令和6年7月22日

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今週の新情報

(2024.7.22)
Q&A 統計データで因果関係を証明できるか?

病気の原因を特定するのは、なかなか大変です。

たとえばウイルスなど特定の病原体が原因であることを証明するには、その病原体がどの個体にも認められること、その病原体を分離して顕微鏡などで観察できること、それを別の動物などに接種して同じ病気が起こること、そしてその病原体が同じ方法で再び観察できること、などの条件が必要だと昔から言われてきました。

病気の原因は病原体とは限りませんから、さらに解明は困難なものとなります。今回は、先週に引き続き、「ワクチンによって死亡者数が増えたことを統計データから証明できるか?」をテーマに、考察を進めていくことにします。

ところで、前回の当ホームページ記事では、『R言語』と呼ばれる無料ソフトウエアを利用し、分析した結果を提示しました(文献1)。このソフトは世界中で使われており、最近では米国食品医薬品局(FDA)も使用を認めたとされています。しかし、わかりやすい説明書がなく、かつ世界中の研究者がボランティアで新機能をどんどん追加しているため、プログラムコードがブラックボックス化してしまい、手探りで利用するしかないという状況に陥っています。

そのため、先週の当ホームページで掲載したグラフが、正しいかどうかの検証ができていません。実際、グラフの形に不自然さも認められるため、改めて分析プログラムを自作して、計算をやり直してみることにしました。その結果が次のグラフです。

   

図中、最下段のグラフが、前回提示したものとは大きく異なっています。今後は、この結果をもとに、分析を続けていくことにします。

次のグラフは、ワクチン接種数と総死亡者数(固有の変動; 引算で得られた結果であることからマイナス部分もある)を改めて表示したものです。接種回数のグラフには5つのピークが認められます。最初の2つは、「3週、または4週間隔で2回接種を受けること!」との脅迫的なメッセージが国から発せられていた時期と重なり、多くの人が2回ずつ接種会場に駆け込んだ様子がうかがえます。

   

①と②のピークの前後は、なぜか死亡者数の増減がはっきりしません。一方、その後の③~⑤は比較的明瞭なことから、この3ヵ所を拡大し、以下のように並べてみました。

     

3回目から5回目にかけて、2つのグラフ(ワクチン接種数と死亡者数)が徐々に離れていっているように見えます。それがなぜなのか、また両者のパターンがどれくらい似ているのか、そして最終的に両者の因果関係(原因と結果であること)は証明できるのかなど、謎解きを進めていく予定です(文献2)。

【参考文献】
1) The R project for statistical computing. https://www.r-project.org/, accesed: Jul 20, 2024.
2) 岡田正彦, 「考える力」がつくやさしい数学. 講談社+α新書, 2002.








先週までの新情報

(2024.7.15)
Q&A 統計データからワクチン死亡を証明できるか?

「コロナ禍の最中、死亡者数があきらかに増えていた」とする論文が多くなっています(文献1)。パンデミックで世界中が悲劇に見舞われたわけですから、死亡者数が増えていたのは言わば当然です。それより気になるのは、新型コロナワクチンによる死亡の増加をどのように証明するかです。

そのことを考える材料として、2024年7月1日付け当ホームページで以下のグラフを掲載しました。「ワクチン接種数」と「日々の総死亡者数」を示したもので、データの出処は英国オックスフォード大学の研究者たちが立ち上げた、ある組織でした(文献2)。

            《以前使用したグラフの再掲》
     

しかし図中、赤色で示した死亡者数のグラフの右端が不自然な形をしており、当ホームページあてのお便りにもご指摘がありましたので、大元のデータが何であったのかを探ってみました。しかし、どこにも見出すことはできませんでした。

そこで、国内で公表されている統計データをもとに、「ワクチン接種数」と「総死亡者数」との関係を明示するグラフを、改めて作成することにしました(文献3)。ただし、すでに当ホームページで繰り返し指摘してきたように、死亡統計には複雑な要因が絡むため、その分析は簡単でありません。

次のグラフの最上段は、過去10年間(2014~2023年)の日本国内における週ごとの死亡者数を示したものです。とくに日本では高齢者の人口が増加し、死亡者数も年々、増えてきました。そのためワクチン接種のせいで死亡者数が増えたかどうかを証明するには、まず自然増によるものではないことを示す必要があります。

自然増(あるいは自然減)を示すグラフは、ある方法(LOESS法)で求めることができます。その計算結果を赤色のグラフにして重ね合わせたものが、図の2段目です。



次の3段目は、元のグラフ(黒色)から赤色のグラフを引き算した結果です。このグラフには、「年ごとに繰り返される折々の季節変動」と「各年固有の何らかの変動要因」が残っているはずです。具体的な方法は省略しますが、前者を消去した結果が最下段のグラフです。

このグラフは、過去10年の間に繰り返されてきた予測可能な変動が消去されたものですから、最近の突発的な出来事(災害など)による死亡者数の変動を見つけられるかもしれません。

この最下段のグラフを拡大し、赤色で表示したのが次の図です。図中、青色のグラフは「ワクチン接種数」です。右端がゼロになっているのは統計値の公表が途中で終了したためです。

  

さらに、点線で示した区間を拡大したのが次のグラフです。文献4や5には、示唆に富んだアイデが報告されていますので、次回以降、それらも参考にして分析を進めていくことにします。目標は、万人が納得できるように、わかりやく、かつ説得力ある形でまとめることです。一筋縄にはいきませんので、アイデアのご提供を期待しています。

     
【参考文献】
1) GBD 2021 Demographics Collaborators, Global age-sex-specific mortality, life expectancy, and population estimates in 204 countires and territories and 811 subnational locations, 1950-2021, and the impact of the COVID-19 pandemic: a comprehensive demographic analysis for the Global Burden of Disease Study 2021. Lancet , May 18, 2024.
2) Our World in Data. https://ourworldindata.org/search?q=covid-19, accessed: Jun 27, 2024.
3) 国立感染症研究所 感染症疫学センター, https://exdeaths-japan.org/graph/weekly_cause, accessed: Jul 13,2024.
4) Rancourt DG, et al., COVID-19 vaccine-associated mortality in the Southern Hemisphere. Correalation Research in the Public Interest, Sep 17, 2023.
5) Redert A, Causal effect of covid vaccination on mortality in Uerope. ResearchGate, Feb 24, 2023.








(2024.7.8)
Q&A コロナ後遺症とワクチン副作用のその後?

「コロナ後遺症」とは、新型コロナウイルスに感染したあと、数ヵ月以上にわたり何らかの体調不良が続く状態のことです。コロナ後遺症の問題については、すでに2023年10月2日付けの当ホームページ記事で詳しい解説を行っていますので、今回はその続編です。

米国では、コロナ後遺症について以下のようなまとめがなされています(文献1,2)。
 ・症状は多岐にわたり200種類以上ある
 ・疲労感、頭のモヤモヤ感、種々の痛み、心拍の異常、息切れ、胃腸症状が代表的
 ・子供、大人、性別、人種を超えて認められるが、女性は男性に比べて2倍多い
 ・米国では7%の人が症状を訴えているが、白人以外、とくに貧困層に多い
 ・多くの人は1年以内に症状が回復している(異論もある)

一方、英国では、新型コロナウイルスに感染した6405人分のデータが集計されています。それによれば、896人(14%)が、1ヵ月以上何らかの症状があったと訴えていることがわかりました(文献3)。しかし、同国の基準に照らし合わせると、コロナ後遺症と判定された人は48人(5.4%)に過ぎませんでした。中年(平均年齢45.8歳)に多く、男女差なく、人種ではむしろ白人に多い傾向があり、経済状態(収入)も無関係でした。つまり米国からの情報とは、かなり異なっていたのです。

このデータを発表した研究者は、英国ではすべての病名がコード化されているが、コロナ後遺症のコードが作られたのは最近であり、しかも国際的に統一されたものではないため、集計結果にも国によるばらつきが出てしまう、としています。また人種により、あるいは収入により医療機関を受診できない人たちも多いため、いっそう集計が難しいとのことでした。

コロナ後遺症の疑いと判定されても、昔から知られている病気(慢性疲労症候群、線維筋痛症、体位性頻脈症候群など)と酷似していて区別が難しいことも少なくありません。また以前から潜在的にあった持病が、感染をきっかけに症状を呈するようになった可能性もあります。



日本では、この問題についての研究報告がなされています(文献4)。コロナ後遺症の専門外来を受診した731人を調べたところ、50人(6.8%)に後遺症とは別の病気が見つかり、16人(32%)はすぐ治療を始める必要があったとのことです。見つかった病気で多かったのは、バセドウ病、糖尿病、低血糖症、家族性高コレステロール血症、鉄欠乏性貧血、喘息、パーキンソン病、悪性リンパ腫、片頭痛などでした。

治療についての研究も盛んに行われています。米国スタンフォード大学とファイザー社の共同チームは、パキロビッドパックというコロナ治療薬が後遺症にも効くかどうかを調べています(文献1)。

新型コロナウイルスは本体がRNAで、ヒトや動物の細胞内で自らのRNAを複製します。このRNAには、さまざまな情報が含まれていて、そのひとつがRNAを切り離して機能を発揮させるための「切断酵素」です。その酵素の働きを止めてしまうのが、パキロビッドパックの主成分です。

この薬には、もう一つの成分が隠し味のように配合されています。体内に入った薬などの異物を分解する(正確には、水溶性を高める)酵素が肝臓にあります。もう一つの成分とは、主成分の効果を長持ちさせるため、この酵素をブロックするという薬です。しかし、そのため困ったことが起こります。

つまり、服用中のほかの薬まで分解されなくなり、たとえば血圧の薬を飲んでいる人は、有効成分がいつまでも体内に残り、血圧が下がり過ぎるというリスクを抱えることになるのです。医師向けの添付文章には、一緒に服用してはいけない薬の膨大なリストが載っているのですが、これを厳格に守るのは至難の業となっています。

アメリカの研究チームは、コロナ後遺症と判定された人たちに、この薬を15日間にわたって服用を続けてもらい、諸症状が改善するかどうかを見届けました。結果は、プラセボ(偽薬)に比べて症状の変化に違いはない、というものでした。

現在、日本で認可されているコロナの飲み薬(抗ウイルス薬)には、ラゲブリオカプセル(米国メルク社)、ゾコーバ錠(塩野義製薬)、それにパキロビッドパック(ファイザー社)の3種類があります。それぞれの問題点は当ホームページQ4「新薬の総合評価」で詳述したとおりですが、安心して服用できる薬はいまのところありません。

さて、コロナ後遺症は、依然として捉えがたいものであり、検査方法も治療法も定まっていないというのが現状です。まず行うべきは、隠れた病気がないかどうかを病院で調べてもらうことです。あきらかな病気のないことが確認されたら、「無理をしない」、「仕事復帰を焦らない」、「怪しい民間療法に手を出さない」、「症状は必ず軽快していくものであることを心に留め、じっくり療養する」ということに尽きるように思われます。

なお、ワクチン接種による副作用も深刻な健康被害をもたらしていますが、コロナ後遺症との相違について不明な点が多く、研究の進展を待つしかなさそうです。

【参考文献】
1) Geng LN, et al., Nirmatrelvir-Ritonavir and symptoms in adults with postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection, the STOP-PASC randomized clinical trial. JAMA Int Med, Jun 7, 2024.
2) Belluck P, New report underscores the seriousness of long covid. New York Times, Jun 5, 2024.
3) Knuppel A, et al., The long COVID evidence gap in England. Lancet, May 7, 2024.
4) Nakano Y, et al., Occult endocrine disorders newly diagnosed in patients with post-COVID-19 symptoms. Sci Rep, May 5, 2024.









(2024.7.1)
Q&A ワクチンメーカーに対する訴訟が増加?

新型コロナワクチンによる健康被害に対して国家賠償を求めた訴訟が、国内で少なくとも4件あります(文献1)。米国でも、議員がmRNAワクチンを禁止する法案を提出したり、州の司法長官がワクチン・メーカーを訴えたという話が少なくとも3件ありますので、概要をまとめました。

1件目は米国のアイダホ州で、共和党議員が「mRNAを利用したワクチンをいっさい禁止する」という主旨の法案を議会に提出したという出来事です。詳細は、当ホームページの2023年3月27日付け記事で紹介しました(参照するには青文字をクリック;参照先のタイトルをクリックするとここに戻る)。

2件目は、テキサス州の司法長官がファイザー社を告発したというニュースです(文献2,3)。容疑は、「有効率を95%と宣伝しているが、対象者の総数が反映されない方法で求めたもので、消費者の誤解を誘うように仕組まれている、正しい計算では0.85%にしかならない」、「調査はわずか2ヵ月間しか行われておらず、2ヵ月後にどうなるかわからない状況だった」、「人から人への感染を実際に防げるかどうかが証明されていない」などです。

さらに、「実際、一部の地域では、ワクチン接種がいっせいに開始されたあと、感染して死亡した人の割合が高くなっていた」、「ワクチンの欠陥を指摘する人たちを威嚇し、犯罪者呼ばわりした」、「SNSメディアに対し、真実を語る人たちを黙らせるよう強権的に介入した」など、わかりやすい言葉とともに、市民が受けた不利益を断固として回復させる、と決意表明をしています。

訴状の中で気になるのは、ワクチン接種の開始後、感染して死亡する人の割合が高くなっていた、との指摘があることです。そこで、日々のワクチン接種件数と(ワクチン接種とは無関係に)コロナ感染で死亡した人の数をグラフにしてみました。データは日本人のものですが、海外の組織が集計し、国際比較のため人口百万人当たりの人数で補正したものとなっています(文献4)。このグラフをどう解釈すべきか、ご意見をお待ちしています。



もうひとつの訴訟は、カンザス州の司法長官によるものです(文献5)。

訴状の内容は、「ファイザー社は、このワクチンに心筋炎、心外膜炎、流産、死亡など深刻な副作用があることを知りながら、安全であるとの虚偽の説明をした」、「ワクチンを接種したかどうかにかかわらず、カンザスの消費者保護法にあきらかに違反している」、「ウソで固めた欠陥商品の使用を強要された一般市民のため、正義の戦いをする」などとなっています。これらの罪状で、15億円の制裁金を課すとのことです。

この訴状で特筆すべきは、「ファイザー社は
独自の副作用データベースを持っていて、米国のワクチン有害事象登録システム(VAERS)の全データと米国疾病予防管理センター(CDC)のデータをすべて含み、なおかつ消費者や医師からの通報、さらに学術誌に発表されたデータまで網羅しているが、公開されていない」との主張がなされていたことです(文献6)。

日本で行われている裁判でも、ワクチンメーカーに対する徹底した
情報公開請求が、勝訴への突破口となるかもしれません。

【備考】 州の司法長官について
日本にはない制度で、一般市民の投票によって選ばれる身分。元米国大統領のビル・クリントン氏も一時期、この肩書きを有していた。政治家への登竜門としての側面もあり、州の司法長官の言動には多少の政治色がつきまとう。

【参考文献】
1) 『ワクチン薬害救済基金 特設サイト』, https://kiharalaw.jp/vaccine-drug-relief-fund/#jump_vaccinelogcat2-sub1 (木原功仁哉法律事務所の許諾を得て引用)
2) Attorney General Ken Paxton sues Pfizer for misrepresenting COVID-19 vaccine efficacy and conspiring to censor public discourse. Ken Paxton Attorney General of Texas, Nov 30, 2023.
3) Stempel J, Pfizer is sued by Texas over COVID vaccine claims. Reters, Dec 1, 2023.
4) Our World in Data. https://ourworldindata.org/search?q=covid-19, accessed: Jun 27,2024.
5) Phengsitthy N, Kansas sues Pfizer over Covid-19 vaccine's safety, efficacy. Bloomberg Law, Jun 18, 2024.
6) Pierson B, Kansas accuses Pfizer of misleading public about COVID vaccine in lawsuit. Reuters, Jun 18, 2024.








