすべきこと
日本は、亡くなった人の数が人口当たりに換算して世界でもっとも少なく(統計が発表されている国に限る)、米国の12分の1以下です。日本人に感染が少なかった理由として、「遺伝子が違う」、「かつてコロナの大流行があった」、「結核予防のBCGを受けていた」などが識者によって語られていますが、それらを証明するエビデンスはありません。
最大の要因は、日本人の生真面目さなのでしょう。挨拶代わりにハグやキス、握手などをする習慣がないことも、感染の爆発的な流行を抑えてきた要因のひとつです。エイズの流行を予測したシミューション研究によれば、日本人は「一人当たりの性的交際相手」が圧倒的に少なく、拡大を防いだ最大要因になっていたそうで、この点も見逃せません。
着目すべきは、「ワクチン接種率の高い国ほど、感染する人が多い」というデータがあることです。なぜかと言えば、個人のレベルでは心の油断が生まれるからであり、国家のレベルでは「ワクチンパスポート」に象徴されるように、愚かな緩和策がとられてしまうからです。
やはり基本はマスクなのです。人口密集地にある我が家では、吸気口のフィルタが、いくら取り換えても1か月後には真っ黒になってしまいます。そんな地に住む私は、ウイルスばかりでなく、大気汚染から身を守るためにも昔から外出時にマスクを使ってきました。
<パート3> これから止めるべきこと
大自然も、また人間の体も、悠久の時を経て最良のバランスを獲得し、現在に至っています。過去、人類が学んできたのは、人間の浅知恵で大自然や人体に手を加えると、必ず状況が悪化してしまうということです。コロナワクチンこそ、その典型で、ウイルスはそれに抗するよう変異を続けるようになり、終息が遅れてしまうだけです。
当ホームページの最終結論は、まず直ちにワクチン接種を止めること。もうひとつは、そろそろPCR検査も止めてよいのではないかということです。私の勤務先では、全職員が毎週PCR検査を受けてきましたが、集団感染を防ぐことができませんでした。
新型コロナに感染した高齢者は狭い部屋に10日ほど隔離されてしまうため、生活機能が著しく衰え、残りの人生を全うできなくなってしまいます。若い人が感染しても似たようなものです。無症状の感染者まで閉じ込めてしまうことに、医学的な意義を見出すことはできません。これからは発想を変えた取り組みが必要です。
<パート4> 総まとめ
さて、『過ちを繰り返さないために』と題して、8回にわたり総括を行ってきました。世界の医学専門誌や大手メディアは、新型コロナに関する記事を大幅に減らし始めています。残る心配事は、ワクチン接種を受けた人たちが、数年後、深刻な自己免疫病を起こさないかということと、妊娠中に接種を受けたお母さんから生まれた子供に、何か重大な障害が生じていないのかの2点です。
そこで当ホームページも、しばらく更新を休止とし、情報の整理をしながら今後の展開を待つことにしました。再開は、本年9月の第一月曜日を予定しています。
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