(2024.6.24)
Q&A 鳥インフルエンザは人類の脅威となるか?

国内では、まだ大きな話題にはなっていませんが、海外では鳥インフルエンザのニュースが急増しています。最新の情報をまとめました。

医学専門誌にも、鳥インフルエンザに関する論文の発表が相次いでいます。まず2024年3月下旬、高病原性の鳥インフルエンザのウイルス(A型,
H5N1)が、米国内の牛舎で飼育されている乳牛の乳(以下ミルク)から検出された、との報告がありました(文献1)。一連のニュースのキーワードは「H5N1」です。

インフルエンザウイルスの粒子表面には、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)という2つの突起があり、コロナウイルスのように、ヒトの細胞に侵入したり、あるいは細胞内で増殖したあと細胞外に飛び出していく際に、重要な役割を担っています。A型の場合、Hは18種類、Nは11種類の亜型が知られています。毎冬、日本で流行を繰り返してきたのは、A型の「H3N2」と「H1N1」、それに「B型」の3種類です(B型は多様性がなく、亜型の分類は行われていない)。

   
ウイルスが検出されたのは、米国ニューメキシコ州のある牛舎で搾られたミルクからで、ウイルスの変異も8種類ありました(変異の多くは病原性や感染力に影響なく、単なる個体差)。ミルクだけではなく、スカンク、猫、鳥からもインフルエンザウイルスが検出され、すべて2020年に発生した鳥インフルエンザウイルスと同系統のものと判定されました。

問題は、加熱処理がまだなされていない生乳にH5N1が生きたまま含まれていたことで、4℃の低温で保存してもウイルスは5週間、生存することが確認されました。また、そのミルクを小動物(ラット)に与えたところ、4日以内に全個体が死んだ、との報告でした。

生乳が製品として市場に出回るまでには、63℃で30分間、加熱処理することが法律で定められています。感染した牛から搾った生乳を、この条件で滅菌する実験が行われ、(感染力のある)H5N1は確かに検出されなくなりました(文献2)。

気になるのは、ヒトに感染するかどうかです(文献3)。過去20年間、23の国々でヒトへの感染があり、致命率が50%とも言われてきましたので、極めて危険な感染症になりうるのです。2024年3月下旬、テキサス州に住む一人の酪農家が、右眼の充血と違和感を覚えました。病院では、結膜の出血とともに激しい眼ヤニを認めましたが、その以外の全身症状はいっさいなく、発熱もありませんでした。診断はH5N1感染でした。

その人は、乳牛の世話をする仕事に就いていますが、どの牛も元気だったとのことです。しかし、彼が世話をしていた牛は、すでに感染している牛と接触のあったことが、あとで判明しました。この酪農家は、牛の世話をする際、手袋は着けていましたが、マスクや保護眼鏡は使っていないとのことでした。医師は、自宅隔離を指示するとともに、タミフル(インフルエンザ治療薬)を処方しています。

H5N1が世界各地に広がっていく状況は、まだ詳しくわかっていません。海洋生物の繁殖地として知られるアルゼンチンのバルデス半島では、今年になってゾウアザラシの死骸が折り重なっていた、とある研究者は取材に答えています(文献4)。

すでにアルゼンチンを含む南アメリカでは、過去1年間で2万4千頭のアシカが死に、ゾウアザラシにも感染が及んでいるという報告なのです。さらに感染は、リス、スカンク、イルカ、北極グマなどにも広がっていて、あるウイルス研究者は「これほど多くの種類の動物に感染が広がることは、かつてなかった」とコメントしています。

渡り鳥が大陸を越えてウイルスを運んでいるのは確ですが、その後の生態はまだよくわかっていません。ある海洋生物研究者は、「狭い地域に密に生息し、互いに唾液をまき散らすアザラシやアシカ、オットセイなどがウイルスを爆発的に増殖させているのではないか」と述べています。

2024年5月24日、「ある農場の乳牛の肉からH5N1が検出された」との発表が政府機関からなされました(文献5)。この牛は直ちに殺処分され、肉牛ではなかったため、幸い食肉が市場に出回ることはありませんでした。

しかし、食用の牛に感染が広まるのは時間の問題であり、肉を食べるときは十分に注意する必要があると、当局の専門家は述べています。動物の肉にはウイルスだけでなく、さまざまな病原菌が付着しているため、肉を生で食べるのは止めるべきであり、とくにハンバーグは、調理の際、内部の温度が63℃以上になるよう加熱すべきと警告しています。

気になるワクチンについては、米国疾病予防管理センター(CDC)の専門家が「H5N1ウイルスを利用して迅速に製造する準備をしておくべき」と述べています(文献3)。mRNA型のワクチンを想定しての発言かもしれません。

どのようなタイプのワクチンであっても、効果は限定的であり、かつ抗原原罪理論によって重大な不利益が生ずる可能性があります(青文字クリックで解説文に移動)。行政やメディアの発表を鵜呑みにすることなく、一人一人がコロナ禍で学んだ予防策を、生活の知恵として忘れないようにしたいものです。

【参考文献】
1) Guan L, et al., Cow's milk containing avian influenza A(H5N1) virus - heat inactivation and infectivity in mice. N Engl J Med, My 24, 2024.
2) Kaiser F, et al., Inactivation of avian influenza A(H5N1) virus in raw milk at 63℃ and 72℃. N Engl J Med, Jun 14, 2024.
3) Uyeki TM, et al., Highly pathogenic avian influenza A(H5N1) virus infection in a dairy farm worker. N Engl J Med, Jun 6, 2024.
4) Mandavilli A, et al., Bird flu is infecting more mammals. What does that mean for us? New York Times, Apr 22, 2024.
5) Anthes E, et al., Bird flue virus found in beef tissue. New York Times, May 24, 2024.









(2024.6.17)
Q&A 海外のメディアが報じた最近の話題から?

当ホームページには、新型コロナワクチンに関するさまざまな情報が日々、送られてきます。記事の作成には大いに役立っているのですが、中にはデマやフェイクに端を発していると思われるものも少なからずあり、真偽を見わけるのもなかなか大変です。

今回は、信頼度の高い海外メディアが報じたニュースをいくつかまとめました。

一つ目は、2代にわたる米国大統領の顧問を勤め、先ごろ引退したアンソニー・ファウチ博士(83歳)についてです(文献1,2)。氏は、米国における新型コロナ感染症を取り仕切ってきた人として知られています。

2024年6月3日に開かれた米国下院の公聴会で、ファウチ氏(以下フ氏)は共和党議員からの「パンデミックを煽る一部企業への政府資金援助に関わったのか?」との質問に、「ありえない、ばかげている」と答えました。以下は、そのあと共和党議員団との間で交わされた問答です。

議員→ パンデミックが始まったばかりのころ、コロナを心配する必要はなく、マスクもいらないと言っていたではないか?
フ氏→ ・・・・・

議員→ ワクチンメーカーより利益供与を受けたのではないか?
フ氏→ 数十年前、ある薬の研究で年間120ドル(現在のレートで約18,000円)の資金を受けたことはある

議員→ 6フィート(約2m)のソーシャル・ディスタンスは意味があったのか?
フ氏→ 明確なエビデンスがあったわけではない

このようなやり取りが延々と続きました。共和党議員の多くは以前から同氏に批判的で、過激派で知られるある議員は「牢屋にぶち込め」とまで発言をしていたとのことです。

一方、民主党議員は彼をアメリカのヒーローだとして褒めたたえており、共和党議員の発言は「魔女狩りだ」のようだと非難していました。


次のニュースは、米国の有力紙ニューヨークタイムズについてです。この新聞は、危うい医療技術のリスクや医療行政を担う政府機関への批判を、忖度なく記事として取り上げてきたことで知られています。新型コロナウイルスの変異株についても、専門的な分析データをタイムリーに報じるなど、世の中への貢献度には大なるものがあります。

そんな高い評価にもかかわらず、新型コロナワクチンに対する批判的な記事を掲載することは、これまでいっさいなく、2024年5月4日に初めて「ワクチン被害の実態」を報じました。(文献3)。

ワクチン接種を受けたあと、辛い症状で悩んでいるにもかかわらず、医師から相手にされなかったという人たちの声を紹介したあと、アメリカ食品医薬品局(FDA)の要職も務めた専門家が、ワクチン接種で健康被害を受けた人の苦しみは広く認識されるべきと述べたこと、あるいは診断書や診療報酬明細書(レセプト)などに「ワクチンの副作用」である旨の記載がほとんどなく、因果関係の証明は困難であることなどが記されていました。

「たとえワクチンによる健康被害があったとしても、実際に新型コロナに感染した人のほうが深刻」との専門家の意見も併記しているなど、内容は期待外れでしたが、大新聞がこのテーマで初めて記事を掲載したこと自体が大きなニュースだったのです。


最後は、医学専門誌「ワクチン」の編集長を務めるグレゴリー・ポーランド博士についてのニュースです(文献4)。

同氏は、2回目のワクチン接種を受けたあと激しい耳鳴りに襲われました。耳鳴りは、とくに左側で強く、まるで耳の中で犬が吠えているような感じでした。夜、眠ることもできないなど、叫びたくなるほどの辛さだったとインタビューで答えています。・・・それにもかかわらず、この先生はワクチン接種の意義を否定せず、孫にも受けさせたいと語ったとのことです。

以上、3つの気になるニュースをまとめましたが、いずれもすっきりしない内容で、世の中の矛盾と複雑さを浮き彫りにしただけだったかもしれません。


【付 録】 「がんは増えたのか?」
前回の当ホームページでは、「ワクチン接種でがんは増えたのか?」というテーマのもと、増えているように見える4種類のがん死亡について簡単な統計処理を行い、グラフ化したデータを掲載しました。

その後、「すべてのがん死亡」について
週ごとに集計したデータの存在がわかり(文献5)、ファリントン法と呼ばれる方法で分析を行ってみました(R-4.4.0使用)。この分析法は、死亡数の増減が有意なものかどうかを判断する上でもっとも有用とされ、アメリカ疾病予防管理センターが用いているものです。

以下のグラフがその結果です。2013~2020年の8年間のデータ(灰色の各点)の変動をまず学習させ、ワクチン接種が始まった2021年以降の観測データ(青色の各点)について週ごとに統計検定を行ったものです。有意に増加していると判定された週(3ヵ所)が赤丸で表示されています。

結果の解釈は簡単でなく、参考程度としてください。この分析法には、週ごとの実測データが必要です。がんの種類ごとに分析を進めるため、「週ごとに集計したがん死亡データ」の所在について情報提供をお願いします。

   

【参考文献】
1) Radford A, et al., Fauci testifies on the origins of Covid-19, CNN Live Updates, Jun 3, 2024.
2) Mueller B, et al., Fauci grilled bt lawmakers on masks, vaccine mandates and lab leak theory. New York Times, Jun 3, 2024.
3) Mandavilli A, Thousands believe Covid vaccines harmed them, Is anyone listening? New Totk Times, May 4, 2024.
4) Henderson J, Vaccine researchser who developed tinnitus after COVID shot calls for further study. MedPage Today, Mar 9, 2022.
5) 最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計]. https://ganjoho.jp/public/index.html








(2024.6.10)
Q&A ワクチン接種でがんは増えたのか?

「新型コロナワクチンの接種でがん死亡は増えたのか?」という疑問に対し、統計分析の手法で取り組んだ論文が日本とドイツの両国から相次いで発表されました(文献1,2)。そのデータをここに再現し、考察を加えてみました。

以下の4つのグラフは、論文で使用されたデータと同じ公開資料をもとに(文献3)、私が改めて統計分析を行って作成したものです。それぞれ、横軸は2010年から2022年まで13年間の時間の流れです。縦軸は、増加傾向が認められた4種類のがん死亡率です。がんに限らず、死亡率は年齢構成によって大きく変化しますので、「昭和60年の年齢別人口構成」で補正した値を使っています。

図中、赤色の線分は新型コロナウイルス感染症が流行する前10年間の傾向(回帰式)を、また青色で示した2つの線分はその変動幅(95%の確からしさ)を示しています。

   

   

がんの原因はさまざまです。たとえば近年、胃がんの死亡率が大幅に減少していますが、日本人の塩分摂取量が減ったためと考えられています。一方、すい臓がんによる死亡が急増中ですが、原因や増加理由は不明です。

がん死亡を考えるとき、潜伏期(がんの原因が作用してから発見されるまでの時間)も重要です。たとえば胃がんの潜伏期は非常に長く、15年から25年と考えられています(文献4)。肺がんについて、エックス線検査による放射線被曝との関係を調べた研究によれば、その潜伏期は非常に短く、3年程度と結論されています(文献5)。

今回は、これら4つのグラフをじっくり眺めていただき、以下の疑問点についてご意見をお寄せください。

 疑問点1: なぜ特定のがん死亡だけが3年間で増えたのか?

 疑問点2: ワクチン接種との因果関係をどうすれば証明できるのか?

なお死亡率の変化を判断するための計算方法はいろいろあり(文献6)、今回はもっとも簡単なもの(直線回帰)を利用しました。

死亡率の予測計算は、分析法により大きく異なるとの指摘があるため(文献7,8)、当ホームページでも検討をさらに進め、計算ができしだい第二報を掲載する予定です。なお、より精密な計算を行うには「がんの種類別、
年別、月別、週別の死亡率」が必要ですが、いまのところ所在がわかりません。

【参考文献】
1) Scherb H, et al., Annual all-cause mortality rate in Germany and Japan (2005 to 2022) with focus on the covid-19 pandemic: hypotheses and trend analyses. Med Clin Sci, Mar 14, 2023.
2) Gibo M, et al., Increased age-adjusted cancer mortality after the third mRNA-lipid nanoparticle vaccine dose during the COVID-19 pandemic in Japan. Cureus, Apr 8, 2024.
3) 最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計].
4) 藤田哲也, 『癌の自然史』, 現代病理学大系9c, p.225-243, 中山書店, 1984.
5) Kubik A, et al., Lack of benefit from semi-annual screening for cancer of the lung. follow-up report of a randomized controlled trial on a population of high-risk males in Czechoslovakia. Int J Cancer 45: 26-33, 1990.
6) Yoneoka D, et al., Geographically weighted generalized Farrington algorithm for rapid outbreak detection over short data accumulation periods. Stat Med 40: 6277-6294, 2021.
7) COVID-19 Excess Mortality Collaborators, Estimating excess mortality due to the COVID-19 pandemic: a systematic analysis of COVID-19-related mortality, 2020-21. Lancet, Apr 14, 2022.
8) Scholey J, et al., Corrspondence: Conflicting COVID-19 excess mortality estimates. Lancet, Feb 11, 2023.









(2024.6.3)
Q&A 裁判に備える:ワクチンメーカーの反論に異議あり(2)?

新型コロナワクチン被害に対し国家賠償を求めた裁判では、製薬企業から膨大な反論の書面が裁判所あてに提出されています。公開中の書面のひとつについて、分析を深めてみました。

その書面(文献1)は、「本ワクチンの作用機序」、「発症予防効果」、「感染予防効果」、「重症化予防効果」、「安全性」などからなっており、そのうち作用機序に対する疑義は、前回(2024.5.27)の記事でまとめました。今回は、製薬企業が主張する「発症予防効果」について考えます。

主張1: 培養細胞を使った実験で抗原(スパイク蛋白)の発現を認めている
 → 実際のコロナワクチンとは異なり、旧来のトランスフェクションクション試薬(DNAやRNAを細胞膜を貫通させて細胞内に送り込むための化学物質)を用いた実験であり、新型コロナワクチンの効果を示したことにはならない。またDNAによる実験も引用しているが、mRNAではないため論外。

主張2: マウスの実験でTh1優位の免疫反応を認めている
 → Th1は、ウイルス感染などさまざまな場面で生ずる一般的な免疫細胞のひとつであり、これをもってワクチンの発症予防効果を証明したことにはならない。サルで行われた実験も同様(文献2)。なおTh1細胞については、前回の記事で添付した図に詳しい解説がある。

主張3: ワクチン接種したサルを感染させたら臨床症状、X線、解剖所見に差を認めた
 → 同書面中、臨床症状、胸部X線及びCT検査、解剖後の肉眼的観察、病理組織学的検査についてワクチン接種個体と非接種個体の結果を並べた表が提示されているが、両者でほとんど差が認められない。唯一、胸部X線及びCT検査で軽度の差を認めたとしているが、病理解剖の所見に差がないのはなぜか?

主張4: 感染予防の有効率が95%と十分に高い
 → 新型コロナウイルスにまだ感染していない被験者の場合、有効率が95.0%と計算され、WHOの基準(70%)と比較しても十分に高い数値、と主張している。以下の表は製薬企業が発表しているデータである(文献4)。

   

 同企業は書面の中で、有効率は
ワクチン群では1,000人あたりの2回目接種後7日以降の発症率、および同期間におけるプラセボ群の発症率をそれぞれ求め、その比とする、と述べている。その主張に従い改めて計算してみると、

  (1 - (8 / 2.214)
/ (162 / 2.222))×100 = 95.0 (%) ・・・・・ (a)

となる。2.214と2.222は1,000人年と呼ばれる値で、「対象者が1,000人で観察期間が1年間とだったとしたら」と仮定した追跡数。これを日数に換算するには、前者で2.214 × 365 = 808.11(日)、後者で2.222 × 365 = 811.03(日)とする。さらに実人数に換算すると一人当たりの観察日数は44.4(日)と44.3(日)となり、かなり短かったことがわかる。

このデータの信頼性および有効率の計算法については、以下のように多数の批判が専門誌上でなされている。

 ア) こ計算法は
を求めたものであり、対象者総数が反映されない。有効率
 の計算には
で求めるという方法もある。これによれば、(162 / 18325 - 8
 / 18198)×100という計算から有効率は
0.84%にしかならない(文献5)。この
 方法には、100 / 0.84との計算で「1人の感染を予防するために119人の健康
 者に接種する必要がある」という重要な情報がえられる利点がある。

 イ) 製薬企業が発表した論文(文献4)では、感染が疑われる3,410例(ワクチン群
 1,594例、プラセボ群1,816例)が説明なく除外されていたとの指摘があり、
 データの信頼性に疑義がある(文献6)。この数値は、製薬企業が米国FDAに
 提出した資料にも記載されている(文献7)。

 ウ) 同論文では、接種1回目後(2回接種前)の有効率が52.4%と記されているが、
 ワクチンの効力が出る前(1回目の接種日から14日間)の対象者が意図的に組み
 込まれていて、「接種が1回だけでは効果が低くなるような見せかけ」が行われて
 いるとの指摘がある(文献8)。販売量を増やしたかったのではないか?

 エ) 同文献で報じられたデータの多くは治験受託会社(CRO)に委託されたが、
 そのうちの1,000例以上があらかじめ定められた手順(プロトコール)を逸脱して
 いたとの指摘がある(文献9)。

 オ) 同文献の添付書類には、1回目のワクチン接種後の対象者数が1週ごとに
 記載されているが、70~77日目に半減し、105日目には50分の1以下になって
 いる(文献10)。ランダム化比較試験としては異常に高い脱落率であり、その
 理由を開示する責任がある。以下は同データをもとに私が作成したグラフである
 が、両群の脱落率がほぼ同じなっているのも不自然(通常はありえない)。

   

 カ) ランダム化比較試験の必須条件は、2つの群の背景因子を完全に揃える
 ことであるが、同論文および添付資料(文献10)には、その記載がない。この
 資料が公開されない限り、データの正当性を示したことにはならない。

以上、ワクチンの正当性を強調する製薬企業の主張に対し、種々の疑問点を2回に分けてまとめてみました。

【参考文献】 (今後の裁判に備え、文献を厳選しました)
1) 『被告ファイザー第1準備書面R6.2.29』, https://kiharalaw.jp/vaccine-drug-relief-fund/#jump_vaccinelogcat2-sub1 (木原功仁哉法律事務所の許諾を得て引用)
2) Laczko D, et al., A single immunization with nucleoside-modified mRNA vaccines elicits strong cellular and humoral immune responses against SARS-CoV-2 in mice. Immunity, Oct 13, 2020.
3) Vogel AB, et al., BNT162b vaccines protect rhesus macaques from SARS-CoV-2. Nature, Apr 8, 2021.
4) Polack FP, et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA covid-19 vaccine. N Engl J Med, Dec 31, 2020.
5) Olliaro P, et al., COVID-19 vaccine efficacy and effectiveness - the elephant (not) in the room. Lancet, Jun 11. 2021.
6) Doshi P, Pfizer and Moderna's "95% effecive" vaccines - we need more details and the raw data. BMJ Opinion, Jan 4, 2021.
7) Pfizer and BioNTech, Vaccines and relsted biological products advisory committee meeting. FDA Briefing Document, Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. Dec 10, 2020.
8) Skowronski DM, et al., Correspondence to "Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA covid-19 vaccine." N Engl J Med, Apr 22, 2021.
9) Thacker PD, et al., Covid-19: researcher blows the whistle on data integrity issues in Pfizer's vaccine trail. BMJ, Nov 2, 2021.
10) PF-07302048 (BNT162 RNA-Based COVID-19 Vaccines), Apr 15, 2020.









先週までの情報

(2024.5.27)
Q&A 裁判に備える:ワクチンメーカーの反論とは?

コロナワクチンによる健康被害に対して国家賠償を求めるという裁判が、国内でも始まっています。そこで、被告・製薬企業が裁判所に提出した反論の書面(文献1で公開中)を解読し、その攻略法を考察してみました。

そのひとつが「第1準備書面R6.2.29」なるもので、ワクチン接種の副作用で体調を崩した人が起こした裁判で、原告と被告との間で交わされている膨大な資料のひとつです。

この書面の中で、製薬企業は原告の訴えに対して次のような主張をしています。まず、かなりの頁数をさいて、新型コロナワクチンによる免役反応を説明しているのですが、あたかも素人に教えを説くがごとく、図入りの子細な内容となっています。

裁判を起こす側の人は、製薬企業によるこれら難解な説明で「煙(けむ)にまかれる」ことがないよう準備しておく必要があります。しかし、ヒトの免疫システムは非常に複雑で、無数の専門用語も出てくるため簡単ではありません。

そこで、当ホームページでこれまで取り上げてきた記事も交え、『免役の基礎知識と用語解説』を図解でまとめてました(文献2ほか)。しばしば使われる専門用語は赤字で記してあります。青文字の部分をクリックすると閲覧することができます。本ページに戻る際は、画面の左上端に表示されている左向き矢印をクリックしてください。

同企業は書面の中で、ある論文(文献3)に基づいたと記しています。その論文とは、同企業と無関係と思われる中国の研究者が2022年に書いたもので、新型コロナワクチンが世界中に行きわたったあとで発表されたものでした。専門的な情報を持っているはずの製薬企業が、なぜ一介の研究者の記事を取り上げたのかは不明です。

その論文に載っていた図がそっくりそのまま、なぜか2回も書面中にコピーされていて、引用した旨のことわりもありません。通常、他人の印刷物の図表を自分の論文に載せる場合は「著者の許諾を得て引用」などと記述する必要があります。

免疫の基本を説明した文章にも気になる点があります。たとえば、mRNAによって細胞内で再生されたスパイク蛋白は、「
MHCクラスIによって新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に特異的なCD8陽性ナイーブT細胞に抗原提示される」と記されています(同書面28頁)。

しかし前述の『免疫の基礎知識と用語解説』の2頁目(点線で囲んだ箇所)と5頁目に示したように、この場面で登場するのはMHCクラスIではなく
クラスIIのはずなのです。

中国の研究者が書いた解説記事をよく読んでみると、この部分の記述はスウェーデンの研究者が発表した論文(文献4)を引用した形になっていました。そこで、引用されている論文をさらに手繰ってみたところ、「MHCクラスIが・・・」と確かに書いてありましたが、実験データの言及はなく、他の文献を引用した形跡もありませんでした。

製薬企業が引用した論文は2021年の発表ですから、すでに新型コロナワクチンが世界中に広まっていた時期であり、ワクチンを実際に使った実験もできたはずです。この論文の記述は、新型コロナワクチンとは無関係で、免疫学の教科書などから書き写しただけのものだったのではないでしょうか。

ノーベル賞を受けたワイズマン、カリコの両氏は、mRNAが細胞に及ぼす影響について網羅的な実験を行っており、MHCについて言及してる論文も確かに存在します。しかし、エイズウイルスの一部たんぱく質をコードする(改造ではない)mRNAを、昔から知られている方法に従って免疫細胞に注入し、MHCクラスIの挙動を調べたもので、新型コロナワクチンとはまったく異なる原理のものでした(文献5~7)。

それにしても製薬企業は、この研究成果を書面の中でなぜ引用しなかったのでしょうか。この2人の研究者は、よく知られているように新型コロナワクチンを製造・販売している2つの製薬企業の双方と深い関わりがあり、かつ両社は特許を巡って係争中でもあることから、利害関係が複雑なのかもしれません。

裁判のために交わされている書面の多くは非常に分厚く、中には150頁を超えるものもあります。今回は、重箱の隅をつつくような内容になっていますが、裁判はこのように(揚げ足とりのような)細かな技術論の応酬になるものと予想されるのです。

「新型コロナワクチン事件」をより良い方向で決着させるためには、(とくにこれから裁判など考えている人は)製薬企業による専門性の高い「反論」を事前に予測し、明確に論破できるよう準備をしておく必要があります。

【参考文献】
1) https://kiharalaw.jp/vaccine-drug-relief-fund/#jump_vaccinelogcat2-sub1 (木原功仁哉法律事務所の許諾を得ている)
2) Berg JM, et al., eds, Biochemistry. 8th edition, W.H. Freeman & Company, New York, 2015.
3) Fang E, et al., Advances in COVID-19 mRNA vaccine development. Signal Tranduct Target Ther, Mar 23, 2022.
4) Cagigi A, et al., Immune responses induced by mRNA vaccination in mice, monkeys and humans. vaccines, Jan 18, 2021.
5) Weissman D, et al., HIV gag mRNA transfection of dendritic cells (DC) delivers encoded antigen to HMC clas I and II molecules, causes DC maturation, and induces a potent human in vitro primary immune response. J Immunol 165: 4710-4717, 2000.
6) Ni H, et al., Extracellular mRNA indeces dendric cell activation by stimulating tumor necrosis factor-α secretion and signaling through a nucleotide receptor. J Biol Chem, Jan 9, 2002.
7) Kariko K, et al., mRNA is an endogenous ligand for toll-like receptor 3. J Biol Chem, Jan 15, 2004.(ワイズマンとカリコ両氏の連名によるワクチン発売開始前の全論文はこちら)









(2024.5.20)
Q&A 人間が有する治癒力とは: あちら立てればこちら立たず?

現代医療は「人間が有する自然の治癒力」を妨げています。これまで数々のデータでそのことを明らかにしてきましたが、今回は「ではヒトの体内で何が起こっているのか」を考察することにします。

わかりやすいのは骨粗しょう症の治療です。骨粗しょう症の正確な原因はいまだ不明ですが、加齢や体質、あるいは女性ホルモンが関わっていると考えられています。とくに年齢ととも骨のカルシウムが減ってくるため、カルシウム剤やサプリメントで補なう必要があるというのが、大方の理解ではないでしょうか。

ところが、事実はまったく違っていました。カルシウムを過剰に摂取すると、むしろ骨粗しょう症が進行してしまい、骨折のリスクが高まってしまうことがわかったのです。次のグラフは4つの臨床試験で判明した結果ですが、どのデータも、カルシウム摂取で骨折リスクは減らず、むしろ高まってしまうことを示しています(文献1)。

   

では、なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか?

体内のカルシウムは、その99%が骨を支えていますが、残りの1%は細胞の機能をコントロールする重要な働きをしています(文献2)。もし血液中の濃度が高くなりすぎると、口渇や倦怠感、幻覚などの症状が現れ、ときに不整脈や急性腎障害などをきたし命に関わる事態に進行します。そのため、ヒトの体内には血液中のカルシウム濃度を厳格にコントロールする仕組みが備わっています。

カルシウムを摂り過ぎて血液中の濃度が異常に高まると、カルシウムを尿中に排出する仕組みが働き出しますが、勢い余って骨のカルシムまで抜き出してしまいます。また血液中の過剰なカルシウムは、心臓の弁に付着するなどして心臓病による死亡率を高めることもわかってきました(文献2)。

問題はそれに留まりません。食物中のカルシウムは腸から吸収されますが、そのとき欠かせないのがビタミンD3の介在です(文献3)。多くは食品からのものであるため、もし摂取量が不足すれば、カルシウムも腸から吸収されなくなってしまいます。そのような発想から、病院ではビタミンD剤が大量に処方され、またドラッグストアの店頭にはさまざまなサプリメントが並ぶようになったわけです。

しかし、多数の臨床試験からわかってきたのは、ビタミンD3の過剰摂取は足腰の筋力を弱め、むしろ転倒リスクを高めてしまうという事実でした(文献4)。ある専門誌の編集長は、「ビタミンD3の臨床試験は無意味で危険でもあるので、もう終わりにしなさい!」と研究者たちに呼びかけているそうです(文献5)。

カルシウム剤とビタミンD剤の問題は一例として取り上げたに過ぎず、似たような現象は多くの医療行為で認められています。「それがなぜなのか?」は、以下のようにまとめることができそうです。

 ・人間の体は複雑で「あちらを立てればこちらが立たず」との反応が必ず起こる
 ・したがって、単なる思い込みで医療を行っても思いどおりの結果にはならない

さて、ここまで8回にわたり、人間が有する自然の治癒力を現代医療が妨げている実態を紹介してきました。新型コロナワクチンの問題にも共通する背景がありそうです。参考文献のあとに、寄せられたご意見を座談会の形にしてまとめました。

【参考文献】
1) Bischoff-Ferrari HA, et al.,  Calcium intake and hip fracture risk in men and women: a meta-analysis of prospective cohort studies and randomized controlled trials. Am J Clin Nutr 86: 1780-1790, 2007.
2) Michaelsson K, et al., Long term calcium intake and rates of all cause and cardiovascular mortality: community based prospective longitudinal cohort study. BMJ, Feb 13, 2013.
3) Holick MF, et al., Identification of 1,25-dihydroxycholecalciferol, a form fo vitamin D3 metabollically active in the intestine. Proc Nat Acad Sci USA, Feb 18, 1971.
4) Bischoff-Ferrari HA, et al., Monthly high-dose vitamin D treatment for the prevention of fuctional decline, a randomized clinical trial. JAMA Intern Med, Feb 8, 2016.
5) Kolata G, Study finds another condition that vitamin D pills do not help. New York Times, Jul 27, 2022.


座談会: 新型コロナワクチン事件をどう考えればよいのか?

   

「自分もワクチン事件をしつこく考え続けてきました。いつもは政権に対して批判的な立場なはずの知人さえ、”国がそんなに悪いことをするはずがない”とワクチンの説明を鵜呑みにしていました。そのころ、ひと気のない道をマスクなし歩いていたら、知らないお爺さんから怒鳴られるという嫌な経験もしました」

   

「市役所からの”重要なお知らせ”なのだから、言うことを聞いておけば間違いはないと思う市民が多数だったと思いますね。周辺でとくに問題もなく時が過ぎていったし、日々の生活に追われ、深く考える余裕も時間もなかったのでしょう」

「大衆に対し、新型コロナへの恐怖心がまず植えつけられた。恐怖は集団ヒステリーと差別を生みます。しかし実際には、新型コロナ感染症による死者の平均年齢は、日本人の平均死亡年齢と同じでした。もしメディアの報道がなければ、”悪い風邪が流行ってるかな?”くらいの感覚で済んでいたかもしれません」

「マスコミはジャーナリズム精神のない、役に立たない集団でした。何も考えていない医師も多すぎます」

「薬の作用機序を知らないまま処方をしている医師には愛想が尽きた、と語る製薬企業の元営業マン(MR)を知っています」

「研究者である自分は、論文不正についての講習を定期的に受けさせられています。しかし不正にまみれた論文を超一流の専門誌が掲載し、それを医師たちがありがたがって読んでいるのは、もう笑えない状況ですね」

「利権構造がパズルのように絡み合っている。誰がどの点について、どこまで意図的であったのか、ということに集約できるのではないでしょうか。残虐な動物実験もそうですが、治験と称して人間にまでやたらと傲慢になるのは、憐みの欠落とも言えるでしょう」

「確かに、こんな話も耳にしました。ある人が小遣い欲しさにモデルナ社の治験に参加しましたが、何を打たれたのか知らないとのこと。心配したかかりつけ医が担当者に問いただしたところ、新らたに開発されたmRNAワクチンであることがわかったというのです」

「これまで過剰医療がもたらしてきた数々の事件に比べ、”新型コロナワクチン事件”は世界を巻き込んだ大規模な出来事であり、まったく異質なものです。たとえれば、突きつけられた刃の避け方を、剣豪でもない自分が自ら考えなければならない状況でした」

「ワクチン接種クーポン券にあった説明書をいま読み返すと、”血小板減少症、免疫不全症・・・などがある人は注意が必要”と書いてあり、なるほど説明書どおりの薬害が世界中で発生した。一人一人がアンテナを張って生きる力を身につけなければと」

・・・・・

(長文のお便りもあり、文章の一部を抜き出すとご意見が正しく反映されなくなるため、字句に若干の編集を加えました。また個人が特定されないよう配慮しました)








先週までの情報

(2024.5.13)
Q&A 人間が有する治癒力とは: 歪められた情報の伝言ゲーム?

米国での話です。ある有名教授が、大手製薬企業の役員の訪問を受け、すでに完成している論文の原稿を手渡されました。論文は、新薬の臨床試験に関するデータをまとめたもので、「形だけ著者として名前をつけさせてほしい」という依頼でした。

この論文は、いったい誰が書いたのでしょうか。

米国の女性リンダ・ロッジバーグさんは、ある会社に雇用され、製薬企業が行った臨床試験の論文を代筆する仕事を得て、張り切っていました(文献1)。匿名で文章を書く、いわゆる
ゴーストライターです。

この仕事が気に入った理由はいろいろありました。病気で悩んでいる人々に対して間接的ながら手助けができること、幼い子供が二人いるためリモートでの仕事がありがたいこと、報酬がかなり良いことなどでした。

   

しかし、仕事を始めてすぐ、ショッキングな出来事に行き当たります。ある避妊薬に関する論文の作成を始めたところ、雇用主から連絡が入り、副作用の部分はカットするように指示されたのです。この薬には激しい不正出血を起こす副作用がありました。

しばらくして、今度は精神科の新薬に関する論文の作成を依頼されました。自身の子供がADHD(注意欠如・多動症)と診断されていて、その薬をたまたま服用していたのですが、効いているという実感がありませんでした。表向きの論文執筆者となっていた有名教授に直接、聞いてみたいと雇用主に伝えたところ、ひと言「ごちゃごちゃ言わずに黙って書け」と告げられたのでした。

心折れたロッジバーグさんは、仕事を辞めることにしました。雑誌のインタビューで最後に彼女が語ったのは、「論文をプロが代筆することが悪いとは思わない。各製薬企業が共同で出資して、公平な立場で専門論文を作成するシステムができたらいい」ということでした(最近は、そんな会社もできてはいますが・・・)。

学術論文の最初のページには「要約」が必ず掲載されます。ある男性ゴーストライターは、依頼された論文の作成を終えたあと、自分とは別に要約だけを書く人物がいて、良いところだけを強調した内容に、いつの間にかすり替わっていた、と取材に答えています(文献2)。

抄録には、効能や副作用など論文のキモとなる情報が圧縮して掲載されるため、極めて重要なのですが、そこに落とし穴があります。たとえば、ある論文の抄録に「この薬は認知症の進行を止める効果が認められた」と書いてありました。しかし本文をよく読むと「中くらいに進行した認知症に限り少しだけ有効」としか書かれていませんでした。

多忙な医師たちは、要約しか読まないという実態もあります。英文で書かれた論文の抄録だけを読んだ専門家たちが、学会誌や業界誌の求めに応じ「新製品の最新情報」を日本語で解説することになります。

現場の医師たちは英文の原著論文を読む時間もありませんから、その道の権威が日本語で書いた解説記事を読み、患者に「すばらしい新薬が出たので早速使ってみましょう」などと説明することになります。こうして、
歪められた情報が伝言ゲームのごとく広がっていくのです。

もうひとつの伝言は、MR(医療情報提供者)と呼ばれる製薬企業の営業マンたちによってもたらされるものです。薬剤師の資格を持つ人もいて、専門的な知識を武器に、医師たちに「わが社の製品の優秀さ」を売り込むのが仕事です。私との個人的な会話が弾んだ折、「すべての薬は毒だと大学で習った」、「医師たちがこんなに大量の薬を処方するなんて信じられない」と、つい本音を吐露したMR氏もいました。

次回は、自然の治癒力と、それを妨げる現代医療についてまとめを行います。また「新型コロナワクチン事件」をどう考えればよいのかについて、5月17日までにお寄せいただいたご意見を紹介する予定です。

【参考文献】
1) Herper M, A formaer pharma ghostwriter speaks out. Forbes, Aug 11, 2011.
2) Davis P, Interview with a ghost (writer). The Scholarly Kitchen, Oct 29, 2010.








(2024.5.6)
Q&A 人間が有する治癒力とは: 犯罪的行為の数々?

新しい医療技術はいつも華々しく登場し、今度こそは病気も克服されるのか、と世間の期待も高まりますが、あとでデータ不正が暴露され、がっかりしてしまうという歴史の繰り返しです。どんなことが行われてきたのか、まとめました。

米国ワイオミング州に住む男性、ドン・シェル氏(当時60歳)には37年間連れ添った妻と2人の子供がいて、初孫も誕生するなど幸せな家庭生活を送っていました。しかし仕事のストレスから、うつ病となり、近くの精神科クリニックで薬を処方されていました。

次第に眠れない日々が続くようになり、別のクリニックを受診したところ、パキシルという(当時は)新しいうつ病の薬が処方されました。飲み始めて2日後、あろうことかシェル氏は突然、2丁の拳銃を持ちだし、妻と娘、孫の3人を射殺してしまったのです。

残された家族は、いろいろ思い悩んだすえ「薬のせい」と考えるに至り、製薬企業を相手に裁判を起こすことにしました。そのころ同じような事件がほかにも続いていて、最終的に全米で訴訟が5,000件ほどになるという大騒動に発展しました。

裁判が進行するにつれ、さまざまな問題があきらかにされていきました。臨床試験が少なくとも5件行われていたにもかかわらず、論文として発表されたのは1件だけ。しかも、その内容にねつ造があったと司法当局が断罪していました(文献1)。

さらにこの薬はプラセボよりも効果が劣る、つまり薬を服用すると症状がむしろ悪化してしまうこともあきらかにされました(文献2)。

シェル家の悲劇にヒントを得たのが、ジュード・ロウ主演の映画『サイド・エッフクト(副作用)』で、この薬の実名も劇中に出てきます。2001年9月11日に起こった米国同時多発テロのあと、この薬を創った企業は、ソーシャル・アングザエティ(社会不安)という新しい病名を作り出し、「耐え難い恐れ、絶望感などに・・・」とのコマーシャルを全米で流していたとされています(文献3)。

この薬は「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」と呼ばれる一連の新製品のひとつです。英国の名門ウエールズ大学で精神科の責任者を務めていたデイビッド・ヒーリー医師は、SSRIを服用した患者に自殺が多発し、プラセボに比べて2倍以上になることを突き止め、論文を投稿しました。

しかし、医学専門誌の多くが製薬企業から広告料などを得ているため、どこからも論文は採用されません。その後、無名の雑誌に論文は掲載されました。そのことがきっかけとなり、ある裁判に証人として召喚されたヒーリー医師は、製薬企業側の弁護士から「いんちき科学者」との言葉をかけられます。

同医師は、カナダのトロント大学で教授に就任することが決まっていましたが、同大はSSRIを販売している製薬企業から6,000万円を超える寄付金を受けていたことから、突然の内定取り消しとなってしまったのです(文献4)。

米国の名門ハーバード大学の関連病院に勤務する気鋭の精神科医マーチン・テイシャー氏の身に降りかかった出来事も深刻なものでした。通院中の37歳の女性に当時、画期的な新薬として発売開始されたばかりのSSRIのひとつを処方しましたが、その患者は2週間後に自殺をはかり救急搬送されました。そんな出来事がその後も続き、6人の症例を論文にまとめ投稿し、無事に掲載されました。

その症例には、父親から性的暴行を受けていた19歳の少女が含まれていました。のちにテイシャー医師は、この女性から「同医師から性的関係を迫られた」として、裁判を起こされてしまいます(文献5)。女性は検事に対して、そのときの状況を微に入り、細に入り述べたとされています。

テイシャー医師にとっては、まったく身に覚えのない話で、幸い一審で無罪となりましたが、上告を避けるため弁護士のアドバイスで多額の和解金を支払いうことにしました。その後、家族が彼のもとを去ってしまうという悲劇にも見舞われたのです。背後に何があったのか・・・、謎に包まれたままとなっています。

つまり世界の巨大製薬企業が行ってきた犯罪的行為には、
 ・メーカーにとって不都合なデータはなかったことにする
 ・メーカーにとって不利な論文は出版社に圧力をかけて掲載させない
 ・メーカーに不利な言動をした研究者に非合法的な圧力をかける
 ・ときに、もっともらしい病名を新らたに作り出し新薬の効能を強調する

などが、実際にあったということになります。

   

厚生労働省のデータによれば、日本人100人中3~16人が生涯に1回うつ病になるとされ、一連の抗うつ剤も年間売上額の常に上位を占めています。ネットには、「うつ病はセロトニンという脳内物質の機能が低下するために発症する。SSRIなどの薬には、この物質を高める作用があり有用」との専門医の言葉がいまだ溢れています。

ヨハン・ハリ著、山本規雄訳『うつ病、隠された真実』(作品社、2024年)には、セロトニンなどの脳内物質とうつ病とは無関係であることが、綿密な文献調査と取材に基づいて示されています。

うつ病の薬にまつわる一連の事件は、象徴的な出来事の一例として取り上げたにすぎません。次回は、さらなる闇の深さに迫ります。前回の文末でも記したとおり、「新型コロナワクチン事件」はどう考えればよいのかについて、ぜひご意見をお寄せください。LINE(IDは
masahiko_okada)でも構いません。

【参考文献】
1) Editorial, Is GSK guilty of fraud? Lancet, Jun 12, 2004.
2) Noury JL, et al., Restoring Study 329: efficacy and harms of paroxetine and imipramine in treatment of major depression in adolescence. BMJ 351: h4320, 2015.
3) Sunset B, Social anxiety disorder campaign. Marketing Case Studies. on line, 2009.
4) Spurgeon D, Psychiatrist settles dispute with Toronto University, BMJ, May 11, 2002.
5) Bass A, "Side effects, a prosecutor, a whistleblower, and a bestselling antidepressant on trial, Algonquin Books of Chapel Hill, 2008.








(2024.4.29)
Q&A 人間が有する治癒力とは: 論文不正が諸悪の根源?

過剰な医療を加速している背景についてまとめを行ってきましたが、5回目の今週は、その大元ともいえる問題について考えます。医薬品など医療用の製品を開発・販売している企業がスポンサーになって行われる、いわゆる臨床試験の発表論文に不正行為が横行しているという問題です。

血圧の薬の中でもっとも新しく、もっとも多く使われているのがアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)です。各製薬企業は、それぞれ少しずつ性質の異なる製品を販売しており、そのひとつがディオバンという商品です。

この薬について、国内のいくつかの大学病院が共同で臨床試験を行い、結果を英国の有名な医学専門誌に発表しました(文献1)。内容は、「すでに血圧の薬を服用している人にディオバンを追加投与したところ、狭心症や脳卒中の発病が半分近くに抑えられた」というものでした。論文発表のあと、薬の売り上げはさらに急増し、ベストセラーとなっています。

ところが、しばらくして同じ専門誌に「この論文には不正がある」との記事が掲載されました(文献2)。告発したのは日本の研究者で、論点は2つ。ひとつは「薬を1つ加えるだけで発病が半分になるなどおかしい」というもの、もうひとつは「試験終了時、ディオバンを加えた群と加えなかった群で血圧の平均値がぴったり同じになっているのは不自然」というものでした。

この論文は、データの不正操作に加えてコピペを多用するなど、そもそも杜撰なものだったのです。この出来事は裁判に発展し、統計処理を担当した製薬企業の元従業員が誇大広告の罪状で告発されましたが、最終的には無罪となりました。無罪になった理由は「学術論文は宣伝媒体ではないから」というものでした。この出来事はディオバン
事件と呼ばれました。

さて、この事件はあまりにあからさまであり、あえて不適切な表現をすれば無邪気とも言えるものでした。しかし、とくに欧米の巨大製薬企業のデータ操作はなかなか巧妙で、見破るのも大変です。

大別すると、「あきらな不正とも言えず、論文の読み手に見識が求められるもの」と「犯罪的な不正行為」とがあります。以下、まず前者についてまとめることにします。

代表的なデータ操作は、
臨床試験の期間を意図的に短く設定するか、あるいは「わが社の薬を投与した群のほうがあきらかに生存率が向上していることが確認されたため、これ以上プラセボ群を放置するのは倫理的に許されないと判断した」との言い訳をして、試験を打ち切りにするという方法です。

しかし、試験をもっと続けると別の結論になるのが普通です。以下の動画で示すように、薬の効果がプラセボに比べて相対的に減弱していくのですが、サプリの広告でもお馴染みのグラフかもしれません。

このような現象はほとんどの薬で認められるものです。理由はさまざまで、たとえば使い続けることによって耐性ができてしまい、副作用のほうが効果を上回ってしまうのからと考えられます。

このことは、当然、製薬企業も知っていますから、最初から臨床試験の期間を短く設定し、なにくわぬ顔で「予定通り試験を終了しました」と公表するのです。

わかりやすいのが認知症治療薬でした。製薬企業が主導して行われた「
半年間の臨床試験」で、認知症の進行をあきらかに抑えるとの結論が得られました。この論文は世界中で注目され、当時、日本でもテレビや新聞に「認知症は早期発見・早期治療が大切!」との広告が繰り返しなされたのをご記憶でしょうか。

その後、第三者が
3年に延長した試験を行ったところ、「まったく効果は認められない」との結論になったのです(文献3)。それどころか、むしろ症状を悪化させてしまうこともわかりました(文献4)。

臨床試験では、対象者を選ぶ際、服薬歴や病気の重症度などに制限を設定し、なるべく均質な集団となるようにしなければなりません。対象者が均質でなければ、臨床試験の結果が各個人にあてはまるかどうか、判断できなくなってしまうからです。

そのような手順で選ばれた大勢の人のデータをグラフにすると、次のようなパターンになるのが一般的です。横軸は血圧などのデータで、縦軸はそれぞれの値を示した人を数えたものと考えてください。パターンは左右対称になることもあれば、どちらかに尾を引くこともあります。

   

ところが人間の体質には個人差があまりに大きく、グラフで見るように大きく外れてしまう人が必ずいます。このようなデータは、統計学で「外れ値」と呼ばれ、結論を出す前に除外するのが普通です。

外れ値の除外は、計算によって客観的に行えるのですが、万人が納得する方法はなく、いわば思いのままです。私がコンピュータで行った計算実験によれば、外れ値の境目をわずかに変えるだけで「2群で差がなかった」という結論になったり、「有意差が認められた」になったりと、自由自在に操作することができます。

論文を見ただけでは何が行われたか判断できませんが、訴訟となり裁判所の命令により原データが提出されて、悪意ある操作が暴露されることもあります。前述のディオバン事件も、そのような事例のひとつでした。

「新型コロナワクチン事件」はどう考えればよいのか、感想をぜひお寄せください。ご意見を当ホームページでまとめさせていただきます。次回は、犯罪的データ操作を取り上げる予定です。

【参考文献】
1) Mochizuki S, et al., Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease (Jikei Heart Study): a randomised, open-label, blinded endopoint morbidity-mortality study. Lancet, Apr 28, 2007.
2) Yui Y, Concerns about the Jikei Heart Study. Lancet, Apr 14, 2012.
3) Raschetti R, et al., Cholinesterase inhibitors in mild cognitive impairment: a systematic review of randomised trial. PLOS Medicine, Nov 27, 2007.
4) Belluck P, Risk for dementia may increase with long-term use of certain medicines. New York Times, Jun 25, 2019.








(2024.4.22)
Q&A 人間が有する治癒力とは: 医師の思い?

過剰な医療を加速してきた理由は、いろいろあって複雑です。今回は、その理由として考えられる背景を分析してみました。

≪背景:その1≫

医師たちが集まった飲み会での出来事です。ある医師がポケットから薬のシートをいきなり取り出し、私に「飲んでみて!」と言うのです。何かと聞いたところ、そのころ話題になっていたある新薬でした。服用を続けていたら体調が良くなったような気がするから、という説明です。しかし、その新薬については海外で多数の追跡調査が行われ、「わずかながら副作用としてがんが増える」との指摘がなされ始めていた頃でした(文献1)。

多くの医師は心底、最新の医療技術を信頼し、疑いを抱くことなく受け入れています。そこには金銭の授受もなく、誰に対しての忖度もありません。


≪背景:その2≫

企業が新しく開発した薬や医療器材の製造承認を得るには「治験」が必須です。著しく手間のかかる治験は、通常、大学医学部附属の病院に依頼することになり、担当した診療科(講座、あるいは医局と呼ばれる)には、その手数料に加えて莫大な寄付金も入ります。たとえばメタボ健診の基準作りに携わった大学教授11人はとくに高額で、最高3億円を超えていたと報じられました(文献2)

治験に限らず、有名医師たちが新製品についての講演会や研究発表を行うたび、見返りとしての寄付金や講演料、旅費なども支払われます。いずれも大学が定めた規則に従ってお金が処理されていれば合法なのですが、当然、忖度も働くため、製品の欠点には目をつぶり、意図せず新製品のPRに加担することになります。

大学病院で研鑽を積んだ若手医師たちは、やがて地域の病院に赴任し、あるいは自分でクリニックを開設して、最新の製品を当然のごとく使い続けることになるのです。


≪背景:その3≫

医師の多くは、基本的に新薬や最新の医療器材を真に優れたものと考えているのですが、最大の理由は、それらを評価した医学論文の多くが「有効である」ことを強調したものになっているからです。

たとえば虚血性心疾患の治療法(経皮的冠動脈形成術;PCI)は、
ランダム化比較試験で否定的な結論が出されていることを前回の記事で紹介しました。しかし、医師の目に止まる論文の大部分は、信頼性を欠く後ろ向き調査のデータでしかないという共通点があります。この傾向は世界共通で、国内でも心臓の専門家がPCIの有効性を示すデータとして掲げるのは後ろ向き調査で得られたものです(文献3)。

なぜ後ろ向き調査の論文が、そんなに目立つのかと言えば、費用と人手を必要とせずコンピュータで計算するだけでできてしまうため、論文が簡単に書けて、圧倒的に数で勝ることになるからです。


≪背景:その4≫

深刻なのは、論文の多くが薬や医療機材の企業から資金援助を受けて行われていることです。論文を発表する際、著者らがどこからお金を受け取ったかを必ず明記することになっておりこれを「利益相反の開示」と呼ぶことは、以前の記事で説明したとおりです。しかし、だからといって、これが免罪符になるわけではありません。

変形性股関節症や骨折などに対し、股関節を金属やセラミックでできた人工関節に置き換えるという治療法があります。この手術を受けた人は過去10年間で2倍にも増えているとされています。

この手術法の効果を報じた68編の論文を調べ、「良くなった」、「かえって悪くなった」、「どちらとも言えない」の3つに分けてまとめたところ、「良くなった」と結論していた論文は、人工関節を製造している企業がスポンサーになっていた論文で2倍以上も多かったということでした(文献4)。意図的なデータ操作が行われていたのはあきらかでしょう。

母親が4歳の次女を薬で殺害したというニュースがありましたが、そのとき使われたのは、母親が服用していたオランザピンという統合失調症の薬でした。この薬については、5つの学術調査が行われていましたが、製薬企業に不利となるデータが隠ぺいされ、都合の良いデータだけが公表されていました(文献5)。

その副作用を知らされないまま服用した人たちに重度の肥満や糖尿病の発症が認められ、1千件を超す訴訟が起こされるという騒動に発展しました。米国の司法は、1千700億円にのぼる賠償金の支払いを製薬企業に命ずる判決をくだしました(文献6)。この薬は、効果においても、昔から使われていた薬に比べ大差のないことが暴露されています。

医師は勉強熱心であり、専門医の資格更新のためもあって、しばしば学術講演会などに参加しています。しかし、そこで講師役を務める有名医師は、製薬企業などから講演料を受け取っていることが多く、話の内容にはバイアスがかかります。

医師たちは製薬企業などの手のひらで踊らされ、そこから逃れることができません。

今回の内容は、当ホームページQ13で紹介した記事(2022年1月31日付)に準拠しています。当時の記事は、漫画家の小林よしのり氏が『ゴマニズム宣言SPECIALコロナ論5』(扶桑社、2022年)で、刺激的な劇画として再現してくれました。

次回は、製薬企業によるデータ操作の手法と実態の核心に迫ります。

【参考文献】
1) Jing H, et al., Impacts of ezetimibe on risks of various types of cancers: a meta-analysis and systematic review. Eur J Cancer Prev 32:89-97,2023.
2) 読売新聞, 平成20年3月30日記事.
3) Uemura S, et al., Primary percutaneous coronary intervention in elderly patients with acute myocardial infarction. Cir J 83: 1229-1238, 2019.
4) Ezzet KA, The prevalence of corporate funding in adult lower extremity research and its correlation with reported results. J Arthroplasty 18: 138-145, 2003.
5) Berenson A, Eli Lilly said to play down risk of top pill. New York Times, Dec 17, 2006.
6) Office of Public Affairs, Eli Lilly and Company agrees to pay $1.415 billion to resolve allegations of off-label promotion of Zyprexa. U.S. Department of Justice, Jan 15, 2009.








(2024.4.15)
Q&A 人間が有する治癒力とは: クスリとは何なのか?

「なぜ日本人は薬が好きなのですか?」とは、週刊誌などの取材でしばしば問いかけられてきた質問です。以前、国会で同じ質問をした議員もいました。これが大きな誤解であることの説明から始めることにします。

次の2つのグラフは経済協力開発機構(OECD)が2023年に発表したデータをもとに、「国民一人当たりの年間医療費と寿命を比べたもの(左図)」と「一人当たりの年間薬剤費(右図)」です(文献1)。日本に比べ、とくに医療先進国を自認する米国は、医療にかけるお金が格段に多く、逆に寿命は先進各国の中で最低となっています。

国により医療の仕組みがまったく異なっていて、医療費の総額も薬剤費も厳密な計算ができませんので、データはあくまで参考です(文献2)。



この2つのグラフからわかるのは、少なくとも薬に限らず医療にかけるお金が高額なのは万国共通であることと、医療費も薬剤費も寿命となんら関係しておらず、むしろ寿命を縮めているかもしれないということです。

さて前回の記事で、「血圧を下げる最新の薬を使っても死亡率は改善しない」というデータを紹介しました。本物の薬を服用したほうで、わずかに死亡件数が増えていましたが、統計学的な有意差がなく、誤差範囲の違いしかなったというものでした(これらのデータには不正操作もあり著しく信頼性を欠くものですが、詳細は次回以降とします)。

血液は、心臓が押し出す力だけで体の隅々まで流れていくことができず、収縮と拡張を繰り返しながら血管壁を伝わっていく「振動波」のエネルギーが必要です。ところが年齢を重ねるうち、血管のしなやかさの元になっているエラスチンという物質が減少し、また堅牢さの元になっているコラーゲンが劣化し役割を果たさなくなっていきます。

すると、血液は心臓から遠く離れた臓器に届かなくなりますが、腎臓や首の血管など要所に「血管壁の振動を検知するセンサー」があり、血流の不足を知らせる信号を発します。これを受けて心臓はがんばり、血管は収縮して血流を回復しようとする反応が起きていきます。庭の草花にホースで水やりをするとき、先端を指でつまむと、水は遠くまで飛ぶようになりますが、それと同じ理屈です。結果的に血圧は上昇していきます。

血圧が上がるのは体が要求するからであり、薬で無理に下げるのは、その自然の摂理に逆らっていることになるのです。そのため脳の血管が詰まったり、認知症が進行したりしてしまいます(文献3)。

加えて、どんな薬もかならず副作用があります。たとえばARBという最新の薬は、これを服用した患者が胃や腸に炎症を起こし、激しい下痢や体重減少を訴えるという事例が相次ぎました。薬を中止すると症状が回復することから、因果関係もあきらかでした(文献4,5)。

つまり血圧の薬は、「あちら立てれば、こちらが立たず」という宿命から逃れられないのです。このような現象が多くの医薬品で認められることは、前回の記事で述べたとおりです(もちろん有用な薬も多く、その違いについては次回以降とします)。

副作用の多くは予測不能です。なぜならヒトの体内には薬が作用する可能性のある部位が無数に存在するため、開発者の想定を超えた反応がいくらでも起こりうるからです。次の動画でそのメカニズムを示しました。

5万年とも30万年ともいわれる悠久のときを経て、われわれの祖先は地球環境の変化に対応しながら遺伝子を育み、絶滅することなく生き延びてきました。結果的に、人間の体には老化に対する備え、あるいはウイルスなどの外敵に遭遇したときの治癒力が出来上がっています。一方、現代人が最初の医薬品を発明してからまだ80年ほどしか経っておらず、知恵の至らなさから同じ失敗を繰り返しているのです(文献5)。

なお、前回の記事で予告した「医師たちがなぜ見てみぬふりをしているのか」については、次回、まとめることにします。

【参考文献】
1) https://www.oecd.org/tokyo/statistics/
2) 西沢和彦, 「国民医療費」における薬剤費統計の不備を改めよ. JRIレビュー, 4: 28-39, 2013.
3) Jongstra A, et al., Antihypertensive withdrawal for the prevention of cognitive decline (review). Cochrane Database Syst Rev, Nov 1, 2016.
4) Rubio-Tapia A, et al., Severe spruelike enteropathy associated with olmesartan. Mayo Clin Proc 87: 732-738, 2012.
5) Herman ML, et al., A case of severe sprue-like enteropathy associated with valsartan. ACG Case Rep J, Jan 16, 2015.
6) Avorn J, Learning about the safety of drugs - a half-century of evolution. N Engl J Med, Dec 8, 2011.









(2024.4.8)
Q&A 人間が有する治癒力とは: 過剰医療のエビデンス?

絶対に有効だと思われていた医療行為が、よく調べてみたら実は「やっても、やらなくても同じだった」、あるいは「むしろ命を縮めてしまっていた」という研究データが無数に存在します。今回は、過剰医療の存在を示す証拠をまとめてみました。

まず紹介するのは、心臓病治療のトピックスについてです。日本人の死亡原因の第2位が「心疾患」で、その大部分を占めているのが「虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)」です。心臓は血液を全身に送るためのポンプとして働いていますが、自身の筋肉にも酸素や栄養が必要です。心臓の表面には、そのための血管があり、冠(かんむり)に似ていることから「冠動脈(かんどうみゃく)」と呼ばれています。

      

冠動脈が詰まって起こる病気が
虚血性心疾患です。この病気を治療するために決定的に重要だとされ、世界中で行われている方法があります。

手首や足の付け根の血管から細いチュープ(カテーテル)を入れ、エックス線テレビで確かめながら冠動脈まで先端部を送り、詰まった場所を広げたり金属のリング(ステント)を留置したりする方法で、経皮的冠動脈形成術(
PCI)と呼ばれています。2020年の統計によれば、国内で年間25万件ほどが実施されています。

2007年、このPCIについて、2287人を対象にした大規模なランダム化比較試験が行われ、結果が発表されました。「PCIを行った群」と「薬だけを使った群」を追跡したところ、その後の死亡率に統計学的な差がなく、それどころか、PCIを行ったほうで死亡率がわずかながら高いという、予想外の結果となりました(文献1)。別の研究者グループもほぼ同様のデータを発表しています(文献2-4)。

このような結果になる理由はあきらかです。上の顕微鏡写真は、私が研究に用いていた冠動脈の内側にある内皮細胞ですが、非常にデリケートで簡単につぶれてしまいます。細胞分裂で再生はされるのですが、限度があります。つまり血管内に挿入された硬い異物(カテーテル)によって内皮細胞は傷つき、その寿命を縮めてしまうのです。

PCIという治療法に死亡率を下げる効果はないことは、すでに1990年代から指摘されていました(文献5)。それにもかかわらず、ほとんどの心臓病専門医たちは、まるで気がつかなかったかのような態度を取り続けてきました。

話題を変えて、次は薬の話です。とくに慢性疾患で長期にわたり服用するものが気になりますが、あらゆる医薬品を通じて歴史がもっとも古く、また世界中でもっとも多くの人が服用しているのが血圧の薬です。厚生労働省の集計によれば、日本で血圧の薬を服用している人は1千万人を超えており、かりに全員が40歳以上だとすれば、2人に1人以上が服用している計算になります。

高血圧が原因で起こりやすくなる病気の代表は脳卒中です。次の表は、現在、もっとも多く使われている2種類の薬について、海外で行われたランダム化比較試験の結果をまとめたものですが、いずれも期待を裏切る結果となっています(文献6,7)。新しい薬ほど血圧を下げる作用は強いのですが、半面、副作用も多く、心臓病や腎臓病が増えたり、あるいは血圧が下がり過ぎて転倒したり、認知症が悪化したりしてしまうことがわかっています。

   

表中、赤字で示した「総死亡」は、原因を問わず死亡した人の総数を意味しています。このような現象は、血圧の薬に限らず非常に多くの医薬品で認められているのですが、詳細は文献8をご参照ください。

心臓病治療や血圧の薬に対する研究の歴史から、2つの重要な問題点が浮かび上がってきます。まず、最先端の医療技術が否定されるようなデータが続々と公表されているにもかかからず、医師たちがその事実を認めようとしないことです。もうひとつは、過剰医療の背景に常に
薬の害が存在していることです。

次回は、医師たちがなぜ見てみぬふりをしているのか、そして薬の多くがなぜヒトの体に悪影響を与えるのかを考えます。

【参考文献】
1) Boden WE, et al., Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease. N Engl J Med, Apr 12, 2007.
2) Al-Lamee R, et al., Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double--blind, randomised controlled trial. Lancet, Nov 2, 2017.
3) Rajkumar CA, et al., A placebo-controlled trial of percutaneous coronary intervention for stable angina. N Engl J Med, Dec 21, 2023.
4) White HD, Changing the Orbit around percutaneous coronary intervention for stable angina. N Engl J Med, Dec 21, 2023.
5) 岡田正彦『治療は大成功、でも患者さんは早死にした』, 講談社+α新書, 2001.
6) PROGRESS Collaborate Group, Randomised trial of a perindopril-based blood-pressure-lowering regimen among 6,105 individuals with previous stroke or transient ischemic attack. Lancet, Sep 21, 2001
7) Lithell H, et al., The study on cognition and prognosis in the elderly (SCOPE): principal results of a randomized double-blind intervention trial. J Hypertens, May 2003.
8) 岡田正彦『薬なしで生きる―それでも処方薬に頼りますか』, 技術評論社, 2009.








(2024.4.1)
Q&A 人間が有する本来の治癒力とは?

これまで当ホームページでは、新型コロナワクチンの有効性に重大な疑義があり、かつ深刻な健康被害をもたらしている実態を、多方面からあきらかにしてきました。今回から数週間は、人間の体が備えている本来の治癒力と、それに抗するような過剰な現代医療を主題に、ワクチン問題にも通じる背景を深掘りすることにしました。

日本も含む先進諸国では、死亡原因の上位3つがほぼ共通していて、がん、心臓病、脳卒中、肺炎、老衰のいずれかとなっています。ただし順位は国により、また時代により入れ替わりがあります。ところが米国で行われた複数の研究から、死亡原因の第3位は前述した病気のいずれでもなく、「過剰な医療」によるものであることがあきらかになりました。

調査でわかったのは、 まず医療行為が原因となって死亡する人が、米国だけで年間25万人もいるということでした。ちなみに、がんによる死亡者数が59万人です(文献1、2)。理由で多いのは、不必要な薬の使用で生じた副作用です。米国の病院では、年間10万6,000人がそのために死亡していることがわかりました。

不要な手術による死者も多く、年間1万2,000人になると推計されました。また勘違いや伝達ミス、処置の不手際など、いわゆる「医療ミス」による死亡では、7,000人が命を落としていて、これらも含めて全部を合計すると、死亡原因の第3位になるというのです。

ただし、これは2016年に発表されたデータであり、病院内の出来事に限定した調査によるものでしたが、その後も多くの調査が行われ、病院外も含めると、たとえば薬剤の副作用だけでも19万9,000人が死亡しているとの報告も出てきました。

     

米国で、医師2,106人を対象に過剰医療に関する意識調査が行われ、医師4人に1人が「自分が行った医療の30~45%が本当は必要がないものだった」と考えていることがわかりました(文献3,4)。必要がなかったと考える理由として、「あとで患者から訴えられないようにするため」、あるいは「患者から強い希望があったから」という回答が多くなっていました。

では、必要がなかったとされた医療とは、いったいどのようなものだったのでしょうか?

さまざまな検査を定期的に行えば、病気の早期発見や早期治療ができ健康増進に寄与できるのではないか、というアイデアが最初に提唱されたのは150年ほど前のことでした。その後、1970~1980年代に入り、「定期的な健康診断を受けた人たち」と「受けなかった人たち」の健康寿命を比べてみるという調査が世界中で行われるようになりました。

なかでも信頼性が高かったのは、6千人を超えるボランティアを同数の2群にわけ、9年間にわたり追跡したという調査でした(文献5)。ところが結果は意外なもので、(理由を問わず)亡くなった人の数が、むしろ「健診群」のほうで8.6%も多くなっていたのです。病気を早く発見し、早期に治療すれば、死亡率も下がり元気に長生きできるはず、という人々の期待に反する結果でした。

同じ目的で行われた調査は、ほかにも多数ありましたが、結果はどれも同じでした。しかし、なぜか人々の関心を呼ぶことはなく、しだいに忘れ去られていきました。前述した論文発表から四半世紀も経ったころ、国際疫学協会誌が、当時の論文のひとつを見直し、原文のままもう一度掲載するという前代未聞の処置を行いました(文献5)。

専門誌によるこの決定を受け、カナダと米国の2つの専門家会議は、それぞれ独立に「定期的な健康診断は中止すべき」との宣言文を公表するに至りました。「頭のてっぺんからつま先まきまで舐めるように行う検査」はナンセンスであり、ときに危険と断じたのです(脚注)。

しかし、このような話は、世間にまったく伝わっていませんし、当ホームページをご覧いただいている方もご存じなかったのではないでしょうか。それどころか、日本では「労働安全衛生法」という法律のもと、働く者はすべて年1回以上の健診が義務づけられているのです。このような法律を設けている国はほかにありません。

それはなぜなのか? そして、なぜ誰も真実を語ろうとしないのか? 次週以降、その謎に迫ります。


脚注: 英語でnon-evidence-based, head–to-toe examinationsと表現されている。

【参考文献】
1) Cha AE, Researchers: medical errors now third leading cause of death in United States. Washington Post, May 3, 2016.
2) Makary MA, et al., Medical error – the third leading cause of death in the US. BMJ, May 3, 2016.
3) Lyu H, et al., Overtreatment in the United States. PLOS ONE, Sep 6, 2017.
4) Carroll AE, The high costs of unnecessary care. JAMA, Nov 14, 2017.
5) The South-East London Screening Study Group, A controlled trial of multiphasic screening in middle-age: results of the South-East London Screening Study. Int J Epidemiol, 6: 357-363, 1977, and 30: 935-940, 2001.
6) Howard M, Should we abandon the periodic health examination? Can Fam Physician, Vol 57, Feb, 2011.








(2024.3.25)
Q&A 一方的に取り消された論文: 露骨な反ワクチン弾圧?

2024年1月24日にネット掲載された論文『新型コロナmRNAワクチン:臨床試験データとその後のワクチン推進キャンペーンから学んだこと』が物議をかもしています(文献1)。公開の1か月後、一方的に掲載の取り消し処分を下されてしまったのです。いったい何があったのか、背景を探ってみました。

現在、この論文については、取り消し処分になった理由が、編集長名で以下のように記されています。「この論文が掲載されたあと、批判が殺到した。そこで複数の編集責任者で再度、論文を検証したところ、引用文献が不適切であったり、あるいはデータの解釈に間違いがあることを確認した。なお著者らは、この決定に同意していない。」

その後、論文を執筆した著者らは、専門誌を出版しているシュプリンガー・ネイチャー社に対し、2億5千万ドルの懲罰的損害賠償を請求する裁判を起こす、と発表しました(文献2)。このような損害賠償の仕組みは日本になく、とにかく天文学的な金額になるのが特徴です。ただし、裁判所に対して実際に訴訟手続きがなされたどうかは、3月25日現在不明です。

執筆者は、裁判を起こすに至った経緯を次のように述べています。「私たちの論文が公開されたあと、編集部には、悪意に満ちた6通の手紙が届いたと聞く。それを信じ込んでしまい、私たちを”悪意ある反ワクチン主義者”と決めつけ、科学的な裏づけのないまま、掲載取り消しを決めた。これは掲載に伴う契約違反であり、悪意ある誤解であり、誹謗中傷だ!」と。

論文を批判した一人の名前が判明したことから、著者は、この批判者と直接、メールのやり取りしました。しかし、「弁護士と相談するから、もう連絡はしないでほしい」というメールを最後に、音信不通となりました。

一方、この論文に賛意や高い評価を与える専門家もいて、著者たちのもとには激励の手紙もたくさん届くようになりました。文献2には、具体的なメールの内容が掲載されています。

さて、問題となった論文は、いったいどんな内容だったのでしょうか?

全体が50ページからなり、参考文献が293件もある大作で、読むのも大変です。内容をひとことで言えば、当ホームページ『新型コロナのエビデンス』が、足掛け5年にわたってお伝えしてきた情報とほぼ同じものでした。つまり、この論文が世間から否定されてしまうのであれば、当ホームページの存続も危ういことになります。

論文の記述はきわめて正確で、参考文献も適切に選ばれていて、かつ解釈に間違いはありません。そこで、この論文に寄せられた批判を詳しく分析してみることにしました。代表的な批判のひとつは、「
(ワクチンは危険という)結論が先にあり、それに合わせてデータを集めただけ!」というものでした。このような意見は、学問的な論争の場面でよく交わされる、いわば定番の批判です。

しかし考えるまでもなく、その逆の見方、つまり「
(ワクチンは体に良いという)結論が先にあり、それに合わせてデータを集めただけではないか」という批判にまず答えてもらう必要があるでしょう。しかし、当ホームページで明らかにしてきたように、「ワクチンが安全で有効であることを、科学的に正しい方法で示したデータ」は存在しないのです。

この論文でひとつだけ気になるのは、冒頭、次のような記述がなされていたことです。「米国民の税金から巨額のお金がワクチン・メーカーに事前に支払われていて、引っ込みがつかない状態にあった。そのため政府は、不利なデータが出る前にランダム化比較試験を早期に終了させるなど圧力をかけた」。

純粋に科学の立場から主張を展開すべきところでしたが、その枠を一歩踏み外したこの記述が権力者(?)の虎の尾を踏んでしまったのかもしれません。SNSでの誹謗中傷事件でよく語られることですが、悪意ある書き込みの火元は一か所でも、それが企みとして、あるいは無責任な追随によって拡散し炎上したりします。今回のゴタゴタもそのような流れだった可能性があります。

   

いずれにしても、新型コロナワクチンの真実を世に訴える道のりが、さらに遠のいてしまったかと思わせる、気の重い出来事でした。

なお本件については、複数の方から情報提供をいただきました。ご協力に感謝いたします。

【参考文献】
1) Mead MN, et al., (Retracted) COVID-19 mRNA vaccines: lessons learned from the registration trials and global vaccination campaign. Cureus, Jan 24, 2023.
2) Kirsch S, We're suing Springer Nature for $250M in punitive damages for the unethical restraction of our COVID harms paper. Steve Kirsch's newsletter, Mar 6, 2024.








(2024.3.18)
Q&A コロナの隔離期間が短縮された?

2024年3月1日、米国疾病対策センター(CDC)は「新型コロナ感染症の隔離期間を大幅に短縮する」との記者発表を行いました(文献1)。その背景を探るとともに、この先、新型コロナウイルスとどのように向き合っていけばよいのかを考えてみました。

隔離解除の新しい条件は以下のようなものでした。
 ・発症後の日数にかかわらず解熱剤を使わずに
発熱のない状態が24時間以上続くこと
 ・さまざま症状が回復に向かっていること
 ・隔離解除後の5日間はマスク、手洗いを励行し、咳エチケットや換気に努めること

このような決定を行うに至った根拠はいろいろありましたが、まず重症化して亡くなる人の数が圧倒的に少なくなったことです。次のグラフは、文献2で公表された米国の統計データから私が作図したものです。

   

2023年以降は死亡者の人数がインフルエンザと同程度となっていることがわかります。ただしインフルエンザの場合、「インフルエンザが原因で死亡した」ことを判断する基準が不明確で、届出義務もあいまいなため、正確な人数がわかっていません。そのためCDCは、毎年、数式モデルを使って死亡者数の推測値を発表してきました。公表されている推測値には幅があり、上図で示した赤色の棒グラフは上限と下限の中間の値にしてあります。

隔離期間を短縮した、もうひとつの理由は、すでに米国民の98以上が防御免疫を獲得しているから、としています。厚生労働省による地域住民の調査によれば、日本でもスパイク蛋白に対する抗体の保有率が98パーセント以上とされています(文献3)。厳密に言えば、厚生労働省が示した「抗体保有率」と、CDCが用いた「防御免疫」という言葉は必ずしも同じものでありませんが、大同小異と考えてよいでしょう。

感染症は、ほかにもRSウイルスによるもの(風邪のひとつ)など多数あります。病気の種類ごとに対応がばらばらでは、混乱が生じてしまい、むしろ対策が徹底しないので、単純化してひとつにまとめたほうがいいから、というのもCDCの考え方でした。

米国では、多数のメディアがこの声明をビッグニュースとして報じました。ある新聞には、賛否のコメントが紹介されていますが、「人々が新型コロナ感染症を軽くみてしまうのが心配」との懸念を表明する専門家の意見もありました。今さらマスクは嫌だという人も多く、また換気が悪い場所はいくらでもあり個人でどうすることもできない、などが反対理由だそうです。

現在、
日本では、少なくとも5日間の自宅療養、かつ2日以上熱がないことを解除の条件としており、その間は出勤や登校を控えることが求められています。また治癒した旨を記した医師の診断書を求める会社や学校もいまだにあり、社会生活の妨げになっているという声も少なくありません。

「コロナ」という言葉に過剰に反応してしまう雰囲気が、いまだ世の中に蔓延しています。多くの感染者の診療にあたってきた経験もふまえて言えば、米国CDCの新らたな基準を日本でも取り入れてよい時期にきているように思われます。

【参考文献】
1) Respiratory virus guidance update FAQs. CDC, Mar 1, 2024.
2) Background for CDC's updated respiratory virus guidance. CDC, Mar 1, 2024.
3) 第6回抗体保有調査(住民調査)速報結果, 厚生労働省 第120回(令和5年4月5日) 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード, 資料2-4, Apr 5, 2023.
4) Mandavilli A, C.D.C. shortens isolation period for people with Covid. New York Times, Mar 1, 2024.








(2024.3.11)
Q&A エビデンスの中間まとめ:第三回目

当ホームページでは、新型コロナワクチンにかかわる話題を多岐にわたり紹介してきました。その情報量も非常に膨大なものとなってきましたので、3回に分けて「中間まとめ」を行っています。今週は、その第三回目として、新型コロナワクチンの有効性を示したとされる学術論文に
データの改変や印象操作が行われていたことを示す証拠を、過去の記事から厳選しました。

いかなる医療行為も、ランダム化比較試験によって初めて効果と副作用を実証することができます。対象者を公平に2群にわけ、その一方にたとえば本物の薬を、他方には偽薬(プラセボ)を使いながら追跡して、結果を見届けるという方法です。ファイザー社とモデルナ社のワクチンの場合、どちらも論文はひとつずつしかありません(文献1,2)。

次の表は、有名な「有効率95パーセント」の根拠とされるファイザー社の論文で提示されたものです。このデータから (1-(8÷18198)÷(162÷18325))×100という計算をすると、約95パーセントになります。

  

しかし、この論文に対しては、発表後、無数のクレームが寄せられました(文献3など多数)。そのひとつは、新型コロナの症状がありながら、PCR検査を行っていなかった事例が「ワクチン接種ありの群」で1,594例、「接種なしの群」で1,816例もあり、これを含めて有効率を計算し直すと
19%になってしまう、という指摘でした。この指摘が正しいことは、ファイザー社が当局に提出した資料からもあきらかです(文献4)。次表は、この人数を加えて私が修正したものです。

  

次に、同論文には「ワクチンは重症化を防いだ」とも書いてありました、その根拠は、重症化した人が「ワクチン接種なしの群」で9人だったのに対して 「接種ありの群」で1人だったから、というものでした。この記述が間違っていることは、私もすぐに気づき当ホームページで指摘したところです。

  

正しくは、上の表で示したように、「ワクチン接種ありの群」では、感染した8人中1人が重症化していたため重症化率は1÷8で
12.5%です。一方、「接種なしの群」では9÷162で5.6%です。つまり正しい解釈は、「ワクチンを接種した人が感染すると、より重症化しやい」ということだったのです。その後、この問題は、世界中の多くの研究者によって指摘されるところとなりました(文献5など多数)。

この論文には、ほかにも問題がいろいろあります。ファイザー社がとった有効率の計算法を、次図の1つ目の例題に当てはめてみます。(1-(5÷100)÷(10÷100))×100という計算から答えは50%となりますが、2つ目の例題のように調査対象が1,000人でも、答えは同じになってしまいます。たとえ100万人だったとしても同じになるのですから、おかしな話です。

     

この計算法で得られる有効率は、相対リスク減少率と呼ばれます。実は、有効率の計算には別の方法がもうひとつあり、上図の1つ目の例題に対しては、次のような計算を行うものです。

 (10÷100 - 5÷100)×100 = 5%

上図の2つ目の例では0.5%となり、1,000人にワクチンを打っても5人しか予防することができないことがわかり、よい現実感があります。この計算法でえられる有効率は絶対リスク減少率と呼ばれます。

どちらも間違いではなく、教科書にも載っている計算法なのですが、ファイザー社の論文で前者が採用されたのは、あきらかに見た目をよくするため、はっきり言えば人心を惑わすためだったでしょう。この点も、その後、多くの学術論文で批判を浴びることになりました(文献6など多数)。

製薬企業は、このように人々の信頼を裏切る行為を行ってきたのですが、極めつけは、論文発表の後、食塩水を注射したプラセボ群の人たち全員に、ワクチンを接種していたことです(文献7)。

この行為が何を意味しているかと言えば、いつの日かワクチン接種群の人に重大な異常を認めたとしても、比べる相手がすでにありませんから、「単に年のせい」にして、異論を封じることができます。生き証人ともいえる大切な存在が、いわば意図的に消されてしまったのです。

次の表は、妊娠中に新型コロナワクチンを接種すると、流産が増えるかどうかを報じた別の論文から再現したものです(文献8)。赤枠で囲んだ数値から、妊娠20週以内で接種した場合の流産は、過去の報告値に比べて多くはないことを示しています。

   

しかし、この論文にも世界中から批判が殺到しました(文献9など多数)。論文中、表の下に「827人中、700人は妊娠20週以降に接種した」と、小さな文字で記述されていたのです。したがって、正しくは827人から700人を除いた127人が分母となり、流産の率は
82%と計算すべきだったのです。

さらに「過去の統計値」のほうも間違っていました。過去の報告値は、どの文献を調べても
10%くらいとしか書かれていません。つまり正しい結論は、「妊娠10週以内に新型コロナワクチンを接種すると流産が8倍以上も高まる」というものだったのです。

   

ワクチンメーカーに限らず、世界の巨大製薬企業は、健康に対する人々の期待を裏切る行為を繰り返してきました。そのため消費者から無数ともいえるほどの裁判が、米国を中心に起こされています。その多くは原告勝訴となり、企業側には巨額の賠償金支払いが命じられてきました。具体的な事例は枚挙にいとまがなく、文献10,11に詳述されていますので省略します。

2つのランダム化比較試験の論文が発表されたあと、「新型コロナワクチンは有効」と主張する研究が多数行われましたが、すべてテスト・ネガティブ分析(後ろ向き調査のひとつ)によるものでした。この分析法については、令和5年9月4日付の当ホームページで解説したとおり、正当性が科学的に保証されないものであることを、改めてつけ加えておかなければなりません。

さて、3回にわたる「中間まとめ」はこれで終了です。いずれも裁判を想定し、取り上げた参考文献も証拠書類として利用できるように説得力のあるものを厳選しました。これまで当ホームページで紹介した際には若干の誤用もあったため、改めて各文献を精読し、正しい解釈をここにまとめたものです。

次回からは、再び最新情報をご紹介していく予定です。

【参考文献】
1) Polack FP , et al., Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med, Dec 31, 2020.
2) Baden LR, et al., Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med, Feb 4, 2021.
3) Doshi P. Pfizer and Moderna’s “95% effective” vaccines – we need more details and the raw data. BMJ Opinion, Jan 4, 2021.
4) https://www.fda.gov/media/144246/download. Dec 10, 2020.
5) Pharm XW. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine, To the Editor. N Engl J Med, Feb 17, 2021.
6) Olliaro P, et al., COVID-19 vaccine efficacy and effectiveness - the elephant (not) in the room. Lancet. Apr 20, 2021.
7) Thomas SJ, et al., Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine through 6 months. N Engl J Med, Sep 15, 2021.
8) Shimabukuro TT, et al., Preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Jun 17, 2021.
9) Sun H, On preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, Oct 14, 2021.
10) 岡田正彦, 『本当に大丈夫か、新型ワクチン―明かされるコロナワクチンの真実』, 花伝社, 2022.
11) マーシャ エンジェル著/栗原千絵子, 斉尾武郎共監訳, 『ビッグ・ファーマ 製薬企業の真実』. 篠原出版新社, 2005.








(2024.3.4)
Q&A エビデンスの中間まとめ:第二回目

これまで当ホームページでは、新型コロナワクチンにかかわる話題を多方面から紹介してきました。その情報量も非常に膨大なものとなってきましたので、数回に分けて「中間まとめ」を行っています。今週は、その第二回目として、新型コロナワクチンに
明らかな副作用が存在することを示すデータを、過去の記事から厳選しました。

まず次の表は、イスラエルで行われた調査の結果です(文献1)。180万人近くの住民を対象に、「ワクチンを接種した人たち」と、「接種していない人たち」の症状を比べたもので、使われたのはファイザー社のワクチンです。接種後42日目の症状を調べたところ、もっとも増えていたのは
心筋炎、心外膜炎、心不全でした。

   

次の表は、心筋炎と心外膜炎に着目して、副作用の頻度を調べた米国のデータです(文献2)。「ワクチン使用開始1年前」と「接種開始後(2021年2月~同年5月)」の発病者数を比べたものですが、ワクチン接種開始後、心筋炎と心外膜炎の発病者数があきらかに増えていました。

      

次は、新型コロナワクチンの副作用として心筋炎が増えていたことを、より明確に示したイスラエルのデータです(文献3)。イスラエルには公的医療保険制度がいくつかありますが、そのうち最大規模の組織に加入していて、かつファイザー社ワクチンを打った256万人を追跡調査したものでした。

   

グラフの横軸は、1回目の接種からの経過日数です。ファイザー社ワクチンは2回接種の間隔を21日と定めていましたが、その「21日目」の数日後、心筋症があきらかに増えていたことがグラフからわかります。ワクチンの副作用として生じる心筋症がどのようなものかは、文献4と5で提示された心電図やMRI画像であきらかです。

皮膚病変については、生々しい写真の数々が文献6と7に掲載されています。腎臓病も増えているのですが、海外を見渡しても文献が少なく、頻度は不明です。文献8と9には、副作用として生じた腎臓病の生検(バイオプシー)標本の顕微鏡写真が掲載されています。さらに、不活化ワクチンを使った場合でさえ、深刻な眼の異常(上強膜炎、前強膜炎、急性黄斑部神経網膜症、傍中心窩急性中間層黄斑症、網膜下液など)が生じる、と報告されています(文献10)。

新型コロナワクチンの副作用に関する学術発表は数多くあるのですが、ほとんどの論文は、最後に「
副作用である可能性は高いが、頻度が非接種者と比べても、またコロナ禍前と比べても多いとは言えない」との言葉で締めくくられています。多くの専門誌には、ワクチンを根本から否定する論文は認めない、との編集方針があるからと思われます。

それにもかかわらず真実を伝えてくれた貴重な論文を、ここまで紹介してきました。なお新型コロナワクチンの副作用については、全体像とそのメカニズムが文献11に詳述されています。

さて、死亡例のデータについてもまとめておくことにします。次の図は、2021年1年間における「月別のワクチン接種後死亡数」のグラフに、同じ年のワクチン接種者数のグラフを重ねてみたものです(国内デ―タ:文献11,12,13)。ワクチン接種者数(赤色)のグラフは、死亡者数(青色)に比べて値が桁違いに大きいため、圧縮してあります。両者の正しい値は、左右の目盛でそれぞれご確認ください。

    

4月から6月にかけて死亡者が急増し、ワクチン接種者数の増加と比例しているように見えます(点線で囲んだ部位)。いまのところ、このグラフがワクチンによって死亡者数が増えていることを示す、もっとも説得力のあるデータと考えられます。ただし、このような数値データは、因果関係の証明に利用するのが非常に難しく、容易に反論を許してしまうという宿命もかかえています(どのような反論がありうるか、ぜひご意見をお寄せください)。

最後のデータは、大きな病院で行われる特殊な検査「免疫組織染色法」についてです。皮膚などに針を刺して、組織の一部を取り出すバイオプーと呼ばれる方法で得られたサンプルに対して行われ、顕微鏡で確認がなされます。もし、以下の図のようにトゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)が認められ、そこに免疫細胞や炎症細胞が集まっていれば、ワクチンのせいで病気になったことの証明になります。

      

この図は、私がイメージを描いたものですが、実際の顕微鏡写真は、文献15で見ることができます。

来週の第三回目では、論文の不正操作についての情報をまとめる予定です。

【参考文献】
1) Barda N, et al., Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide setting. N Engl J Med, Aug 25, 2021.
2) Diaz GA, et al., Myocarditis and pericarditis after vaccination for COVID-19. JAMA, Aug 4, 2021.
3) Witberg G, et al., Myocarditis after Covid-19 vaccination in a large health care organization. N Engl J Med, Oct 6, 2021.
4) Mouch SA, et al., Myocarditis following COVID-19 mRNA vaccination. Vaccine, May 28, 2021.
5) Kim HW, et al., Patients with acute myocarditis following mRNA COVID-19 vaccination. JAMA Cardiol, Jun 29, 2021.
6) McMahon DE, et al., Cutaneous reactions reported after Moderna and Pfizer COVID-19 vaccination: a registry-based study of 414 cases. J Am Acad Dermatol, Apr 7, 2021.
7) Merrill ED, et al., Association of facial pustuler neutrophillic eruption with messenger RNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. JAMA Dermatol, July 28, 2021.
8) Lebedev L, et al., Minimal change disease following the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. AJKD, Apr 8, 2021.
9) Sekar A, et al., ANCA glomerulonephritis after the Moderna COVID-19 vaccination. Kid Int, May 17, 2021.
10) Pichi F, et al., Association of ocular adverse events with inactivated COVID-19 vaccination in patients in Abu Dhabi. JAMA Ophthalmol, Sep 2, 2021.
11) Seneff S, et al., Worse than the disease? reviewing some possible unintended consequences of the mRNA vaccines against COVID-19. IJVTPR, May 10, 2021.
12) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou_youshikietc.html
13) https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/qa/detail/more-detail/qa_05_a04.html
14) Coronavirus (COVID-19) vaccinations. Our World in Data, Feb 13, 2024.
15) Baumeier C, et al., Intramyocardial inflammation after COVID-19 vaccination: an endomyocardial biopsy-proven case series. Int J Mol Sci, Jun 22, 2022.








(2024.2.26)
Q&A コロナワクチンに関するエビデンスの中間まとめ

これまで当ホームページでは、新型コロナワクチンにかかわる話題を多方面から紹介してきました。その情報量も非常に膨大なものとなってきましたので、今週以降、数回に分けて「中間まとめ」を行います。今週は、その第一回目として、新型コロナワクチンの
生物学的な脆弱性を示すデータを、過去の記事から厳選しました。

(1) ワクチンは免疫力を低下させる
 まず次のグラフは、マウスを使った実験の結果を示したものです。ワクチン接種を繰り返しながら、トゲトゲ蛋白(スパイク蛋白)に対する「抗体量」を測るという実験です(文献1)。ワクチン接種を5回以上繰り返すと、期待に反し抗体量がむしろ減少してしまうことがわかります。(ただし、この実験では、mRNAワクチンではなく、試験管内で人工合成したスパイク蛋白を直接、動物に注射するという方法が取られています)

    

抗体にもさまざまな種類があります。IgGと呼ばれるたんぱく質がその正体で、IgG1~IgG4の4種類から成っています。血液中ではIgG1が大部分を占めており、上のグラフも主にIgG1を測ったものでした。

次の左側のグラフは、mRNAワクチン(ファイザー社)を2回接種したあと3回接種後までの間に変化した血液中の各IgGの値です。右側のグラフは、接種回数が増え、時間も経つにつれ、IgG4が増えていく様子を示しています(文献2)。

  

IgG4は、中和抗体がウイルスに結合して無毒化するのを妨げる役割を担っているため、これが増えると免疫反応が止まってしまうのです。IgG4は、免疫反応が過剰にならないよう、ほどほどのところでブレーキをかける役割を担っていると考えられるのですが、ワクチンを繰り返すと、必要な免疫反応まで止めてしまうことになります。

次のグラフは、mRNAワクチン(ファイザー社)接種によってできた中和抗体が、ウイルスの増殖を抑制できるかどうかを、本物のウイルスを使って調べた実験の結果です(文献3)。横軸は「年齢」で、縦軸が「中和抗体の強さ」となっています。青色のグラフは中国武漢市で発生した初期の新型コロナウイルス、赤色のグラフはその後に出現したガンマ変異株です。

変異株による差はあるものの、高齢者ほど中和抗体の力が著しく減弱している様子が、グラフからよくわかります。高齢者には、ワクチンがほとんど効いていなかったのです。

    

(2) ワクチンに予防効果なし
 では、ワクチン接種によって免疫力が低下した結果、何が起こっていたのでしょうか?

次のグラフは、新型コロナにウイルスに感染したことが確認された人たちを対象に、唾液中のウイルス量を測定した結果です(文献4)。調査は、デルタ株が隆盛だったころ、米国カリフォルニア州の2つの町(A地区とB地区)で行われたもので、「ワクチンをまったく打っていない人」と「2回接種した人」を比べています。なおワクチンの種類は論文中に明記されていませんが、米国ではほぼmRNAワクチンしか使われていません。

    

グラフの縦軸は、PCR検査の結果を表わすCtという値になっていて、ウイルス量が少ないほど大きくなります。A地区は、2回接種した人たちのほうでウイルス量がわずかに多く(棒グラフが低い)、B地区では逆になっていて、両者を合わせると統計学的な差はない、という結論でした。ワクチンを接種していても他人への感染は防げない、ということになります。

最後のグラフは、世界68ヵ国を対象に「国民のワクチン接種率」と「新規感染者数」との関係を調べた結果を示したものです(文献5)。デルタ株が優勢だったころで、国名は一部を除き省略してあります。

    

ワクチン接種率が高い国ほど新規感染者数が多いという、予想に反する傾向が認められます。大きなばらつきもありますが、詳細は不明です。使われていたワクチンは国によって異なりますが、たとえばイスラエルでは、mRNAワクチン(ファイザー社)だけが使われ、有効率がわずか39パーセントだったと計算されています(製薬企業が発表した論文では95パーセント)。

同じ現象はほかの多くの調査でも確認されており、とくに英国の政府機関が発表したデータは、ワクチン接種者のほうで感染率が高いことを明確に示すものでした(文献6)。


以上、中間まとめの第一回目として、新型コロナワクチンの生物学的な脆弱性を示すデータをまとめました。「繰り返しの接種で免疫力が低下すること」、そのため「感染予防の役には立っていなかったこと」があきらかです。次回はワクチンの副作用について、中間まとめを行う予定です。

【参考文献】
1) Gao F-X, et al., Extended SARS-CoV-2 RBD booster vaccination induces humoral and cellular immune tolerance in mice. iScience, Dec 22, 2022.
2) Irrgang P, et al., Class swithch toward noninflammatory, spike-specific IgG4 anitbodies after repeated SARS-CoV-2 mRNA vaccination. Sci Immunol, Jan 27, 2023.
3) Bates TA, et al., Age-dependent neutralization of SARS-CoV-2 and P.1 variant by vaccine immune serum samples. JAMA, Sep 7, 2021.
4) Acharya CB, et al., Viral load among vaccinated and unvaccinated, asymptomatic and symptomatic persons infected with the SARS-CoV-2 delta varinat. Open Forum Infect Dis, Mar 17, 2022.
5) Subramanlan SV, et al., Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States. Eur J Epidemiol, Sep 30, 2021.
6) Public Health Scotland COVID-19 and Winter Statistical Report, as at 17 January 2022, Public Health Scotland, Jan 19, 2022.




              
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               目  次
         (
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Q0 政府に間違ったデータを提供したのは誰?    Q1 ワクチン接種の強制は問題ないのか?
  「超過死亡」という言葉にご注意           接種後の副作用で苦しむ人たち
  /コロナ致命率の発表値は間違っている        /米国における接種義務化と法律事情
  /コンピュータ・シミュレーションに騙されるな    /接種の強制は倫理的に許されるのか
                            /地方紙が伝える真実とは
                            /ワクチン被害の裁判は可能か
                            /米国の最高裁判決とは
                            /ワクチン被害の証拠を残そう

Q2 ワクチンを受けない人たちの災難とは?     Q3 安心できるワクチンとは?
  子育て中の苦悩/アレルギー体質で接種拒否      国産ワクチンを評価する
  /悲痛な海外事情                  /鼻スプレーワクチン
  /打たない人は集団免疫に貢献できないのか

Q4 治療薬はいつできるのか?           Q5 なんとか予防はできないのか?
  国産初の飲み薬ゾコーバ               薬で予防はできない
  /イベルメクチン/抗体カクテル           /感染しても重症化しないために
  /疑惑の飲み薬モルヌピラビル            /肥満がリスクとなる理由が判明
  /レムデシビル再評価_有効性に疑問         /自宅療養に備える
  /ファイザー社の飲み薬は大丈夫か          /アルコール消毒はだめ
  /続々登場する新薬のまとめ             /意に反して接種してしまったら
  /重症化したらこんな病院に行きたい!        /民間療法は有効か?
                            /感染リスクが予測できるアプリ?
                            /マスクは要らないって本当?

Q6 コロナ禍を終息させる決め手とは?       Q7 専門家の言うことは正しいのか?
  風船現象を知る                   データに騙されないための心得帳
  /第5波が収束したわけ               /運び屋ウイルスのDNA組み込み
  /インフルエンザワクチンに学べ           /抗体依存性感染増強(ADE)
  /インフルエンザワクチンは打つべきか        /高齢者の死亡が減少しているわけ
  /ワクチンがウイルス変異を助長している       /接種を1回で止めてよいか
  /インフルとコロナは同時流行するか         /後ろ向き調査のまやかし
                            /全数把握・定点観測って何?
                            /中和抗体はなぜ無効なのか?

Q8 ウイルスの変異、これからどうなる?      Q9 実際に感染したら、どうする?
  ウイルスはどのように変異するのか          オミクロン株BA.5に感染したら
  /変異ウイルスのまとめ               /1年後も症状は残るのか
  /オミクロン株の種類                /学校の授業は安全か
  /オミクロン株はインフルエンザより軽症       /重症化しやすい人の体質:
  /デルタミクロンって何                 キラーT細胞の仕事とは
  /人間の遺伝子は強くなっていく           /隔離期間はもっと短くしよう
  /悪どいコロナの正体

Q10 ワクチンを巡るデータはねつ造?        Q11 うわさのウソ、ホント?
  報告されなかったデータ/重症例は増えたか      フェイクニュースの元締め
  /1回接種で十分/消えた協力者           /基礎疾患のウソ
  /ファイザー社の新論文は意味不明          /mRNAは永久に残るか
  /むしろ死亡率を高めている証拠           /mRNAは遺伝子に組込まれるか
  /消された証人たち/年をとると免疫は?       /トゲトゲ蛋白がDNAを破壊するか
  /有効期間は2ヵ月/まやかしの有効率
  /ワクチン治験を告発した女性

Q12 ワクチンは効いていない?           Q13 なぜ医師は正しい知識を持てない?
  接種率が高い国ほど感染者は増えている        医師たちが騙されたもう一つの理由
  /致命率の計算はほとんど不可能_行政のさじ加減
  /接種しても、しなくてもウイルス量は同じ
  /繰り返しの接種は大丈夫なのか
  /接種完了の施設で集団感染
  /ワクチンパスポートに根拠なし
  /11歳以下の接種を考える
  /オミクロンに中和抗体は無力
  /オミクロン用ワクチンは大丈夫?

Q14 なぜ致命的な自己免疫疾患を起こすのか?    Q15 因果関係を証明する方法はあるか?
  免疫性腎障害/免疫性心臓病             トゲトゲ蛋白はなぜ危険なのか
  /免疫性皮膚病/免疫性感染症            /尿中のトゲトゲ蛋白測定に初めて成功
  /免疫性眼疾患/ワクチンで突然死          /因果関係を証明する唯一の方法とは
  /接種後2ヶ月間で起こること            /トゲトゲ蛋白は4ヵ月血中に残る
  /接種後半年でわかったこと            
【妊娠・出産・育児を考える】
  /副作用は脾臓から始まる              ワクチンは母乳に影響しないの?
  /初めて国内学会で発表された副作用         /妊娠中のワクチン接種は絶対ダメ
                            /両親の接種は赤ちゃんに影響
                            /子供と赤ちゃんの接種を考える

Q16 コロナの各検査法の利点と欠点?        Q17 あやまちを繰り返さないためには?
  PCRの原理を理解しよう              第1回 新型コロナはどこから来たのか
  /PCRで困ること/インチキな中和抗体検査     第2回 人々を狂わせたワクチン神話
  /3つの検査法の優劣                第3回 メディアのプロパガンダなのか
  /抗原検査を練習しておこう             第4回 そろそろ法律家の出番!
  /PCR検査を毎週受けた経験談           第5回 新薬とワクチンは期待できるか
  /陰性証明は難しい/唾液の検査は確かなの?     第6回 新型コロナはこれからどうなる
                            第7回 専門家がだまされた統計学とは
                            第8回 コロナ社会のこれからを考える

Q18 繰り返しのワクチン接種が免疫機能を破壊?
  第1回 神様の贈り物を汚すもの(インターフェロン物語)
  第2回 改造mRNAに毒性あり(謎のG4構造とは)
  第3回 敗者は抹殺せよ!(抗原原罪説の真実)
  第4回 mRNAを包む膜に毒性あり(脂質微粒子に猛毒))
  第5回 ワクチンを打つと悪性腫瘍に(発がんリスク多数)
  第6回 免疫細胞を暴走させるもの(糖鎖に重要なヒント)
  第7回 オーバーワクチン症候群(免疫反応が止まる))
  第8回 まとめ:ワクチンを打ち続けるのは危険




          

                   《執筆者紹介》

現代医療は、世界の巨大医療産業によって操作された偽りのエビデンスによって、間違った方向に誘導されている。その実態を明らかにするため、長年、薬品やがん検診に関するねつ造データの科学的検証を行っている。

著 書
 『人はなぜ太るのかー肥満を科学する』(岩波新書)、2006年(11刷)
 『がんは8割防げる』(祥伝社新書)、2007年
 『ほどほど養生訓』(日本評論社)、2007年(5刷)
 『放射能と健康被害 20のエビデンス』(日本評論社)、2011年
 『医者の私が、がん検診を受けない9つの理由』(三五館)、2016年(4刷)
 『医者が教える「家族に飲ませない薬」』(PHP)、2019年(1刷)
 『医療AIの夜明け:AIドクターが医者を超える日』(オーム社)、2019年
 『大丈夫か、新型ワクチン』(花伝社)、2021年(2刷)
 『本当に大丈夫か、新型ワクチン』(花伝社)、2022年
 『新型ワクチン騒動を総括する』(花伝社)、2023年、ほか多数

研究論文
 1. Abe T, Okada M, et al., Sleep duration is significantly associated with carotid artery atherosclerosis incidence in a Japanese population. Atheroslcerosis 217: 509-513, 2011.
 2. Okada M, et al., Low-density lipoprotein cholesterol can be chemically measured: a new superior metod. J Lab Clin Med 132: 195-201, 2998.
 3. Okada M, A metod for clinical data reduction based on "weighted entropy", IEEE Trans Biomed Eng BME-25: 462-467, 1978. など574編

経 歴
 京都府舞鶴市生まれ
 1972年 新潟大学医学部卒業
 1990年 同 医学部教授
 2012年 同 名誉教授(国立大学 教授定年退官後の称号)

診 療
 高脂血症・高血圧症・糖尿病などの予防治療

受 賞
 ・新潟日報文化賞、1981年
 ・臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」、2001年

主な発明・発見・特許
 ・低密度リポ蛋白中のコレステロールの定量方法(特許3058602)
 ・超低比重リポ蛋白及び中間比重リポ蛋白のトリグリセライド定量方法(特許4070958)
 ・LDLコレステロール検査法を世界で最初に開発
 ・重み付きエントロピー計算法の発明
 ・Bツリーによる重複情報カウント・アルゴリズムの発見

資 格
 ・医学博士
 ・日本循環器学会認定循環器専門医(~2010年)
 ・日本医師会認定産業医
 ・AHA Profesional Member(米国心臓学会、上級会員)
 ・IEEE Senior Member(米国電子工学学会、上級会員)

主な学会・社会活動
 ・IEEE T-BME(米国電子工学専門誌)共同編集長、1986年
 ・文部省大学設置・学校法人審議会、専門委員、1997年
 ・日本エム・イー学会誌『生体医工学』、編集長、1999年
 ・Frontiers Med Biol Engng(学会誌)、編集長、1999年
 ・公益信託臨床病理学研究振興基金、審査委員長、2000年
 ・文部科学省科学研究費補助金、審査委員、2002年
 ・全国国立大学法人病院検査部会議、議長、2005年
 ・第32会医療情報学連合大会、大会長、2012年
 ・Arch Prev Med (米国医学専門誌)、副編集長、2015年


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